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アチーブもワンダーランドもここには存在しないんだ。

作者: 綿名 光

目が覚めて、起きてみたら、9時半だった。

普段の日曜にしては早いな、と小さく呟いてから階段を降りる。お父さんは仕事から帰ってきてなくて、お母さんは寝転んでテレビを眺めていた。

日曜に限らず、朝ごはんなんて用意されてないのが当たり前で、普通で、いつからお母さんは朝ごはんを用意してくれなくなったのかなあなんて思ったりして、一人ごそごそ冷蔵庫を漁る。


ああ、勉強しなくちゃな。ていうかテストっていつだっけ、あと何日?テスト日程と試験範囲早く出さないかな学校。試験範囲ないとやる気出ないじゃん。ああだるい。


テレビを見ながら午前中は無駄な時間を過ごした。何もないはずなのに気まぐれで、スカートにタイツなんか穿いちゃったりして、まあちょっとやる気が出た。

今日のお昼ご飯は11時。セブンに行くつもりだったけど、やっぱめんどくさくなって、春雨スープ(ワンタン入り)とランチパック(ピーナッツ味)とカフェオレ(カロリー2分の1)という何のまとまりもないお昼ご飯となった。

お母さんはようやく起動して、洗濯物をぱたぱたしていた。


イラつきが募るばかりだ。

せっかくやる気出して勉強しようと二階にあがって、ノートを広げたら、妹がついてきた。

「集中できないから下に降りて」「お前がいるとイラつくんだよ」「お母さーん、こいつ下に降ろさせてよ」「うざい」「なんで上に来るの?」「なに?好きなの?うちのこと好きなの?」「突き落とすよ」とか罵倒して、ついには「居るなら寝てろ!!」と言ったら、ベッドに突っ伏して、5分でイビキをかいていた。


宿題がなかった。

いや、ないっていうか家になくて、宿題がゼロってわけじゃない。

現代文アチーブも英語のワンダーランドも学校のロッカーに置いてきてしまったらしい。全然そんな記憶ないけど。学校にもなかったら面倒だなあ、国語の先生はいいけど英語の先生怖いしめんどくさいからなあ。仕方ない数学しよ。

その数学をやったら、やけに難しくて、すぐに妥協した。

ヘッドホンをつけて、音楽をかけながら、漫画を見つつ絵を描き始めたのが1時半。


気がついたら3時だった。

落書き用のノートを見返したら、2ページくらいしか描いてなくて、それもほとんど鳥と手の絵だったけどなぜか満足感があった。楽しかった。

それから、落書きはやめて、ヘッドホンをそのままつけてベッドに寝転んだ、3時半。


起きたら4時半。

下に降りたら、お母さんが晩ごはんを作っていて、嫌味たらしく「おはようございます」と言ってきた。気にしない。

「お腹空いた」ので、柿の種をつまむ。

「いつ晩ごはん出来る?」

「5時半くらいかなあ」

よし、それまで部屋に引きこもろう。

ふとリビングを覗いたら、お父さんが今朝のお母さんのように寝転んでテレビを見ていた。妹も降りてきた。


それからはちゃんと勉強した。数学をやっていたけどやっぱり難しくて、萎える。

「アチーブもワンダーランドもここには存在しない。」ふと思い付いたフレーズ。自作ながら気にいった。「風が吹けば桶屋が儲かる」「ノックスの十戒」「シュレーディンガーの猫」「バタフライエフェクト理論」または「バタフライ効果」「僅かな蝶の羽ばたきが明日の空を左右する」……。

そういう言葉は好きだ。


青椒肉絲(チンジャオロースー)

何年か前に中華好きな私が食べたいと言ってお母さんが作ったのが始まりで、それから定番メニューとなった。

おとといあった金曜ロードショーの録画を妹が「見てないから」見る。

今日は私に珍しく晩ごはんに白米を食べた。

相変わらず青椒肉絲は美味しい。


二階にあがる。

ヘッドホンをつける。今日は何回目になるだろうこのCDを聴くのは。好きだから別にいいけど。

7時半になったら大学生の家庭教師が来る。

それまでは音楽を聴いて、絵を描いて、部屋を片付けて、自由なことをするんだ。




休日はすぐ終わる。

明日は学校だ。

出掛けるお金も気分もなくて、時間もなくなる。

家は好きだ。

お母さんや妹は嫌いだけど、素の自分でいれて、自分が何かしなきゃいけないとかそういうのがなくて楽だから。

でも、それって駄目なんだろうな。

わかってるよ、わかってる。好きなことばっかりはしてられないよね、楽なことばっかじゃないよね。知ってるよ、知ってる。

だから私は頑張るよ。

頑張るだけ頑張ってみるんだ。










アチーブもワンダーランドもここには存在しないんだ。



アチーブはアチーブメントの略でテストという意味で、ワンダーランドはそのまま。楽園?不思議の国?ていうのかな(笑)

どこかにこんな子きっといるはずだ、と思いながら勢いだけで書きました(笑)


頑張ってるけど頑張ってない、なんて言われて、確かにそうだな、なんて思いながらも合理性にまかせて、何で?って言われたらだって本気出したら限界見えそうじゃん、なんて思ってて、でも自分本気出せないんだろうな、なんて思って、出来ない自分の不甲斐なさに、馬鹿さに、不器用さに泣いちゃう子、きっといると思うんです。


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