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第23話:記憶喰らいとの契約



 


扉が軋む音とともに、来夢は一歩を踏み出した。

彼女が選んだのは――“戦いの続行”の扉。


 


光が彼女たちを包み、次の空間へと導く。


そこは、記憶が流れ込む“深層の海”だった。

空も地も存在せず、ただ無数の“断片”が浮かんでいた。


 


「……ここが、“記憶喰らい”の棲む場所?」


ユウが震えながら問う。


「たぶん、そう。感じる……すごく嫌な気配」


来夢の声が、確かな覚悟を帯びていた。


 


そのとき、空間がひび割れた。

黒い霧のような“それ”が現れる。


 


《……また、来たのか。記憶の灯火よ》


低くうねるような声。


現れたのは、影のような巨大な存在――“記憶喰らい”。


かつて来夢たちを襲い、アオラを一度喰らった存在だった。


 


「またお前……!」


来夢が叫ぶと、影は一瞬だけ形を変えた。

それは――かつて来夢がいた世界の、彼女自身の姿だった。


 


《おまえの記憶は、甘くて、苦い……

 だがまだ、完全ではない。おまえの“忘れたい記憶”を、我に差し出せ》


 


「……記憶を渡せって言うの?」


「ダメだよ来夢! 渡しちゃダメだ!」


ユウの叫びにも、来夢は視線を落とす。


 


「……でも、もしそれで“みんな”が助かるなら」


 


その瞬間――


 


「来夢っ!」


アオラが飛び出した。

身体が光を帯び、まるで新たな姿へ“再進化”するかのように。


 


「ボクは、来夢が名前をくれた“アオ”!

 来夢の大事な記憶まで、誰にも喰わせない!」


 


アオラが放つ光が、記憶喰らいの身体を貫く。

影は悲鳴のような声を上げて霧散し、一時的に退いた。


 


「アオラ……!」


「今はまだ、勝てない。でも、ボクたちは負けてない」


 


そのとき、記録の番人の声が、どこからともなく響いた。


 


《記憶とは、苦しみであり、力でもある。

 戦いの果てに、“真の記憶”へ至るだろう》


 


来夢たちは、再び歩き出す。

記憶喰らいとの決戦は、まだこれからだった――


(つづく)



---


次回予告(第24話)


『名前の記録、そして封じられた過去』

来夢が忘れていた“ある記憶”が解かれるとき、

この世界と彼女自身の真実が、浮かび上がる。





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