診断
「はぁー」
クリニックから出た佐藤は大きなため息をついた。春の日差しがあたりを温めていたが、佐藤の心はどこまでも冴え切っていた。4月、佐藤は担当医から病名を告げられた。佐藤は、自分のストレスの対処法を知らないまま日常生活を送っていた。そのせいか、今こうして病名がついた。
「診断書なんでこんなに高いの?」
佐藤が薬局までの道のりを早足で歩いた。あたりに人影はなかったが、頭の中では「そう、なんで高いの」と繰り返していた。
処方された薬は七種類。それぞれ三十日分出されていた。佐藤はカバンからエコバッグを取り出し、薬剤師が丁寧に包んだ処方薬を乱雑に袋へ入れた。薬剤師からの説明を受けたものの、隣で大声で話をしている患者が気になり、内容はほとんど頭に入ってこなかった。家に帰ると、大きなソファベッドに身を沈めた。
「はぁー」
閑静なアパートの一室で、佐藤はまた大きなため息をついた。窓を開けると、うららかな春の空気とともに、電車の音が佐藤の耳に届いた。大きく息を吸うと、春の匂いと花粉が佐藤の鼻腔をくすぐった。
「やばっ、花粉じゃん」
急いで窓を閉めて、空気清浄機のモードを花粉に設定した。再び、大きなソファベッドに横になり、スマートフォンを手に取った。今日訪れたクリニックのレビューを確認すると、あまり評価が良くなかった。以前から検討していたもう一つのクリニックの方が、良く見えてくる。佐藤は、スマートフォンを床に置き、天井を見つめた。
「薬を飲めば、元に戻れるのかな……」
そのとき、天井の向こうから物が落ちる音がした。上の階の住人が何かを落としたのだろう。
「こんなんじゃ、眠れるわけないでしょ」
そうして、佐藤の生活はまた続いていく――。




