第一話悪魔召喚
例えば、そう……年齢的にもそろそろ悪魔教徒になってもいいかなと思い、
C級映画量産で名高いシャ○ラン監督の「デビル」や、
死霊の盆踊りなどを違法ダウンロードして、
部屋に流している俺は33歳だ。
33歳無職、実家暮らしにとって世界とは平坦すぎるほど
平坦で、つるっとしていて、どこにもとっかかりはない。
昨日も俺はカウンセラーのおねえちゃんと楽しく会話してきた。
キャバクラに行くよりはよっぽど建設的だろ?キャバクラなんていったこともねーけど。
ああ、会話の内容は宇宙についてだ。お前ら知ってるか?この世界って広いんだぜ。
俺にはまったく関係ねえけどな。
無職ってさ、世間的には悪いことしてるように見えるだろ。
そんなことないんだぜ。ネトゲしたりネットしてたりすると
気付いたら一年経ってる感じだな。
パチンコもパチスロも麻薬も風俗もやってないぜ。
そんなもんに手出して、俺の非効率的な人生を
もっと非効率にしてどうすんだ。親兄弟もマックスまで心配させてんのに
これ以上リミッター外す気はないね。
そんな、なんかのドエムプレイか修行みたいな
俺のクソみたいな人生にもそろそろ飽きてきた。
別に童貞でもねえし、今はくっそキモイおっさんだけどイケメンぽかった時期もある。
死ぬほどの気力もでねーわ。わりと惨めで不幸なはずなんだけどな。
もしかしたら前は幸せだったのかもなあ。覚えてねえけど
ああ、悪魔教徒になる話だったな。そう、俺は悪魔教徒になりたいのだ。
でも聖書、悪魔教義とか勉強する気はないし、
無職がガチの悪魔教に入るのも何かダサくね?社会へのるさんちまんゆえに?てやつ?
タダ飯食っといて、俺にそんなん言う権利ねえよなー。
大体悪魔教って何よ。キリスト教が正義という視点ならあとは全部悪魔教なんちゃうんか。
あーめんどくせえなー。
ぶっ
俺はパソコンでネットサーフィンをしながら、愛用の椅子に屁をこいた。
「くっさっ!あとキモっ!おっさんキモっ!」
「はぁ?」
俺のいつもの濁った視界の先に、二本の見事な角が頭から生えた黒髪の美少女が立っていた。
机の上に立っているので、見上げたスカートの中から白パンツがチラチラと見えている。
「トナカイの妖精?」
マジか。ここまで正気を保ってきた俺にもついに幻覚が!
「……トナカイ?」
俺の前に現れたトナカイの妖精はまだ事態を把握しきれていないようだ。
「トナカイっぽい角してんじゃん?それで美少女だったら妖精だろ」
日本のファンタジーのよくある文法だろ。マジ常識ない幻覚だなこいつ。
「……」
はぁ、幻覚もこんなもんか。だまりこみやがった。
明日精神科いこ。お薬もらって人生やり直すいい機会かもな。
「…ぁ…く……ま……だもん」
机の上に仁王立ちしてパンツ丸出しの幻覚はなんかブツブツいっている。
「私は悪魔なの!」
目に涙をいっぱい浮かべて、大きな眼で上からよく分からないことを俺に……
「悪魔!!!!!!!マジで!」
まん☆画○郎先生の描く登場人物のような顔で俺は驚いた。そして喜んだ。