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第七十話 収束と終息

 エレイーネーに戻ったルドーとリリアは、想像を絶する戦いに精神的に疲弊してそのまま数日寝込んでしまい、気が付いたら休暇が過ぎてしまっていた。


 鉄線の幹部はほぼ捕まったらしい。

 ほぼというのは、リリアとノースターが遭遇したという幹部二人だけ、魔物暴走(スタンピード)の余波で護送が間に合わず落ち着いた後確認したがもぬけの殻で、この二人だけ逃げられたとの事だった。


 カプセルを作っただろうという男も捕まったが、発見した時点で何故か自我が崩壊していたらしく、よだれを垂らして虚空を見つめるだけで、詳しくは何もわからなかった。

 ただもう新しくカプセルを作ることは出来ないだろうという事で、そのまま拘留され精神病院なるものにぶち込まれたそうだ。


 捕まった鉄線の幹部から魔法も使用して色々と事情聴取をした結果、トルポ国の王族が黒だったことが分かった。

 エルムルス商会を通じて多大な賄賂を受け取る代わりに、色々と他国に融通を利かせたり目を瞑っていたりしていたそうで、その結果魔人族に襲撃されたり鉄線の被害に遭っていた各国から大量非難と損害賠償が発生し、賄賂の額など霞むほどの金額を請求されて国が傾きかねない勢いだという。


 実際鉄線が行っていた悪行は、違法の武器や魔道具、魔法薬や麻薬などの密売から始まり、果てには民間人の誘拐に人身売買等、かなり大規模で被害が想定できない程だったらしい。

 一国の王族が関わっていたからこそこれだけ大規模な被害になっていた上にもみ消されていたのだ。


「大丈夫かよキシア、あそこの貴族だろお前」


「問題ありませんわ、トルポの王族がずっと所業が悪かったのは今に始まったことではありませんもの。貴族派閥はずっと警戒していましたが中々尻尾を見せず苦労していたのです。王族に今までの責を負ってもらい、これを機に前々から計画していた貴族共和制にようやく移行できそうですわ」


「あーえーと、大丈夫そうならいいけど」


「あなた政治学も多少学ばれた方がよろしいですわよ、ルドーさん」


 キシアと一緒にトルポから戻ってきたビタとトラストも、トルポでの一件で色々と国や貴族から聞かれたそうだ。

 といってもビタとトラストは鉄線に誘拐されかけた被害者の上に、大型魔物暴走(ビッグスタンピード)の際に避難誘導をして被害を食い止めようと奔走したので、王族を廃した後キシアを含めた三人とも国を挙げて表彰されることが決まっているそうだ。


 ビタは逃走していた両親が捕まった今、遠縁の親戚に籍を置き、卒業と同時に独立するらしい。

 両親も捕まった加害者側だった為、ビタは表彰されることにはかなり複雑な心境らしいが、両親がエルムルス商会を介して鉄線と接触していた間ずっとエレイーネーにいたので、連絡を取っていなかったこともあり無実は証明済みなので素直に受け取るようにトラストとキシアに説得されたそうだ。


「全く、これだから農村育ちの方は嫌ですわ、常識がないんですから」


「ハイ……ビタさん、ですからここは貴族の学園ではありませんのよ」


「あー違うんだよキシアさん、しょうがないから教えてあげるって言ってるんだよこれ」


「あっ、また私としたことが、申し訳ありませんわ……」


 トラストはビタと魔力伝達が使えるようになったためか、ビタがずっと伝えきれていなかった部分をようやく理解し、物凄く面倒見がよくて根はいい子だったそうで魔法科全員驚愕した。

 本音を伝えない遠回しな言い方が好まれる貴族教育のせいでこうなっていたらしい。

 キシアも正義感が強いせいですぐに非難に回っていたためその裏に隠されていた本音に気付かず、毎度毎度条件反射で牽制していたので反省している。


「そんなまさか、今まで言ってた貴族が庶民が発言が全部ツンデレのツン部分だったとは……」


「ツンデレが何か知らないけど、なんかもったいない事した気分になってくるなぁ」


「ハイハイハイ僕は今からでも仲良く出来ますよ!」


『(入学のちょっと後に校舎の裏で野良猫可愛がってたもん、いい人だよ)』


「お待ちなさいなんで知っているんですの!?」


「トラストくんから聞いたけど、ライアちゃんに言ってたのも機嫌が悪かったんじゃなくて、どこのだれともわからないからもっといい服着せろってことだったらしいよ?」


「服のふの字も出てきてないのにわかるわけないですや!」


「確かに服がボロボロなのは気になってたわよ、でもそう思うなら自分でプレゼントするなりすればいいじゃない!」


「な、な、私を愚弄しないでくださる!?」


「……えっと、持ってきてて渡そうとしてたらしいですよ」


「なによそれもっと早く言いなさいよ!」


「会話をちゃんと引き出せていませんでしたわ、猛省しなければ……」


「いやなんでどいつもこいつも正直に会話できねぇんだよ……」


「貴族教育はそういうものだ」


「お前はもっと特殊だろうが」


「全く、俺様を見習うべきだぞ貴様ら!」


『今回ばかりは同意するしかねぇ』


 休暇で家に戻っていた面々が続々と寮に大量の荷物を持って戻ってくる。

 各国既に鉄線殲滅と大型魔物暴走(ビッグスタンピード)の件は大まかに伝わっているので、詳しく聞こうと現場にいた面々に寮に続く廊下で合流し、和気藹々と話している。


 ライアが魔人族の元に戻ったことに、特に可愛がっていた女子組は大層がっかりしたが、その方がいいとすぐに思いなおして持ってきたお土産をどうしようと相談していたりと切り替えが早い。


 エレイーネーに保護していた魔人族の被害者たちは、先生たちが色々協議した結果、詳しく聞いていないが住んでいた森に送り返したそうだ。

 まさか魔人族が中央魔森林の中に国を形成していたとは思わなかった、道理で全然見つからないはずだ。

 エレイーネーから発表された情報から事実を知った世間も驚愕しており、各国が今後どういう接触を図っていくか考えあぐねているようで、戻ったばかりの基礎科の王侯貴族達が慌ただしく、追従する護衛科も振り回されている。


 鉄線の幹部もほとんど捕まり、先生方が構成員のほとんどを捕まえたので組織は壊滅したといって差し支えない。

 まだ売られて捕まったままの魔人族もいるだろうが、人攫いをしていた組織が壊滅した今もうこれ以上さらに人狩りに遭う事はないだろう。


「お兄ちゃん、ライアちゃんいないからちょっと寂しいね」


「まぁ、寂しくないっつったら嘘になるけど、これが一番いいんじゃねぇかな」


 ここ数週間足元でずっとライアがうろちょろしていたので、いなくなって大分静かになった状態にルドーはいまひとつまだ慣れない。

 自分に言い聞かせるようにリリアに返した言葉に、優しく笑い返される。


 後期初日の為全員で教室に移動しながらルドーがしみじみしていると、正面からバタバタと慌てる足音と共にメロンとイエディが走ってきて、エリンジの目の前で止まるとメロンが両手をブンブン振り始めた。


「あー! エリンジくんここにいたー! 緊急事態緊急事態!」


「なんだメロン、どうした」


「大変大変! 教室でクロノちゃんがネルテ先生と揉めてる! パートナーでしょ早く早く!!!」


「また、退学届、持ってきてる」


「はぁ!?」


 クロノも流石に戦闘で疲れたのか、ルドー達とエレイーネーに戻ってからは寮の自室に引っ込むか、リリア曰く図書室辺りをうろうろしているのを見かけていたらしい。

 てっきりこのまま在留するものだと思っていたルドーがつい叫んだあとエリンジを見やると、眉間に物凄い皺を寄せて物凄い勢いで走り始めた。


「面白いことが起こりそうだな、行くぞ貴様ら!」


「合点承知の助!」


「ハイハイハイ了解しました!」


「もちろんよフランゲル、ポップコーンも用意しましょ!」


「見世物にしたいだけではありませんの?」


「これだから王族というものは嫌ですわ」


 後ろでわいわい言ってる声を聞きながら、ルドーとリリアもエリンジを追うように走り出す。

 ようやっと教室に辿り着いて全員が続々と中に入ると、エリンジが手を上げて身構えた状態でどうしたものかと困惑していた。


 教室の中は椅子や机が吹っ飛ばされるように散乱し、開けた床でネルテ先生とクロノが取っ組み合いの喧嘩状態になっていた。


「だから退学するなら退学するなりに事情を話しなさいって言ってるんだよ!」


「事情も何もそっち都合の入学でしょ残る理由がなくなっただけです!」


「その残ってた理由を聞いてるんだよ! それに鉄線の時の話も何も聞いてないんだ話してないのクロノだけなんだよ!」


「話すほどのことしてないだけですって! そもそも魔法使えないんですからいなくてもいいはず!」


「魔物と瘴気の対策する科なんだよ魔法が使えなくても今までの実績から君なら十分通用するんだよ! それにちょっと事情が変わったんだよクロノ今辞められたら困るんだよ!」


「だからそれはそっちの都合でしょって!」


 ネルテ先生とクロノがそれぞれ話すたびにお互いに締め技を交互に繰り出していて教室がカオス状態になっている。

 喧嘩は許可されているもののそれは先生にも該当するのだろうか。


 アリアがポップコーンを取り出してフランゲル達四人が観戦の態勢に入り、カゲツが飲み物を取り出して売り出した。

 キシアとビタとトラストが止めるべきかおろおろし、メロンとイエディも心配そうに固唾を飲んで見ている。

 アルスも困ったように頭をかいて、ノースターは何か魔法薬を使うべきかと懐に手を突っ込んでいる。


 このままでは埒が明かない。

 ルドーは困惑して固まっているエリンジの肩を叩いて構えた腕を下ろさせて、視線を向けて話すように伝えた。


「……残るんじゃなかったのか、俺のパートナーはどうなる」


「魔法使えないならいてもいなくても同じでしょ」


「やりたいことはどうした」


「終わったから辞めるんだって」


「いやだからそれが何か聞いてるんだよエリンジは……」


「……このタイミングって、ひょっとしてライアちゃんたち返そうとしてたの? それで返せたから辞めるの?」


 リリアがルドーとエリンジの後ろから言うと、クロノはネルテ先生に十文字固めを掛けられながら固まって黙り込んだ。

 ルドー達がじっと見ていてもクロノは何も答える様子がない、だがさっきまではすぐに応酬していた様子から、図星をつかれて固まったようだ。


「……なーるほど、そういうことか。ならちょうどいい、クロノ、ちょっと協力して欲しいことがあるんだ。みんな集まってるね、ちゅうもーく! 転校生を紹介するよ!」


 ネルテ先生が固まったクロノから技を解いて起き上がり、周囲にクラス全員がいることを見渡して確認した後、パンパンと手を叩いてルドー達が入って来た逆側のドアを魔法の拳でガラッと開けた。


「でえっ!?」


「えっ」


 ルドーとクロノから声が上がる。

 振り返ってドアを見たその場の全員が驚愕に目を見開いて固まった。


 ネルテ先生が開けた教室のドアの前に、魔人族のカイムが、エレイーネーの青い制服に身を包んで物凄い形相でこちらを睨み付けてきていた。

 かなり不服な様子でその周辺の空気がどす黒く渦巻いている。


 今にも暴れだしそうな形相のカイムに、全員が恐れおののいて動けない。

 しかしそれに臆することなくネルテ先生はケラケラ笑いながらカイムに手をひらひらさせて入ってくるように促し、カイムは渋々大きく唸り声を上げてどす黒い空気を纏いながら両肩を下げて教室に入ってきた。


「魔人族の国から来たカイムくんだ! はいみんな拍手―!」


 ネルテ先生が立ち上がってカイムの隣に来ては、大きくみんなに紹介して拍手をパチパチと送るが、誰一人拍手を返さない。

 どす黒い空気をまき散らしながら周囲を威嚇するかの如く睨み続けて唸るカイムにだれも何も言えない沈黙が続く。


「……わぁ! 制服似合わないね!」


 猛者がいる、一同が戦慄した。

 メロンが大きく笑い両手の指を顎に当てながらそう大きな声で告げた。

 そのいつもの笑い声に嘲笑などの他意は一切見当たらない、純粋な感想のようだ。

 だからといって明らかに不機嫌な相手にそれを直接言うのはどうなのか。


 案の定カイムから射殺さんばかりの猛烈な視線が返ってきたが、どうやら攻撃はしてこない様子だ。


「魔人族については知ってる奴も多いと思う。校長の提案でね、国として連盟に認めてもらえれば正式に保護活動が出来るってんで、まずその一環としてエレイーネーに入ってもらうことになって、該当する年齢で魔力が高いカイム君が来たって訳だ」


「……ってことはこいつ同い年かよ!?」


「こいつとかいうんじゃねぇ殺すぞ!」


 思わず叫んだルドーに睨み付けながら噛み付いて来るカイム。

 クロノより頭一つ小さいので確かに強いがてっきり年下だとルドーは思っていたのだ。

 カイムから発せられるどす黒い空気に押されて教室が相変わらず静まり返る中、ネルテ先生がケラケラ笑いながら顔の横で手を叩いた。


「ホラホラそんな委縮しない! これも平和活動の一環だよ、初めて遭遇する相手ときちんと向き合って仲良くする。争いを無くすためにはまずお互いを知って譲歩するってね。そういう訳でクロノ、カイム君がクラスになじめるように協力して欲しいんだ」


 ネルテ先生が説明しつつそう言って床に転がったままのクロノに視線を向けた。

 確かにカイムと一番接点の多いクロノに頼むのが合理的、ルドーもなるほどと納得した。

 突然話を振られてクロノは動揺するように身じろいでいる。


「えっえーっと……」


「腹」


「えっなに?」


「腹の傷もう無事なのかよ」


 ネルテ先生の横にいたまま、クロノに顔だけ向けたカイムが黒い空気を消してクロノに聞いてきた。

 エレイーネーに搬送された傷口を気にしているようだ。

 一応ネルテ先生の事情説明で魔法科全員クロノが魔人族に攻撃されたという事は知っている。

 ぶっきらぼうな顔のまま、じっとクロノを見ているカイムをクラス中が注目している中、クロノは慌てたように起き上がってきた。


「ぶ、無事に治ったから気にしないで! っていうかあれは私のミスも大きいから!」


「なんでだよ! 俺がやったんじゃねぇか!」


「いやいつも落ち着くまで待ってたのに安易に声掛けたのこっちだし!」


「それでも当てたの俺だろうが!」


「はいはーい、喧嘩しない喧嘩しない」


 言い合い始めた二人をネルテ先生がニカニカ笑いながら間に入っていく。

 どうやらカイムがかなり不服ながらもこの場に来たのはクロノの怪我を気にしてのようだ。

 後ろでメロンがほほうと声を上げた後、イエディとキシアを呼び寄せて何やら作戦会議とか言いながら話し始める。

 と思ったらメロンがイエディに両頬を抓られて両手をブンブン振り回し、キシアは頬を赤くしつつも両手を口に当てて目を輝かせている。

 一体何の作戦会議だ。


「あ、あともう一つみんなにお知らせがあるよ! 入っといでちびっこちゃんたち!」


「ルドにぃー!!!」


 ネルテ先生の掛け声にまたドアが勢い良く開いたと思ったら、小さな子どもが三人教室に大きく飛びこんできた。

 見慣れた紫髪が恐ろしい勢いでルドーの頭部に衝突して、勢いに負けたルドーは三回転して大きく埃を上げながら倒れ込む。


「いっでぇ!!! えっライア!!?」


「わぁい! ルドにぃ! リリねぇ! また遊んで!」


「えっライアちゃん話せるようになったの!?」


『元気そうにしてんな』


 突然の子ども三人の乱入に教室が爆発したように賑やかになる。

 ルドーは仰向けに倒れた状態の上に乗っかっているライアを見て目を丸くした後、ライアが嬉しそうに上で両手両足を広げてバタバタ暴れる為とりあえず立てないのでリリアに助けを求めた。


「メガネのチビにーちゃん卑怯者ねーちゃん助けてくれてありがと!」


「えっあの時の!? ……ち、ちび?」


「あらお元気そうで……どこで覚えてるんですのこれだから子どもは!」


 褐色肌の焦げ茶色の短髪、薄緑の瞳にタンクトップに短パン姿の少年が、元気いっぱいにトラストとビタの前にやってきて右手を勢いよく掲げながら言えば、二人とも最初こそその姿に驚いて嬉しそうにしながらも、呼ばれた言葉に困惑するように声を上げている。


「ねーライアが言ってたんだけど誰かぼくの眼鏡知らない?」


「……これか」


「あったぁ! 見えなくて困ってたの!」


 褐色肌に薄い茶髪の短い髪、黄土色の瞳をしたTシャツ短パン姿の少年がきょろきょろしながら言った言葉に、エリンジが思い出したように半月型の小さなメガネを差し出せば、嬉しそうに受け取った後ニコニコしながらそれをかけて周囲を改めて見まわしていた。

 三人の様子をニカニカ笑って見ていたネルテ先生が、全員を見回して腕を組んで説明を始める。


「カイム君が来るにあたって、弟妹のこの子たちも保護科で預かることになったんだ。保護者が倒れちゃったらしくてね、面倒見れるのがカイム君しかいない。そういう訳で君たちこれも平和活動だ、協力してあげてね!」


ニカッと笑って告げられた話に魔法科全員が三人を眺めて次々に声を上げ始めた。


「そういう事なら協力惜しみませんわよ!」


「平和活動かぁ物は言いようだなぁ」


「物凄い元気だよ体力使いそう……」


「ハイハイハイ体力には自信ありますよ!」


「よかったわね用意してた服無駄にならなそうよ」


「ふ、ふん! こういう事も想定してましてよ!」


「いつでも相手してやろうではないか!」


『(うーん、文字じゃなくて絵のバリエーション増やそうかな)』


「勉強、見てあげるのも、いいかも」


「遊具になる魔道具も必要ですかや?」


「わぁーいっぱい遊ぼうね!」


「「「やったぁー!!!」」」


「うるせぇチビども今日は顔出すだけだろうがさっさと帰れ!」


「「「カイにぃが怒ったぁー!!!」」」


 きゃあきゃあ言いながら物凄い速さで入って来たドアからドタバタ逃げていく三人。

 メロンが後でお土産持っていくねーと手を振りながら大きく呼びかけていた。

 三人を追い払う際全力で叫んだのか、カイムはぜいぜい息切れしている。

 そこに先程のどす黒い空気はなかった。


「……思ったより馴染むの早そうだな」


「ライアちゃんたち元気でよかったね」


「こっちくんな慣れ合う気はねぇ」


『もう既に大分慣れ合ってるぜ』


 ルドーとリリアに唸るように返すカイム。

 聖剣(レギア)がいつもの調子でゲラゲラ笑い始める。

 その様子を見ていたネルテ先生がニカニカ笑いながらクロノに視線を向け、クロノは諦めたのか天を仰いだ後、ビリビリと退学届をまた破り始めるのを全員で見届けた。


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