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第二百八話 始まる崩壊

 

 ガンガンと大きく響く衝撃が、空間を強く揺らしていた。

 バラバラと天井付近から、大量の砂が舞い落ちている。


「こわいこわいこわいなにあれなにあれなにあれおれたちどうすればいいんですか!?」


『静かにしろ、まだバケモンの方はこっち気付いてねぇ』


 ルドーの背後にしがみつくヒルガに、聖剣(レギア)がパチリと小さく警告する。


 突然現れた歩く災害のボスは、ルドーたちを背後に、ガンガンと厄祈願(やくきがん)を壁に叩き付け続けていた。

 少年のような小さな姿から、想像出来ないほどの衝撃。


 壁一面が大きくひび割れ、厄祈願(やくきがん)が一撃一撃にどんどんめり込んでいく。


「そんなにお仲間だけ連れて行かれたのが不服で!? でしたら次からは、貴方もご一緒にお連れするよう伝達させて頂きますね!」


 頭が潰れる勢いの攻撃を加えられている。

 だが厄祈願(やくきがん)は笑顔で歩く災害のボスに対応していた。

 まるで癇癪を起こした子どもを宥めるような口調だ。


 お仲間だけを連れていかれた。


 厄祈願(やくきがん)の話から、ルドーは推察する。

 ウガラシや砂漠での勇者狩りとの戦闘後、かつての遭遇場所で、突如として現れた歩く災害の脅威。


 どうやら歩く災害は、女神深教の祈願持ちたちによって無理矢理、中央魔森林から連れ出されていたようだ。


 壁が壊れていくほどの衝撃に、空間が怪しい音を立て始める。

 ルドーは厄祈願(やくきがん)と歩く災害のボスに注意しつつ、周囲を見渡した。


 壁から広がった亀裂が、ドームの天井を伝って全体に広がり、床にも亀裂が入り始めている。

 元々脆かった空間が、度重なる衝撃で、少しずつ耐えられなくなってきていた。


『乾燥した空間で、かなり脆くなってやがる。このままじゃ崩れちまうぞ』


「どどどどうすりゃいいんですか!?」


「逃げるしかねぇって。あの二人にはどっちも勝てないんだ、止められない。片方には気づかれてないから、大きな声を出すなよ」


 崩れて潰れるのはごめんだとしがみついたヒルガに、ルドーは小さく呼びかける。


 ドーム状の空間に、ルドーはレモコ共々落下して来た。

 上を見れば、崩れたように開いた穴が、衝撃に更に広がっているのがわかる。


 内臓の負傷から、ルドーが雷閃を使えるのは、無理矢理やってあと一回ほど。

 ここから上に脱出したとして、その先の脱出経路がルドーにはわからない。


「チャンスは今しかない。歩く災害のボスが厄祈願(やくきがん)に気を取られてる間に、上に飛べば……」


「それさっきの攻撃魔法のやつっすよね、攻撃に気付かれて、上に行った後追いかけられるパターンっすよね?!」


「そうは言っても他に逃げる方法ねぇだろ」


「そちらさん内臓かなりダメージ入ってるじゃないですか! 上行った後、俺抱えて逃げ切れませんて! ムリムリムリムリ!!!」


 ジリジリと、歩く災害と厄祈願(やくきがん)から離れつつ、ヒルガはブンブンと右手を顔の前で振った。


 確かにヒルガの言う通り、雷閃で飛べば、流石に二人に気付かれてしまう。

 無理に雷閃を使えばルドーはもう動けなくなり、その後は戦えないヒルガ任せになってしまう。


 気付かれた厄祈願(やくきがん)と歩く災害のボス二人に追われて、戦えないヒルガには、ルドー以上に勝ち目など存在しない。


 状況は最悪。

 他に逃げる方法はないかと、二人で必死に思考を回す。


 考えている間にも、空間を揺らす衝撃は続く。

 ガン、ガン、と、歩く災害が厄祈願(やくきがん)を叩く音が大きくなっていく。

 次第に込められる力が大きくなっているのか、周囲の亀裂がビシビシと、怪しい音を立て始めた。


 この空間はもう持たない。

 残された時間はそこまで多くないだろう。


「……こうなったら一か八かだ、ヒルガ」


「はいなんですか助けてください」


「衝撃でここが崩れる瞬間なら、あの二人もすぐには追ってこれない。その瞬間に雷閃で上に戻るから、あとは頼んだ」


「いやいやいやいやそれ失敗したら、俺たちも潰れておじゃんなやつ!」


『いいねぇ、いつも通りギリギリなやつだ』


 笑うように弾けた聖剣(レギア)に、ヒルガが小さな悲鳴をあげる。


 ヒルガが悲鳴をあげても仕方ない。

 厄祈願(やくきがん)と歩く災害が、瓦礫で追えなくなったとしても、ヒルガでは崩れ落ちる瓦礫の中、ルドーを抱えて逃げるのはかなり博打だ。


 しかし他に方法もないと、ルドーがヒルガを無視して強行するため、準備をしようとジリジリと後退していた時だった。


「あら! そこの方々、どこへ行くおつもりで!?」


 叩き付けられていた厄祈願(やくきがん)は、ぐちゃぐちゃに頭が潰れた状態でルドー達に大声を掛けた。

 その声の先に気付いたように、歩く災害のボスが、ゆっくりとこちらに頭を向ける。


「テ……る……キ……」


『最悪だ、わざと気付かせやがったな!』


 ルドーが動くよりも早く、こちらに恐ろしい速さで、歩く災害のボスが突っ込んできた。


 しかし唐突にグワンと、何かがルドーとヒルガの前を遮る。

 ホール中央に倒れていた、古代魔導具の願いの兵士が動いていた。


「なんだ!?」


 耳を覆いたくなる、大きな金属が空間に響く。

 ルドーたちの前に出た願いの兵士が、歩く災害のボスの動きを止めた。


「ああああァああアああぁあああアあ!!!」


「お助けええええええええええええ!!!」


 願いの兵士を挟んで、歩く災害のボスが耳を貫く雄叫びをあげる。

 向けられるおぞましい殺気は、願いの兵士にほとんど阻まれたが、それでも一瞬意識が眩む。


 ヒルガが余りの恐怖に、ルドーの背後にしがみ付いて叫んでいる。


「急に動いてなんなんだ!?」


『足元見ろ! さっきあいつに蹴り倒されたときだ!』


 バチッと警告した聖剣(レギア)の雷を追うと、倒れた願いの兵士から、うっすらと瘴気が噴き出し始めていた。


 最初にルドー達が遭遇した、暴走した古代魔道具。

 あの遺跡の大鍋の時と同じように、三十年という長い期間の放置。

 枯れた水源を、王族の面子の為に塞ぐ命令。

 水源を確保して国を乗っ取ろうという、レモコの利己的な接触。


 手入れが施されていなかった古代魔道具に、倫理観のない使用方法。

 願いの兵士が暴走してしまうには、十分な理由が揃い過ぎていた。


 溢れはじめた濃い瘴気に、歩く災害のボスが怯んで後ろに下がり始めた。

 周辺に、砂を覆う絨毯のように広がる瘴気から、うねうねと蛇型魔物が顔を出し始めている。


 魔物の発生を確認して、ヒルガがとうとうパニックに陥る。


「うへああああ! 魔物まで出てき始めたぁ! もうおしまいだぁ! ここで死んじゃう!」


「死んでたまるかよ! 聖剣(レギア)、どうすりゃいい!?」


『今破壊なんかできるか! 逃げるしかねぇだろ!』


「あら特等席で見送ってほしいのですけど!?」


 ルドーと聖剣(レギア)は叫び合う。

 厄祈願(やくきがん)は潰れた頭を、ぐちゃぐちゃと再生させながら、ルドー達を引き留めようと声をあげていた。


 火事場の馬鹿力。

 ルドーはパニックで慌てるヒルガを大急ぎで担ぎ、胃のあたりから溢れる血を口から溢し続けながら、聖剣(レギア)を振り下ろした。


 レモコと一緒に落ちてきた穴に向かって飛び上がる。


 不意に、弾け飛んだ雷の砲撃魔法が、願いの兵士に当たった瞬間、何か流れ込んできた。




 俺はここを、豊かな国にしたいんだ。なぁ、協力しておくれよ。


 なぁ父さん見てるか、立派な町になったぞ。


 水源を、こんな使い方で発展させて、本当にいいのか。


 やっぱり間違っていたのだ。こんな町はもう滅びたほうがいい。




 バラバラと風景が変わる。

 人も、年代も、全く違う。

 揃って同じ高さから見下ろす風景。

 それはまるで。


「――――聖剣(レギア)、今の」


『願いの兵士が見てきたことだろうな、多分』


 雷閃で上昇しながら見えた風景に、ルドーは後ろ髪をひかれた。


 最初は確かに、岩だらけの貧しい風景に、人を想っての表情。

 それが次第に豊かになっていくにつれて、疑問を抱く顔が続く。

 そうして最後に、血塗れになった女性を見下ろす光景。


 願いの兵士は、歴代のマー国王族と共に、長い歴史で一体何を見てきたのだろうか。


「いってぇ!」


 落下しただろう穴に戻った瞬間、ルドーは体力を使い切った。

 ヒルガを担いだまま、ドシャリと岩の床を転がり、口から血が溢れ続ける。


『止まるな! 崩壊が始まってる、飲まれちまうぞ!』


「ああああ! お助け! 誰かお助けぇ!」


「動けねぇ、どこか出口、どこに……」


 背後の穴の底には、暴走した古代魔道具に、厄祈願(やくきがん)と歩く災害のボスがまだいたまま。

 厄祈願(やくきがん)が動き始めたのか、それとも歩く災害のボスが暴れはじめたのか。

 地響きのような音と振動、バラバラと危険な音が、空間から脱出したはずのルドー達の所まで響いている。


 建造物破壊を得意とする厄祈願(やくきがん)がいるのだ、おおよそこの地下空間は、木端微塵に破壊される。


『早くしろ! 瘴気が!』


「うっ、ヒルガ、走ってくれ!」


「マジで俺がおぶってくんすかああああああああ!?」


 穴から溢れた瘴気と魔物、そして上から落下してきた大きな瓦礫。

 叫んでいたヒルガは、飛び上がってルドーを引き摺るように走り始めた。


「ニグ……」


『もう無理だ、諦めろ』


 縁祈願の話から、地下空間で遭遇した少女は、もう助からない。

 頭では分かっているものの、それでもルドーは割り切ることは出来なかった。


 せめて遺体だけでも回収できないか。


 真っ暗な空間で、ルドーはヒルガに担がれ引き摺られながら、つい視線を周囲に向けてしまう。


 地響きがどんどんひどくなり、落下物があちこち落ちてきて、どこを走っているか分からない。


 崩壊する足場を、ひたすら悲鳴を上げて走っているヒルガ。

 ライター型魔道具の灯りが、頼りなく周囲を照らしていた。


「どこにげりゃいいんすかどこいけば助かるんすか潰れるとかごめんですいやああああああああああああ!」


『いいから走り続けろ!』


 薄暗い足場はあちこち崩壊が始まり、様変わりした空間は、もはや戻っているのかすら分からない。

 元々出口はまだ探し当てていなかった空間だ。


「ですから特等席で、その絶望を存分に味わってほしいのです!」


 落下する瓦礫の量が増していき、半狂乱になっているヒルガ。

 引き摺られていたルドーの耳に、厄祈願(やくきがん)の大きな声が下の方から届く。


 走り逃げていた目の前の空間が、ドカンと大きく崩された。

 ガラガラと落下していく瓦礫に、ヒルガが大声をあげて慌てて後退する。


 揺れる地響きの中、前方の空間は瓦礫に塞がれ行く手を完全に遮られてしまった。

 地下空間のどこかから、歩く災害のボスのけたたましい咆哮が聞こえる。


『とことん追い詰めてきやがる……このままじゃさっきの追いつかれるぞ!』


「やだやだやだやだ潰れて死ぬのだけは御免だぁ!」


 前方を塞がれ、しかし交代も出来ず、右往左往するヒルガと狼狽える聖剣(レギア)

 その声が、負傷したルドーには少しずつ遠ざかってきていた。


「ちょ、ちょっとちょっと! 死なないでここで死んだら俺の責任になるからせめて外出てから死んで!?」


「縁起でもないこと言うな……」


『減らず口叩いてる暇あるなら別の道探せ!』


「その道が潰れたのにどうやって!?」


 崩壊する空間に瓦礫が増して、もはや背後への道も塞がれ始めた。


 完全に潰れる、それしかもうルドー達には見えない。


 諦めたくない、そう思った瞬間だった。


「……リリ?」


 突如としてルドーとヒルガを、リリアの結界魔法が包んだ。


 激しい轟音が一瞬にして迫り、見慣れた虹魔法の砲撃魔法が、周囲の瓦礫を散り散りに霧散させていく。


空間停止(フロアストップ)! 入り口は固定しました!」


「リリねぇの言う通り! ルドにぃあそこ!」


「カイム! 髪で先生の手の届かない周辺の瓦礫止めて!」


 虹色の砲撃魔法が止んだと思ったら、光が差してきた上方から、赤褐色の髪が大量に伸びて周辺の瓦礫をビシッと抑え込んだ。


 ルドーが見上げるより先に、何者かが横にスタッと飛び降りる音が耳に響く。

 そのままガシっと掴まれたと思ったら、ぐわっと俵担ぎされる感覚。

 全身に一気に恐ろしい重力がかかり、ルドーが気持ち悪さに、口からまた血を吐き出してしまう。

 重力に慣れる前に明るい空間に飛び込んで、目がくらんで何も見えなくなった。


 降ろされたルドーの肩を誰かが力強く支える。

 反対側から添えられた手に、回復魔法のじんわりとした温かみが広がる。


「お兄ちゃん! もう馬鹿!」


「ルドー、しっかりしろ!」


「リリ、エリンジ……」


 泣きながら手を当てて回復魔法をかけているリリアと、ルドーを支えつつ必死な無表情のエリンジがいた。

 回復と明るさに慣れてルドーが目を瞬かせば、そこは先程までいた空間とはまた別の、明るい通路のような空間。


 床に大きく空いた、煙をあげる穴から、エリンジが虹魔法の砲撃で、無理矢理穴をあけて誰かに引き上げられたようだった。

 ヒルガが状況を理解して諸手をあげて絶叫した。


「助かったああああああああああああああああ!!!」


「ルドにぃいつもボロボロ、だいじょぶ?」


厄祈願(やくきがん)が近いとこにあんまり無茶に突っ込ませないでよ!」


『おまえか。あの高さ跳躍するとか相変わらずバケモンかよ』


 パチッと弾けた聖剣(レギア)の先に、帽子をかぶったクロノにライアがしがみ付いていた。

 どうやら砲撃魔法で開けた穴を、カイムが髪で固定して、クロノがそこに跳び降りてルドー達を救出したようだ。


 リリアの回復魔法に、少しずつルドーの視界が戻ってきて、足元もしっかりしてくる。


「おい、うかうかしてんな! 崩れ始めてるぞ!」


 クロノの後ろで穴の方を見ていたカイムが、ビシッと入った亀裂に大声をあげた。

 リリアとエリンジの後ろにいた様子の、トラスト、ビタ、アルス、キシア、カゲツ、ノースターも慌てだす。


「あわわわわここから地上までまだ相当距離ありますよ!?」


「しっかりしなさいな! しかし変化魔法の範囲より広いですわ……」


「氷魔法で崩壊は止まんないから、潰れちゃうかな」


「地下が深過ぎましたわ、拡散魔法も焼け石に水です」


「あややや!? ここで潰れておじゃんはごめんですやよ!?」


『だ、誰かなんか方法ない!?』


「助かったと思ったらまだピンチなんです!?」


 またバタバタと全身で慌てだしたヒルガを無視して、エリンジが穴を見つめて後退するカイムに声を掛ける。


「崩壊は止めらないのか」


「それが出来たら苦労しねぇよ」


 穴を覗いたまま、大きく舌打ちしたカイム。

 カイムの横に移動したクロノが、怖がるように肩をさすりながら、足元のライアを庇いつつ同じように覗き込んでいた。


 バラバラと砂が落ちて、遠い地響きがどんどん大きくなってきている。


厄祈願(やくきがん)となにかがまだ下で暴れてる。もう止めらんないよこれ」


「落ち着きなさいみなさん」


 低い声に全員がヘーヴ先生に視線を移した。

 ヘーヴ先生は全員をゆっくりと見渡した後、ゆっくりと頷いて、エリンジの方へと視線を向ける。


「エリンジくん、今の砲撃魔法、地上まで掘り進められますか」


「問題ない」


「よろしい。砲撃魔法で上方へ脱出口を。砲撃に魔物が出て来ないよう、カイムくんは私と一緒に周囲警戒を」


 バラバラと砂と一緒に瓦礫が小さく落ち始め、不安そうに顔を見合わせていた全員に、ヘーヴ先生は更に指示を飛ばす。


「トラストくん、ビタさん、キシアさん、アルスくん、カゲツさん、ノースターくん、上に脱出するための足場を作るんです」


「な、なるほど! 二人の魔力伝達だとこの人数は支えるのが不安ですが、三組で組み合わせれば……」


『なるほど、出口見つけんじゃなくて作ればいいってこったか』


 ヘーヴ先生の指示にトラストが即座に理解して振り返っていた。

 聖剣(レギア)も思いつかなかったというように、パチリと小さく弾ける。


「クロノさん、ルドーくんの支え、エリンジくんと変わりなさい」


「任せる」


「ほいほい。リリア回復続けて、ライアも回復手伝って」


「がんばる!」


 声を掛けられたライアがガッツポーズをして、ルドーに肩を貸すクロノによじ登り、リリアの反対側から回復魔法をかけ始めた。


 増えた回復魔法に、ルドーは思わず声を漏らす。


「……はぁ、悪い、助かる」


「ごめん、私一人じゃお兄ちゃん支えきれなくて……」


「それが普通だから謝る必要はないよ」


 肩をすくめたクロノが、大きな音にルドー達と共に前を向く。


 エリンジが虹魔法で砲撃を放ち始め、掘り上げて落下する瓦礫を、構えたハンマーアックスで叩き切り始めた。

 周辺に小さく舞い散る瓦礫も、カイムが即座に赤褐色の髪を盾に変えて防ぎ、時に刃に変化させて粉々に切り刻んでいく。


 様子を見て足場を作ろうと準備していたトラストが、唐突に大きく声をあげた。


「先生! 他の先生方への連絡は!?」


「心配される程軟ではありませんよ。あなた方の方を心配してるでしょうから、さっさと脱出して連絡できるように……」


「あ、通信魔法復活してるっぽい。カイム、試せる?」


 ルドーに肩を貸したまま、何かに気づいたようにクロノが顔を上げた。

 言われたカイムが即座に髪を白く光らせて確認を取る。


「ボンブ、そっちどうだ!? ……あぁ、こっちも問題ねぇ、脱出する! 通信いけるぞ!」


「通信が出来るなら転移は使えませんの!?」


 カイムの様子に、即座に他の先生方と連絡を取り始めたヘーヴ先生の後ろで、キシアが声をあげる。

 しかし砲撃魔法で道を作っていたエリンジが首を振った。


「ダメだな、通信はギリギリ行けるが、外は砂嵐の影響がまだあるのか、転移は先がぶれる」


 エリンジと同じようにヘーヴ先生も試そうとしたのか首を振った。


「完全に潰れる際の最終手段ですね、先がぶれてると下手すると四肢がもげかねない」


「こわいこわいこわい安全に逃げれるなら安全に逃がしてくださいお願いします!」


 慌てるヒルガを無視して、トラストとビタが地面を変化させて足場の土台を作る。

 カゲツが蔦を生やして方向を決め、ノースターが放射魔道具で魔法薬を固定していく。

 キシアとアルスが氷魔法で、それをさらに拡大して足場を確実なものに変えていった。


「崩壊が早い。全員、足場を作りつつ走りなさい!」


 ヘーヴ先生の掛け声と共に、全員がその場から足場に走り始めた。


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