第六話(没) 偽者
すみません、これは失敗の六話です。
ですが、失敗作でも読みたいという場合は読んでいただきたい
第六話 偽者
とある大学の実験室でそれは起こった。
山西さん、私はある実験をしたいんだ。君にはその実験を手伝ってほしいのだが頼んでもいいかね?
何をするんですか?
私が長年『人間の入れ物』を作ろうとしていたのは知っているよね?
はい、人間の臓器や皮膚、何から何まですべてを作るという実験ですよね? それが完成すればロボットよりも人間らしい見た目、さらには人間そのものを作ることができるとか……ですが唯一作れないところがあるという話しでしたよね
そう、それは人の脳だ。私の力を持ってしても脳だけは作ることができない。そこで君だ……君に脳の代わりをしてもらいたいんだよ
え?
君は知識も十分にある。この実験の重要性にも気づいているはずだ。君は喜んで【脳】を提供してくれるよね?
岡田……教……授?
頼むね、大丈夫。君は死なないよ。君はこの体の中で永遠に生き続ける。私はそれを確信している。
岡田はそういうと隠していた包丁を彼女に向ける。
嘘でしょ? そんなの実験じゃないわ!
いや、実験だよ。もちろん、【人体実験】だがね。
いや! こないで!
大丈夫、優しくするから。傷なんてつけるものか。あぁ、もちろん……脳以外に興味はないよ。さぁ、すぐに移してあげるよ。その体を……私の完璧な体へとね!!
いやーーーーーーーーー
彼女の声は誰の耳にも届くことがなかった。
岡田はこうして【生きた脳】を手に入れたのだった。
偽りの肉体に入れられた脳は動くことはできたのか。
理論は完璧であったのか。
もし、しっかりと移れたとしたら……彼女は彼女でいられるのだろうか?
岡田の興味はすべてだった。
すべてに興味があった。
すべて知りたかった。
この実験で起こるであろうすべての可能性を……。
すべての【結果】を
事件はすぐに知られることはなかったという。
そして、物語は始まる
タッツー、お客様だよー
ん? この屋敷には入れたのか?
うん、何か今入ってきたよ
分かった、出迎えよう。
私もその男のことを少し観察したが、迷い込んだ様子ではなかった。
(ということは本当の客か)
私はそう思いしっかりと玄関で出迎えることにした。
ごめんください
はい、扉のほうは開いてますのでどうぞお入りください。
あっ、ありがとうございます
依頼のほうでよろしいのですか? それとも迷い込んだだけでしょうか?
依頼でお願いします。
内容にもよりますが私の依頼料は高くつきますよ?
もちろん、それぐらい知っています。
分かりました。とりあえず中へどうぞ。
私はその男を客室へと案内した。
客室といっても何の変哲もない部屋だ。
テーブルがあり、椅子が四つ。壁には誰の描いたかも分からない絵が飾られている。
ほぉ、いい家ですね。
それはどうも。ところでこちらのほうにはどうしていらしたのですか? 私は大々的にこの仕事の情報を流していないのですが。
私は岡田と申します。ある病気のことを調べていたらあなたのことを知っているという人に会いましてね。
病気? 残念だが私の専門外だ
いえ、そんなことはないはずですよ。菅沼医院からあなたの事を聞いたのです。
あいつから聞いたのか。まったく、今度からあいつには私のことを教えるなと伝えておきますね。さて、となると私が助けた方々についても聞いたということですか?
いえ、患者のことは何も聞いていないです。私はあなたなら医者ができない手術をできると聞いているのです。
ずいぶん買いかぶられたものだ。そんなことはない。しっかりと勉強すればできることだよ(医学ではないが)
え?
いえ、なんでもないです。ところでその患者というのはどこにいるのですか?
ここにはつれてきていません。
………………なぜ?
非常に危ない状態なのです。病院にも……医者にも見せていません
…………それなら私が出る必要はない。医者に視てもらいなさい。私のような者に頼ると金がいくらあっても足りない。
先生はこの手術ができなかったときのことを考えているのですね?
いや? そうではない。私がそういっている理由は何を隠そう私は医者ではないからだ。つまり、医者に見せてないような患者を私の元に持ってくるのは間違っているということだ。医療を学んでいない奴に任せたくはないだろ?
普通の人ならそうかもしれないのですが私の場合は事情が違います。
……そうですね、ではこういうことにしましょう。私にやる気を出させてください。それ次第ではあなたの患者を診ましょう。ただし、視るというだけで治すと入っていない。
わかりました、ではまずは嘘を正します。
嘘?
えぇ、病気といったことです。
違うのですか?
まだそれは誕生していないのです。そして、これが外部に漏れると非常にまずい。あなたはそういう情報を漏らすことがないのですよね?
えぇ、私は依頼者のプライバシーはしっかりと守りますよ。ですが、できることとできないことがあるのを忘れないでください。まずは私ができるかを考えます。症状を教えてください。
いいでしょう、私は大学時代から常に【人】を作ってみたいと考えていたのですよ。私はある実験をしていた。それは人間の構造をすべて自分の手で作るというものです。人工心肺、人工肝臓、人工腎臓……多くの研究をしてきました。もちろん、私はすべてを作る技術も持っています。私はたった一つだけ作れなかった。それは【脳】です。どんなに研究をしても知能を……感情をもたせることができない! 感情を持たない人間などロボットと同じだ! 私はロボットが作りたいのではない……人間を作りたいんだ!
それで私に何をしろというのですか? まさか、脳を作れなんて言い出しやしませんよね? それでしたらまちがいなくむ
違います。脳はあるのです。ただ、接続ができないのですよ。
……いいでしょう、話が読めました。あんた、人を殺したな?
いえ、違いますよ。永遠の命と引き換えに私に命を預けてくれたのです。
あんたは本当にそれで永遠の命が手に入ったと?
えぇ、手に入ると思っていましたよ。接続さえできれば!!
わかりました。そういうことでしたらみるだけみてみましょう。
本当ですか!? ありがとうございます!!
まぁ、やるにしても金はしっかりお願いしますね。3億それ以下なら私は絶対にやらない。
いいでしょう、用意しましょう。この研究が認められれば私はその程度の金を手に入れることなど当たり前のようにできる。
場所を教えてください。少し支度があるので先に行って下さい。
必ずお願いしますよ!
うるさい、そんないちいち言わなくてもやるといったものは必ずやる
私は岡田から施設の場所を聞きだし先にそこへと向かってもらった。
この仕事は私は正直やりたくはなかった。
得なことはまずない。
次に、これは人体実験だ。
人体実験というものは不思議だと思う。
医学の進歩のためには誰かの犠牲や実験が必要不可欠なものとなる。
人間の都合でマウスという名の実験動物が年間に死んでいく。
実験動物で効果や副作用を慎重にみてその後に安全と判断された場合に人間への投薬、手段として使われる。
だが、そこまでしても死ぬときがある。
認可はされていない、だが効果は確実にある。
このようなものが出てきたとしてもそれを使うことによって人が死んだ場合、その人間の家族は【人体実験だった】というのだ。
成功したら評価をされる。いや、評価すらされないのかもしれない。
人の生き死にを人が生み出そうとしている……それは果たして性に対しての冒涜にはならないのだろうか。
私はそんなようなことを考えていた。
タッツー? どうしたの?
ん? あぁ、悪いな。出かけてくるよ。留守をしっかり頼む
はいはーい!
私はすぐに車に乗り岡田の提示した場所へと向かった。
高速道路を使えば30分ほどで着く距離だったが、岡田の元へ行くと遅いと怒られてしまった。
すみませんね、ここら辺はあまりこないもので。
いいでしょう、こちらになります。
岡田はそういって私のことを案内した。
岡田の指定した場所は簡単に言うと廃墟である。
人の脳をどの状態で保管してあるかは分からないがこんな衛生管理上問題があるところで平気なのか?
問題ないですよ。問題なのは脳と体の同調率ですから……
(どのぐらいかは分からないがそれは大丈夫なのだろうか。)
さぁ、こちらになります。
ある一室に案内された。
そこは手術室だった。
手術台の上には一人の女性がおり、近くにはホルマリン漬けにされた脳がおいてあった。
おい、これは言っちゃ悪いが死んじまってるのではないかい?
いえ、そんなことありません。脳もまだ生きていますし何よりも体のほうは人工的に作ったものなので死というものがありませんよ。
どういうことだ? 私は医学のことはわからないのでね、詳しく教えていただけるとありがたい。
人工心肺などの動かし方は体内にバッテリーを入れてそこからの電力供給でまかなうこともあるのです。しかし、あなたが今見ているこの女性は脳意外はすべて私が作った人間なのです。
それが分からない。なぜ人間と呼ぶ。それはもはやロボットであろう?
違いますよ。肌触りからそれぞれの臓器の役割……すべてを人間とほぼ同じ働きができるように作っているのです。
(とんだマッドサイエンティストだな。)つまり、あなたはこの女性の方をロボットではなく一人の人間として生みたいということですね?
えぇ、ようやくお分かりいただけましたか?
あぁ、かなり難しいものになりそうだがやってみよう。悪いがこの部屋から出て行ってくれ。私はすべて一人で行う。そしてその私のことを監視することは許さない。それでこの依頼を飲もう。
分かりました。では、お願いします。
任せろ(やけに簡単に引き下がったな)
岡田はそれから部屋を出て行った。
私はどうしても彼を信じることができなかった。そのため一応周囲にカメラなどがあるかを確認してみたところ全部で6箇所に監視カメラがあった。
たく、悪いがこれはすべて壊させてもらうぜ。
私は一つ一つそのカメラを足でつぶして壊すことにした。
なぜつぶして壊したかだって?
高そうなものを踏み潰したときの絶望感って自分のものだと味わいたくないが、なぜか人のものだとやりたくなるのだ。
さて、こんなことしてる場合じゃないな。
設計図があらかじめ診察台の上においてあった。
どうやら出て行くつもりではいたようだ。やりたかったことは私がこの作業をするために何をするか見たかったというところか。
こんなことを言うのは依頼を受けたい上言うべきではないのだが、今回私は何をすればいいのだ?
岡田がやりたいことというのは完璧な人間を作るということ。しかし、この完璧とは欠陥だらけだ。
この作成した人間を見る限り心臓とかの一つ一つの構造は間違っていない。当たり前だが、二心房二心室の構造もできている。肺にいたっては肺胞まで事細かに作られている。
だが、そうした一つ一つの構造がよくても大きさや接続方法があいまいというよりも考えられていない。
あいつは一体何をしたかったのだ?
私は仕方ないので【能力】を使うことにした。
今回はカルミアの花を使うことにした。
花言葉は『大きな希望』。
これぐらい大胆なものでなければおそらく失敗する。
修復ではないがこの花があれば私の望むことはたいていできる。
だが、非常に疲れるので使いたくない。
ところで、ドラえもんをご存知だろうか? そのドラえもんの道具の中でビックライト、スモールライトというものがある。私はそれと同じことができる。
医療にかかわりたくなくてもかかわることがあるため私はそういう知識も独学ではあるがもっている。
そのため正常に機能する大きさなどはわかる。
問題は、接続だな。
一つ一つの臓器はしっかりできている……だったら、動かないように固定して【私好みの形】にしよう。
岡田が造ってほしいのは人間である。つまり、中身のほうはこんな無計画なもので作ろうとしていたのだからいじってもかまわないはずだ。
電力供給は心臓からでいくとしよう。とすると本来の心臓がポンプの役をして血液を循環させる仕事祖心臓からの電力供給に代わるものとする。
もちろん、人間らしさを出すためにしっかり鼓動を打てるようにはする。そして、ほかの臓器はケーブルとかを巻きつけてそれを配線代わりにしてつなげばいいだろう。一つ一つが心臓と同じように自分で動ける仕組みを持っていないところをみると元からこうするつもりだったらしい。
さて、次に脳だ。これが一番怖いな。
ここからは……そうだな、脳の血管とケーブルをつなぐ作業だ。
そこからは自分でも何をやっているのか全くわからなかった。
だが、心臓はしっかり機能をしてほかの人体も無事動くことができた。
岡田さん、終わりましたよ。
あれ? 先生髪の色が……いや、それより手術はどうでしたか?
あぁ、髪は気にしなくていいですよ。勝手に治りますから。それに私は先生ではない。あと、手術でなく作業だよ。まぁ、結果から言うと無事に起動したらしい。成功はしているはずだ。
ありがとうございます!
岡田はそういうととっとと手術室へ入っていった。
私がわかるかい?
岡田は【それ】にそう声をかけた。
岡田……教授?
おぉ、先生! ありがとうございます! 完璧だ……私の理論はやはり正しかった。こうしちゃいられないこの結果をしっかりまとめていかなければ! 先生、すみません少し席を外すので彼女の事を見ていてくれますか?
はい、かまいませんが疲れているのでとっさの動きはできないかもしれませんよ
……すぐに戻ってきます。
そういって岡田はまたすぐに移動してしまった。
さて、すまんね。君の体は今日からそれだ。偽物の体で本物の脳といえばいいかな。
…………偽物の体?
君の記憶はどこまであるんだい?
でも、手も足もしっかり動きますよ?
言いづらいのだが、君は一度【殺されている】はずだ。覚えていないならそれでいい。忘れていたほうが幸せだからな。
はぁ…………
すまんね遅くなった!
とんでもなく早かったですね。何を取りに行ってたのですか?
あぁ、研究ノートだよ。またあとで彼女はレントゲンなどをとってとにかく構造から何から何にいたるまで調べますよ。もちろん先生の言うとおり手術法は聞きませんよ。
それはどうも、金は後日お願いしますね。
はい、分かりました。本当にありがとうございます。
では、さようなら。岡田さん、山西さん
え? 何で?
え??
さぁね、また会いましょう。
私はそう言い残して自宅へ帰った。
※
さて、ではさっそくいくつか聞いてもいいかい?
はい、いいですよ
とりあえず、まずは言語だがしゃべりにくいとかはあるかい?
いいえ、特にはありません。手足もしっかり動きます
脈を測らせてもらうよ。……すばらしい、しっかりと脈も打っている。頭のほうには何か違和感とかはあるかい?
いいえ、ただ私とあなたの関係が分からないのですが……岡田……教授?
あぁ、私は君のことを作ったのだよ。はじめから作って見事に成功したんだよ!
そうだったんですか……ありがとう? ございます?
いえいえ、どういたしまして。
※
タッツー今日はどんなことをやってきたの?
ん? 変な依頼だったよ。だが、たぶんもう一度行かなくちゃ行けないはずだ。
そうなの?
あぁ、偽物の体に本物の脳が入っているんだ。そんなものが拒絶反応が起きないわけがない。
何かタッツー怖いよ?
あぁ、悪いな。私は人としてやってはいけない禁忌を犯してきたんだ。しばらくはこの気持ちが続くのだろう。
でも、次に依頼主さんが来るのはいつなの?
おそらく二週間ほどで相談に来るだろう。そして、その後一週間以内に何かが起こるはずだ。
何かってなに?
ん? それはそのときにならないと分からないよ。
※岡田の日記
一日目
先生に治してもらった山西さん(人造人間)はとてもすばらしい。
まさか本当に動くとは思っていなかった。
レントゲンで確認してみたが内部構造も私が作ったものより小規模にされており、さらにしっかりと埋め込まれている。これほどまでの手術ができる人がなぜ医者をやらないのか不思議に思った
二日目
山西さんはところどころの記憶を失っている。
というのも自分のルーツにかかわるものはほとんど失われているらしい。
脳だけではやはりそのままのコピーとしては誕生できないらしい。
しばらく経過を見ていきたいと思う。
三日目
山西さんの記憶が少し戻った。戻ったというよりも生まれたといったほうがいいのかもしれない(体が違うわけだし)。
そして、自分の手や足が何か違うと思い始めたらしい。
私はこれから人造人間としての山西さんとして彼女と接したいと思う。
四日目
山西さんはパクチーのにおいが苦手だった。
しかし、人造人間になってからの彼女は平気そうににおいをかいでいる。
四肢が動くこと、言葉を発することができることから気にしてはいなかったが、互換は彼女にあるのだろうか。これからはそちらの研究もしたいと思う。
五日目
今日は触覚を調べてみることに下。
四肢への触覚も腹部、胸部、どこを触っても反応をする。
腹を触ったときにくすぐったいったところから彼女は原をくすぐられるのが苦手なのかもしれない。
六日目
味覚について調べることにした。
人造人間なので本来の食事という食事はしなくても全く問題ない。
電力供給が行われるのは心臓なわけだしな。しかし、やはり味覚のところはどうしても分からないらしい。からしやわさび、砂糖塩といったからい物、甘いもの、しょっぱいもの、苦いもの、すっぱいものをすべて試してみたが全く変化はなかった。
味覚がここまで反応しないということはおそらく嗅覚も同様かもしれない。
七日目
手術してからはや七日がたとうとしている。
彼女は依然として健康そのものだ。
昨日に引き続き嗅覚を調べてみた。
やはり思ったとおり反応しなかった。
不思議である。必要ないものとして処理されてしまったのかもしれない。
八日目
一応確認のために聴覚を検査してみた。
味覚、嗅覚とは違いこちらは正常に作動している。
脳と体の拒否反応というわけではなさそうだ。もし、そうだとしたらこの体自体に何らかの影響が現れるはずである。
九日目
最後に視力を測ってみた。
彼女の視力は3・0であった。
人間よりはるかに優れている。
そして、私の顔も分かっているらしい。
そして新たにわかったことは彼女は絵を描くことが得意らしい。
ためしにと思って私を書いてもらったがとてもよく描けていた。
そのときに『どこかであったことありますか?』ときかれた。
もしかしたら脳の記憶に私のことが完全に思い出されるのも時間の問題かもしれない。
十日目
彼女が誤って腕を怪我をしてしまった。
たいした傷ではなく切り傷程度だったが、ショックだったらしくしばらくは何も話してくれなかった。
十一日目
最近彼女は絵にはまっている。
依然私を描いてくれた様に人物を書いているのかと思ったら手術室を描いていた。
手術台がありそこに横たわる女性の絵だった。
十二日目
昨日に引き続き絵を描き始めた。
今回は…………研究室だった。
それも赤で描かれている。
どうやら思い出し始めたようだ。
明日からは彼女となるべく直接会ったり接しないようにしたいと思う
十三日目
面会室のようなところを彼女の部屋とした。
昨日の事もあり身の危険を感じたからである。
すると彼女はこう聞いてきた。
『私の実験は楽しいですか?』と
私は貴重な実験になっている、ありがとうと礼を言った。
すると彼女は何かをつぶやいた。私はその言葉を聞くことができなかった。
十四日目
彼女が質問をしてきた。
『偽物の私のことをどう思う?』と
私は君は偽物ではないというと
『脳だけ本物でほかは偽物よ』
とケラケラ笑いながら言ってきた。
明日先生のところへ行ってみよう。
※手術から3週間後 菅沼医院にて
という日記がここに残っていたんだがどう思う竜乃
思ったより早かったな。菅沼、近くにはほかに何もなかったのか?
あぁ、ただ荒らされた形跡なども特になかったから二人でどこかに出かけたんじゃないのか?
それはない。断言するさ。なぜなら、岡田にとって山西さんは隠しておきたい存在なんだよ。私もあの事件の共犯みたいなものだ。もし彼女の本来の肉体があればと思ってはいたがやはりなかった。だから岡田が作った肉体に脳を入れたんだ。
もし、仮に彼女の本来の肉体があったら蘇生はできたのかい?
おそらくできない。私は医者と同じで治すことしかできない。もちろん医者とは違うことができるということも自覚はしている。しかし、死んだ人をよみがえらせることはできない。特に心臓マッサージやAEDなどでの蘇生以上のことを私はできない。
では、その山西さんは?
おそらく岡田を殺している。そして残念ながら菅沼、君のことも少なからず恨んでいるよ。
え?
一つ聞きたい。君は岡田の研究所へ一人で行ったのか?
いや、三人ほどで行ったよ
車のトランクは確認したかい?
…………嘘だろ?
本当さ、だってお前の後ろにいるからな
あんたたちのせいで私の体はこんなことになったんだ!!
山西さん待つんだ! 菅沼と私を殺すなら冥土の土産に何をしたか教えてもらえないか?
死ぬ気はあるってこと?
なくても今の君なら誰も逆らえないよ。
彼女の顔は掻き毟った跡がたくさんあり、人間のそれとは別のものだった。
日記には触覚はあると記載されていたがどうやらその表記自体が間違っていたらしい。
君ははじめから視覚と聴覚しか働いていなかったんだね
その通りよ。でも、それだけしかなくてよかったとも思ってるのよ。何をしても手には残らないの。感覚がないからそれに、両手も今ほとんど掻き傷よ
そそそそ、それでどうして私の病院へ……これたんだい!
は? さっきそこの先生が説明してたじゃん。あんたたちの乗ってきた車に乗ってたのよ。岡田ならもういないわよ。先生の家に行くって言うんでその前に私が殴って気絶させて殺したの。でも、犯人が私だなんていわないでね。あいつはがけから勝手に落ちたの。この私のことを出来損ないの人間の偽物って言ってあいつは身を投げたわ。
…………そうか、よく殺さなかった。君はもう人間だよ
ふざけるな! どうして今の私が人間だなんていえるのよ! 脳だけなのよ? 顔もこんなに崩れてるし、女としても生きていけない。私恋はおろか食事もできない体なのよ!!
君は岡田に一度殺されている。これが第二の人生だと思ってやり直せ。なんて私には言えないな。菅沼、近々遺体が送られる予定はないか? できれば二、三十台の
たとえあったとしてもどうしようもないだろう。
何よ、どういうつもり? また私を違う入れ物に入れるつもり?
あぁ、そうだ。次の入れ物は人間だ。そして、その入れ物ではお前のもとの顔に整形してやる。そしてお前はもう一度山西さんとしてやり直すんだ。
いやよ……もう、私なんて生きていても意味ないじゃない。仕事も見つからないし、身分証明すらできないわよ……
そうか、ならうちへ来い。お前のことを雇うことはできないが満足いくまでうちにいるといい。そして体もしっかりと治せるようにしてやる。少なくとも、今の体からはその脳を出してやれるさ
まだ、私に生きろというの?
あぁ、命は粗末にしてはいけない。そして君は人間ならざるものになることでより人間らしさが増している。君は偽物だったかもしれない。でも、偽物は本物よりも本物になろうとすることができる。君はもう本物の人間になれているんだよ。
さて、この話は失敗と書きました。
なぜだったか……簡単に言えば自分でも収拾がつけられなかったというところです。
イメージがあったはずなのに書いているうちに消えてしまった。そんなはなしでした!




