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絶望の咆哮

読んでいただきありがとうございます

 ──これはいよいよマズイかもしれない。


 霞む視界は瞼の裂傷により赤く染まり、アドレナリンが掻き消していた激しい鈍痛が戻り全身を蝕む。


 左腕は折れ、駆け転がり逃げてきた足は皮が剥け、靴の中は血で濡れていた。まさに満身創痍。それでも、未だに辛うじて持っている生への渇望が、微かな戦意を維持させていた。


 ──だが、戦意だけではどうにもならない現実が眼前には広がっている。


 新品同様の防具は大破し、新調した両刃の長剣は刃こぼれし。だが、目の前の強大で巨大な魔獣に傷をつける対価すら得られる事はなかった。無駄を削ぎ落とした屈強な肉体は生半可な刃や魔法すら通さない。


 依然、無傷で立つ魔獣。羊と牛の鳴き声を合わせたような不気味な声で鳴き、鋭く赤い双眸は邪悪そのもの。下顎から伸びた鋭利な牙は、目にした者に恐怖を与える。


 二本の角が歪に生え、恐ろしい形相をした化け物。本来、この階層に姿を現す事自体がありえない、下層の怪物──


「……翁鬼(オウキ)が居るなんざ、聞いてねぇ……つうの……」


 絶対的な強者を前に、背を見せ逃げないのには理由があった。それは、大切な御客──つまり冒険者を救う為。


 体現した絶望を前に、今際、数歩手前で踏み止まる男はけっして諦めてはいなかった。


 ──絶対に彼女の事は救ってみせる。


 力を強く欲した刹那、その声は男の鼓膜に届いた。


『お前様の願い、聞き届けたゾ』


 この日、冒険者の適正がない為に冒険者を諦め、ギルドの受付を生業にしていた三十五歳・オッサン、アルトリウス=ゼノの無意味だと思っていたユニークスキルは【進化】する。

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