表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/234

第二百六話 マー国に隠されていた真実

 

 ヒルガが落下した穴まで戻ったルドーは、ヒルガを肩に抱えたまま、灯りのなくなった暗闇に大声で必死に呼び掛ける。


「ニグ! おい、ニグ、どこだ!?」


 返ってこない返事に、ルドーはニグが言い出したとはいえ、一人にしたことを後悔する。

 ニグに渡していたランタンが割れたために明かりを失い、真っ暗でルドーには何も見えない。


 ニグが気絶して倒れている可能性もある。

 ヒルガを助ける際にルドーが穴の中で行った、雷魔法を乱発しての明かりの確保は、倒れたニグに誤射することも考慮すると出来なかった。


「真っ暗でニグがどこにいるのか、なにがあったかもわかんないな……ヒルガ、光魔法とか使えねぇのかよ!?」


「使えたらとっくに使ってますって! だから念のためにランタンを持ち物に忍ばせてたのに!」


「あのランタンおまえのだったのかよ!?」


 ルドー達がワスラプタの罠に巻き込まれ、この地下に迷い込んでから、ずっと光源として使っていたランタン。


 あれは魔法が使えないヒルガが、事前に用意していたものだった。


「空間拡張魔道具に入れてたのを引っ張り出して、でも灯りになるものはあれだけっすよ!」


『そのランタンにどうやって火を灯したんだよ』


「そりゃもちろん、ライター型魔道具……あっ」


 小さく弾けた聖剣(レギア)の指摘に、ヒルガの声の方向から、服をまさぐるようなバシバシという音がしばらく続く。


「あぁもう暗くて見えない! えーっとえーっと……あったこれこれ!」


 シュポッと小さな音と共に、小さな明かりが灯る。

 ヒルガの顔面を照らし出したライター型の魔道具は、ランタンほどではないものの、小さく周囲を照らし出した。


 砂の散らばる岩の床に、水たまりのように大きく広がった赤い液体、引きずったような血の跡。


 ようやく方向が分かったと、ルドーはまたその方向に声をあげる。


「でかした! これならまだ見える。ニグ! おいニグ!」


「うわっ、結構な血の量……き、気分悪い……」


『慣れてないなら凝視すんな、吐いて倒れちゃ元も子もねぇ』


「ヒルガ、俺の後ろ下がってろ。血の跡はあっちか……」


 火の灯ったライター型魔道具を掲げたまま、ヒルガは気分が悪そうに顔を青くして口を押さえる。

 戦闘ではなく座学のみの基礎科のヒルガに、このような血溜まりへの耐性などないだろう。


 ルドーの指示に、ヒルガはありがたいというようにおとなしく従った。


『あーくそ、一瞬で距離離れてる上、この空間近場じゃねぇとよくわからねぇ』


「よくわからないのか?」


『同じ部屋くらい近場ならまだ何とかなるが……水源封印してる古代魔道具の影響か、俺でも周囲が分かりにくいな……』


 危険に対する警告を発する聖剣(レギア)なりに、ニグの居場所を特定しようとしていてくれたようだ。

 だが水源を封印する古代魔道具から、妨害魔法でも出ているのか、聖剣(レギア)でさえこの空間は上手く認識できない。


 同格の古代魔道具での妨害魔法だ。

 同じ古代魔道具の聖剣(レギア)では、現物をなんとかしない限りどうにもならないだろう。


「ならこの血の跡追うしかねぇか……走るぞヒルガ! 離れるなよ!」


「お願いします置いてかないで捨て置かないで見捨てないでぇ!!!」


 走り始めたルドーの後を、ヒルガがライター型魔道具を抱えたまま、泣き叫びつつ続く。


 ルドーが一定距離を離れれば、同時に明かりが離れて周囲が確認できない。

 ヒルガに明かりを持たせることで、ヒルガの安全確認をしながら、ルドーはニグを探して焦りつつ先を急ぐ。


 先程ヒルガの頭上に落下してきた、蛇型小規模魔物が全く見当たらない。

 一般人のニグには、あれを倒すことは不可能だ。


 つまりニグを襲ったのは、魔物を倒した第三者の可能性が高い。


 時折ライター型魔道具の小さな明かりに、地下の独房周辺で見かけた、骸骨と化した死体の横を通り過ぎる。

 浮かび上がる白骨に、ヒルガが悲鳴をあげるのを後ろに聞きながら、ルドーがどんどん薄くなっていく血の跡を追っていく。

 すると前方から、大きな衝撃音と悲鳴が聞こえた。


「やぁっと生きてる人間に会えましたぁ! グチャッと潰されたくなかったら、この空間案内してくれませんかねぇ!」


「この声、あいつ!」


 聞き覚えのある声が聞こえて、ルドーは前方に向かって足を速める。

 走りつつ聖剣(レギア)を構え直せば、広い通路の曲がり角を抜ける。


 その先でルドーの目に飛び込んできたのは、巨大な岩人形が血塗れのニグを吊り下げ、その巨大な手でギリギリと締め上げている所だった。


「雷閃!」


「うわぁ!」


 ルドーが目にした瞬間聖剣(レギア)を振り上げれば、雷の極太放射魔法が空中から次々発射される。

 ニグを吊り上げる岩人形の両腕に見事命中し、バラバラと音を立て、ニグと一緒にドスンと砕けた腕が地面に落下した。


「エレイーネーの雷聖剣双子勇者! いい加減にしろってんですよ!」


 岩人形の肩に乗る、水色ツインテールのゴスロリ少女。


 身体のあちこちに魔道具が埋め込まれ、魔法にビカビカ怪しく光っている、鉄線元幹部のレモコがそこにいた。


「そりゃこっちのセリフだ! 雷転斬!」


 レモコに向かって、ルドーは聖剣(レギア)を回転させて放り投げる。

 バリバリと雷魔法を発しながら、回転のこぎりのように飛んできた聖剣(レギア)を、レモコが咄嗟に岩人形から飛び避けて身を躱した。


 その瞬間、ルドーは腕輪を媒介に、雷の速度でその場に移動する。


 バシッと聖剣(レギア)を握り直し、レモコに向かってさらに振りかぶって牽制にかかった。


 レモコは咄嗟に四角い鉄の箱のようなもので、聖剣(レギア)の攻撃を防いだ。

 レギアの黒い刀身と、鉄のような箱がガキンと大きく弾ける音と共に、ルドーもレモコも背後に大きく吹き飛んでいく。


 牽制にレモコを大きく吹き飛ばしたルドーは、そのまま倒れているニグの傍に着地し呼び掛ける。


「ニグ、しっかりしろ、おいニグ!」


『まだ息はある。ルドー、回復魔法薬はどうした!』


「そうだ回復魔法薬……でぇっ!? 割れてるぅ!?」


 聖剣(レギア)に言われて、ルドーは慌てて制服の内ポケットを探る。

 しかし引っ張り出した魔法薬の瓶は蓋だけ。

 肝心の中身部分は、ごっそり割れてどこかに落ちた後だった。


『罠に砂まみれになって落下したときか、そりゃそうか……』


「なんですかぁ! そっちも迷子ですかぁ!? だったらそっちが案内してくれてもいいってんですよぉ!」


 ルドーが血まみれでぐったりしたニグを抱えている前で、レモコがまたバキバキと岩人形の腕を組み上げ始めた。

 攻撃が来ると判断したルドーは、とっさに血まみれのニグをヒルガに押し付ける。


「あぁもう今それどころじゃ! ヒルガ、ニグ頼んだ!」


「えぇ!? 俺ぇ!?」


「あいつは俺がなんとかするから! ヒルガ、せめて応急処置だけでも!」


「お返事くらいできないんですかぁ! エレイーネーのいい子ちゃんさんはぁ!」


 振り上げられた岩人形の拳に、ルドーは咄嗟に身を翻して躱した。

 地面がドスンと大きく抉られ、砂が周囲に大きく舞い散る。


『気を付けろ! さっきの攻撃防いだあの箱!』


「あぁ! ベクチニセンスの城で見た、マー国の古代魔道具!」


 横回転しながら受け身を取ったルドーは、振り返りながらレモコの方を凝視する。


 ライター型魔道具の小さな薄暗い明かりしかない中、レモコの身体に埋め込まれた魔道具の怪しい光。

 標的はあそこだといわんばかりに、ビカビカ光っていてわかりやすい。


「この国はもうこっちのもんですからぁ! 分かったら大人しく水源まで案内しろってんですよぉ!」


「誰が分かるかぁ! 雷閃!」


 殴りかかってくる岩人形に向かって、ルドーは聖剣(レギア)をまた振り上げる。

 極太の雷砲撃魔法に、岩人形の腕が、一瞬でじゅわっと蒸発した。


 聖剣(レギア)の攻撃の様子を見たレモコが、赤く焼け落ちた岩人形の腕を一瞥し、ギリッと奥歯を噛み締める。


「直接攻撃は不利ってんですか! ならこっちで行かせてもらいますよ!」


「ああああ! ちょっとなんか、ちっさいのいっぱい出てきたぁ!」


 ヒルガの悲鳴にルドーが足元を見れば、フィレイアでレモコとの戦闘の際に見かけた、小さな岩人形が大量発生していた。


「ヒルガ、ニグと一緒に伏せてろ!」


「仰せのままにぃ!」


「おらぁ!」


 ルドーが地面に聖剣(レギア)を突き立て、床表面に一斉に雷魔法を放つ。

 雷魔法は床に伏せるヒルガとニグを避け、小さな岩人形を次々と粉々に砕いて行く。


 何もできずあっという間に砕けた小さな岩人形に、巨大な岩人形の肩に乗ったままのレモコが、またしてもギリッと歯を食いしばる。


 しかしルドーは、レモコの様子に違和感を覚えて眉を顰めた。


「……変だな、古代魔道具持ってるはずなのに、なんで使わないんだ?」


『王族の生き残りだから使えるっつー話だったはずだが、まさか……』


 レモコが手に持っているのは、間違いなくベクチニセンスが城で使っていた、マー国の古代魔道具だった。

 砲撃魔法での攻撃が出来るはずのそれを、扱えるはずのレモコが持っている。


 しかし先程から、レモコは巨大な岩人形で攻撃するばかりで、古代魔道具を全く使う気配がない。


 レモコがマー国の王族であることは明確だ。

 マー国の王族にしか出現しない、人形遣いという役職持ちであることが、この独特の戦い方から察せられるのだから。


 つまり、マー国王族の生き残りであるはずのレモコでも、マー国の古代魔道具をうまく扱い切れてない可能性がある。


「えぇい、うるさい! 余計なこと言ってんじゃないですよぉ!」


 疑問に思うルドーに対して、レモコは焦りを滲ませた声色で叫ぶ。

 叫ぶと同時にレモコは、岩人形でルドー本体ではなく、その周辺の床を叩き壊した。


 崩れる岩の床に、ルドーは慌ててその場から後退して避難する。

 ルドーの背後から発せられるヒルガの悲鳴から、まだニグとヒルガは無事だ。


 岩人形での攻撃のみの動きに、ルドーの疑問はどんどんと確信へと変わる。


「お前ひょっとして、その鉄の箱、上手く動かせないのか?」


「っ……うるさいんですよエレイーネー!!!」


 完全に図星をつかれたレモコの表情が、暗闇の中ビカビカ光る、身体に埋め込まれた魔道具の明かりに浮きあがった。


 レモコはその手に持つ、鉄の箱型の古代魔道具を、なぜか王族の生き残りなのに使えない。


 どうやらその事実は、ルドーの想像以上にレモコを追い詰め、精神的に摩耗させている様子だった。


「古代魔道具持ってても使えないなら、いける!」


「うるさい! こんなの使えなくても、お前くらいっ!」


 確信したルドーが呟けば、逆上したレモコが叫び返す。

 暗闇に浮かび上がる魔道具の光が、怒りに満ちたレモコの表情を浮かび上がらせた。


『暗闇の見えない位置から攻撃来るぞ!』


「撃ち返す! 雷閃!」


 警告に弾ける聖剣(レギア)を、ルドーは叫んで振り上げる。


 空中から次々と発射される雷の放射魔法。

 レモコから少し離れた場所から発射された岩の棘を打ち砕き、一番大きな砲撃が、巨大な岩人形の肩のレモコの本人へと迫る。


 真白で極太の砲撃魔法に、レモコは鉄の箱型の古代魔道具を両手に掲げ、雷閃を完全に防ぎきった。


 防御魔法を貫通する古代魔道具の攻撃は、同格の古代魔道具でしか防げない。

 やはりレモコの持つ鉄のような箱は、ベクチニセンスの城で見た、マー国の古代魔道具だ。


「雷閃を完全に防げたってことは、あれはやっぱ古代魔道具で間違いないな!」


『理由は知らんが、使えないなら今がチャンスだ! 畳みかけろ!』


「なめんじゃないってんですよぉ!!!」


 レモコの叫びと共に、巨大な岩人形が恐ろしい勢いでルドーに迫った。

 ドスドスと地響きを発する岩人形に向かって、ルドーは聖剣(レギア)を振りかぶる。


「雷閃!」


「それしか攻撃ないんですかぁ!?」


 直撃コースの雷の砲撃魔法に、岩人形が直前でバカンと分解した。

 そのまま雷の砲撃を素通りしつつ、ガキンと結合して戻った岩人形に、攻撃をかわされたルドーは反応が一歩遅れる。


 一歩遅れたルドーに向かって振り下ろされる、大きな岩の拳。


「潰れちまえええぇ!」


『ルドー!』


「ぐっ!?」


 聖剣(レギア)だけでは厳しいと判断し、ルドーは咄嗟に雷の盾を両腕の腕輪から展開した。

 それでも衝撃は重く、ルドーの足元周辺が、バキンと大きく抉れてめり込んだ。


 攻撃を相殺して、バチバチと弾ける雷の盾が、周囲が白く照らし出す。


「ま、だ、ま、だぁ!!!」


 さらに一押しというように、岩人形の拳の力が増す。

 岩人形の空いていたもう片方の腕が振り上げられ、ルドーを叩き潰すようにさらに追撃が入った。


 攻撃を防ぐルドーの両肩が外れそうなほど、重い衝撃が一気にのしかかる。


 抉れていた足元周辺が、さらにドカンと抉れると同時に、踏ん張っていた感覚がなくなった。


「げっ……落ちる!」


 攻撃の衝撃に、岩の床が抜けた。

 雷とレモコの魔道具の光が上に移動し、重力に落下していく感覚。


『ボーっと落ちるな! 追撃来るぞ!』


「でぇっ!? マジかよ!?」


 警告に聖剣(レギア)を上にあげた。

 その瞬間ルドーと一緒に落下した、巨大な岩人形の肩に乗ったまま、ルドーの上から落下してくるレモコの魔道具の光。


「岩だらけの閉鎖空間じゃ、こっちの方が有利なんですよぉ!」


 雷の盾で発せられる雷光で、ルドーの周囲の岩の瓦礫が、次々と人形に変化していくのが見えた。


 即座にルドーは両手を動かし、間一髪で叩きつけられるのを防ぐ。

 だが空中で衝撃が相殺しきれず、ルドーの落下の勢いがさらに増した。


 落下する背後が認識できないまま、ルドーは唐突に下空間の床に大きく叩きつけられる。


 衝撃が全身に走り、ビリビリと指の先まで痺れた。

 胃のあたりからせり上がってきた液体。

 口いっぱいに鉄の味が広がって、大きくむせ返した。


『ルドー! まだ終わってねぇぞしっかりしろ!』


「うっ……」


 上手く動かない身体に鞭打ち、ルドーが無理矢理起き上がろうとする。


 真っ暗な空間に大きく地響きが響く。


 巨大な岩人形がルドーのすぐ傍に着地したのが、レモコの魔道具の光で確認できた。


「一番厄介なあなたをぶっ潰せば、後はいつも通り楽ちんなお仕事ですよねぇ」


 蔑むようににんまりと意地汚く笑ったレモコの顔が、魔道具の光に浮かび上がる。


 霞む視界に、ふらつきながらなんとか立っているルドーでは、あまりに分が悪過ぎた。


 暗闇の中、ズシズシと近付いて来るレモコの魔道具の光を、ルドーは必死に見定める。


 すると唐突にカンコンと、金属音が周囲に鳴り響いた。



「っ!? な、一体どこに――――なっ!?」


『!? なんだ!?』


 ガチンと金属が大きく嵌まる音と共に、空間が一瞬で青白く照らし出された。


 暗闇からの急な眩しさに、ルドーもレモコも目を覆っていると、さらにガチガチと金属音が続く。


 ルドーが口周りを聖剣(レギア)を握る手の甲で拭い、反対の手で頭を叩いて視界をはっきりさせて見回す。


 照らし出された空間は、何十人もの人が入るような、まるで土で出来た大きなドーム内部のようだった。

 ルドー達が落下してきた際の、岩人形に変化した瓦礫も、ガシャガシャと床に落ちては更に小さく砕け、元の瓦礫の山となって積み上がる。


 その空間にポツンと、異様な物体が一つあった。


 レモコの岩人形よりも巨大な、空間を縦に割く、大きくて精巧な土人形が、見上げるような壁を背に佇んでいる。


 土人形の空っぽの頭部分に、レモコが持っていた鉄の箱が、綺麗にはまり込んでいた。

 そのままガチガチと、まるでルービックキューブのような動きをしていると思ったら、鉄の箱は土人形と同じ色、まるで土偶の頭部のような形にあっという間に変化する。


 あの両手に収まるような鉄の箱は、マー国王族に伝わる古代魔道具の、ほんの一部分にすぎなかった。


 本来の姿を取り戻した、大きくて精巧な土の人形。

 それこそマー国王族のみが使える、人形遣いの役職しか動かせない古代魔道具。



 つまり、この土人形の後ろにあるのは、探していたマー国の封印されていた水源。




「見つけたああああああああああああ!!!」


「させるかああああああああああああ!!!」


 水源を察したルドー同様、レモコもその事実に辿り着いた。

 ドスドスと岩人形に乗ったまま、さらに大きな土人形へと向かっていくレモコを、ルドーは後ろから追いかける。


「雷せ――――」


「お助けええええええええええええ!!!」


 聖剣(レギア)を振り上げようとしたルドーの耳に、上から情けない悲鳴が聞こえて咄嗟に見上げる。

 先程の崩落に巻き込まれたヒルガが、気絶したニグを抱えたまま、一足遅く落下してきていたところだった。


「ヒルガ! ニグ!」


 ルドーは軋む身体も気にしない勢いで二人の方向に走り、落下してきた二人の下に咄嗟に下敷きになった。

 二人の人間の落下衝撃に、先程の内部負傷が響いて、ルドーは下敷きになった瞬間血を口から吐き出す。


『おい、まずいぞあっち!』


「邪魔なんですよあなた退いてくれます!?」


 聖剣(レギア)とレモコの叫びに、ルドーがはっとして視線を土人形に戻す。

 するとガキンと軋む大きな音を響かせて、土人形が壁から移動していくところだった。


 長い年月をそこで佇んでいたのか、古代魔道具の土人形は、移動するだけで砂がパラパラと落ち、広い空間の中央でピタリと止まってまた佇んで動かなくなる。


 土人形が背にして立っていた背後の壁には、巨大な両開きの扉が隠されていた。


 ルドー達が止める間もなく、その扉をレモコは岩人形の両手でがっしり掴み、勢いよくバタンと開き開ける。


「……は?」


 ヒルガがルドーの上から退いて、慌てて立ち上がるルドーの耳に、レモコの小さな声が届いた。


 開いた扉から、ルドー達の目にも飛び込んできたもの。


 かつて広大な地底湖のような場所だったものが、とっくの昔に変わり果て、砂と岩しか残っていない――――




 ――――干上がった水源そのものだった。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ