第七話ヨーチューバー 後
「じゃーん!もっさんをヨーチューバーにする計画を発表します」
そう言いながらノーナは、数枚のA4用紙を俺に見せてきた。
そこには、汚い日本語でこう書きなぐられていた。
-まず始めに-
なぜ、もっさんをヨーチューバーにするのか!
それはわたくし悪魔ノーナとおっさんに
危険が及ばないようにするためであります!
わたくし悪魔ノーナが調べたところによると
動画配信者はプライベートを売りものにするので、非常に危険であります!
以下、計画であります。
1.もっさんでYO!TUBEに動画投稿(四ヶ月で120本予定)
2.わたくし悪魔ノーナの得意な心霊系で大人気
3.人気に乗ったもっさんでギコギコ動画とピルキャストで生放送開始
4.もっさん他配信者とディスり合い(※罵りあい)炎上して人気に
5.もっさん野外活動開始、女信者(熱心な視聴者)と女人気配信者複数人とつきあう
6.もっさんギコギコ動画の公式配信者に
7.もっさんテレビの地上波に出演
8.もっさん図ったように人気の絶頂で麻薬と暴力で逮捕
9.わたくし悪魔ノーナの力でもっさん即出所 箔がつき裏配信界の大物に
10.もっさん配信をめぐって日本のマフィア(ヤーさんのことかな?)と喧嘩に
11.構成員三人のもっさん組と五十三万人の山正田組(ヤーさん最大手ね)抗争開始
12.わたくし悪魔ノーナの魔力で山正田組35秒で壊滅
ちなみに概算です。向こうに魔法障壁があれば最大52秒かかります
13.もっさん日本の裏社会を一手に握る
14.もっさんが配信業と裏社会業で
稼いだお金をやり手の税理士を使いタックスヘイブンに送りマネーロンダリング
15.もっさん政治団体を設立しロビー活動開始。ロンダリングした巨額の資金と裏社会の人脈を使い
政治家に食い込む裏工作開始。
16.佐賀ミシンの党設立。まずはもっさんの裏社会の人脈や、わたくし悪魔ノーナの魔力で
左右の最大手の党の国会議員に、スキャンダルをチラつかせ揺さぶりをかける。
17.揺さぶりをかけた過去に汚点のある議員を衆参計五百五十人ほどミシンの党に移籍させる。
18.ミシンの党の単独政権開始。
文句言ったマスコミや有識者は何か色々規制かけつつ、裏からお金を回して飼いならす
19.フィクサーもっさん、悪徳官僚や様々な業界の大物業界人やヨーチューバーにお金を握らせて
ミシンの党の宣伝をそれとなくしてもらう。
20.善政をしき、それにより良識派も取り込み、ミシンの党百年の計完成。
勿論無理が沢山出ると思いますが、そこはわたくし悪魔ノーナの力でなんとかします。
おっさんとわたくし悪魔ノーナともっさん日本の頂点へ!!!!
21.そして世界へ……
「……」
読み終わったが、なんともまぁ……。
賀寿明の言う悪魔の独特な行動様式が少し分かった気がした。
「どうよ!くっだらない人間どもの政治のいざこざも無くなるし、
お金はたくさん入ってハッピーだし、おっさんと私ともっさんは日本支配できるし
最高でしょ!」
「おまえってさぁ……」
ヨーチューバーどころじゃねえなこれ……。
「なにっ!褒めていいのよ!さあっ!さぁっ!」
ナデナデして欲しいらしく、頭を突き出したノーナのつむじを見る。
「ちょっとその悪魔の力とやらを使って、実家の応接間にある
俺の愛用のハリセンを、俺の手元に出してくれない?」
「お安い御用ですっ!」
ノーナは言うが早いか、俺の手元に大型ハリセンを移動させた。
スパーン
小気味のいいハリセンの音が室内に響き渡る。
頭を抱えたノーナが涙目で尋ねる。
「なんでよ~……いい計画じゃない……」
「なんつうかさあ、これ読んでやっぱしお前って、
上級悪魔だなぁと思ったよ」
「いや、言ってることは面白えし、誰にも迷惑かかんないなら
俺もやりたいけど、さすがにここまではとはなぁ……」
その時俺はさらにあることを閃いてしまった。まさか……。
「ちょっと聞いていい?
お前ら悪魔のこういう計画に世界各国で複数人のった結果が、
前世紀の二回の世界大戦じゃねえの?」
「う、いわれて見れば、そうかも」
と、ノーナがのけぞる。
「で、でもでも、今度はもっと人が死なないようにうまくやるし……
おっさんが嫌な思いをしないようにするからぁ…」
ノーナは大きな目から涙が溢れそうだ。
悪意の無い悪意というか、どこまでも純粋な悪というか……。
それを見て俺はそれ以上怒れなくなってしまった。
「まあ、まずは涙拭いて紅茶とケーキでも食えよ」
ノーナはテッシュでチーンと鼻をかむ。
「どうしましたか」
異変を察知したのか、もっさんも部屋から出てきた。
「あ、もっさんもちょっと話あるんで座ってもらっていいすか」
俺はもっさんにも着席を促して語り始めた。
「俺は無職で親に寄生してるだけの社会のゴミっすけど」
「どんなバカにされても、怒っても人様に社会的な迷惑だけは
できるだけかけないようにしてきたんすよ」
「で、あと、やっぱ人間の歴史見ると
人間てどうしようもなくて、文明の発達して平和も多くなった今ですら、
欲とかに塗れたクソみたいな話が溢れてるじゃないですか?」
「でも、そういう過ちを何回も、何百年も繰り返して
少しずつ賢くなっていくのが、俺ら人間であり生物だとおもうんですよ。
だから、それがいかに遅くて外から見てじれったくとも、
悪魔がちょっかいかけるのは違うと思います」
「俺個人は、友達になれば犬猫でも人でも悪魔でも大切にするし、
今みたいに悪魔と遊ぶのも全然ありだとは思うんですけど、
やっぱその友達である悪魔の力を使って、他の人たちに迷惑かけたり支配するのは
それも何か違わないかって、思います」
「以上っす」
俺の辛気臭い話が終わると
もっさんがパチパチパチと軽く拍手をしだした。
「わたくしもご主人様に命を救っていただいたご恩がございますので、
今回の計画にも、精一杯ご奉仕させて頂くつもりでございましたが、
ご主人様の大切なご友人がそう申されるのであれば、
考えざるを得ませんな」
俺に軽く片目でウインクをしながら、そう述べる。
よかった……もっさんはさすがに"元生物"だったので話が通じたらしい。
「うーうー」
ノーナはまったく納得いっていないようだ。頭を抱えてブツブツ言っている。
純粋悪魔だし、わからんのもしょうがないな。
「……しかし、ですな。使い魔的にはやはり、
数百年使えてきたご主人様の顔も立てないわけにはいけないのです」
もっさんがノーナと俺の顔を見比べながら話し出した。
「こういうことでどうですかな。
ご主人様の計画表にある、7番まで実行するというのは」
1.もっさんでYO!TUBEに動画投稿(四ヶ月で120本予定)
2.わたくし悪魔ノーナの得意な心霊系で大人気
3.人気に乗ったもっさんでギコギコ動画とピルキャストで生放送開始
4.もっさん他配信者とディスり合い(※罵りあい)炎上して人気に
5.もっさん野外活動開始、女信者(熱心な視聴者)と女人気配信者複数人とつきあう
6.もっさんギコギコ動画の公式配信者に
7.もっさんテレビの地上波に出演
計画表のここまでか。多少悪魔的な発想の部分があるが
この程度なら大手配信者なら当たり前だし、まあいいだろう。
「もっさん、ひとつだけ条件つけていいですか?」
「なんなりと」
「もっさんと配信や配信外で絡んだ相手が幸せになるように動けます?」
大手配信者というのは、多かれ少なかれ絡んだ相手を食いものにしないと
普通は成立しないのだ。しかし俺らにはノーナが居る。
「わたくし個人だと難しいですが、ご主人様のサポートがあれば楽に可能ですね」
おれともっさんはノーナをガン見した。
「うーわかったよおおお、がんばりますぅ……」
ノーナはへこたれながらも手で弱弱しく、
オーケーサインのジェスチャーを出した。
話も終わったので、
俺とノーナはもっさんにおいとまして玄関で靴を履く。
「もっさん今度飲み行きません?賀寿明ていう親友にも会わせたいわ」
見送りに出てきたもっさんを飲みに誘う。
お互いノーナで苦労しているし、この人とはなんだか気が合いそうだ。
「もちろんです。と言いたい所ですが……ご主人様次第ですね」
おれともっさんは再びノーナをガン見する。
「うー、いいですよ~いいですとも~……」
うな垂れたノーナは無抵抗だ。
正体を現し、
タヌキヘッドになったもっさんがニカッと笑った。
その後、
もっさんは、例のマンションの角部屋で配信を開始した。
ノーナがわざと起こしたリアル霊障と、元々幽霊マンションで
起きまくっていた怪現象を動画にして数十本配信すると、
すぐに心霊配信者として大手になった。
そして数ヶ月経つと、ギコギコ動画やピルキャストで、
女配信者と絡んで浮名を流すようになった。
絡んだ相手がことごとく幸せになるので、
放送中は男女問わず素人や配信者たちからの
スカイプ凸が絶えないようだ。
……とはいえ、俺は毎日匿名掲示板を見たり、
クソオンゲードラファ7をダラダラやったりで忙しいし、
動画や放送は音楽系のしか見ないので分からないが。
ちなみに今のは全部ノーナから聞いた話だ。
人気配信者として多忙になったもっさんとはまだ飲みに行けてない。
ああ、そうそう、そのノーナだが
最近なぜかげっそりしているので
「痩せた?」
と聞いたらプイッと横を向いて、
漫画を読み出した。




