君に近づくおまじない
出会ったときから君が好き。君はとっても大切なおともだち。君みたいになりたい、君に近づきたい。私はこんなにも君に憧れているのに、君は他のともだちばっかり。
「私、君みたいな人になりたいなぁ……」
君はいつも笑顔でかわいいから。君みたいにかわいくなれるかな。なりたいな。
ひとり、お庭のブランコに座って地面をける。お空はきれいな夕焼け、明日も晴れるかな。明日も、寒いのかな。
伸びた髪をかきあげて、そういえば君とおそろいのリボンはどこにやったっけ。君は赤いリボンをつけてたね、あれがかわいくて。私も同じリボンを探したの。これで、おそろい。すごいでしょ? 実はおそろいのもの、いっぱいあるんだよ。たとえば、この髪の色は柚乃ちゃんとおそろい。この長さは私たちのお母さんとおそろい。この髪型は、勇紀ちゃんとおそろい。
「柚乃ちゃん。会いたいなぁ。いつもどこに行ってるんだろー」
君はいつも、ご飯のとき以外はどこかに出掛けてる。ううん、本当は知ってるの。病院のおともだちのところにいってるんだよね。きっと、大切な人なんだろうなぁ。きっと柚乃ちゃんみたいに明るくて、柚乃ちゃんみたいに優しくて。そんな存在だ。会いたいなあ、柚乃ちゃんにも、そのおともだちにも。なんてね、いい人に決まってる。だけどちょっとした好奇心で、柚乃ちゃんが毎日でも会いに行くほどの人がどんななのか、知りたくなった。それだけなんだ。
……やだな、私ったら。恋してるわけでもないんだから、そんなに浮かれないで。おちつきがないなぁ。そういえば、柚乃ちゃんも同い年なのに、同い年のはずなのにおちついてる。お兄さんもおちついた人で、不思議な感じ。いつも音楽を聴いてる……。あれは音楽じゃないって、誰かが言ってたっけ。私のお兄ちゃんはどんな感じだったっけ。覚えてないや、元気かなぁ。どうでもいいや!
そうだ私、柚乃ちゃんみたいになりたいから、暖かそうなあのマフラーをおそろいにしよう。あれって、手編みかな……? 作った人は不器用だなぁ。編み目がぼこぼこ、私だってあれより上手に作れるもん。でもそれじゃあお揃いにならないから、同じように編もう。明日、毛糸を買いに行こう。ついでに、最近勇紀ちゃんがつけてるペンダントもさがしに行こう。これは君に近づくおまじない。君みたいになるための素敵な魔法。私、君にどれくらい近づいた? やっぱりふたりになりたい中途半端な気持ちじゃだめかなぁ。ううん、きっとそんなことない! そうだ、柚乃ちゃんならそう言うよ。なんだか心が踊るなぁ。
あー、はやく明日にならないかなぁ。ああ、また浮かれてる。もう、だめだなぁ。でも楽しみなんだから、しょうがないよね。これで、君に一歩近づけるかな。近づけてたらいいな。
2015年1月1日 誤字修正・内容修正