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トナカイの妖精    作者: 弐屋 丑二


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第九話むちゃぶり

「ところで。何でサマンサさん、

 お前の名前がノーナって知ってんのよ」

俺がこいつに"ノーナ"という名前をつけたのは半月前の地球での話だ。

ということを声がでないので「ほ!ほわほわーほほ!」

とジェスチャーしながらノーナに伝える。

「ん、ああ、この国は私の完全支配下にあるからね。

 住んでいる人間の意識も全て操れるわけね。

 言語だって簡単に日本語に変えられるし、私やおっさんの名前の呼び方も

 私の意志ひとつで、どうとでもね」

大広間に設置された結婚式の会食会場の北側、

数段上に二つ並べられた豪華な玉座に座った俺とノーナは、

壮麗なドレスやスーツに身を包む貴族たちを見下ろしている。

ノーナはヒザを組み、肘掛けに片肘をつき

グラスを傾けて中の虹色に発光するワインをぐるぐると回しながら、

ニヤリとわらってこう言った。

「じゃ、試しにおっさんの名前も変えてみるね」


立ち上がったノーナは、グラスを掲げ、

数百人の貴族たちが豪華なビュッフェを楽しむ

階下に向けて大声で宣言した。


「我が旦那ビッチョ・ウンコマン大王とともに!!」


「うおおおおおおおビッチョ・ウンコマン陛下ばんざーい」

という大乾杯大会が起こり、その後

貴族達は一斉にこちらに向けて片ヒザをつき

左手を胸にあてて、敬礼のポーズをした。

「ほ?ほ……ほほほ……」

俺は名前を変えて欲しいとノーナの背中を小さく小突く、

ノーナが背中越しに軽く微笑み、うなづいた。


「というわけでアースノイド大王が就任したわけだが、

 これから我等はダブルヘッダー態勢……いや

 喰い合う竜"ウロボロス態勢"でこの世界を統一する!」

うおおおおおお。という歓声が貴族達から響き渡る。

俺の名前はウンコマンからアースノイドに変わったらしい。

元ネタはガ○ダムだろうか……。


「サマンサ上級将軍!」


会場を温めたノーナがその勢いのまま、玉座から階下に呼びかけると

さっきまでの古風なメイド服から階級証と勲章がジャラジャラついた

厳しい軍服に変わったサマンサさんが前に出てくる。

「はっ!女王総統閣下!」

「さっそく明日から、

 わが国マーブの治める、この中央大陸メインニアスを出発し、

 東の大陸ライトサイドに進行する!準備はできているだろうな!」

「もちろんでございます。蒸気戦闘船百五十隻兵五十万をすでに揃えました!」

微動だにせずハキハキと答えるサマンサさんは何か本物の軍人みたいだな。

と俺はぼんやりと思った。

「祝賀の席上ですまないが!みなも挙国一致態勢で世界統一に挑んで欲しい!」

ノーナが威厳のある声で階下に宣言すると大広間は割れんばかり

歓声と拍手で揺れた。






「ふー。つっかれた。久しぶりに帰ったけどやっぱりなんか違うのよねー。

 私は冒険がしたいんだけど、

 何故か独裁国家の指導者になってしまったという」

ノーナが俺の部屋のベッドで、携帯ゲームをしながらのたまう。

「あーあー、い、う、おお!声が戻ってる」

あのあと、ずっと俺が家を空けると両親が心配するということで

一旦地球に帰ろうということになり、

サマンサさんにおいとまを告げて、俺の部屋に帰ってきた。

向こうでは深夜だったが、地球はまだ夕方だ。

ああ、そうだ聞いておかねば。

「サマンサさんは何をお前に願ったの?」

どうして、あんなわけの分からんことになっているのかは知っておきたい。

「そうねえー。何から話そうかなあ。じゃまずはあの星の話からいい?」

ノーナの話によるとこうだ。


惑星シヴァルザークは、1日の長さは約17時間。

重力と大気の成分は地球とほぼ同じ

住んでいる人間の寿命は約52年くらい。

文明は地球で言う18世紀前半程度……

とはいえ、それはノーナが支配するマーブ王国だけの話で、

他の国は10~15世紀程度しかないらしい。

ノーナがあの国で世界を統一するために

文明を無理やり引き上げたんだそうだ。

「あの時は、地球の先輩方との砂漠勤務やめた直後でねーおっさんと会う前ね。

 暇だったのよ。でーてきとうにワープしながら散歩してたら」

「あのド田舎星にたどりついたわけなの。天敵の天使も居ないし、

 救世主の出現も、あの世への繋がりも何にも感じないところでね」

「先輩達も未開拓みたいだった」

「で、私もつまらない地球の砂漠勤務を百五年勤めたあとじゃない?

 あそこの星特有のきれいな花とか、人の営みとかまたは諍いなんかを

 フラフラと上空を飛びながら見ていたわけよ」

「まあ、とくに興味も引かれなかったわ。地球みたいに

 様々な次元や存在が多種多様に絡み合っている星ではなくて、

 ただ、生き物が営みを繰り返すだけのつまらない星だったから」

「なんか私の能力で歴史をいじってやろうとか、そういう気も起きなかった。

 で、飽きたので地球にでも戻ろうとしたら、

 あの子の強い"祈り"を聞いてしまった」

「サマンサはねー。素っ裸で精液と汚物と性病まみれになって

 街の片隅の汚い娼婦小屋で死ぬ直前だった」

「神様助けてー神様ーて聞こえたわけよ。

 残念ながらあの星には神様も天使もいないのにね」

「やることもないし、気まぐれで助けたら

 まー懐かれてね。しょうがないから私が彼女の神様になるかと」

「ま、悪魔神ですけどねっ☆」

「でさー助けたサマンサは健気にもこう言ったの。

 争いの無い世界がほしいと、みんなが幸せに暮らせる世界にしたいと」

「そんなものないんですけどね。一応うん。と頷いて取引したわ。

 わたくし悪魔ですし、機会は活かさなきゃね。仕事病ね」

「そして、サマンサの純粋な願いを呪いの寄り代にして、

 代償である寿命の足りない分は周りの人間から吸い補うために

 あの星を独裁と戦争による殺し合いの螺旋に

 巻き込んでいっているわけだけど」

「ああ、サマンサの寿命はとっくに尽きてるわよ。私が引き伸ばしてるだけね」

「つまりわかりやすくいうと寿命0のサマンサは、

 リアル悪魔である私に、 

 寿命数億年必要な分不相応な願いを祈ってしまったの。

 そうしたら足りない分は他の人から吸うしかないよねっ☆

 ちなみに数億年分吸っても願いはかなわないけどね。わっはっは☆」

「あくまで彼女の願いは私が寿命を吸うスイッチにしかすぎないのよ」

「サマンサは将軍とか女王付きのメイドやってるけど、

 あれは要するに悪魔の代行業みたいなもんで、

 わたしが居ない間の殺し合いの準備は全部彼女にまかせているわけ」

「もちろん彼女は、世界平和のためだと信じ込んでいるけどね」

「で、じわじわと星ごと殺し合いの螺旋に

 巻き込んでいっているわけだけど……」


「なんかいまいちつまんなくてねー」


「私が強すぎるのよ、あの星は。天敵も居ないし、

 あの世とも繋がりがないしさー、上手く行き過ぎてつまらない」

「でさーおっさん。山なしオチなし意味なしの同人独裁世界征服物語を、

 楽しい冒険物に書き換えられない?」


いきなりのむちゃぶりに俺は飲んでいたアイスココアを少し噴いた。

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