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第百六十二話 魔力奪取犯の本性

 溢れた魔力はまるでその中に留まることから一刻も早く逃げ出すように、大量の色とりどりの魔力が、頭の裂けた割れ目から、恐ろしく巨大な渦となって勢い良く飛び出し続ける。


 一人の人間の器に無理矢理圧縮されていたかのように、魔力がそれぞれ膨大に上空にその渦から飛散した。


 飛び出した魔力はそのまま空中で弾けるように消滅したり、はたまたどこか遠くへ、流れ星のように筋を描いて飛んで消えていく。


『一体どんだけの相手から魔力奪い続けてきたんだよこりゃあ……』


 目の前の光景に、聖剣(レギア)が零す。

 まるで魔力の流星群の渦のような、辺り一帯を覆い尽くす魔力の大群。


 唐突に、その魔力の渦から虹色の巨大な魔力が放出して、エリンジに思い切りぶち当たって大きく爆発した。


「エリンジ!」


「返せえええええええええええ……!!!」


 爆発したエリンジに、ルドーが咄嗟に振り返って叫ぶ。

 その背後から、地の底から響くようなおぞましい声がかけられた。


 ルドーとリリアがその声の方向を向けば、文字通り陶器のように割れた頭から、放出される魔力を必死に押さえ、しかしあまりの勢いに抑えきれずにいる、朽ち果てた老婆のようなものがそこにいた。


 まるでミイラのようにガサガサに干からびた皺くちゃの土気色の肌、ぐしゃぐしゃの艶もなにもない、蜘蛛の巣のような真白に縮れた髪、大きく目立つイボの付いた鉤鼻の上に、落ち窪んだ皺くちゃで、それでいてまるで飛び出るように、狂気を孕んだ灰色の目だけが爛々と不気味に鋭く光っていた。


 その容姿には、先程まで佇んでいた、美しい女性の面影などどこにもない。


 ルドー達が見ている間にも更にどんどん萎びるように小さく醜くなっていく老婆。

 その様相にリリアがヒッと小さく悲鳴をあげた。


 小さな老婆になった魔力奪取犯が、鬼のような形相で、頭から割れた顔を大きく歪めて、所々抜けた歯が並ぶ口が裂けるほどに大きくあけてあらんかぎり叫んだ。


「魔力! 魔力! もうそれは私のものだ! お前たちには不釣り合いなものだ! 返せ! 返せ! 私が貰ったものだ! その容姿も、若さも! 美しさも! 全部全部私のものだ! すべて寄越せええええええええええ!!!」


「それがお前の本性かよ!」


 先ほどの鈴のような音のかわいらしい声ではない、しゃがれて潰れた豚の鳴き声のような声だ。


 頭からなおも魔力を大量に放出させ続けながら、老婆は割れた顔を大きく歪め、ぎょろりと飛び出た目が更に大きく飛び出し、狂気に駆られるように唾を撒き散らしながら、恐ろしい素早さでライアを庇うカイムの方へと走った。


 奪った魔力が割れた頭から放出されているだけで、こいつが他人の魔力をまだ奪えるままの可能性は高い。


 悲鳴をあげたライアを強く抱きしめて、倒れたまま髪を大量に伸ばして庇うカイムの前に、ルドーは聖剣(レギア)を構えて躍り出る。


 振り下ろすと同時に大きく雷魔法を発動させ、両手で魔力を集めて防ぐ老婆を必死に抑え込む。


 辺り一帯が落雷のように大きな音と衝撃にのまれた。


「違う! 違う! 貴様は邪魔だ! 貴様の魔力は取れない! 邪魔するな! 魔力を! 私の魔力を返せえええええええええええええええええええええええええ!!!!」


「やっぱ俺の魔力は取れねぇか!」


「お兄ちゃん!」


「大丈夫だリリ! エリンジの方見てくれ! カイム! ライア連れて逃げろ!」


 ルドーの叫びにリリアが頷いて、まだ煙が上がって姿が見えないエリンジの方へと走る。


 攻撃の余波で悲鳴をあげるライアを庇ったカイムが、ライアを強く抱きしめたまま、ルドーの背後で立ち上がって叫んだ。


「てめぇ無茶してそいつにやられんじゃねぇぞ!」


「分かってるってカイム! さっき逃げたあいつを!」


「言われるまでもねぇよ!」


 ライアを抱えたまま、カイムは歩く災害が走って行った後を追うように走り始めた。


 遠のいていくライアに、老婆が半狂乱になって絶叫し始める。


「あああああああああ!!! 魔力! 魔力! わたしの魔力! 私だけの魔力!」


「ライアはお前のものじゃねぇ! ライアの魔力もお前のじゃねぇだろうがこのクズ!!!」


 怒りのままに聖剣(レギア)を握る両手に力を込め、攻撃する雷の威力が更に上がる。


 割れた頭から魔力を大量に放出し続ける老婆は、それでもまだ体内におぞましい量の魔力を所有しているのか、振り下ろす聖剣(レギア)の雷魔法を相殺するように、その両手から大量の魔力を放出する。


 魔力を放出し続ける割れた頭は、今まで魔力もなく回復していた傷口とはまた違う。


 今の状態ならこいつは傷の修復が出来ないのではないだろうか。


 古代魔道具からも、ルドー自身からもこいつが魔力を奪えないなら、まだいくらでも戦いようがある。


 魔力やその容姿を奪うカラクリがどうなっているのかはまだ分からないが、一番危惧していた部分を無視して戦えるならば、こいつを倒せるはずだ。


『へっ、俺の魔力とそいつの魔力で、耐久戦といこうじゃねぇか!』


「その余裕っぷりなら行けるんだな聖剣(レギア)!」


『俺は古代魔道具だ、なめてんじゃねぇ! なんの為の無尽蔵の魔力だ!』


「邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だあああああああああああああああああああああ!!!!」


 もはや体型も変わったのか、来ていた服もぶかぶかで、攻撃の余波でボロボロに焼けただれているが、そんなことももはや気付けない老婆がおぞましく形相でルドーに叫ぶ。


 大量の魔力のぶつけ合い。


 辺り一帯が大きく、ルドーと老婆を中心に空間がビシッとひび割れる。

 魔力の余波に地震のような地響きが発生し始める。


「邪魔をするなあああああああああああああああああああ!!!」


『例の攻撃来るぞ!』


「まだそれだけの余力あるってことかよ!!!」


 老婆がその手の動きを変え、魔力の反応に雷魔法を放出しながら聖剣(レギア)が叫ぶ。


 背後にいるエリンジやリリアを考慮して、ルドーが老婆の両腕をはたくように上に叩き上げれば、巨大なレーザー砲のような攻撃魔法が、間一髪で上空に向かって逸れて発射された。


 攻撃魔法の余波で、周囲のまだ無事だった木々が大きく根こそぎ吹き飛ばされる。


「連発されちゃ面倒だ! 聖剣(レギア)! 火力には火力だ!」


『いいねぇ! あれで攻撃する隙与えないほど攻撃連打すりゃってか!』


「雷竜落ぅ!!!」


 老婆の両腕をはたきあげて上を向いていた聖剣(レギア)を、即座に大きく振り下ろしながら叫ぶ。


 最大出力、それを何度も何度も浴びせるんだ。

 手加減なんて要らないと、ルドーは頭の中で必死に念じながら。


 真っ暗になった空の雷雲から、大量の竜が襲い掛かるように、老婆に向かって一気に放出される。


 周囲が一瞬にして真白に変わって、地響きのような轟音が響き続ける。


「ああああああああああああ!!! 古代魔道具使いがああああああああああああ!!! 痛めつけられる為だけの存在のくせにいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


「誰が痛めつけられるだけだ! そんなもんになってたまるかぁ!!!」


 この老婆は剣の男と同じように、古代魔道具を持つ相手に何らかの攻撃性がある。

 フィレイアで攻撃を受けた際、そこに恨みのようなものは感じなかった。


 剣の男といいこいつといい、古代魔道具を持つ者に対して、何の因果があるというのか。


 だが黙ってやられてなんかやるもんか。


 雷竜落の衝撃で、頭の割れ目から放出される魔力が更にどっと増える。


 周囲一帯を光で包む雷竜落の雷光の中、放出される様々な色の魔力は、その竜のような雷魔法には影響がないようで全く焼き切れない。


 放出される魔力が、流れ星のようにあちこちに飛んで消えるように弾ける中、不意にネルテ先生の魔力と同じ緑色の魔力が飛んでいくのが見えた。


「私の! 私の魔力だ! お前たちのじゃない! お前たちが使っていいものじゃない! 選ばれた私が使える魔力だああああああああああああ! 戻れええええええええええええ! 返せええええええええええええ!!!」


「お前の魔力でもないだろ! 奪ってばっかで自力で鍛えてねぇくせに!!!」


 雷竜落を当て続けながら、大量に雷雲から更に竜を放出して、目の前の老婆に打ち込み続けている。


 しかし老婆はその歩く災害の魔力層も破壊する威力の攻撃を、何度も何度も受けてもその場に立ち続けて、両手をあげて魔力で相殺し続けていた。


 こいつの魔力の底はどこだ。

 古代魔道具と違ってこいつは人の魔力を奪い続けていただけだ、必ず底があるはずだ。


 唾を吐き散らしながら般若のような形相、飛び出したその目がおぞましくこちらを睨み付けている。


「邪魔だああああああああああああああああ!!!! 古代魔道具使いいいいいいいいいいいいいいいいい!!! 吹き飛んで消えろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「うわぁ!?」


 雷竜落に集中して聖剣(レギア)を振り下ろし続ける中、攻撃を魔力で相殺している老婆から、攻撃魔法が別個飛んできた。


 今姿勢を崩せば雷竜落は止まる、

 この老婆をなんとか抑え込んで耐久戦に持ち込んでいる千載一遇のチャンスの今、下手に避けて動くことは出来なかった。


「これでまだ攻撃する余力あんのかよ!?」


『踏ん張れ! 押し負けると終わりだ!』


「分かってるよ! どんだけ魔力があるってんだ!」


 雷竜落に対する相殺も相当なものなのか、今までの規模の攻撃魔法こそ飛んで来ていないものの、威力を絞ったそれに、当たればあっという間に肉体が貫かれそうな攻撃。

 相殺作業で狙いがぶれるのか、今のところギリギリ掠っているものの、どんどんと狙いが的確になってきている。


 顔の横の頬を攻撃魔法が掠めて、まるで頭を吹き飛ばしてやると言わんばかりの老婆の表情に、攻撃に動くことのできないルドーは焦りを見せる。


 その焦りの表情に、老婆が薄ら笑うように、不気味にその顔を歪ませる。


「邪魔するな! 私に偉そうに叫ぶな! 私の魔力だ! 誰でもない私の魔力なんだ! 私は選ばれたんだ! 私がこの力を授かったんだ! だからもうお前たちの魔力は全て私のものなんだ! それを偉そうに取り戻そうとするんじゃなああああああああああああああああああああい!!!」


「いっっっでぇ!!!」


『ルドー!!!』


 動くことが出来ないまま、攻撃魔法がとうとう腹部に直撃して貫いた。

 貫通した攻撃に、脇腹に大きく穴をあけて、血が噴き出して大量に流れ落ち始める。


 激しい腹部の痛みに頭がおかしくなりそうだ、だがフィレイアを吹き飛ばしたような威力の魔法攻撃でないことが幸いした。


 魔法攻撃の威力が少しずつ弱くなってきている。


 魔力の底は確実にある、どんどんそれに近付いている。


 ルドーは確信した、歯を食いしばってなんとか気絶しないように必死に食らい付く。


 絶対に倒れてやるものか。


 ルドーに攻撃が通ったことに、老婆は心の底から歓喜するようにその顔を更に醜く歪める。


「みんなみんなみんな! 持って生まれただけで、その恵みに全く気付きもしない! 傲慢だ! あぁ傲慢だ! その傲慢さを、ひけらかして! 振りかざして! 私が何をしたって言うんだ! 私は何もしてなかったじゃないか! それなのに攻撃して攻撃して攻撃して! 見下して蔑んで馬鹿にして! お前も同じだ! あいつらと同じだ! 奪われればその身の程知らずの態度を改めるだろうに!!!」


「結局お前が一番魔力が無い事を気にしているんじゃないか」


 背後から聞こえた声に、見慣れた巨大な虹色の桁違いの砲撃魔法。


 ルドーをさらに狙った老婆の腕にそれが直撃して、更に大きく爆発する。


「ああああああああああああああああ!!!! 魔力がぁ!!! 私の魔力がああああああああああああああああ!!!!」


 悲鳴をあげる老婆の腕が、爆発に粉々に吹き飛ばされていく。


「エリンジ!」


 ルドーが顔だけ振り返れば、白髪を取り戻したエリンジが、リリアと手を繋いで魔力伝達しながら、こちらに向かってハンマーアックスを構えていたところだった。


「魔力は全て戻った。悪い、感覚を取り戻すまで時間がかかった」


「お兄ちゃんもまた無茶して!」


 今までの魔力伝達の規模ではない、本来のエリンジの膨大な魔力を、リリアと魔力伝達させることで、更に巨大に膨れ上がらせている。


 リリアが魔力伝達させながらもその手をルドーに向かって掲げれば、貫通した脇腹に白い魔力が弾けて、一瞬で貫かれた腹部が復活再生した。


『おぉ、ようやく完全復活か』


「援護する、攻撃に集中しろ!」


「もう大丈夫、どんな怪我したって絶対に治すから!」


「ありがてぇ! エリンジ! リリ! 頼んだ!」


 エリンジの砲撃魔法の爆発で、老婆の片手は粉々に砕けている。


 今までの肉体的な負傷ではない、割れた頭部と同じように、その腕もまるで陶器のようにパラパラと砕かれて、その腕から更に魔力が逃げるように大量放出している。


 魔力もなく再生していた今までの動きがまるで発生していない、やはり今の状態ならこいつは元に戻らない。


 雷竜落の相殺が間に合わなくなったのか、それとも腕から更に魔力が逃げたためか、老婆は雷竜落の威力にとうとう押され始めた。


「魔力魔力魔力私の魔力魔力魔力魔力誰のでもない私のだ私だけのものだお前たちじゃない私私私私が選ばれたあの時選ばれただから奪っていいんだ私のものなんだ恵まれた奴らからいくらでも好きなだけ全部全部全部全部うううううううううううううううううううう!!!!!」


「お前奪ってばっかで何一つ自分のもんなんもないだろうがああああああああ!!!」


 更に両手に力を込めて、聖剣(レギア)を振りかぶって叩き付けるように振り下ろす。

 ゴリ押しの雷竜落を更に大量に老婆に叩き込む。


 辺り一帯は雷魔法で焼き尽くされて、砂漠のような状態に広がりつつあった。


 これだけ攻撃を加えても、尚こいつの魔力の底が出て来ない。


 いい加減にしろと、その両手に力を込めながら歯を食いしばり、それでも魔力で攻撃を相殺して抵抗してくる老婆に攻撃し続ける。


 エリンジが抵抗を続ける老婆に、更に虹魔法で砲撃を次々加えてその体を爆発で吹き飛ばす。

 老婆が抵抗して放ってくる攻撃魔法を、リリアが即座に結界魔法を張って完璧に防ぎきる。


 老婆の抵抗がどんどん弱くなる。



 あと少し、あと少しでこいつを倒し切れる。




「っ!? そんな! お兄ちゃん!」


「こんな時に! あそこからここまで来たのか!」


 老婆の居た場所とはまた別に、背後からエリンジの虹魔法の爆発音が聞こえた。

 焦る二人の声にルドーが顔だけ向ければ、そこには無数にひしめく大量の屍が、うつろな表情を浮かべたまま、魔の森の薄暗がりの中こちらに向かって歩いてきている所だった。


 パピンクックディビションが発動させた古代魔道具による何らかの効果。

 ゲリックの転移魔法でここまで逃げてきたのに、それがもうここまで追いついてきてしまっていた。


 エリンジが牽制するようにハンマーアックスを振り下ろして、虹魔法をその周囲に打ち付けて大量に爆発させているが、相手は既に死んでいる死体、攻撃に全く反応する素振りすらない。


『ルドー!』


「あっ! くそ、やっちまった!」


 先程の地獄のような光景が脳裏によぎって、迫る屍の大群に焦りから集中が切れて気がそれてしまった。


 慌ててルドーが正面を向くも、雷竜落の余波の中、老婆はこちらを心底憎悪するような表情でこちらを睨み付けながら転移魔法を使っていた。


「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 覚えたぞその顔おおおおおおおおおおおおおおおお!!! 絶対生きていたことを後悔させてやるうううううううううううううううう!!!!」


「逃げんな待てこいつ! あっ!」


 もう一度雷竜落を叩き落すよりも、老婆が転移魔法で逃げる方が早かった。

 目の前で一瞬で消えてしまったおぞましい表情の老婆に、あと一歩まで追い詰めて取り逃がしたことに、ルドーは自分の不注意もあって激しく後悔する。


「くそ! なんでだよ!!! 絶対今倒すべきだった! 絶対倒せたはずだったのに!!!」


「ルドー! 今はいい! それよりこっちだ!」


「どうしようお兄ちゃん! 浄化魔法効かないよこの人たち!」


 迫り来る屍の大群に、両手を広げてリリアが浄化魔法を放ったが、魔の森の瘴気が浄化されるだけで、肝心のゆらゆらと迫ってくるそれには素通りして全く効果を示さない。


『あの古代魔道具の効果に浄化なんて効かねぇ! というかそもそも死んでる奴ら動かしてんだ! 攻撃したところで倒せねぇし、倒れてもすぐ復活しちまう!』


「不死身なのかよこれ!」


 バチッと警告するように弾けた聖剣(レギア)の叫びに、ルドー達は驚愕に目を見開く。


 厄介だと叫んでいた聖剣(レギア)の言葉の意味。

 攻撃して倒しても、既に死亡しているがゆえにすぐに復活するというそれが、大量にこちらに向かってきている。


「一旦離脱する!」


「離脱するったってどこに!? それにあっちにカイムとライアもいるのに! ネルテ先生は?!」


「それが途中から全然通信魔法が繋がらなくて!」


『囲まれるぞ! 逃げられなくなる前にどっか転移しろ!』


 恐ろしい勢いで森から溢れるようにわらわら増えてくる屍に、ルドー達が後退しながら狼狽える。

 逃げることが最適解のはずだが、走り逃げたカイム達も放っては置けない。


 あの歩く災害がどうなったのか、こちらの戦闘音が激し過ぎて全く聞き取れていない。


 カイムが走っていった方向に追うように逃げるべきかと振り向いた瞬間、転移魔法で別の人間がその場にシュパッと現れた。


「ほー! よかったよかったこれで全員無事だ! 君たち一旦離脱させるね!」


 ルドー達三人は、初めて見る相手の言葉に戸惑った。


 黒のメッシュが入った銀短髪を揺らして、琥珀色の切れ長の瞳が三人を確認するように素早く動く。

 肩から垂れた黒いケープがばさりと動いたと思ったら、ルドー達三人は転移魔法で即座に別の場所に移動させられた。


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