第十七話坤魔羅vs桃太郎― 地獄界・地脈掌界 ―
地面が――動いた。
否。
“動かされている”のではない。
最初から。
“そういう世界”になっている。
桃太郎は、わずかに目を細めた。
(擬態……違うな)
(これは――)
一拍。
(空間ごと、地面に書き換えている)
「気付いたか」
低く、重い声が響く。
「ワシは地神鬼・坤魔羅」
一拍。
「――地獄界・地脈掌界」
その瞬間。
足元の感覚が、消えた。
地面に立っているはずなのに――
踏んでいる実感がない。
代わりに。
“流れ”がある。
下へ。
奥へ。
すべてが、沈もうとしている。
「大地そのものがお前の相手だ」
四方から圧が滲み出す。
逃げ場はない。
空も。
足場も。
全部が、敵。
「……なるほど」
桃太郎が小さく笑う。
「この一帯、全部か」
次の瞬間。
轟ッ!!
岩塊が射出される。
空気を裂く速度。
「速いな」
だが桃太郎は踏み込む。
回避ではない。
迎撃。
頭上。
さらに巨大な岩。
押し潰す一撃。
だが。
「――遅い」
片手で受け止めた。
衝撃で地面が砕ける。
だが桃太郎は動かない。
「ただの岩で、オレは死なない」
投げ返す。
岩が空を裂く。
さらに飛来する岩。
今度は抱える。
小山。
「……でかいな」
口元が歪む。
「これが仙術だ」
放り投げる。
同時に抜刀。
「――仙術・極爆波」
爆発。
空間ごと粉砕。
だが。
「甘い」
岩が――戻る。
再構成。
「ほう……」
桃太郎の目が鋭くなる。
「壊しても、“地に戻る”か」
その瞬間。
地面が隆起する。
巨人。
四百メートル。
白い岩の外殻。
内部に脈打つ光。
「この硬度……金剛石以上だな」
斬る。
弾かれる。
振動。
「……なら」
炎が刀に宿る。
だが思考は止まらない。
(違う)
(硬いんじゃない)
(“逃がしている”)
衝撃が――
地面へ流れている。
「面白いな」
笑う。
脚を斬る。
崩れる。
腕を断つ。
噴き出すマグマ。
だが止まらない。
(再生……)
(いや)
(“戻っている”)
首を落とす。
同時に再生。
違和感。
「……そこか」
肩口へ斬撃。
内部爆ぜる。
崩壊。
「核、か」
「見抜いたか」
坤魔羅が嗤う。
「だが――甘い」
巨体が分裂。
二体。
三体。
四体。
「増えるか……」
踏み込む。
地が割れる。
空間が沈む。
左右から挟撃。
その瞬間。
桃太郎は――消えた。
「上だ!」
空中。
だが。
「読んでおる!」
岩槍。
空を覆う。
完全包囲。
逃げ場なし。
だが。
「……いい判断だ」
桃太郎は笑う。
刀を構える。
「まとめて斬る」
刀が染まる。
赤黒く。
「――火焔術・極」
一閃。
空間ごと断つ。
すべて消し飛ぶ。
だが。
「浅い」
再生。
しかも速い。
「核を動かしたか」
「その通りだ」
坤魔羅の声。
「ワシは“地”。核など固定ではない」
隆起。
増殖。
包囲。
「……いや」
桃太郎が首を振る。
「完全じゃない」
一歩。
踏み込む。
「動かした瞬間、“流れ”が乱れる」
消える。
懐。
「そこだ」
突き。
内部爆砕。
崩壊。
だが。
背後。
拳。
直撃。
轟音。
土煙。
「終わりだ」
静寂。
――だが。
「……いや」
立っている。
血を流しながら。
それでも。
笑っている。
「やっと分かった」
一歩。
「お前の地獄界」
一拍。
「“全部を地に戻す”術だな」
沈黙。
「なら」
刀を突き刺す。
「戻らなければいい」
「――何?」
「逃がすな」
低く。
「全部、ここに閉じ込める」
空間が歪む。
圧が収束する。
地面へ流れていた衝撃が――
逃げ場を失う。
「……貴様」
坤魔羅の声が揺れる。
「――穿て」
炎が、“下”へ流れる。
一拍。
爆発。
地が裂ける。
本体、露出。
それは青年の姿だった。
冷たい瞳。
「楽しませてもらおう」
重力が歪む。
地圧。
拘束。
逃げ場なし。
「ここはワシの体内だ」
だが。
「関係ない」
桃太郎は笑う。
「支配の範囲が広いだけだ」
反転。
浮く。
自由。
だが地脈が絡む。
灼熱。
拘束。
(逃げ場がない)
桃太郎は、息を吐く。
「いいな」
一歩。
「なら全部――使う」
刀が解放される。
「仙術・炎龍環」
龍の刃。
暴れる。
だが決定打にならない。
(逃がしている)
(全部、地に)
「……なら」
踏み込む。
あえて受ける。
血が噴く。
それでも止まらない。
「逃がさない」
空間が歪む。
圧が一点に収束する。
地も。
炎も。
重力も。
すべて。
「――仙術・極爆波」
内部爆発。
逃げ場なし。
鎧が内側から砕ける。
絶叫。
核、露出。
「斬れる」
一閃。
貫通。
崩壊。
坤魔羅が砕ける。
奈落へ沈む。
世界が崩れる。
地獄界が、消える。
桃太郎は――落ちる。
刀を握ったまま。
意識が遠のく。
「……ギリギリ、だな」
その瞬間。
止まる。
「仙術・飛遊舞」
ふらつきながら浮上。
「……まだ慣れないな」
血に濡れながら。
それでも。
生きている。
坤魔羅
短髪蒼い髪。紅い瞳。端正な顔立ち美形。岩の鎧の割れ目から見える美しい顔。画像生成
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