第二百六話 マー国に隠されていた真実
ヒルガが落下した穴まで戻ったルドーは、ヒルガを肩に抱えたまま、灯りのなくなった暗闇に大声で必死に呼び掛ける。
「ニグ! おい、ニグ、どこだ!?」
返ってこない返事に、ルドーはニグが言い出したとはいえ、一人にしたことを後悔する。
ニグに渡していたランタンが割れたために明かりを失い、真っ暗でルドーには何も見えない。
ニグが気絶して倒れている可能性もある。
ヒルガを助ける際にルドーが穴の中で行った、雷魔法を乱発しての明かりの確保は、倒れたニグに誤射することも考慮すると出来なかった。
「真っ暗でニグがどこにいるのか、なにがあったかもわかんないな……ヒルガ、光魔法とか使えねぇのかよ!?」
「使えたらとっくに使ってますって! だから念のためにランタンを持ち物に忍ばせてたのに!」
「あのランタンおまえのだったのかよ!?」
ルドー達がワスラプタの罠に巻き込まれ、この地下に迷い込んでから、ずっと光源として使っていたランタン。
あれは魔法が使えないヒルガが、事前に用意していたものだった。
「空間拡張魔道具に入れてたのを引っ張り出して、でも灯りになるものはあれだけっすよ!」
『そのランタンにどうやって火を灯したんだよ』
「そりゃもちろん、ライター型魔道具……あっ」
小さく弾けた聖剣の指摘に、ヒルガの声の方向から、服をまさぐるようなバシバシという音がしばらく続く。
「あぁもう暗くて見えない! えーっとえーっと……あったこれこれ!」
シュポッと小さな音と共に、小さな明かりが灯る。
ヒルガの顔面を照らし出したライター型の魔道具は、ランタンほどではないものの、小さく周囲を照らし出した。
砂の散らばる岩の床に、水たまりのように大きく広がった赤い液体、引きずったような血の跡。
ようやく方向が分かったと、ルドーはまたその方向に声をあげる。
「でかした! これならまだ見える。ニグ! おいニグ!」
「うわっ、結構な血の量……き、気分悪い……」
『慣れてないなら凝視すんな、吐いて倒れちゃ元も子もねぇ』
「ヒルガ、俺の後ろ下がってろ。血の跡はあっちか……」
火の灯ったライター型魔道具を掲げたまま、ヒルガは気分が悪そうに顔を青くして口を押さえる。
戦闘ではなく座学のみの基礎科のヒルガに、このような血溜まりへの耐性などないだろう。
ルドーの指示に、ヒルガはありがたいというようにおとなしく従った。
『あーくそ、一瞬で距離離れてる上、この空間近場じゃねぇとよくわからねぇ』
「よくわからないのか?」
『同じ部屋くらい近場ならまだ何とかなるが……水源封印してる古代魔道具の影響か、俺でも周囲が分かりにくいな……』
危険に対する警告を発する聖剣なりに、ニグの居場所を特定しようとしていてくれたようだ。
だが水源を封印する古代魔道具から、妨害魔法でも出ているのか、聖剣でさえこの空間は上手く認識できない。
同格の古代魔道具での妨害魔法だ。
同じ古代魔道具の聖剣では、現物をなんとかしない限りどうにもならないだろう。
「ならこの血の跡追うしかねぇか……走るぞヒルガ! 離れるなよ!」
「お願いします置いてかないで捨て置かないで見捨てないでぇ!!!」
走り始めたルドーの後を、ヒルガがライター型魔道具を抱えたまま、泣き叫びつつ続く。
ルドーが一定距離を離れれば、同時に明かりが離れて周囲が確認できない。
ヒルガに明かりを持たせることで、ヒルガの安全確認をしながら、ルドーはニグを探して焦りつつ先を急ぐ。
先程ヒルガの頭上に落下してきた、蛇型小規模魔物が全く見当たらない。
一般人のニグには、あれを倒すことは不可能だ。
つまりニグを襲ったのは、魔物を倒した第三者の可能性が高い。
時折ライター型魔道具の小さな明かりに、地下の独房周辺で見かけた、骸骨と化した死体の横を通り過ぎる。
浮かび上がる白骨に、ヒルガが悲鳴をあげるのを後ろに聞きながら、ルドーがどんどん薄くなっていく血の跡を追っていく。
すると前方から、大きな衝撃音と悲鳴が聞こえた。
「やぁっと生きてる人間に会えましたぁ! グチャッと潰されたくなかったら、この空間案内してくれませんかねぇ!」
「この声、あいつ!」
聞き覚えのある声が聞こえて、ルドーは前方に向かって足を速める。
走りつつ聖剣を構え直せば、広い通路の曲がり角を抜ける。
その先でルドーの目に飛び込んできたのは、巨大な岩人形が血塗れのニグを吊り下げ、その巨大な手でギリギリと締め上げている所だった。
「雷閃!」
「うわぁ!」
ルドーが目にした瞬間聖剣を振り上げれば、雷の極太放射魔法が空中から次々発射される。
ニグを吊り上げる岩人形の両腕に見事命中し、バラバラと音を立て、ニグと一緒にドスンと砕けた腕が地面に落下した。
「エレイーネーの雷聖剣双子勇者! いい加減にしろってんですよ!」
岩人形の肩に乗る、水色ツインテールのゴスロリ少女。
身体のあちこちに魔道具が埋め込まれ、魔法にビカビカ怪しく光っている、鉄線元幹部のレモコがそこにいた。
「そりゃこっちのセリフだ! 雷転斬!」
レモコに向かって、ルドーは聖剣を回転させて放り投げる。
バリバリと雷魔法を発しながら、回転のこぎりのように飛んできた聖剣を、レモコが咄嗟に岩人形から飛び避けて身を躱した。
その瞬間、ルドーは腕輪を媒介に、雷の速度でその場に移動する。
バシッと聖剣を握り直し、レモコに向かってさらに振りかぶって牽制にかかった。
レモコは咄嗟に四角い鉄の箱のようなもので、聖剣の攻撃を防いだ。
レギアの黒い刀身と、鉄のような箱がガキンと大きく弾ける音と共に、ルドーもレモコも背後に大きく吹き飛んでいく。
牽制にレモコを大きく吹き飛ばしたルドーは、そのまま倒れているニグの傍に着地し呼び掛ける。
「ニグ、しっかりしろ、おいニグ!」
『まだ息はある。ルドー、回復魔法薬はどうした!』
「そうだ回復魔法薬……でぇっ!? 割れてるぅ!?」
聖剣に言われて、ルドーは慌てて制服の内ポケットを探る。
しかし引っ張り出した魔法薬の瓶は蓋だけ。
肝心の中身部分は、ごっそり割れてどこかに落ちた後だった。
『罠に砂まみれになって落下したときか、そりゃそうか……』
「なんですかぁ! そっちも迷子ですかぁ!? だったらそっちが案内してくれてもいいってんですよぉ!」
ルドーが血まみれでぐったりしたニグを抱えている前で、レモコがまたバキバキと岩人形の腕を組み上げ始めた。
攻撃が来ると判断したルドーは、とっさに血まみれのニグをヒルガに押し付ける。
「あぁもう今それどころじゃ! ヒルガ、ニグ頼んだ!」
「えぇ!? 俺ぇ!?」
「あいつは俺がなんとかするから! ヒルガ、せめて応急処置だけでも!」
「お返事くらいできないんですかぁ! エレイーネーのいい子ちゃんさんはぁ!」
振り上げられた岩人形の拳に、ルドーは咄嗟に身を翻して躱した。
地面がドスンと大きく抉られ、砂が周囲に大きく舞い散る。
『気を付けろ! さっきの攻撃防いだあの箱!』
「あぁ! ベクチニセンスの城で見た、マー国の古代魔道具!」
横回転しながら受け身を取ったルドーは、振り返りながらレモコの方を凝視する。
ライター型魔道具の小さな薄暗い明かりしかない中、レモコの身体に埋め込まれた魔道具の怪しい光。
標的はあそこだといわんばかりに、ビカビカ光っていてわかりやすい。
「この国はもうこっちのもんですからぁ! 分かったら大人しく水源まで案内しろってんですよぉ!」
「誰が分かるかぁ! 雷閃!」
殴りかかってくる岩人形に向かって、ルドーは聖剣をまた振り上げる。
極太の雷砲撃魔法に、岩人形の腕が、一瞬でじゅわっと蒸発した。
聖剣の攻撃の様子を見たレモコが、赤く焼け落ちた岩人形の腕を一瞥し、ギリッと奥歯を噛み締める。
「直接攻撃は不利ってんですか! ならこっちで行かせてもらいますよ!」
「ああああ! ちょっとなんか、ちっさいのいっぱい出てきたぁ!」
ヒルガの悲鳴にルドーが足元を見れば、フィレイアでレモコとの戦闘の際に見かけた、小さな岩人形が大量発生していた。
「ヒルガ、ニグと一緒に伏せてろ!」
「仰せのままにぃ!」
「おらぁ!」
ルドーが地面に聖剣を突き立て、床表面に一斉に雷魔法を放つ。
雷魔法は床に伏せるヒルガとニグを避け、小さな岩人形を次々と粉々に砕いて行く。
何もできずあっという間に砕けた小さな岩人形に、巨大な岩人形の肩に乗ったままのレモコが、またしてもギリッと歯を食いしばる。
しかしルドーは、レモコの様子に違和感を覚えて眉を顰めた。
「……変だな、古代魔道具持ってるはずなのに、なんで使わないんだ?」
『王族の生き残りだから使えるっつー話だったはずだが、まさか……』
レモコが手に持っているのは、間違いなくベクチニセンスが城で使っていた、マー国の古代魔道具だった。
砲撃魔法での攻撃が出来るはずのそれを、扱えるはずのレモコが持っている。
しかし先程から、レモコは巨大な岩人形で攻撃するばかりで、古代魔道具を全く使う気配がない。
レモコがマー国の王族であることは明確だ。
マー国の王族にしか出現しない、人形遣いという役職持ちであることが、この独特の戦い方から察せられるのだから。
つまり、マー国王族の生き残りであるはずのレモコでも、マー国の古代魔道具をうまく扱い切れてない可能性がある。
「えぇい、うるさい! 余計なこと言ってんじゃないですよぉ!」
疑問に思うルドーに対して、レモコは焦りを滲ませた声色で叫ぶ。
叫ぶと同時にレモコは、岩人形でルドー本体ではなく、その周辺の床を叩き壊した。
崩れる岩の床に、ルドーは慌ててその場から後退して避難する。
ルドーの背後から発せられるヒルガの悲鳴から、まだニグとヒルガは無事だ。
岩人形での攻撃のみの動きに、ルドーの疑問はどんどんと確信へと変わる。
「お前ひょっとして、その鉄の箱、上手く動かせないのか?」
「っ……うるさいんですよエレイーネー!!!」
完全に図星をつかれたレモコの表情が、暗闇の中ビカビカ光る、身体に埋め込まれた魔道具の明かりに浮きあがった。
レモコはその手に持つ、鉄の箱型の古代魔道具を、なぜか王族の生き残りなのに使えない。
どうやらその事実は、ルドーの想像以上にレモコを追い詰め、精神的に摩耗させている様子だった。
「古代魔道具持ってても使えないなら、いける!」
「うるさい! こんなの使えなくても、お前くらいっ!」
確信したルドーが呟けば、逆上したレモコが叫び返す。
暗闇に浮かび上がる魔道具の光が、怒りに満ちたレモコの表情を浮かび上がらせた。
『暗闇の見えない位置から攻撃来るぞ!』
「撃ち返す! 雷閃!」
警告に弾ける聖剣を、ルドーは叫んで振り上げる。
空中から次々と発射される雷の放射魔法。
レモコから少し離れた場所から発射された岩の棘を打ち砕き、一番大きな砲撃が、巨大な岩人形の肩のレモコの本人へと迫る。
真白で極太の砲撃魔法に、レモコは鉄の箱型の古代魔道具を両手に掲げ、雷閃を完全に防ぎきった。
防御魔法を貫通する古代魔道具の攻撃は、同格の古代魔道具でしか防げない。
やはりレモコの持つ鉄のような箱は、ベクチニセンスの城で見た、マー国の古代魔道具だ。
「雷閃を完全に防げたってことは、あれはやっぱ古代魔道具で間違いないな!」
『理由は知らんが、使えないなら今がチャンスだ! 畳みかけろ!』
「なめんじゃないってんですよぉ!!!」
レモコの叫びと共に、巨大な岩人形が恐ろしい勢いでルドーに迫った。
ドスドスと地響きを発する岩人形に向かって、ルドーは聖剣を振りかぶる。
「雷閃!」
「それしか攻撃ないんですかぁ!?」
直撃コースの雷の砲撃魔法に、岩人形が直前でバカンと分解した。
そのまま雷の砲撃を素通りしつつ、ガキンと結合して戻った岩人形に、攻撃をかわされたルドーは反応が一歩遅れる。
一歩遅れたルドーに向かって振り下ろされる、大きな岩の拳。
「潰れちまえええぇ!」
『ルドー!』
「ぐっ!?」
聖剣だけでは厳しいと判断し、ルドーは咄嗟に雷の盾を両腕の腕輪から展開した。
それでも衝撃は重く、ルドーの足元周辺が、バキンと大きく抉れてめり込んだ。
攻撃を相殺して、バチバチと弾ける雷の盾が、周囲が白く照らし出す。
「ま、だ、ま、だぁ!!!」
さらに一押しというように、岩人形の拳の力が増す。
岩人形の空いていたもう片方の腕が振り上げられ、ルドーを叩き潰すようにさらに追撃が入った。
攻撃を防ぐルドーの両肩が外れそうなほど、重い衝撃が一気にのしかかる。
抉れていた足元周辺が、さらにドカンと抉れると同時に、踏ん張っていた感覚がなくなった。
「げっ……落ちる!」
攻撃の衝撃に、岩の床が抜けた。
雷とレモコの魔道具の光が上に移動し、重力に落下していく感覚。
『ボーっと落ちるな! 追撃来るぞ!』
「でぇっ!? マジかよ!?」
警告に聖剣を上にあげた。
その瞬間ルドーと一緒に落下した、巨大な岩人形の肩に乗ったまま、ルドーの上から落下してくるレモコの魔道具の光。
「岩だらけの閉鎖空間じゃ、こっちの方が有利なんですよぉ!」
雷の盾で発せられる雷光で、ルドーの周囲の岩の瓦礫が、次々と人形に変化していくのが見えた。
即座にルドーは両手を動かし、間一髪で叩きつけられるのを防ぐ。
だが空中で衝撃が相殺しきれず、ルドーの落下の勢いがさらに増した。
落下する背後が認識できないまま、ルドーは唐突に下空間の床に大きく叩きつけられる。
衝撃が全身に走り、ビリビリと指の先まで痺れた。
胃のあたりからせり上がってきた液体。
口いっぱいに鉄の味が広がって、大きくむせ返した。
『ルドー! まだ終わってねぇぞしっかりしろ!』
「うっ……」
上手く動かない身体に鞭打ち、ルドーが無理矢理起き上がろうとする。
真っ暗な空間に大きく地響きが響く。
巨大な岩人形がルドーのすぐ傍に着地したのが、レモコの魔道具の光で確認できた。
「一番厄介なあなたをぶっ潰せば、後はいつも通り楽ちんなお仕事ですよねぇ」
蔑むようににんまりと意地汚く笑ったレモコの顔が、魔道具の光に浮かび上がる。
霞む視界に、ふらつきながらなんとか立っているルドーでは、あまりに分が悪過ぎた。
暗闇の中、ズシズシと近付いて来るレモコの魔道具の光を、ルドーは必死に見定める。
すると唐突にカンコンと、金属音が周囲に鳴り響いた。
「っ!? な、一体どこに――――なっ!?」
『!? なんだ!?』
ガチンと金属が大きく嵌まる音と共に、空間が一瞬で青白く照らし出された。
暗闇からの急な眩しさに、ルドーもレモコも目を覆っていると、さらにガチガチと金属音が続く。
ルドーが口周りを聖剣を握る手の甲で拭い、反対の手で頭を叩いて視界をはっきりさせて見回す。
照らし出された空間は、何十人もの人が入るような、まるで土で出来た大きなドーム内部のようだった。
ルドー達が落下してきた際の、岩人形に変化した瓦礫も、ガシャガシャと床に落ちては更に小さく砕け、元の瓦礫の山となって積み上がる。
その空間にポツンと、異様な物体が一つあった。
レモコの岩人形よりも巨大な、空間を縦に割く、大きくて精巧な土人形が、見上げるような壁を背に佇んでいる。
土人形の空っぽの頭部分に、レモコが持っていた鉄の箱が、綺麗にはまり込んでいた。
そのままガチガチと、まるでルービックキューブのような動きをしていると思ったら、鉄の箱は土人形と同じ色、まるで土偶の頭部のような形にあっという間に変化する。
あの両手に収まるような鉄の箱は、マー国王族に伝わる古代魔道具の、ほんの一部分にすぎなかった。
本来の姿を取り戻した、大きくて精巧な土の人形。
それこそマー国王族のみが使える、人形遣いの役職しか動かせない古代魔道具。
つまり、この土人形の後ろにあるのは、探していたマー国の封印されていた水源。
「見つけたああああああああああああ!!!」
「させるかああああああああああああ!!!」
水源を察したルドー同様、レモコもその事実に辿り着いた。
ドスドスと岩人形に乗ったまま、さらに大きな土人形へと向かっていくレモコを、ルドーは後ろから追いかける。
「雷せ――――」
「お助けええええええええええええ!!!」
聖剣を振り上げようとしたルドーの耳に、上から情けない悲鳴が聞こえて咄嗟に見上げる。
先程の崩落に巻き込まれたヒルガが、気絶したニグを抱えたまま、一足遅く落下してきていたところだった。
「ヒルガ! ニグ!」
ルドーは軋む身体も気にしない勢いで二人の方向に走り、落下してきた二人の下に咄嗟に下敷きになった。
二人の人間の落下衝撃に、先程の内部負傷が響いて、ルドーは下敷きになった瞬間血を口から吐き出す。
『おい、まずいぞあっち!』
「邪魔なんですよあなた退いてくれます!?」
聖剣とレモコの叫びに、ルドーがはっとして視線を土人形に戻す。
するとガキンと軋む大きな音を響かせて、土人形が壁から移動していくところだった。
長い年月をそこで佇んでいたのか、古代魔道具の土人形は、移動するだけで砂がパラパラと落ち、広い空間の中央でピタリと止まってまた佇んで動かなくなる。
土人形が背にして立っていた背後の壁には、巨大な両開きの扉が隠されていた。
ルドー達が止める間もなく、その扉をレモコは岩人形の両手でがっしり掴み、勢いよくバタンと開き開ける。
「……は?」
ヒルガがルドーの上から退いて、慌てて立ち上がるルドーの耳に、レモコの小さな声が届いた。
開いた扉から、ルドー達の目にも飛び込んできたもの。
かつて広大な地底湖のような場所だったものが、とっくの昔に変わり果て、砂と岩しか残っていない――――
――――干上がった水源そのものだった。




