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何でも屋ホワイトドラゴン  作者: 梅谷 雅
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第七話 過去を変える覚悟

第七話 過去を変える覚悟

二日前、一人の少年が私の元に尋ねてきた。

目は涙で赤く腫れ上がり、服もかなり汚れていた。

膝や肘には擦り傷がたくさんあり相当私の元へ急いでやってきたものと見られた。

しかし、どうしてこの少年が私の元へ来れたのかは分からない。

唯を助けて!

坊主、焦る気持ちは分かるがまずは私に何があったのかを教えてくれ。

でも、早くしないと唯が!!

うるさい、助けられるものを助けられなくしたいのか? 今一番必要なことは急ぐことではないはずだ。状況を説明しろ。話はそれからだ。

くっ、そうだね。『ホワイトドラゴン』の言うとおりだ。

まて、どうしてその呼び名を知っている? その通り名は普通走られていないはずだ。特に君のような子供には尚更な。

ある人が教えてくれたんだ。そして、その人が僕にある力をくれたんだ。

……わかった。そいつのことはそれ以上教えなくていい。その力のことを教えてくれ。

その人が言うには『過去へ戻る能力』だって。

それは回数制限があるはずだ。何度使った。

まだ一回しか使ってないよ。あと二回使える。その一回をホワイトドラゴンにあげるからあと一回で唯を助けて!

よく言うな。その私にくれる一回というのはその能力がどんなものかを知ってもらうために君が使うものだ。つまり、私が自由に使えるものではない。

流石だね、でも早くしないといけないんだ。僕がこの能力で戻れる過去は二日前までなんだ。そして、今あの事故が起きてから3時間ぐらいたっている。

……なら、まだ平気だ。さて、次の質問だ。その能力は『一つの過去に対しては何度戻れる』?

僕の体力が続く限りは戻れるらしいよ。その人が言ってた。

(子供の体力なんて高が知れているな。数は少ないと思ったほうがいい)わかった、じゃあいよいよ本題だ。何があった。

僕の友達の女の子が車に轢かれたんだ。信号は青だったんだけど車がこっちに向かってきて……唯が僕を押し出してくれたから僕はこうしてここに来ることができたんだ。

一つ聞く。どうしてそこで救急車についていかなかったんだ? 普通はすぐに私の元へ来るなんて考えられない。

さっきも言ったとおりホワイトドラゴンのことを聞いたときにどうしようもないことはあなたに任せなくちゃいけないって直感してたんだよ。

なるほどね、たいした坊主だ。(ただの子供としてはいささか常識外れではあるがな。)

だからお願いだ! 唯を助けて!

君が能力を使い私を過去に連れて行きその唯という女の子を救えということかい?

そうだよ、お願いだ!

はっきり言おう。それはできない。

え? 何でだよ! 何でも屋じゃないのかよ!

お前は何でも屋をなんだと思っているんだ? 神じゃないんだぜ? 私は人間だ。不思議な力を使えたとしても人間であることには変わりないんだ。ましてや過去を変える? はっきり言っておこう。過去を変えることは絶対にできない。つまり、この話はここまでなんだよ。

そんな……じゃあ僕の能力は何のためにあったの? 唯を助けるために使うものじゃないの? お願いだよ……僕の好きな女の子なんだ。助けてくれよ!

私はこのとき、師匠が死んだときのことを思いだしていた。

あのときの私は過去に戻ってでも師匠のことを助けたいと考えていた。

だが、やめた。

できないことは知っていた。

だが、同時に諦めたくもなかった。

そして、月日がたち私は、もうあの時あの場所には戻れなくなっていた。

だが、この子供はどうだ。まだ、間に合うかもしれない。

私が力を貸すことで救えるかもしれない。

しかし、過去を変えることはできない。

この子供が力を使える回数は残り二回。

『あの馬鹿』が余計なことをしなければこんなことにもならなかったのかもしれないな。

……やれるだけやってみるか。

坊主、その能力を使ってあることをやってみたいのだがいいかい?

何をやるの?

昨日私はスーパーへ買い物へ行ったんだ。そのときに歯ブラシを万引きしたおばあさんがいてね。その人に声こそかけなかったが今考えるとそれは正解だったのかもしれないと思ってね。

どういうこと?

君の過去に戻るという能力は条件をつけることができる。そうだろ?

そうなの?

あぁ、その条件に私がそのおばあさんに関することを知らないものとしてほしい。つまり記憶を取ってほしい。そして次に過去へ戻って無事そのおばあさんを店の人に渡せたら君の依頼を受けよう。

本当!?

あぁ、それぐらいのハンデがないとぶっつけ本番ではまず不可能だ。やれるだけはやってみるよ。ただし、本来は無理なことだ。その無理をかなえようというんだから君も覚悟はしておけよ?

はい!


こうして私たちはあのおばあさんとのかかわりを持ったのだ。

そして、時は動き出す。

この少年が言う唯という少女を助けるために。


ホワイトドラゴン、ついたよ。

あぁ、今回は私に制限をかけていないからやりたいようにやれそうだ。

ほら、あそこに僕と唯がいる。

あぁ、見えるよ。

私たちはとりあえず過去へ来たというだけなのだ。

まだ何もしていないし、何もできない。

まずはどうやって車に轢かれてしまったのかを見なくてはいけない。

それでなければどの程度の干渉で彼女を救えるのかが分からないからだ。

そうだ、

ところでお前、名前は? 山田だよ

下は? 太郎か?

違うよ! 藍生って言うんだ

藍生か……贅沢な名前だねぇ。お前のことは俺が責任持って太郎と呼ぶ。

いや、何でだよ。

気にするな。それよりお前は見ないほうがいい。何度もあの女の焦がし布は見たくないだろ?

うん、そうだね。

あと、このループは何回できそうだ? おばあさんのときはぴったし100だったっけ?

違うよ、あの時は120回できた。ホワイトドラゴン……長いから白竜でいい

それなら竜乃と呼べ。どちらの呼ばれ方も好きではない。120回か。ということはもしかしたらこのループの力にも慣れてきているのかもしれないな。はじめは何回やったんだ?

はじめは50回ぐらいかな。給食の揚げパンを何度も味わいたかったんだぁ。

くだらない理由だ。だが、今のでわかった。お前はこの力に慣れてきている。しかし、覚えておけよ。これで最後だ。

うん、分かってるよ。

あと、ループの時間はどの区間だ?

今が午後の15時2分だからたぶん15時から15時15分の15分間だよ。

分かった。じゃあ15分かける120強だな。記憶もあるし十分だろ。

それより、お前たちはどこで事故にあったんだ?

もう少し行ったところの交差点だよ。人は僕たちしかいなかったんだ。

その車は?

そのまま走り去ったよ。

ひき逃げか……まてよ、やはりおかしい。どうしてお前はその状況で何もせずに私の元へ来た?

竜乃、そろそろだよ

ちっ、訳ありかよ。

私たちは少しだけ二人に近づいた。そして、問題の事故現場を目撃した。

車と聞いていたが実際はトラックだった。しかも大型。

交差点での事故だったが道幅は狭いわけではない。むしろ片側二車線道路の一般道で広い部類だ。

さらに言えば車はそのトラック一台だけしか通っていない。

(おかしい。これは本当に事故だったのか?)

竜乃、違う

ん? どうした?

『過去が変わってる』

何?

あんな大きいトラックじゃないんだ。それに、僕が行ってた交差点って言うのは猛一つあとのほうなんだよ

私たちが来たことで変わったのかもしれない。変わることも踏まえて作戦を練ろう。

うん、そうだね

私たちは再び同じときを繰り返す

……あ、れ?

どうした?

お、おかしいなぁ。こんなにループって疲れたっけ

なに?

お前、怪我が増えて……まさか……さっきの事故でお前轢かれたんじゃないのか?

え? てことは……

まずい、私たちがここに来たことで私たちはこの時間での異物と判断されたということだ。君がやった一度目のループと私のときのループでなぜそれが起こらなかったのかはわからないが、今回私たちは君と唯という二人の子供を助けなければいけないということだ。

君の怪我は私が治してやる。目を瞑れ

う……うん

私はいつものように『修復』の力を使った。

すると、太郎の体の傷はしっかりと消えて元通りの元気な体に戻った。

大丈夫そうか?

うん、何とかね。それより作戦は?

間に合わせるさ。まずはお前のことを助ける。そうでなければこのループができなくなる可能性があるからな。そして次にあの女の子を助ける。それでいいな?

具体的には?

私が簡易的なものだが空間移動の力で二人の場所を数メートル戻す。そのときに轢かれなければいいということだからな。

わかった、僕は何をすればいい?

お前はあの二人に姿を見られてはいけないんだよな。私が移動の紙を設置してくるからお前はこれをこの地面に張っておいてくれ。

了解

私は太郎にそのように命じて問題の二人の下へ急いだ。

ここでは私たちはかかわってはいけない。だから走り抜けて先ほどのトラックのところまで行って移動の能力を使うしかない。

(うまくいってくれよ)

私はそう願って設置した。

しばらくすると先ほどのトラックが通ったがあの二人は現れない。

どうやら成功したようだ。

二回目で成功するとは思わなかったが早く終わるに越したことはない。

私はやり遂げたという実感のわかぬまま太郎の元へ戻ろうとした。

だが、そこで私は青ざめた。

『二人を移動させたことで二人は移動させたところで轢かれていた』

幸い太郎の方は立ち上がって私の家へと向かっているが唯という女の子はもうだめだった。

三回目のループ、太郎は先ほどよりもよりひどい怪我をしていた。

私は再び太郎のことを治した。

しかし不思議なこともある。

周りにいる奴らは自分たちが何度も同じところを回っているとは気づかないだろう。だが、私たちはその記憶すら持ってこの場にいる。

だからこそ自分たちしかこの現実を変えることができない。

いろいろ試してみた。

唯に向かって石を投げて轢かれない様にしたり→その石が頭に当たって倒れてそれに太郎が気づかず後ろから来たバイクに轢かれて死亡

ニット棒にサングラス、マスクのの不審者スタイルで二人に話しかけてみたところ怖がられて二人ともダッシュして逃げる→太郎はこけたが唯はそのまま走っていた。しかし、太郎のほうを向いた瞬間に右から来たトラックに轢かれ死亡

何度やっても必ず死ぬ。

だが、何度やっても太郎は死なない

運命からは逃げられないのか。

師匠のときにやらなかった。運命を変えられないという事実。

それがこんな形で自分の元にやってくるなんて……。

竜乃!

ん? あぁ、すまない。

竜乃髪の毛だいぶ黒くなっちまったな。

私の髪で白いところはどれぐらいある?

ほとんどないよ

(気づくのが遅れたな)。

いつもの私だったら髪の色こそ変わるが、別に戻らないわけではない。

特に、怪我を治す程度のものであればその対象から外してもいい。

だが、今回は数が多い。そして、これが一番の原因であるが、『ループ中は体力の回復がしない』。

つまり、このループに入った状態の体力に戻るわけではない。

私はてっきり太郎の怪我がここで起こった怪我だけなのでそれを治すだけかと思っていたが、そうではなかった。

そして、もう一つまずいことがある。

竜乃、ごめんもうあと2二回でこのループは終わる。

なんだと? どうにもできないぞ

体力もそうだけど精神的にもきついんだ。

なぜだ? 実際に見せてはいない。たとえループによって駄目だと感じたとしても……

そうじゃないんだ! ここで起こった事故全ての記憶が僕の中に流れ始めている。

一番最初のオリジナルの事故だけじゃない、トラックもそうだしバイクもそうだほかにも自転車とかもあった。その事故全てが旧に僕の頭に流れ始めた。

わかった、後二回だな。なら、正体を明かそう。君はこのとき私のことを知っていた。つまり、私のことを言えば信じてもらえるはずだ。それに時間がないならこれしかない。

私はすぐにそれを実行に移した。

おっさん誰だよ!

私はホワイトドラゴンといえば分かるかい?

ホワイトドラゴン? 藍生は知ってる?

あぁ、あなたが前に会った人が教えてくれた人か。

君のもらった力で私は今ここにいる。唯ちゃんが交通事故にあって死ぬ。それを回避するために来た。15時15分以降まで生きていれば問題ないはずだ。

そうなの?

あぁ、

ちょっと藍生どういうこと?

ごめん唯ちゃん、今はこの人の言うことを聞いて。

……藍生が言うなら仕方ないわね。

ありがとう。

じゃあ、すぐ済むから待ってくれ。

私は右手を噛み血を出した。

その血で三人が入れる円を書いた。

そしてその円の中に星を一つ書いた。

これって何?

この中に入っていれば何が来ても必ず守ってくれる。

はじめからこれをやりたかったがこのじてんでのきみたちにかかわるのはいささか問題があったのでね

そして、トラックが来た。

そのトラックは私たちの前まで来て避けるように通り去った。ほかの車もどんどん彼女を殺しに来たが全て避わすことに成功した。

そして、15時15分を無事に過ぎた。

ループをする様子はない。

ということは成功したらしい。

ホワイトドラゴン、成功したの?

あぁ、太郎……ここに連れてきてくれた君がループをしないということは無事に成功したということだ。

本当!?

あぁ、おめでとう。私はもう帰るよ。念のため君たちは気をつけて帰るのだよ

私はそう言ってその場をあとにした。

太郎の元に戻ると太郎はすっかり寝てしまっていた。

よほど安心したのか起きる様子が……

何だ……この血は……太郎! おい、起きろ!

私はすぐに修復の能力を使った。

だが、彼が目を覚ますことはなかった。

まさか……

私はすぐに後ろを振り向いた。

その先には真っ赤に染まった道路があった。


なぜだ! 

なぜ……過去を変えることはそんなに悪いことなのか!

何も悪いことをしていないのに死んだ奴を助けようとするのはそんなに悪いことか!

私は……この力を何に生かせばいいのだ!

私は……未来ある子供の命をいたずらに減らしただけだったのか……


その問いには誰も答えてくれなかった。

ただそこには唯一つの事実があった。

『過去は変えられない』

そして、更なる真実。

『過去はよくはならない。決して』


過去を変えたいと思うことは誰でもあります。

ない人もいるかもしれませんね。

ですが、私はあります。恋愛であったり、自分のミスであったり、友人関係にテスト前とか。

いろいろな過去があって今の私たちがあります。

今回の話では過去を変えたいと願う子供のお話です。

最近の話の傾向では過去を変えてハッピーエンドや何も変えられずに無力であった自分を嘆くといった話をよく見ます。

この話はもう少し残酷にしました。

罰ですね。

誰もがやりたいと思うことを『ズルをしてできてしまった子供』への罰です。

そしたら竜乃はどうなるのかという質問がきっと来るでしょう。

そうですね、もちろん彼にも何らかの罰は来るでしょう。

それが師の死であったり、これから先も何かの罰はあると思います。

この子供を救えなかったというのも一種の罰ではあります。何でも屋としてできなかったことの一つですからね。

ですが、彼はまだ必要な存在であります。

私は必要な人間というのはズルをしても生きていてほしいと思います。

何が言いたいかといいますと、私も必要な人間としていきたいですね。

ここは嫌な終わり方で締めましょう。

皆さんはどちらの人間ですか?

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