第百九十七話 砂の中の攻防
勇者狩りを倒せたならば、あの探知特化の古代魔道具を、一刻も早く奪い返さなければ。
そしてマー国をどうにかしようとしている、マフィア組織線連の対策に、エレイーネーに合流しなければならない。
しかし、突然発生した砂嵐に、全員が足止めをくらっていた。
「……歩く災害がでたのか」
「エリンジくん、回復まだ終わってないからじっとしてて!」
ルドーとクロノの会話に、砂の上で横たわってリリアに回復魔法をかけられているエリンジが起き上がる。
雷閃を直撃させて、その強大な魔力を自身に纏わせての攻撃。
エリンジの負担が大きい戦い方に、リリアの回復魔法でも、中々回復が間に合っていない。
「歩く災害が出たなら放置できんぞ」
「エリンジくんまだ動かないでってば!」
立ち上がろうとしてふらつくエリンジを、リリアが強めに引き留めた。
雷閃を大量に直撃した身体では、攻撃魔力を自身の力に変換しても、ダメージは蓄積する。
疑似戦で成功させた際も、エリンジの回復はかなり時間がかかった。
エリンジはすぐに動ける状態ではない。
戦闘などもってのほかだったが、それを聞き入れられるほど、エリンジも甘いやつではない。
なんとか事態に対処しようと立ち上がろうとするエリンジを、リリアは更にスパンと引っ叩いた。
「つったって外の状況これだぞ、動けねぇのにどうしろってんだよ」
カイムが周囲を警戒するように視線をあちこち向ける。
砂嵐のせいで、ルドー達はカイムの髪で作られたシェルターの中にいるのだ。
カイムがシェルター状の髪を解いたところで、激しく渦巻く砂に、視界は確保できない。
空中を飛散する砂が魔力を攪拌するせいで、自身に影響する魔法以外は、まともに使えない状況。
つまり、歩く災害を視認することも、戦うことも、今は出来ない。
焦るルドーは、気配で確認できないかとクロノの方を向く。
「クロノ、歩く災害の動き見えるか?」
「今のところ動いてない。多分、砂嵐にあれも慣れてない」
クロノはこの砂嵐でも、歩く災害の場所は気配でわかるようだ。
返答を聞いたルドーは少し安堵する。
「あのぉ! 歩く災害ってなに!? なんか空気明らかに変わってますけど怖い事起きてます?!」
狼狽えて叫ぶヒルガに、ルドー達は誰も答えない。
基礎科生徒であるヒルガには、話こそ聞きはしても、実物は知らないだろう。
一方魔法科生徒は全員、既にウガラシで歩く災害に遭遇し、その脅威も目の当たりにしている。
叩き潰すだけで人が潰れる、その圧倒的な脅威を。
視界が見えない砂嵐の中、その脅威が突如として放り込まれた。
歩く災害は本来、大陸中央に広がる、中央魔森林の中にいた脅威。
中央魔森林の中に国を形成する魔人族の村で、遭遇すれば壊滅するとされている。
森の中にずっといた歩く災害も、森の外の砂嵐の状況にまだ慣れていないようだ。
中央魔森林で遭遇したときは、あまりの威圧にルドーは動けなかった。
ウガラシで実際に人を潰していく姿を目の当たりにして、その理不尽な暴力に、ルドーは頭が真っ白になった。
歩く災害には、その体を覆っているおぞましい量の魔力層を、圧倒的な力で破壊しなければ攻撃が通らない。
攻撃が通らなければ倒せない理不尽な相手を、この状況でどうやって対処する。
「カイム!」
クロノの叫び声に、ルドーは思考から現実に引き上げられた。
ドスッとカイムは、シェルター状に広げた自身の髪に叩き付けられている。
うめき声をあげるカイムは、そのままシェルターの髪の壁に、押し付けられるように頭を引かれた。
カイムから伸びる赤褐色の髪の一部が、ギリギリとシェルターの外から、なにかに強く引っ張られている。
訳の分からない状況に、ヒルガが飛び上がって叫んだ。
「ひぃっ!? なになになに!?」
「カイにぃ!」
「ライア、背中に! カイム、そのまま髪の硬化に集中して!」
「えっ、ちょ、おい!」
髪ごと頭を引っ張られるカイムに、クロノがライアを背負ったまま駆け寄る。
そのままクロノは、カイムに抱き付くような形で引っ張られている髪を掴むと、カイムごと抱き込むようにグイッと引っ張り返し始めた。
ギリギリと髪を引き合う攻防が続く。
「ねぇ! 勇者狩りが持ってた古代魔道具どうしたの!?」
「なっ……これ、さっきカイムが捕まえようとして、外に放置した勇者狩りか!?」
クロノの叫びに、ルドーはまさかと驚愕した。
砂嵐が急に発生したため、ルドー達は勇者狩りを放置し、シェルターの中に入ることを余儀なくされた。
聖剣の雷魔法を吸収したエリンジによって、身体強化した物理的な拳と、雷魔法を大量に叩き込まれ、煙をあげて白目をむいて気絶していた勇者狩り。
それがこの砂嵐の中で気付いて、カイムの髪の拘束から逃れようと暴れはじめていた。
驚愕に聖剣がバチンと弾ける。
『嘘だろ!? あれだけやってまだ動けるのか!?』
「だから古代魔道具はどうしたわけ!?」
「あの後すぐ砂嵐だ! そのままだよくそが!」
カイムが赤褐色の髪を強化するのに集中しながら、クロノの腕の中で吠えた。
勇者狩りは古代魔道具の羅針盤を取り落していた。
しかし突如として発生した砂嵐に、羅針盤を拾う暇もなく、カイムの髪のシェルターに全員避難したのだ。
つまり、古代魔道具の羅針盤は、今もそのまま。
砂嵐で視界が悪い中、勇者狩りが落ちたままの羅針盤を拾えるかどうかは、運でしかない。
クロノとカイムの勇者狩りとの攻防に、エリンジは必死に立ち上がろうとする。
「ルドー、もう一度だ! 今度こそしとめる!」
「ダメだよエリンジくん! 今あれやったら今度こそ死んじゃう!」
無理をして立ち上がろうとするエリンジを、リリアが回復魔法をかけながら押し留める。
実際リリアに押し留められてまた崩れる程、エリンジのダメージは大きい。
ルドーは敵対探知で、せめて勇者狩りの居場所を探ろうとする。
だがシェルターの外の砂嵐が、それを邪魔し、渦巻くだけでまともに魔力を拾えない。
「エリンジ無茶すんな! 聖剣、敵意迎撃は!?」
『雷が砂に全部吸われてる! 外じゃまともに効果でねぇぞこれ!』
砂嵐の砂に雷が吸われ、展開していた敵意迎撃が無効化されていた。
カイムの髪越しにルドーが攻撃しようにも、防御魔法を貫通するため、カイムにも同じだけダメージが入る。
何より砂嵐の中では、雷魔法は全て砂に吸われてまともに攻撃が届かない。
今この状況で勇者狩りに対して、どうやって攻撃すればいい、
「っ!?」
唐突に、カイムの髪を引っ張っていたクロノが倒れた。
背負っていたライアを庇い、カイムとクロノが横に折り重なって砂を巻き上げる。
「いっづ!」
「なんだ!?」
「急に引っ張る力が……」
「カイにぃ前!」
ライアの叫びにルドー達が正面を向く。
それとほぼ同時に、カイムの髪のシェルターがざっくりと横に切り裂かれた。
大量の砂が一斉に入り込んで、視界が見えなくなる。
ルドーの手元で聖剣が警告に弾けた。
『気を付けろ!』
「がぁっ!?」
「カイム!」
「カイにぃ!」
ルドーが砂で何も見えない中、カイムの悲鳴とクロノとライアの声が聞こえる。
ルドーは思わず叫んだ。
「おい! なんだよ!? 何が起こった!?」
「髪の拘束解くためにこんな……ライア、カイムに回復して!」
「カイにぃ! やだ、カイにぃ!」
「ライア! ごめん、お願い、気をしっかりして!」
回復を叫ぶクロノの声に、カイムが負傷したことだけはルドーにもわかった。
泣き叫ぶライアの声に、カイムが答えない様子から、意識を失っている可能性が高い。
勇者狩りがシェルターに侵入し、髪で拘束しているカイムを攻撃して、振りほどいたのだ。
カイムの負傷に、髪のシェルターがほどけてさらに砂嵐は威力を増す。
クロノが必死にライアを落ち着かせて、回復を掛け始める声が響く。
エリンジの叫び声も聞こえた。
「クロノ! カイムは!?」
「大丈夫、致命傷じゃない!」
カイムの反応はないが、一命は取り留めているようだ。
やはり勇者狩りは、勇者しか殺す気がないのか。
エリンジの傍で回復を掛けていたリリアの声も聞こえてくる。
「エリンジくん無理に立たないで!」
「おたすけぇ! おたすけぇ!」
視界が砂一色の中、叫び合う声だけが聞こえる。
カイムが倒れた今、もう砂嵐をどうにかする術も、ない。
勇者狩りも、歩く災害も、この渦巻く砂の中だ。
状況をなんとかできないかと、ルドーは叫ぶ。
「くそ、視界が悪くてなんも見えねぇ! 聖剣、勇者狩りと歩く災害わかるか!?」
『歩く災害も動き出してやべぇ! 勇者狩りの方はわからねぇままだ!』
「それなら余計早くなんとかしねぇと……」
「ルドー、後ろ!」
クロノの叫び声と同時に、ルドーは襟首を掴まれて後ろにぐいっと引っ張られた。
「でぇっ!?」
渦巻く砂の中、地面から足が離れ、どこか遠くに吹っ飛ばされる感覚。
一斉に全員の叫び声が遠ざかっていく。
どこかの砂の上をごろごろと転がる。
衝撃に目と鼻と口に、大量の砂が舞い込んでくる。
『ボケッとしてる暇ねぇぞ! 起きろ!』
「つったってこんなのどう防げってんだよ!」
慌てる聖剣の声に、ルドーも起き上がりながら言い返す。
砂を吐き出し、目に入った砂をなんとか振り落とす。
相変わらず視界は渦巻く砂色だ。
勇者狩りを警告するクロノの声も聞こえなくなった。
ルドーは今自分がどこにいるのか、エリンジ達がどこにいるのかも分からない。
「――――歪んだ平和の象徴」
ルドーの背後から、殺気を感じた。
咄嗟にレギアを構えて振り上げた瞬間、ルドーの腕に激しい衝撃が伝う。
目の前に、勇者狩りがサバイバルナイフを振り下ろしてきていた。
エリンジの攻撃は、勇者狩りにかなり効いていた。
かつてモルフォゼで襲われた時より、勇者狩りの攻撃が遅くなっている。
だから今のルドーでも応対できたのだ。
勇者狩りのサバイバルナイフを持つ腕が、まだ痺れているのか、ブルブルと震えている。
尋常ではない、異様な殺気が、勇者狩りからルドーに降り注がれる。
「うっ……」
『しっかりしろルドー! 気合いで負けたらそれまでだぞ!』
向けられる殺意に、ルドーは気押されるように攻撃が押される。
聖剣の声にハッとして、なんとか歯を食いしばって耐えた。
周囲は相変わらず砂嵐が渦巻いて、目の前にいる勇者狩りですら、視認しにくい。
エリンジの攻撃で弱体化し、ルドーはようやくまともに勇者狩りの相手が出来た。
「えぇい、なんなんだよ! 勇者になんの恨みがあんだよ!」
気合いで押し潰されないようにと、ルドーは勇者狩りに叫んだ。
徹底して勇者のみを狙うその意図を問い質す。
いくら過去の資料を探しても、勇者狩りの動機は不明のままだった。
ルドーが目の前の勇者狩りを問い質しても、殺意を向けられたまま、鍔迫り合いが続く。
「勇者、即ち、歪んだ平和の象徴……!」
「それしか言ってねぇなお前!」
モルフォゼでも、ここで再会しても、勇者狩りはこれしかルドー達に言っていない。
つまりこれが勇者狩りの動機だ。
だが情報が少なすぎて、何をどうしてそこから勇者狩りに発展するのか、ルドーにはわからない。
歪んだ平和の象徴。
この言葉から少なくとも勇者狩りには、勇者に対する強烈な恨みでもあるのか。
ルドーと勇者狩りの攻防が拮抗する中、手の中で聖剣がバチンと弾ける。
『おい一旦引け!』
おぞましい独特の咆哮が、二人の頭上から響いた。
レギアの警告にルドーが間一髪身を引けば、砂嵐にぬっとあらわれた黒い影が、大きくその両手を握って振り下ろしてきた。
三メートルはある真っ黒な巨体に、不規則でボロボロの歯を覗かせる、不気味に横に引き伸びた口。
頭部の側面、上から下まである巨大な目玉が、ギョロギョロと焦点が定まらないまま動き続ける。
歩く災害。
聖剣の警告に、ルドーは間一髪間に合って、その理不尽な暴力を避けることが出来た。
だがエリンジの攻撃に、動きの鈍った勇者狩りの回避は遅れた。
身を下げようとした勇者狩りの左腕が、歩く災害の一撃に直撃する。
ぐしゃりと、肉と骨が砕け散る音が、砂嵐の轟音の中にも、ルドーの耳に大きく響く。
至近距離のそれに、砂色の視界に赤い飛沫が飛び散る。
声にならない絶叫が、勇者狩りの口から叫ばれる。
ルドーの脳裏に、地獄だったウガラシの光景が過った。
「やめろおおおおおおおおおおおお!!!」
咄嗟に聖剣を振り上げると、ルドーの動きに呼応するように、周辺の砂嵐がズバッと開けた。
そのまま直上まで開けた上空に、真っ黒な雷雲が形成される。
目の前の歩く災害に、ルドーは聖剣を振り下ろす。
砂嵐の開けた中心を、巨大な竜の雷が真直ぐ落下してきた。
その牙を剥く口で丸呑みするように、雷竜落が歩く災害に直撃する。
黒い血のような液体を噴き出し、口からも吐き出しながら、歩く災害が大きく咆哮する。
『殺そうとしてきた相手まで助けるとか、お人好しにも程があんぞ、ルドー!』
「あのまま死なせられるかよ! それより今はこっちだ!」
聖剣の大声に、ルドーは叫び返す。
左腕が潰れて倒れたままの勇者狩りを一瞥した後、ルドーは歩く災害を見据える。
雷竜落によって、おぞましい量の魔力層が破壊された歩く災害は、血のように黒い液体を、ひび割れた全身から撒き散らしている。
「魔力層は破壊した、後はあいつにトドメさすだけだ」
『そのトドメに毎度苦労してんだろ、動き止めるのどうする気だ』
聖剣の問いに、ルドーは沈黙で返す。
歩く災害を止める方法など、ルドーは何も考えてなどいないのだ。
黒い液体を垂れ流したまま、歩く災害が恐ろしい勢いで突っ込んできた。
ルドーは咄嗟に砂に身を翻し、間一髪で躱す。
だが歩く災害は、そのまま砂嵐が吹き荒む空間にボスンと突っ込んで、姿が見えなくなってしまう。
『まずいぞ! 魔力で大体場所が分かっても、あの速さじゃ視認できなきゃ避けれねぇだろ!』
「あぁもう! ここみたいにあの砂嵐なんとかできないのかって!」
雷竜落を放った際の影響か、ルドーの居る周辺は、砂嵐が開けたままになっていた。
しかし歩く災害は、ルドーを中心に円柱状に囲う砂嵐の中に消えている。
「なぜ助けた……」
ルドーが砂嵐の空間に突っ込んでいった歩く災害を警戒していると、背後から声が聞こえた。
勇者狩りが、潰れた左腕を押さえて倒れ、向ける殺気もそのままにルドーに問いかけている。
砂に広がっていく赤い染み。
どう見ても勇者狩りの傷はかなりのものだ。
睨み付けてくる殺気立った視線に、ルドーは首だけ振り返ったまま大きく溜息を吐く。
「……助けた理由なんかないって。助けたかったから助けた。それだけだよ」
ルドーは素直にそう答えたが、途端に勇者狩りは低く唸り始めた。
それが抗議の音なのか、それとも悩む音なのか、ルドーには判別がつかない。
倒れたままの勇者狩りを無視して、ルドーは歩く災害に対処しようと周囲を見渡す。
砂嵐が渦巻いている空間では、雷魔法が砂に吸われて使えない。
雷竜落を当てようにも、あの歩く災害の動きを止めなければまず当たらない。
雷竜落で魔力層が破壊される程負傷し、歩く災害の動きはかなり遅くなっている。
歩く災害の攻撃はなんとか避けられるが、あの速度だとまだ攻撃を当てることは難しい。
どうすれば歩く災害に、攻撃を通すことが出来る。
「古代魔道具がどのようにして作られたか、知っていてそれを振るっているのか!? 古代魔道具を使う勇者!」
突如として背中から叫ばれた勇者狩りの言葉に、ルドーは驚愕に固まってしまった。
ルドーの手の中で、聖剣が激しくバチバチと大量に弾ける。
ゆっくりと、ルドーは疑問を抱いたまま、勇者狩りを振り返る。
古代魔道具は、その製作方法も知られていない、未知の部分ばかりのオーパーツ。
それがどうやって作られているのか、勇者狩りは知っているというのか。
こいつは、何を知って、何を考えて勇者を殺そうとしている。
「知らずにそれを振るっているのか! 古代魔道具が、この世界の仕組みがどうなっているか、分からずに勇者を名乗って、女神に加担しているのだろうな!」
「なんなんだよ!? なんでそこで女神が出てくるんだ!?」
勇者狩りによって、訴えるように叫び続けられる内容に、ルドーは訳が分からず混乱して叫び返す。
腕を押さえて倒れたまま、勇者狩りは傷口も気にせず大声を上げ続ける。
「誰によって役職を授けられる!? 誰によって勇者はその国に存在する!? 女神が本当に慈悲深いならば、なぜあのような化け物がこの世界に存在するのだ!」
勇者狩りの叫ぶ内容に、ルドーは何もわからずただただ狼狽えた。
役職は、女神によってこの世界の人間に授けられる。
勇者と聖女は、国の行く末を嘆いた女神の慈悲によって、国にそれぞれ最低一人存在する。
ならばなぜ、女神は魔物そのものをどうにかしようとしないのか。
人を理不尽に蹂躙する歩く災害はなぜ、この世に存在を許されているのか。
訴えられる叫びを聞いて、少なくともルドーはようやくわかった。
勇者狩りは、こいつは、女神が授けた勇者という役職に疑問を抱いて、殺そうとしている。
「ルドにいいいいいいいいいいいい!!!」
狼狽えるルドーに、叫び声が響き渡った。
ルドーの真横を、ルドーの背丈よりも大きな、巨大な魔法攻撃が通過していく。
攻撃の余波で砂嵐が吹き飛んでいく中、ルドーの背後に回り込んでいた、歩く災害にその真白な魔法攻撃が直撃した。
ルドーが攻撃に振り返れば、クロノに支えられたカイムと、エリンジとリリアが支えたライアが、魔力伝達によって増幅した魔力で、歩く災害に砲撃魔法を放っていた。
「くたばれってんだよくそがああああああああ!!!!」
カイムの叫びと同時に、砲撃魔法の威力が一段と増し、歩く災害が吹き飛ばされた。
魔力層の破壊された歩く災害が、巨大な魔法攻撃に、ボロボロと崩れていく。
強力な魔力に吹き飛ばされるように、砂嵐が少しずつ収まり晴れていく。
「歪んだ平和の象徴、勇者よ、その内後悔するぞ」
不気味な言葉にルドーが振り返れば、勇者狩りはまた忽然と姿を消していた。
古代魔道具、女神、勇者。
一体何が、どういう繋がりがあるか、分からないまま。
冷汗が滲むルドーの掌の中で、古代魔道具の聖剣が、動揺するようにバチバチと弾け続けていた。




