最終話):記録を継ぐ者たちへ
(最終話):記録を継ぐ者たちへ
静寂に包まれた記録の書庫。
淡く輝く光の中、来夢は自分の名前が刻まれた記録ファイルを見つめていた。
《須藤 来夢――記録者候補生No.013》
「……わたしは、本当に記録者だったんだ」
彼女の呟きに、少年――“もう一人のライダー”が静かに頷く。
「君は“選定型”。他の記録者たちの選択を受け止め、未来へ残すべきものを選ぶ者だった」
ユウも、自分の記録ファイルを手にしていた。
「でも、俺たちは記憶を捨てて……なぜそこまでして、この世界を守ろうとしたんだろうな」
「それでも、思い出したいんだ」
アオラが言う。
「名前を呼んでくれたあの時みたいに――“大切な何か”を、もう一度見つけたい」
来夢はゆっくりと頷く。
「記録は、なくなっても……名前は、残ってる。 だからきっと、私たちはまた始められる」
***
書庫の奥。
かつての“記録者たち”の記録が眠る空間に、ひとつの扉が現れる。
そこにはこう記されていた。
《この先、記録者たる者のみ通過を許す》
《記録継承モード:アクティブ》
来夢が手をかざすと、扉がゆっくりと開く。
その先には、見知らぬ風景――果てしない大地と、夜空に輝く“記憶の星”たちが広がっていた。
「……行こう、みんな」
来夢が一歩、前へ進む。
ユウとアオラも、迷いのない足取りでそれに続く。
背後で、記録の少年が微笑む。
「この物語は、ひとつの終わり。そして新しい始まりだ」
そして彼は、最後にこう告げる。
「世界は変わる。
記録する者がいる限り、たとえ何度記憶を失っても、
“想い”だけは――必ず、残るから」
書庫の光がゆっくりと消え、三人の姿が“未来”へと歩き出す。
静かに閉じられる記録の扉。
その表紙には、こう刻まれていた。
『記録者たちの物語』――完。
(おわり)