可能性
そこは古びた屋敷であった。
しばらく使われていないというのは誰が見ても分かる。
窓は割れており、蜘蛛の巣など当たり前のようにある。
近所の子供たちからはこの屋敷のことを【お化け屋敷】と呼ばれている。
しかし、【誰も中に入ったことはない】。
不思議なことはもうひとつある。
それはいつからこの屋敷がここにあるのかを誰も知らない。
どの時代にあったものなのか、誰が設計したのか、誰が住んでいたのかなどこの屋敷に関するすべては誰も知らないのである。
たった一人……いや、たった一握りの家主にかかわりのある人間以外は。
第一話 可能性
こんな話を知ってるか。
ひとつ付き合ってもらいたい。
この世には不思議な力を持って人が居るんだってよ。
そこにいるかは誰も知らないんだがな、ん? じゃあなんで俺が知っているかって? そう、そこなんだよ! 実のことを言うと俺もどうしてそのことを知っているのかがまったくわからないんだ。
でも、老いぼれのくだらない話だって思って聞いてくれよ。
俺は今仕事で漫画を描いてるだろ?
そもそもどうして俺が漫画家になったのかって話を聞いてくれよ。
おっ、よく分かったな。
俺もわからないんだよ。
でも、この話はしなくちゃいけない。
たぶん今のお前さんみたいな人にこそ伝えるべき話なんだと思うんだよ。
就職活動大変だろ? 説明会だ第一選考やら役員面接やらでよう。
しかもお前さんらときたら自分の本当にやりたいことをやらずにいけるところを探して自己成長を少しでもしたら転職なんて考えてんだろ?
いやいや、俺はそれが悪いことなんていわねぇよ。それが今現在の仕事選びってんならそれもひとつの選択って奴さ。
もう、何年前だろうな。俺にもお前さんらと同じように就職活動をして他から分かるんだよ。
圧迫面接やら何やらで相当精神に来てたきもするんだがね。
さて、本題よ。
こんな話を信じるかい?
俺はさ
漫画を描く才能をもらったんだよ
おっさんの話は要所要所のところが分かりにくい。
今の話だって肝心なところはまったく分からなかった。その人が何者なのか。いや、人ですらないのかもしれない。
もう四十になるおっさんだからかな。
こう考えると年は食いたくねぇ
でも、俺はどうしても興味を持ってしまったんだ。
就職活動をしている今だからか……いや、酒を飲んでいたからかな?
だけど、何日たってもその才能をくれたって話が頭からはなれないんだ。
そんで、ふと気づいたらとある屋敷に来ていた。
こんな古い屋敷あるんだと思った。
不気味というかなんと言うか人によってはいい味を出しているとかいうんだろうな。
ギィィィィィ
門が開いた?
誰かが居るわけではない。
かといって勝手に開くような門でもない。
鉄格子でいかにも重そうな門だ。
興味があったからさ、入ってみることにしたんだ。
一応回りは確認したよ。でも、おそろしいほど誰も居ないんだよな。
まぁいいやというきもちで入ってみた。
屋敷の扉まで行きインターホンやベルを探したがそんなものはやはりない。
ガシャン
音のしたほうを見ると門が閉まっていた。
俺は走って門のところにいったが俺は出られなかった。
門がビクともしないんだ。
もしかしたら自動で開いて閉じるセンサーのようなものがこの門にはあるのかもしれない。
俺はそれを探しに屋敷に入ることにしたんだ。
インターホンもベルもないので俺はノックをしてみることにした。
一応強めに二回と思ったが一回目空振りだった。
そのわけは扉が勝手に開いたからだ。
中は外と違いとてもきれいだった。
新築同様のきれいさといってもいいかもしれない。
玄関にはスリッパが置いてあった。客人として招かれているのかもしれない。
俺は靴を脱ぎ、そのスリッパをはいた。
その瞬間、
あんたは誰だ? ここには何しにきた?
と質問された。
場所も玄関ではなく、部屋に移動している。
もう一度聞こう、あんたは誰だ? ここには何しにきた?
あっ、え? あの、俺玄関にいたと思うんですけど
あんたは私の言ったことに対して答えりゃいいんだ。
男の声であるのは間違いない。
だが、違和感がある。
目の前に座っているこいつは何かがおかしい。
きれいな白髪だった、しかし髪形がおかしい。右側の前髪だけ下がりほかはすべて後ろに下がっている。それに、白髪というだけで老人ではない。顔も整っており普通にしていればイケメンであると俺は思った。
どうやら、お前さんは私の客ではなさそうだな。
客? どういうことですか?
人の質問には答えないのに一丁前に自分の質問はするのか?
あっ、すみません。俺は偶然この屋敷の前を通って興味本位で見てたら門が開いたんでちょっと中に入ってみたくなったんです。
ほぉ、門が開いたのか?
えぇ、あなたがあけてくれたんでしょ?
あんたは俺の客だったよ。悪かったね。で? 何をしてほしいんだい?
え? あの、何をしてほしいってどういうことですか?
あ? 仕方がない。多少めんどくさいが話すか。私はここで何でも屋をしているんだ。どんな願いであっても私の望むものさえくれればかなえてやるっていう何でも屋をね
そうだったのですか。って、そんなこと信じられないですよ。
だよな、私もそう思ってるよ。では、試しにひとつ聞こう。君は【才能】がほしいか? 自分にあった才能、自分に見合わない才能。どちらであっても私なら与えることができる。
(おっさんが言っていた才能を与えるっていうのはこれなのか?)
へぇ、面白いもんだな。例えばおれにはどんな才能があるんだい?
さぁね、あんたの才能は芽が育ったときに分かるものさ。
くだらない、俺は帰るぞ。詐欺まがいなことやってんじゃねぇよ。
詐欺だと思うならそれは勝手さ。私はこの仕事を大真面目にやっているんだ。あんたに私を否定することなんてできないさ。
じゃあ、仮に俺がその才能を買うといったらいくらなんだ?
1千万だ。才能というのはそれだけ価値があるもんだからな。しかも私の商品である才能というのははじめから咲き誇っているものだからな……苦労がないんだよ。
たかっ! バカじゃねぇの?
それだけ才能というのはすげぇもんなんだよ。医者であろうと弁護士であろうと勉強して試験をするだろ? そういうのをすべて取っ払って知識がそのまま完全な状態であんたに渡されるんだ。むしろ私は安すぎると思うね。
俺にそれだけの才能があるというのか?
それは知らん。いっただろ? あんたの才能は芽が育ったときにはじめて分かるんだ。
だったら売るなんてできないじゃないか。
それができるから何でも屋なんて商売を私はここでやっているんだよ。
お前がおっさんに漫画家の才能を与えたんだな。
漫画家? あぁ、漫画家になれたのか。それはよかった。あの人が漫画家か……ずいぶん時代が流れたな。今から5年ほど前に才能を与えた気がするよ。
だったら俺にもおっさんと同じように才能をくれよ。
だったら私にもおっさんと同じように金をくれよ。
鸚鵡返しかよ
残念ながら完全なコピーではないよ。さて、本当にどうしても才能がほしいというのなら君にも与えることはできる。
本当か?
あぁ、君は運がいいね。君と会えたという今日という日に私は特別に撫子の花を与えよう。
撫子の花言葉は君の求めるとおり、『才能』だよ
撫子の花? そんなのもらったって俺にはどうしようもないだろう
この撫子はもう芽が育ちきってこれ以上育たない状態なんだ。
その花がどうだかは知らないが、それって枯れるってことじゃないのか?
なかなかどうして君は鋭いな。だが、その答えはノーだ。この花は撫子の花でこそあるが才能の花なんだぜ? 才能が枯れるということはない。才能とは育つところまで育ったら成長を止めてそのままになる。ただし、君がいうように枯れはしないがつぼみに戻ろうとするんだ。
つぼみに戻る?
あぁ、よく聞かないか? ピアニストは練習をサボると一日目で自分が下手になったと気づく、二日目で先生が、三日目には誰でも分かるほどに下手になると。
それは花がつぼみに戻ろうという力が働くからだ。さて、これを聞いたあんたはこの花をどうする?
しっかり説明してもらおうか
めんどくさいが仕方ないか。私の使う『能力』とは全て花で行うものだ。その能力に応じた花は『花言葉』が由来している。つまり撫子の花言葉はさっきも言ったように『才能』だ。私はこの撫子の花に花言葉……文字通り才能を埋め込んだ。
そんなことができるのか?
できるから何でもやなんてやっているんだよ
それで、その中には何が入っているんだ?
さっきまでの疑いはどこへやら
疑ってはいるさ、だけど気にはなるって奴だ。
まぁいいか、撫子の中には【推理の才能】が入っている。難事件も解決できるほどの才能の花だ。どうする?
金は?
いらない。ただし、この屋敷やこの才能を与えるという私の存在といった【あんたの記憶】をいただく。それでどうだい?
(おっさんはだから漫画家になった理由とかが分からなかったのか)
いいだろう、それと引き換えにその花いただくよ。
よし、売った。さて、ではこのアスターの花の匂いを嗅いでくれ。安心しな。アスターの花言葉は追想。これで君の私に関しての記憶は全て失う。
こうして彼は【推理の才能】を手に入れたのだった。
彼の名探偵としての活躍が楽しみである。
数日後の新聞
ん? あぁ、やはりこうなったか。
その新聞には書かれていた
【凶悪犯完全犯罪失敗?】
言わなかったがね、探偵の才能というのは才能だけでは駄目なんだよ。
経験がなくちゃね。
悪いね、名も知らない少年よ
就活生は確かに推理の花を手に入れた。
だが、推理の花というのは裏を返せば犯罪を推理できる花、つまり【犯罪の才能】であると言える。
この話を考えたのが今年の三月に入ってからです。
ぶわぁっと頭の中に話が浮かんできて、何か形にしたいなぁと思ったのがきっかけですね。
下手なところとか理解できない箇所も多々あると思います。
私の友人にも何度か見せて直したりはしているんですけどね。
さて、今回の可能性という話ですが、自分の才能について考えたとき人からもらえたらと思ったのがきっかけでできた話です。
話そのまんまかよ! と思う人もいると思いますが、私の話なんてその程度のものです。ただ、自分の頭にでてきた話を少しでも面白くできたらいいなとは常に思って書いています。
皆さんが面白いと思っていただける作品にできたら幸いです。
さて、先ほど述べたようにぶわぁっと頭の中に話が浮かんできました。
一つだけではありません。
そちらの方も乗せていきますのでよろしくお願いします。




