第四十九話― 青炎の|理《ことわり》 ―
空気が、変わった。
圧ではない。
殺気でもない。
“位相”が、ずれた。
世界の方が、桃太郎に合わせて軋む。
青い炎が、静かに揺れている。
熱はない。
だが――触れれば“終わる”。
本能が理解する。
巨神鬼が、止まった。
否。
“止まらされた”。
これまであらゆる干渉を拒絶していた存在が、
初めて、“外側”を認識する。
黒球が脈打つ。
“ゴン”
だが――
その波動は、桃太郎に届かない。
神庭。
「……効いてねぇのかよ……」
声が、掠れる。
矢掛が、静かに首を振る。
「……違う」
その瞳は冷静なまま、だが確信を帯びる。
「届いている」
「だが――」
一拍。
「“存在する層が違う”」
哲西が、一歩踏み出す。
震えている。
だが、目は離せない。
哲西。
「……桃太郎……」
ゆっくりと。
確かめるように。
「……生きてる……」
次の瞬間。
駆け出した。
地面を蹴る音すら荒い。
「生きてる……!!」
涙が溢れる。
「ほんとに……!!」
だが、途中で止まる。
理解したからだ。
――“近づけない”。
今の桃太郎は、もう別の領域にいる。
美咲が、その場で泣き崩れる。
「……よかった……」
笑っているのに、涙が止まらない。
「未来……変わった……!!」
拳で地面を叩く。
「変えたんだよ……!!あたしたち……!!」
日生は、その場にへたり込む。
「……はぁ……っ……」
紙を握ったまま。
手が震えている。
「本当に……戻った……」
乾いた笑いが漏れる。
「あぶな……本当一発勝負すぎだろ……」
顔を上げる。
「でも――」
口元が、少しだけ緩む。
「うちら、やったじゃん」
奈義が、銅鐸を強く鳴らす。
カン――ッ!!
奈義
「……当然じゃ」
だが声は震えている。
「わらわの声が届かぬはずがなかろう……!」
ぐっと唇を噛む。
「……よかった……本当に……」
小さく、誰にも聞こえない声。
真備は、静かに桃太郎を見ていた。
真備
「……うん」
ただ、それだけ。
だが、その瞳には確信がある。
「戻ってきた」
そして、ぽつりと。
「……でも、違う」
誰にも聞かせるわけでもなく。
「もっと、深いところにいる」
神庭が、笑う。
神庭
「……ははっ」
震えながら。
拳を握る。
「最高じゃねぇか……!!」
雷が、弾ける。
「死んで強くなるとかよ!!」
ニヤリと笑う。
「主人公かよ、テメェは!!」
矢掛だけが、静かに観測している。
矢掛
「……なるほど」
羽根が、わずかに揺れる。
「“干渉拒絶”ではない」
「“干渉対象の消失”」
ゆっくりと、息を吐く。
「理が変わったか」
その口元に、わずかな笑み。
「……面白い」
巨神鬼が、腕を振り上げる。
同じ動き。
同じ速度。
同じ、必殺。
だが――
桃太郎。
「遅ぇ」
消える。
次の瞬間。
巨神鬼の腕が、宙を舞った。
音は、ない。
“斬られた結果”だけが存在する。
再生しない。
黒球が、狂ったように脈打つ。
空間が歪む。
時間が巻き戻る――
戻らない。
哲西。
「……え……?」
矢掛。
「……干渉できていない……」
首を振る。
「いや……違う……」
目を見開く。
「“干渉する対象が存在していない”……!」
桃太郎は、すでに懐にいた。
黒球の目前。
核の直前。
巨神鬼が――
後退する。
神庭。
「……おい……」
笑いが漏れる。
「今、逃げたぞ……?」
震えながら。
「ビビってんのかよ……!!」
青い炎が、収束する。
桃太郎が、静かに呟く。
「なるほどな」
刀を、わずかに引く。
「お前、“強い”んじゃねぇ」
一歩、踏み込む。
「ただ、“触れさせなかった”だけだ」
青炎が、空間を裂く。
「――もう、意味ねぇよ」
その瞬間。
巨神鬼が、咆哮した。
初めての感情。
怒りではない。
威圧でもない。
“恐怖”。
――格上への本能。
桃太郎が、笑う。
静かに。
だが、絶対的に。
「来いよ」
青い炎が揺れる。
「次は――ちゃんと斬ってやる」
世界が、理解する。
この瞬間。
“狩る側”が、入れ替わった。
青炎が、静かに燃える。
巨神鬼が、後退する。
誰もが理解する。
この戦いは――
もう。
“負けない”。
― 青炎の理 ―
空気が、変わった。
圧ではない。
殺気でもない。
“位相”が、ずれた。
世界の方が、桃太郎に合わせて軋む。
青い炎が、静かに揺れている。
熱はない。
だが――触れれば“終わる”。
本能が理解する。
巨神鬼が、止まった。
否。
“止まらされた”。
これまであらゆる干渉を拒絶していた存在が、
初めて、“外側”を認識する。
黒球が脈打つ。
“ゴン”
だが――
その波動は、桃太郎に届かない。
神庭。
「……効いてねぇのかよ……」
声が、掠れる。
矢掛が、静かに首を振る。
「……違う」
その瞳は冷静なまま、だが確信を帯びる。
「届いている」
「だが――」
一拍。
「“存在する層が違う”」
哲西が、一歩踏み出す。
震えている。
だが、目は離せない。
哲西。
「……桃太郎……」
ゆっくりと。
確かめるように。
「……生きてる……」
次の瞬間。
駆け出した。
地面を蹴る音すら荒い。
「生きてる……!!」
涙が溢れる。
「ほんとに……!!」
だが、途中で止まる。
理解したからだ。
――“近づけない”。
今の桃太郎は、もう別の領域にいる。
美咲が、その場で泣き崩れる。
「……よかった……」
笑っているのに、涙が止まらない。
「未来……変わった……!!」
拳で地面を叩く。
「変えたんだよ……!!あたしたち……!!」
日生は、その場にへたり込む。
「……はぁ……っ……」
紙を握ったまま。
手が震えている。
「本当に……戻った……」
乾いた笑いが漏れる。
「あぶな……本当一発勝負すぎだろ……」
顔を上げる。
「でも――」
口元が、少しだけ緩む。
「うちら、やったじゃん」
奈義が、銅鐸を強く鳴らす。
カン――ッ!!
奈義
「……当然じゃ」
だが声は震えている。
「わらわの声が届かぬはずがなかろう……!」
ぐっと唇を噛む。
「……よかった……本当に……」
小さく、誰にも聞こえない声。
真備は、静かに桃太郎を見ていた。
真備
「……うん」
ただ、それだけ。
だが、その瞳には確信がある。
「戻ってきた」
そして、ぽつりと。
「……でも、違う」
誰にも聞かせるわけでもなく。
「もっと、深いところにいる」
神庭が、笑う。
神庭
「……ははっ」
震えながら。
拳を握る。
「最高じゃねぇか……!!」
雷が、弾ける。
「死んで強くなるとかよ!!」
ニヤリと笑う。
「主人公かよ、テメェは!!」
矢掛だけが、静かに観測している。
矢掛
「……なるほど」
羽根が、わずかに揺れる。
「“干渉拒絶”ではない」
「“干渉対象の消失”」
ゆっくりと、息を吐く。
「理が変わったか」
その口元に、わずかな笑み。
「……面白い」
巨神鬼が、腕を振り上げる。
同じ動き。
同じ速度。
同じ、必殺。
だが――
桃太郎。
「遅ぇ」
消える。
次の瞬間。
巨神鬼の腕が、宙を舞った。
音は、ない。
“斬られた結果”だけが存在する。
再生しない。
黒球が、狂ったように脈打つ。
空間が歪む。
時間が巻き戻る――
戻らない。
哲西。
「……え……?」
矢掛。
「……干渉できていない……」
首を振る。
「いや……違う……」
目を見開く。
「“干渉する対象が存在していない”……!」
桃太郎は、すでに懐にいた。
黒球の目前。
核の直前。
巨神鬼が――
後退する。
神庭。
「……おい……」
笑いが漏れる。
「今、逃げたぞ……?」
震えながら。
「ビビってんのかよ……!!」
青い炎が、収束する。
桃太郎が、静かに呟く。
「なるほどな」
刀を、わずかに引く。
「お前、“強い”んじゃねぇ」
一歩、踏み込む。
「ただ、“触れさせなかった”だけだ」
青炎が、空間を裂く。
「――もう、意味ねぇよ」
その瞬間。
巨神鬼が、咆哮した。
初めての感情。
怒りではない。
威圧でもない。
“恐怖”。
――格上への本能。
桃太郎が、笑う。
静かに。
だが、絶対的に。
「来いよ」
青い炎が揺れる。
「次は――ちゃんと斬ってやる」
世界が、理解する。
この瞬間。
“狩る側”が、入れ替わった。
青炎が、静かに燃える。
巨神鬼が、後退する。
誰もが理解する。
この戦いは――
もう。
“負けない”。




