表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

第21話:名前を呼ぶ日



 


光に満ちた空間の中、須藤来夢は一歩ずつ足を進めていた。

アオラと、そしてもう一人のライダーの少年とともに。


 


「思い出せそうなんだ。君の名前。

……でも、あと少し、何かが足りない気がするの」


 


彼女の声に、少年は静かに頷いた。


「それはきっと、“心の奥に鍵をかけた記憶”。

君がここに来るまで、絶対に触れたくなかったものなんだよ」


 


足元に、記録の欠片が浮かび上がる。

それは、彼女が異世界に来る直前の、誰にも話していなかった日の映像だった。


 


──病院の白い廊下。

ベッドで眠る幼い男の子。心臓の病。

何度も見舞いに通う来夢の姿。


 


「……ユウ、くん……?」


彼女はその名を口にした瞬間、全身を電流が走るような感覚に包まれた。

瞳が震え、記憶が奔流のように押し寄せる。


 


──彼は、幼なじみだった。

病弱で、小さくて、だけど笑顔の似合う男の子。

いつも「君がいてくれるから、僕は怖くない」と言っていた。


 


そして、最期の日。


彼はベッドの中で、こう言った。


> 「来夢。

僕がもし、もう一度どこかで生まれ変われたら……

君の冒険の中に、そっといさせてね」




 


来夢の頬に涙がつたう。

隣にいたアオラも、そっと彼女の手を握りしめる。


 


目の前の“少年ライダー”が言った。


「君が転移したあの日、僕も君と一緒に来た。

君の記憶の中に、“名前”として。

君が僕を忘れた時から、ずっとここで待っていた」


 


来夢は、確かに思い出していた。


あの日、空へと昇っていったユウ。

彼の笑顔。

そして、自分が心の中で強く願ったこと――


 


> 「“どこかでまた出会えますように”。

……名前を、呼ばせてください。もう一度」




 


来夢は、少年を見つめて、そっと手を伸ばした。


「ユウ――おかえりなさい」


 


少年は微笑んだ。


「ただいま、来夢」


 


その瞬間、記録の核が開かれ、

二人の心に刻まれていた“約束”が真の力を帯びる。


世界が再び揺れる。

記録の深層が閉じようとしていた――


 


(つづく)



---


次回予告(第22話)


『世界の境界、記録の番人』

全ての記憶が揃った今、記録の番人が現れ、来夢たちに“選択”を迫る。

帰還か、戦いの続行か、それとも――記録そのものの継承か。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ