みじかい小説 / 025 / クリスマス
職場で三つ年下の柿崎君といけない仲になったのは、去年のクリスマスのことだった。
仕事帰りの飲み会で隣同士になり、話が盛り上がって二人して抜け出してそのままベッドイン。
よくある話に聞こえるかもしれないが、問題があった。
それは柿崎君も私も結婚している、ということだった。
私たちはその後何度も人目を忍んで逢瀬を重ねた。
ときに二人して残業のあとで、ときに片方をホテルの一室で待ちながら、という具合に。
私の夫は仕事で忙しく、とても私の変化には気がついていないようだった。
柿崎君のところも共働きだが、奥さんは気がついていないということだった。
「俺たち、どうなっちゃうんでしょうね」
と、ある時、柿崎君が言った。
「なんで他人事みたいに言うのよ」
と私はつっかかった。
「お互いに家庭のある身ですし、この辺にしておきませんか」
と、柿崎君は言った。
「え、私は嫌」
と私は応えた。
私たちが関係を持ってから、十カ月が経とうとしていた。
「離婚、してくれないか」
と夫から切り出されたのが、十一月に入ったころのことだった。
「なんで」とは聞けなかった。
私はひとこと「分かった」と言い、夫が差し出してきた離婚届にサインした。
夫と離婚したことを柿崎君に告げると、「俺は離婚とか出来ないですからね」と念を押された。
私、何やってるんだろう、と自分で馬鹿馬鹿しくなった。
今年のクリスマスはひとりで過ごそう。
秋も深まってきた街並みを眺めながら、私はひとりそう決意するのだった。
※この小説は、youtubeショート動画でもお楽しみいただけます。
以下のurlをご利用ください。
https://youtube.com/shorts/R2G8AAO_9gQ