第百四十七話 ケイソ病関連のカルテ配達
モネアネ魔導士長伝いでのプムラ陛下への両親のカルテ閲覧許可は、ルドーとリリアが思った通りあっさりと取れた。
カルテの相手に連絡書簡を出しておくので、名簿リストを作っておいてくれと言われ、かなり時間のかかる作業になったと、ルドーは一人げんなりしていた。
ルドーとリリアはチュニ王国の認可が取れ次第ネルテ先生に許可を貰い、外出時の危険に十分注意するよう再三の忠告を受けた後、前回の帰郷時と同じように、転移門から辻馬車を使ってゲッシ村の自宅まで戻る。
連絡なしの突然の帰郷に村の住民は驚いたものの歓迎的だったが、ケイソ病関連の急ぎの用事だと伝えると、みなどことなく表情が曇っていた。
それでも村長と向かいの家のおばさんは畑仕事を中断して様子を見に来てくれたし、一時的に貸し出すケイソ病関連のカルテを探し出す手伝いもしてくれた。
晩年も近隣の町まで出向いて診療していたため、両親のケイソ病関連のカルテはかなりの量になっていたようだ。
壁一面にびっしりと設置されていたカルテ用の棚の、実に三分の一程がそれに該当して、持ち出すだけでも大変な作業になった。
言われたリスト作成の延々と続く文字起こし作業に、ルドーは頭を抱えて悲鳴を上げつつ、リリアと手分けしてなんとか作成し終える。
木箱四つにびっしりとぎゅう詰めに入ったカルテを荷車を借りて運び出し、モネアネ魔導士長に渡してくれと作成したリストを手渡すついでに、作物収穫の手伝いも村長にちゃっかり取り付けられ、辻馬車から転移門の場所まで引き返す。
そうして転移門からキシアと事前に連絡を取り付けてあった、トルポ国のロドウェミナの二つ隣、キシアの実家のあるローゼン公爵領へと向かった。
「……なんか奥に城みたいなでっかい建物見えるけど、あれとか言わないよな」
『あれだろうな』
「転移門潜ったらすぐにわかるってキシアさん言ってたもんね」
荷車を引いたまま、その豪勢な館に遠くからでも圧倒される。
キシアの実家ローゼン公爵領、その主たる館のある大きな町、メイデン。
厳かな空気に包まれた、伝統と格式ある白壁に黒い筋交いの同じような古い建物が、ずらりと均等に並んでいる。
町を歩く人々はどれも姿勢が正しく、それでいて朗らかに挨拶している様子から、礼儀正しく親しみやすい印象を抱いた。
床に敷き詰められた石煉瓦の道でさえ、几帳面にピシリと揃えられており、領主がいかに格式ばった内政を行っているか、街並みからだけでも推察できる。
かなり大きな規模の町の奥にどっしりと構えるような、広大な規模の館。
改めてキシアも貴族なのだなぁと、ルドーは住んでいる世界の違いを実感した。
「今からあそこの館にこのカルテ持ってくんだよな、町横切って」
「それで届けたら、レイルくんとロイズくんのお土産買いに古本祭りに行くんだよね」
「お祭りにもおちおち参加できないなんて、嫌な感じですや」
『(あの、それ僕も行く必要あるのかな)』
ルドーとリリアは荷車を引いた状態で、横から聞こえてきた声に二人揃って首を振る。
町の様子を観察するように、その小さな体で額に手を当てて、薄荷色の瞳でキョロキョロと周囲を観察しているカゲツ。
そしてその横で、グルグルメガネを摘まんで何度もかけ直している、疲れた様子のノースターがいた。
「えぇ? エリンジとカイムとはここで合流予定って話だったけど、なんでカゲツとノースターもいんの?」
「そりゃあ、私はサンフラウ商会のお手伝いですや! 今度の古本祭りにも当然出店しておりますからや!」
『(僕は特効薬に関連して、キシアさんに呼ばれた形なんだけど……)』
「えぇ……ノースターはともかくカゲツ、商会の手伝いって、ネルテ先生の許可出たのか?」
「まぁお手伝いと言っても、ルドーさん達が本を買っている短期間だけの許可ですや! 本命は私もノースターさんと一緒でキシアさんにお呼ばれしたからなんですや! そう言う事で引率よろしくお願いしますやレッドスパイダー先生!」
カゲツが転移門の方に振り返って声を掛けたので、ルドーもリリアと一緒のその方向に顔だけ振り向けば、ちょうど転移門からのそりと大柄の厳つい体型の男が歩き出てきていた。
顔全体を覆う黒い、彼岸花の装飾が施された仮面をつけ、まるでライオンの様なもさもさとした白緑髪がその後ろを覆っている。
筋骨隆々の身体にはあちこち傷跡があり、鍛え過ぎた身体に合うサイズの服がないのか、肩から先が破れているシャツをなんとか着ようとした感じで、全体的に服がパツパツだった。
背中に身長と同じほどの、かなり太い片刃剣を背負った、護衛科副担任の先生、それがレッドスパイダー先生なのだ。
カゲツの声掛けに反応するように手を上げたレッドスパイダー先生の後ろに、ハンマーアックスを携えたエリンジと、魔力伝達の関係でライアを背負ったカイムが無言で続いている。
レイルとロイズの本を一緒に頼まれたカイムはともかく、エリンジは今回完全に補助要因だ。
いつどこで女神深教や、歩く災害の脅威に晒されるかわからなくなった今、まだルドー達単独では不安が残るため、なるべく行動を共にして自衛出来るようにとネルテ先生から通達が入った。
ルドーとエリンジ、カイムの三人でなら、なんとか歩く災害を討伐できる実績があるためだ。
それでも危険時には即時離脱するようにと、ネルテ先生には口を酸っぱくするほど言われているし、念のためにと引率で、手が空いていたレッドスパイダー先生が今回同行している形だった。
周囲を警戒するように、険しい顔をして視線をあちこちに投げているエリンジとカイムと一緒に、ライアが物珍しそうにカイムの背中から身を乗り出して、キョロキョロ周囲を見渡している。
ルドーはよいせと荷車を引っ張って、ガラガラと石煉瓦の道を歩き出した。
「たしかここメイデンはキシアの影響もあって、魔人族に大分寛容なんだっけ?」
「その通りですや! 大型魔物暴走の影響もありますでしょうが、ロドウェミナやメイデンの住民が中央魔森林に怯えて海側に多数移住しちゃったもので、そこに希望する魔人族が既に何人か移住している形なんですや!」
「カイムに聞いたつもりだったんだけど。カゲツも詳しいのな」
「私のリサーチ力、あまり舐めないでほしいですや!」
「いや舐めてねぇけど……実際どうなんだカイム」
「今んとこ問題が発生したって報告はアーゲストからは聞いてねぇ」
「仲良ししてるって言ってた!」
「そうなんだ。よかったね?」
「ケッ、俺に言ってどうすんだよ」
リリアの言葉にカイムは微妙な反応を返した。
ローゼン公爵領メイデンでは、カイムと同じ魔法科のキシアの出身地でもあるためか、中央魔森林から森の外に移住希望の魔人族を受け入れていた。
カイム曰く、中央魔森林に祖先が追放された経緯がある魔人族で、それを希望するのは今はまだ極々少数。
また祖先のように裏切られて追放されるのを恐れているのか、あまり魔人族で移住を希望している者はほとんどいないそうだ。
それでも中央魔森林の中で生活する恐怖に耐えられない、且つ魔力が比較的少なくて自衛が厳しいという魔人族が、片手で数えるほどの数人、このメイデンに既に移住してきている。
見た目が奇抜で見ればすぐにわかる魔人族の移住に、メイデンとの住民の間に軋轢がない様にと、ローゼン公爵領の人間が様子を見て、アーゲストも度々町に訪れてその様子を確認しているそうだ。
同胞の中央魔森林からの移住に、安全性から仕方ないと思っているのか、それともまた森に追い込まれることを警戒しているのか、鉄線が根城にしていたトルポ国という影響もあるのか。
カイムはその移住話にどうにも複雑そうな、大きく顰めた表情で、のそのそとライアを背負いつつルドー達の隣を歩いていた。
しばらくその様子に無言でガラガラと荷車を押しながら全員で歩いていたが、一通りの警戒確認が終わったのか、今度はエリンジがレッドスパイダー先生に話しかけ始めた。
「先生はフィレイアには行かなかったのか」
「俺もニンも、シマスの旧ヨナマミヤとは少し相性が悪い。個人的な問題ではあるが、一応念のためにだ」
「相性が悪い?」
「俺もニンも、三十年前に滅んだユランシエルの出身だ。その時の魔物暴走騒動やらなんやら、色々とな。さらに俺もニンも十年前の旧ヨナマミヤの魔物暴走騒動にもエレイーネーとして出張っているので顔は覚えられている。住民が怯えている今、当時の魔物暴走を連想する俺達二人が行くのは得策ではない」
前を向いたまま歩き続けるレッドスパイダー先生はそう話した。
初めて聞く話に、ルドーはガラガラと荷車を押し続けながら、驚いてレッドスパイダー先生の黒い仮面を見つめた。
背中で聖剣が気まずそうに、パチパチと小さく弾けている。
驚いた表情のままルドーが周囲を見渡せば、エリンジとリリアとカイム、カゲツとノースターも初めて聞いたという反応で、それぞれが驚いたような反応でレッドスパイダー先生を見上げている。
そう言えば確か、ニン先生と一緒にグルアテリアで教会に赴いた際に、勇者ではあるが国は既に滅んだと、ニン先生本人から聞いたことをルドーは思い出す。
国は滅びても役職が不可逆のため、ニン先生は勇者のまま。
帰る場所も役目も失くしてエレイーネーに所属している形なのだろうが、護衛科担任として明るく振舞うニン先生の心境は、同じ勇者であるのにルドーには計り知れない。
まるでその先を知りたいというように、それでいて知りたくないと恐れるように、ルドーは恐る恐るレッドスパイダー先生に問いかける。
「……酷かったんですか?」
「救えた者も多かったが、救えなかった者もまた多かった。国が魔物暴走に沈むというものは、言葉では表現しきれんほどに凄惨だ。どれだけ警戒して、自己鍛錬を重ねても、魔物や瘴気は常にそれを上回ってくる。後悔しないように鍛錬し、また警戒を怠るな。俺もニンも、当時その両方を怠っていたせいであの惨状の一端を担った。君たちはまだ若い、多くを学び、柔軟に対応するだけの知識を付けろ。その為のエレイーネーだ」
三十年前のユランシエル、そして十年前の旧ヨナマミヤの騒動は、その両方共どのような被害だったかは、全て学習本に記載されている。
被害人数の数字ばかりが並ぶその内容に、ルドーは現実感があまりなく、既に歴史の一部として消化されそうになっている。
だが当時の状況を知っているレッドスパイダー先生の、被害を全く話さないその話には、学習本以上の重圧さがあった。
十年前の魔物暴走で、旧ヨナマミヤの勇者と聖女は、魔物から逃げ惑う国民を庇い守ったが故に、両者ともに死亡している。
ヨナマミヤがシマス国に合併を持ち掛けたのは、魔物暴走被害の疲弊だけでなく、国を守る防波堤を失った事実が一番大きかった。
ロドウェミナでの大型魔物暴走、現場でその惨状を経験したルドーは魔物を倒せこそすれ、魔物暴走そのものには全く手も足も出なかった。
聖剣の十割の一部を引き出せるようになった今でも、あの時と同じ規模の魔物が中央魔森林からチュニ王国に溢れた場合、ルドーは魔物を倒して魔物暴走を鎮めることが出来るだろうか。
いずれはルドー自身が勇者として、その責を担わなければならない。
レッドスパイダー先生の助言に近い話に、一同はそれぞれが考え込むように沈黙して歩き続けていた。
リリアから不安と心配が織り交ざるような視線が向けられているのをルドーは感じる。
「あーもう重い! 重いですや! ありがたい話ですが重すぎますや! ちょっと話題変えましょうや!」
「……そうだな、すまん。どうにも俺はニンのように明るい話が出来ん」
沈黙する重苦しい空気に耐えきれないというように、カゲツが両手をあげながら叫んだ。
町を歩きながらする話には不適切だったと、反省するようにレッドスパイダー先生はその手を後頭部に当てながら歩く。
キョトンしつつも周囲の空気を察して黙っていたライアも、カイムの背で紫髪をひらひらとさせながら声を上げた。
「もう喋っていいの?」
「ライアちゃんにはまだ難しい話だったね」
「そうだな、話戻すか。ノースターは疫病の特効薬の件で呼ばれてんのか?」
『(うん、作れそうなら意見くれって。参考になるかは実際に資料見てみないと分からないけど)』
そもそものトルポ国での疫病の発生にルドーは話を戻す。
ノースターもキシアと同様、トルポ国の出身だった。
鉄線戦や大型魔物暴走での活躍の際の表彰に、ノースターは一人絶対に悪目立ちたくないからと完全に拒絶していたので、ルドーはその事をすっかり忘れていた。
回復魔法薬を作る応用で、特定の病気に特化した魔法薬が作れれば、それを参考に一般人でも特効薬が作れる。
疫病対策の特効薬のとっかかりになればいいと、今回ノースターはキシアに呼ばれた形だった。
「魔法薬作れるなら新しい特効薬も作りやすいって事か。そんで結局カゲツはなんで呼ばれてんだよ?」
「私の役職ハーブセラピストで、その特効薬の試作に協力して欲しいとのことですや。さらに特効薬が開発できれば、材料調達の参考のためにトルポ国の適した場所を調べてほしいとのお話です」
ルドーの問いかけに、カゲツはふんふんと指差しながら答える。
さらっと発せられたカゲツの役職に、全員が驚いて目を見開き視線をカゲツに集中させた。
「えっ……カゲツお前役職持ちだったのか!?」
「あやや? 言ってませんでしたかや?」
「うん、初めて聞いたよ」
驚く周囲の反応に、あれれというように頬を指差して首を傾げたカゲツは、あまりにも当たり前すぎて意図的に隠していた様子はこれっぽっちもなさそうだった。
聞き慣れない役職名にルドーが首を傾げていると、同じ疑問を持ったカイムからも声が上がった。
「んだよその役職」
「ハーブを中心に、植物をそこかしこに魔法で大量に生やすことが出来るようになる役職ですや。使い過ぎると唐辛子爆弾が生えてきて自爆しますので程々にですが」
「あぁ、あの雷の盾の試運転の時の新技、あれ役職効果か」
「その通りですや! 大きすぎると大量の唐辛子爆弾がデメリットで生えて来るもんですから、調節が大変で大変で」
ルドーが新しく雷の盾を作った際の魔法訓練の戦闘。
カゲツが新技と叫んで巨大な食虫植物を作り出していたが、あれがどうやら役職効果で作ったものらしい。
確かに普通の魔法で植物を生み出すことは、その植物の生命エネルギーを肩代わりすることになるので、本来かなり魔力が必要になる。
カゲツはそのハーブセラピストの役職で、その必要な魔力がかなり抑えられる形になっているようだ。
話を聞いていたノースターが、こてんと首を傾げながらグルグルメガネをカゲツに向ける。
『(ひょっとして材料は気にしなくていいって言ってたのはそういうこと?)』
「もちろんですや! なるほど、通りで話が噛み合ってなかったんですね」
「材料?」
『(いや、魔法薬を量産して、市販ルートで売ってみないかってかなり打診されてて(´・ω・`))』
困ったような顔文字を空中に浮かべる魔法文字に混ぜて、ノースターはポリポリと頭をかいた。
どうやら最近カゲツがやたらノースターに声を掛けていたのは、パートナーだからというより、ノースターの作る魔法薬に、商売の可能性を見出したためだったらしい。
色々と声を掛けられ続けていたために、ノースターは最近少し疲れていた様子だったようだ。
まだ二人で魔力伝達も出来ていないのに、何を話しているのやら。
「魔力の相性、なるほどそういうことか」
『片方が材料作って片方が魔法薬作るか。確かに相性が良すぎるわな』
エリンジと聖剣が、カゲツとノースターの話に何故か納得を示した。
二人の指摘する話を聞いて、ルドーも確かに相性はいいなと感心してしまう。
植物材料調達に特化した役職持ちのカゲツと、その材料から強力な効果を発揮する魔法薬を作ることが出来るノースター。
前期はそれぞれやりたいことがあった為に、パートナーでありながら全く接触していなかった二人だが、こう話されると魔力の相性は確かに良すぎた。
『(変な人に渡るのも嫌だからお金儲けにはあんまり使いたくないし、そもそも商売の矢主に立ちたくないんだけど)』
「そこを! そこを何とか! なにか妥協案ありませんかや!?」
『(妥協案って言われても……)』
瞳にお金のマークを宿したカゲツは、ノースターの作る魔法薬にかなりの可能性を見出しているようだ。
確かに魔法が跋扈するこの世界ではあるものの、魔法の使えない一般人は調合された剤状や粉の薬を利用するのが一般的で、ノースターが作るような魔法薬はあまり流通していない。
魔力がない人間でも使える、効果が的確でかなり強力な魔法薬が市場に出回れば、確かに魔道具と同様に、かなりの人の役に立ちそうだなと、ルドーもカゲツの関心に納得の表情をした。
だがノースターの懸念の通り、市場に流通すればどんな相手の手に渡るかは分からなくなる。
魔法薬の作成者として、不遜な相手に渡ることは流石に嫌だろう。
ノースターの渋る気持ちもルドーは同時に理解できた。
「まぁとりあえず、今回は疫病の対策なので人命救助優先ですや。その為の協力ですので一旦よろしくお願いします」
『(まぁそう言う事なら協力するけど……)』
両手を顔の周りであちこち動かして、まさしく商売人のジェスチャーをしつつも、一旦妥協案のようにカゲツはノースターにそう声を掛けていた。
確かに今回はトルポの疫病対策。
エレイーネーの理念にも則った人命救助活動に当たるため、ノースターも協力の姿勢を見せる。
「お兄ちゃんそろそろだよ」
「あぁ、えーっと、正面から入ればいいのか?」
話を聞いていたルドーはリリアの指摘に、改めて視線を前に戻した。
几帳面に並んだ町の街道のお陰か、特に曲がったりする必要もなく、転移門のあった建物から真直ぐ一直線で、キシアの居るであろうローゼン公爵邸の正門に辿り着いていた。
公爵邸の警備の人間か、鉄製の柵門の両脇にそれらしい服装の人間が二人、それぞれ並んで立っている。
キシアから事前に渡されていた、トルポ国公認のカルテ閲覧依頼書をルドーは仕舞い込んでいた服から引っ張り出し、確認してもらうように門兵に渡せば、事前に話を通されていた様子ですんなりと門が開かれる。
開かれた門に全員が確認するように顔を見合わせた後、それぞれが緊張した面持ちに変わりつつ、ルドーはまたガラガラと荷車を引いて、ローゼン公爵邸へと向かった。




