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このセカイで笑っているのです。  作者: コモンピープル


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想いと魔法の

 勇者様が食事を終えた。

 先程からガンマルクさんはそわそわとしているし、私も落ち着かない。

 そんな私達をどこか面白そうに見つめる勇者様。

 ガンマルクさんを茶化すように口を開く。


「なにそわそわしてるんだ。ガンマルク」

「だ、だってカリム。お前の言うことが本当で、魔法が使えるようになったんならなら魔王討伐に大きく前進するだろうが」


 そんなガンマルクさんを茶化すようにケタケタと笑う勇者様。

 ガンマルクさんという気軽に話すことの出来る同性が居るからだろうか、このところは以前に比べて明るくなった気がする。

 だからといって不都合はもちろんなく、笑った顔が可愛いから私としては嬉しい限りだが。


「まあ、そうだな。魔法は使えるようになった」


 そう言いながら片手に水球を生み出す。

 勇者様が篭っていた理由はこれなのだろうか。

 破邪の短剣については関係の無いような気がするのだが。


「あっ!ということは勇者様は前に話されていた『事象を書き換える魔法』を使えるようになったのですね!」


 ふと思い出したのはフリーレスでのこと。

 勇者様を医院に運んだ時に聞いた話だった。

 

 彼の言う力の内容が抽象的で、詳しくどんなことが出来るのかは分からないが、話を聞く限りでは強力そうだったのを覚えている。


「んや、あれはまだ使えないんだ。あっちは体内魔力しか受け付けてなくてな」

「……体内魔力?」


 勇者様の言葉に湧いてくる疑問。

 体内魔力と言ったが、逆に体外の魔力を使えるというのだろうか。

 もちろん魔力は人間の体内以外にも、空気の中やものに宿っているとされている。

 だが、それらは干渉できないためその魔力を活用することは出来ないはずなのだ。


「ああ、魔力ってのは色みたいなのがあってな。とある世界の学者は波長とか呼んでたんだが……。まあ、それが世界ごとに違っているんだ。そんで、篭ってる間に解析してそれに干渉できるようになったわけさ」


 勇者様の言葉に空いた口が塞がらない。

 この世界の学者が何年も研究してたどり着けなかった話だ。

 だから、魔力が切れたら供給する術もなかったというのに。

 この話が本当なら世界が変わる。


 もっとも、その前に終わりそうな世界だったりはするのだが。


「おお!なんか知らねぇがそのために籠ったんだな!」

「んー。いや、目的は違う」


 ガンマルクさんの言葉に勇者様は首を振った。

 この話だけでも随分凄いことなのに、更に他のことをしてきたようだ。


「んじゃ、なんだ?」

「これだよ」


 勇者様から一瞬、強い魔力を感じた。


 すると身につけた防具、剣が少しの間輝く。


 その光景には見覚えがあった。


「もしかしてこれって……」

「ああ、これは破邪の短剣と同じ効果を持った防具にした」

「なっ!?作り方が分かったんですか!?」


 彼は教会が秘匿にした内容を自力でたどり着いたのだ。

 感嘆するしかない。これが、勇者様の力ということだろうか。


「何か知らんが、すっげぇなぁ!」


 魔法についての知識が乏しいガンマルクさんが褒めているが、その様子は阿呆にしかみえ……。

 

 思考は逸れたが、これなら魔族に気が付かれずに魔王の懐まで忍び込めるかもしれない。

 希望が見えてきたのだ。


「勇者様。それで効果はどれほど持つのでしょうか?」

「そこだ。そもそもこの破邪の効果はどうやって付けるか知っているか?」

「教会は神に祈りを捧げると言っていましたが……」


 だが、どう考えてもそれは嘘だと思っている。

 神に祈るだけでそんな効果がつくのなら神職者はみんな透明人間だ。

 だが、勇者様の言葉は私の予想を裏切った。


「あれは嘘じゃなかったんだよ」

「おいおい、祈ったら神様が助けてくれるってのか?」


 横から口を出すガンマルクさん。

 勇者様はその言葉にも首を振る。


「魔法は想いで強くなる」

「それは!?」

 

 思い出したのは病室でのこと。

 あの時は私を元気づけるために言っていたと思っていた。


「王女。ガンマルク。この魔法は想いの魔法だ」

「……」

「せ、精神論か?」

 

「いや、魔力ってのはもともと人の想いを実現する力を持ってるんだ。ほかの世界では信仰魔法なんて呼ばれてる」


 突拍子もない話だがなぜだか信じられる。

 魔法なんていうのは決まった形は無い。

 勇者様をこちらの世界に呼んだ魔法だって、初代国王が考え出したものだと言う。

 魔法を使う時だって、使い慣れた魔法だと願えば魔力を消費して発動する。

 

 「だから、この魔法は付与するのにすごく時間がかかる。人の願いを、魔力と共に一心に込めないといけないから。そして、一度使うと込めた魔力を消費するから、ためるのに時間がかかるんだ」

「なるほどな」


 多分わかってはいないだろうが、分かったように頷くガンマルクさん。

 勇者様も「本当にわかってんのかよ」と、笑いながら言っている。


「そんな訳だから、明日からは食料を調達した後に少しずつ魔王の元へと向かうつもりだ」


 そう言って私たちに渡してくるのは短剣。

 勇者様がバーゼリアの塔から持ってきたのだろう。

 支給武器のようでその短剣自体は高いものでは無さそうだった。


 「これは、一回分の破邪の魔法を付与している。発動すれば一晩ほどは持つが回復には放置で一週間ほどかかる。魔法の使えないガンマルクは特にだが、使い切りと思って非常時にのみ使ってくれ」


 短剣を受け取ると嫌でも緊張した。

 まるでこの短剣が魔王への挑戦権のように思えてしまうのだ。

 恐怖で手が震えてしまうのが、なんだか情けなく思えてくる。

 

「大丈夫だ。人類の明日はきっと続く。この先何十年も、何百年も」


 勇者様の言葉に拳をにぎりしめる。


 隣を見るとガンマルクさんもいつになく真剣な表情だった。

 

 

 

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