番外編 ネルテ先生の生徒観察記録.15
「うーん、向上心が強いのは良き事かな」
「貴方はもうちょっと事務仕事に向上心持ってくれませんかね」
ピスピスとマルスのいつもの鼻息が響く職員室で、ネルテが生徒達の記録を確認していると、ヘーヴから苦言が飛んできた。
ネルテはまだトルポの製薬施設モルフォゼでの一件を、報告書にまとめていない。
厳重待機を命じられていたのに、他に方法がないと、生徒も引き連れてのモルフォゼでの戦闘。
厳罰は覚悟していたが、そもそもの待機命令を出してきたタナンタに、自分から謝罪に行けとヘーヴには申し付けられている。
謝罪に行った瞬間、声量が桁違いのタナンタの、鼓膜が破けんばかりの叱責が待っているだろう。
真白な書類を机の上に、憂鬱な気分を誤魔化そうと、機嫌の悪そうなヘーヴにネルテはケラケラ笑いながら答える。
「ランタルテリア、かなりお疲れだったみたいだね」
「……状況分かってて言ってんですか?」
ヘーヴはネルテの言葉に、とても不快気に眉を顰めた。
ランタルテリアでの戦闘は、ラグンセンの思惑通りとなってしまった。
魔物暴走が収まったと思ったら発生した、ラグンセンとの市街戦。
攻撃型魔道具を持ち込まれたエレイーネーとの戦闘は、魔物暴走で疲弊したエレイーネー側の戦力を削ぐ目的もあっただろうが、一番の目的は違う。
ラグンセンのデモンストレーションだ。
魔物暴走に手こずったエレイーネーより、ラグンセンの攻撃型魔道具の方が優れている。
彼らはそうランタルテリアに主張するために、あんなタイミングで戦闘を仕掛けてきた。
市街戦という事もあり、避難しきれていない周辺住民や、復興中の危険な建物に考慮しなければならなかった。
全力で戦いにくいエレイーネー側と、そんなことはお構いなしに、攻撃型魔道具を駆使してきたラグンセン。
ファブに次いで魔物暴走が起こりやすく、且つ自衛できないランタルテリア。
その住民の目に留まるように、敢えて市街戦を挑んできたラグンセンの強力な武器は、とても魅力的に映ってしまった。
戦闘はラグンセンが一方的に仕掛け、ラグンセンが一方的に撤退したことで終息した。
だがその結果は、エレイーネーにとって思わしくない。
元々自衛のために、非合法の攻撃型魔道具がひっそりと流通し始めてランタルテリア。
そこにこの戦闘での実演は、最後の後押しになってしまった。
マフィア組織という事を考慮できない程、ラグンセンの非合法攻撃型魔道具が、ランタルテリアの市場を支配し始めている。
後手に回った対応で、ラグンセンの思惑通りにされてしまった形だった。
「まだ魔物暴走対策や魔物対策として、住民の意識が中央魔森林に向いている間は良いでしょう。しかし国内不満が常に燻っているランタルテリアで、その矛先がグルアテリアに向かったら」
「協定があっても、抑えきれなくなった住民が戦争を仕掛けかねない。まさに試合に勝って勝負に負けたって状況かな、これは」
苛つくように机を指で叩き始めたヘーヴに、流石のネルテも同情する声をあげる。
戦争が発生すれば、不安に反応する魔物が森から出やすくなる。
合併を望むランタルテリアと、現状維持を望むグルアテリア。
定期的に発生する戦争は、その周辺国に影響を及ぼす。
ただでさえ強大な魔物暴走が発生するファブでは、その頻度がさらに上がる。
大国のソラウも、その対応に手を焼くようになり、中央魔森林と隣接していないシュミックでは、グルアテリアとの食料貿易が戦争で影響を受ける。
ランタルテリアとグルアテリアの戦争は、周辺国家にとっては害でしかない。
その為戦争をしないようにと、合併を狙うランタルテリア主導の場合、周辺国家全てがグルアテリア側につくという協定が結ばれている。
グルアテリア一国ならまだしも、大国ソラウと魔物暴走で協定を結んでいるファブが敵に回れば、ランタルテリアは生き残れない。
そのため渋々協定に従っているというのが、ここ最近の現状だった。
報告された状況を再確認しつつ、ネルテも書類を置いて、小さく溜息を吐く。
「ランタルテリアの勇者が、合併戦争に肯定的なのが厄介だよなぁ。一番実害被るから仕方ないけど、その態度を隠そうともしない」
「逆に聖女は否定的なんですよね。そんなことより、国力維持に心血を注げと。国を支える勇者と聖女が対立しているのも、ランタルテリアの不安定さを加速させています」
仕方ないというように、ヘーヴは頭を押さえた。
ランタルテリアの勇者は、魔物暴走の際、毎回危険な前線に立たされる。
いくつ命があっても足りないような現場で戦い続ければ、次第に疲弊し、楽な方へと思考が動いてしまうのも仕方がない。
とはいえ、グルアテリアとの合併戦争は、魔物暴走よりも実害が大きい上、これまでのような周辺国家からの支援も期待できない。
聖女の方はそれを理解しているので、合併戦争に否定的だ。
だが国を守るこの両者の対立が、ただでさえ不安定なランタルテリアを、さらに不安定にさせている。
そして、その民意をさらに煽り、国内不和を悪化させ始めているのが、今回行動を起こしたラグンセンだ。
「戦争が起きれば、攻撃型魔道具は飛ぶように売れる。そうして水面下で、その支配力を伸ばす目的でしょうね」
「しばらく注意しないといけないね。まだ全体を把握できていないのに、動きが的確で統率が取れ過ぎてるし」
比較的新しいマフィアのはずのラグンセン。
しかしランタルテリアで発見した地下施設が広大だったり、デモンストレーションに使われた攻撃型魔道具の数が多かったり。
武闘派なだけあって、下っ端でも魔道具を駆使して、攻撃力を底上げしていたり。
どうにも新しいマフィアにしては、規模も統率も大きすぎる気がする。
全体もまだ把握できていないのだ。
警戒度は上げてしかるべきだと、エレイーネー全体で結論が出ている。
ピスピスと、マルスの寝息が相変わらず響く。
眉間の皺を揉みほぐすように、指で頭を抑え始めたヘーヴ。
ネルテは気を紛らわそうと席から立ち上がると、スタスタと職員室の隅にある魔道具に近付き、コーヒー淹れ始めた。
そのままネルテはゴスンとヘーヴの頭に、コーヒーの入ったマグカップを乗せる。
強制的に休憩に入られて、ヘーヴは不服そうにしながらも、頭に乗ったマグカップを受け取る。
淹れたてのコーヒーを啜りながら、ヘーヴは改めてネルテの背後を見渡した。
「ボンブさん、今日はご一緒ではないので?」
「あぁ、今アーゲストに連絡取ってるんだよ。ホラ、例の保護した羽の生えてる魔人族の子。どうにもあの子が聖女だったみたいで」
最近、いつもネルテの背後にピッタリ張り付いている狼男の姿が見えず、首を回したヘーヴに、ネルテはそう答えた。
勇者と対を成す聖女の役職持ちが、魔人族の国では長らく不明なままだった。
カイムの三つ子の妹ライアが、魔人族の国の勇者の役職に、女神によって授けられた。
勇者が出現した以上、聖女が出現していないはずはない。
探していなかったわけではないが、観測者を使っても見つけることが出来ていなかった。
カイムと年の近い、頭に羽の生えた魔人族の少女。
当事者がエレイーネー内にいて、しかも魔力を強制的に奪うカプセルに詰め込まれていた被害者という経緯。
彼女はエレイーネーに初めて訪れた際の身辺調査の観測以来、一度も調べられなかったために、聖女発覚が遅れていたのだ。
ネルテの返答に納得したヘーヴは、ボンブからその少女の方に話題を変える。
「聖女ですか、また編入ですかね。訓練、どうするんです?」
「それがさぁ。ようやく少しだけ会話が出来るようになった、アリアやヘルシュから聞いたんだけど……どうにも彼女、極度のあがり症みたいなんだよ」
「あぁ、何も話さないで、脱兎の如く逃げてたのはそういう……」
「訓練より先に、人慣れさせるところからだよ。本人の意思と関係なく、条件反射で逃げてたみたいだから」
困ったもんだと、ネルテはコーヒーを置いてガシガシと頭をかいた。
中央魔森林に追放された経緯の先祖を持つ、魔人族。
今回保護していた、聖女と発覚した頭に羽の生えた彼女は、特に人の少ない集落で生まれ育ったせいか、人と話すことにそもそも慣れていなかった。
同じ魔人族の同胞ですら、慣れるまでに時間がかかるという酷い有様。
保護したカイムやアーゲストと会話どころか、お互いに名乗る事さえ出来なかったらしい。
これでは聖女の訓練どころではない。
まず普通の会話ができるまで、少しずつ人に慣れていくように訓練していく方が先だ。
「アリアとヘルシュがようやく少しだけ、まともに会話できるようになったのが救いだよ。そこから少しずつでも、人に慣れていってもらわないと」
「そこをクリアしないと、編入どころではありませんか。それの報告でボンブさんが不在なんですね」
「寝耳に水だったろうからね。まぁ、これで、魔人族の懸念点は一つ減ったよ」
「未だ行方不明のままの魔人族の中に、聖女が居るのではと、危惧していましたからね。アーゲストさんは」
「まぁある意味正解かな。彼女も捕まってたことは事実だからね」
小さく息を吐いて、ネルテはコーヒーを一口、口に含んだ。
そうして机に一度置いた書類を掴み直し、マグカップの中身を小さく回しながら、確認作業を続ける。
ウガラシの一件で、生徒達はそれぞれ、大きな問題にぶつかった。
自身の力不足をそれぞれ嘆きつつ、どうすればさらに力を付けられるか、日々悩みながら試行錯誤を重ねている。
「アルスとキシアは魔力伝達に問題はなしだが、個人だと二人共対人も対魔物も自信がないか。まぁこれは試行錯誤次第かな」
ウガラシでの戦闘で、重い心情を背負った一人といえるアルスと、そのパートナーのキシア。
魔力伝達だけでは一人のとき力不足だと、二人共各々悩むようになった。
ただこの二人は、最初に魔力伝達を発生させただけあって、要領はかなりいい。
自分たちに適した戦い方さえ見つければ、後はぐんぐん伸びるだけ、今はその試行錯誤の段階だった。
アルスは氷魔法でどう攻撃すればいいか、色々と思いつく限り試して試行錯誤を重ねている。
氷魔法は攻撃性も高ければ、サポートにも幅が広い。
自身に合った特性さえつかめれば、要領の良さもあって、一気に成長する事だろう。
キシアの方は、自分一人で魔物を対処しきれないせいか、最近自信喪失気味だ。
ただこれは完全に、魔法の使い方が悪いと言える。
キシアは様々な魔法を、オールラウンダーに扱うだけの器量を持ち合わせている。
だが常識的な考え方に固執するため、発展に対する発想力が少し乏しい。
拡散魔法だけでも、使い方を変えれば、魔物の対処は簡単になり、それだけの魔力をキシアは既に有している。
ネルテから指摘してもいいが、それだと発想力は乏しいまま。
ここはキシアが自力で解決を見出さなければ成長に繋がることは出来ない。
「メロンとイエディも、自分たちにあった魔法の使用系統がようやく理解できた感じだな。問題は二人共個別だと戦闘向きの魔法じゃないって事だが、こっちは工夫次第ってとこか」
ウガラシの惨劇に落ち込み、クバヘクソを狙われなんとか防衛しきれたために、少し持ち直したメロンと、そのパートナーのイエディ。
流れを読む魔法を扱うメロンと、限定的な特定範囲にのみ高威力を発するようになってきたイエディ。
二人の魔力伝達で行う人間爆弾はかなりの破壊力だが、同時にその魔力消耗も大きく、またこちらも個人の攻撃が乏しい。
ただ攻撃性の少ないメロンはともかく、イエディは工夫次第で化ける。
限定的な特定範囲、すなわち狙撃向きの性質なのだ。
普通に魔法を使っていては、この性質は生かし切れない。
これは魔力を失っていた時のエリンジ同様、攻撃力を底上げするために、向いている攻撃型魔道具を薦めたほうがいいだろう。
一方メロンの様々なものの流れを読む魔法。
魔力の流れを読むことはすなわち、相手の動きを読むことが出来る。
そこから発展して、相手の動きを制御できるようになれば、メロンも一気にできることが広がる。
今は魔力伝達でメロンが主体で攻撃、イエディが援護と回っているが、おおよそ二人共援護向きの気質だ。
そこを伸ばしつつ各自工夫していけば、戦闘も補強され、強力なサポートとして援護できるようになるだろう。
「カゲツとノースターの魔力伝達の形は予想外だな。しかも多分二人共気付いてない。後で指摘してあげないと」
前期パートナーでありながら、各々別行動で好き勝手していたために、連携が乏しかったカゲツとノースター。
キシアからの依頼で、疫病対策の魔法薬を二人で協力して作り上げたことで、二人の連携具合は一気にグッと上がった。
魔法薬精製と原料となる魔法植物生成。
この性質の二人の魔力伝達は、作成された魔法薬の威力が、格段に上がるという形で表れていた。
全科目合同訓練で、ノースターが使った引火剤魔法薬が異常な威力を発したのも、これが原因。
ノースター本人は、調合の仕方を間違えたかと首を捻っていたために、全く気付いていない。
調合したノースターでこれなので、カゲツも同様に気付けていないだろう。
「ノースターはその魔力伝達の影響で火力充分。カゲツのデメリットは、ひょっとしたらノースターの魔法薬で、唐辛子爆弾が爆発する前になんとかできるかも。うん、こっちはかなり先が明るいか」
魔力伝達で威力が桁違いに上がった魔法薬、更に放射魔法具を駆使することで、魔法瓶を投げるだけの戦闘方法からかなり幅が広がった。
カゲツも全力を出せば相当火力が高いが、デメリットのせいでどうにも自分でリミッターをかけている。
デメリットをある程度克服、またはすり抜けることが出来れば、この二人はかなり威力の高いパートナーになる事請け合いだ。
ネルテがウキウキと、書類を確認しながら今後の方針を練っていると、さっさとコーヒーを飲み終えたヘーヴから小言が飛んでくる。
「さっきからブツブツうるさいですよ。先にタナンタの報告済ませてくれませんかね」
「そりゃあそうなんだけどさぁ、例の情報規制入ってるところ、物理的に文字書けないんだよ、ホラ」
ネルテがヘーヴに見せつけるように、書類にペンを当てる。
すると文字を書いているのに、まるで透明インクのように、特定単語のみ全く文字が記載出来ない。
女神深教の情報については、副校長の古代魔道具、シルバー・フェザーによって、相変わらず情報規制されている。
下手に刺激すれば、ウガラシのように国が滅びかねないのだ。
警戒は仕方ないが、これでは報告書は書けないよと、ネルテはヘーヴに訴える。
「これタナンタへの報告、文章じゃなくて、校長室で直接話したほうが良いかなぁ」
「情報規制なら仕方ありませんが、タナンタからの叱責は、問答無用で飛びますよ」
「校長室でも?」
「その校長室に『情報寄越せやゴラァ!』と、乗り込んでいったの、誰だと思います?」
ヘーヴの指摘に、容易に想像がつくその光景に、ネルテは目を遠くさせた。
シマスでの際に、女神深教についての情報を欲したタナンタに、副校長に丸投げしたのはネルテだ。
しかしまさか校長室に怒鳴り込んで情報を得ていたとは、流石にネルテも思わなかった。
危険な情報である以上、情報規制は仕方ない。
だがその脅威が大きすぎる以上、対応しきれない状況を防ぐためにも、協力者は必要不可欠だった。
「はぁー、タナンタに、規制入ってるから校長室に来てくれって連絡するか……」
「ご愁傷さまで、しっかり怒られてきてください」
途端に上機嫌になったヘーヴの反応に、ネルテは気落ちするように机にドスッと突っ伏した。
いつの間に淹れたのか、ホットミルクが置かれたテーブルの上で、マルスが相変わらずピスピス寝息を立てている。
その寝息をしばらく聞いた後、顔だけ上げたネルテは、話題を変えるように声をあげた。
「勇者狩り、どうしようかねあれ。古代魔道具持っててかなり厄介になったよ」
「古代魔道具を所持しているせいで、探知系の魔法が軒並み機能不全起こしてますからね。例のあれと言い勇者狩りといい、どうしてこうも探しにくいことになるのか」
「二年シマス勇者のチェンパスもいる、オルナヴィにも警告は発した。エレイーネー内は同格の古代魔道具のシルバー・フェザーが防御魔法や探知阻害を展開しているから、まず安全だけど」
「問題は外ですねぇ。出るたびに勇者の皆さん、狙われるでしょうね」
ネルテはヘーヴとしばらく無言になった後、揃って大きく溜息を吐く。
探知特化という古代魔道具を手に入れてしまった勇者狩り。
そのせいで、勇者の役職持ちは、エレイーネーから外に出た瞬間、一気に襲われる危険度が跳ね上がった。
まだ力不足ではあるが、外に出る理由があまりないフランゲルとヘルシュはいい。
しかし、古代魔道具捜索依頼を受けているルドーは別になってくる。
「どんどん襲われる厄ネタ抱え込んじゃってまぁ、可哀想に」
「歩く災害に、例のあれに、さらには勇者狩りだ。聖剣の言う通り、規格外相手にし過ぎるのも、古代魔道具持ち故なのかねぇ」
捜索依頼が為されている以上、ルドーは古代魔道具を対策するために外に出る必要がある。
ルドーの安全管理は、もうルドーが強くなる以外に対策のしようがなかった。
規格外の強さを手に入れたと思ったら、さらにその上を行く規格外の敵が現れる。
まだ未熟ながら、ルドーなりに出来る限りのことはしている。
ルドーに直面してくる危機的状況に、ネルテは大きく首を振った。
「例年の例のあれ、今年どうなるかね」
「今協議重ねてるところですよ。実施するか、実施しないか」
魔人族の事件を発端に、今年一年、異常事態が起こり過ぎている。
通常訓練の域からは、かなり外れてしまっている状況。
当然、例年通りに訓練行事を進めていいか、同盟国連盟からも疑問は呈されるわけで。
「私としてはやりたいんだけどねぇ」
「魔法科はともかく、他科の魔物に対する認識が、例年のあれで変わりますからねぇ」
魔法科の生徒達は、度重なる問題に、魔物に対する認識は、正しいものとして矯正されたといってよかった。
問題は、魔物に対する機会の少ない、護衛科と基礎科の生徒の認識。
その認識を改めるための共同訓練行事が、年度末にある。
しかし度重なる問題に、今年は危険度が高いから見送ったほうがいいのではと、あちこちから意見が寄せられ始めていた。
「なんにせよこっちは協議待ちだね」
「まだ先の話ですからね。ほら、話逸らしてないで、さっさとタナンタに報告しなさい」
あんまり遅れると、私がどやされるんですからと、ヘーヴがネルテに苦言する。
耳栓は用意したほうがいいだろうかと、そんな考えを抱きながら、ネルテ渋々通信魔法を使い始めた。




