第百三十五話 再び発生したシマス国問題
ライアが勇者の役職を授かり、三つ子に訓練が開始されるようになって一週間、恐ろしく厄介な問題が発生したのだった。
「女神教の女神降臨祭?」
ネルテ先生に相談したいことがあると、昼食を終えた所で呼び止められたルドー達。
直接的ではないが、例のあれに関連するかもしれないと、そのまま情報規制のため校長室まで連れて行かれ、ルドーとリリア、それとエリンジとカイムは不安にその魔法円が飛び交う空間に佇んでいた。
どこから話したものかと、ネルテ先生は珍しく悩むように唸っている。
どちらかというと問題はカイム達魔人族側の方だと、そのネルテ先生の心配そうなカイムに向ける視線が物語っている。
ネルテ先生と同行しているボンブも、睨むような表情で後ろで低く唸っていた。
そうしてネルテ先生が話し始めたのが、女神教の女神降臨祭についての事だった。
「毎年やってる奴だよね、もうそんな時期なんだ」
「なんだよそれ」
「女神教ってさ、世界宗教だから、女神さまが降りて来たってされる日に世界規模のお祭りするんだよ。主催が各国で順番に回って交代で祝ってるんだ。えーっと今年どこだっけ」
「それがよりにもよってシマスなんだよ」
大きく溜息を吐いて頭を片手で抱えたネルテ先生。
エリンジとカイムの表情が途端に曇った。
シマスのクバヘクソでの出来事は、きっと二人に大きなトラウマになっているだろう。
祭りと聞いても喜んで行きたいという話にはきっとならない。
だがネルテ先生がわざわざ相談してきたという事は、そうもいかない話なのだろう。
「今回はシマスでも下層の、フィレイアっていう町で開催予定なんだけどさ。ホラ、最近聞くじゃないか、女神教の女神像が連続して破壊されてるってやつ」
「まだ続いてるんですかあれ」
女神教の女神像連続破壊事件。
ルドーとリリアがチュニ王国で目撃した、実行犯と思われる金髪青眼の大鎌を持った女性。
あの後エリンジと相談した後、事情を知っているネルテ先生にもルドー達は報告を済ませている。
ルドーとリリアが目撃した女神像破壊犯、女神深教と思われる襲撃者との特徴の合致。
ネルテ先生が校長室にルドー達を呼び出したのも、この女神像破壊事件とリンソウの襲撃者が同一人物だった場合、女神深教に関連のある話に変わる。
念には念をとの事だと、ルドー達は顔を動かさず、視線だけ見合わせて理解する。
「最近は復興して直した女神像まで壊されてるらしくてね。前に報告してもらった犯人も警戒情報として女神教には例の件は伏せつつ伝えたんだけど、依然捕まらないままだ。だが目前に迫った降臨祭で問題起こされたらそれこそたまらないってんで、エレイーネーに監視護衛と、問題はありませんと安全アピールをする為に生徒も参加してくれって、シマス本国から指定依頼が入ったんだよ」
魔力差別が激しいとされているシマス。
しかしあくまで本国内でひっそりされているもので、表向きはそんなことはありませんという体を貫いている。
言うなれば体面を装う事に必死になりやすい質の国という事だろうか。
そんなシマス国でこの度開催される、毎年恒例の女神降臨祭。
女神像の連続破壊などという不謹慎極まりない事件を、その降臨祭でやられてしまえばそれこそ警備はどうしていたのかと、シマス国の体面は丸潰れだ。
そんなことにはならない様にと、たとえ下層の町での開催であっても、シマス国は警備を厳重にしなければならない。
その為に平和維持機関のエレイーネーに警備の依頼が来たという事まではルドーは理解したが、安全アピールのために生徒の参加というのがよくわからない。
眉をしかめて暗い表情のままのネルテ先生に、ルドーはそのことを質問した。
「安全アピールって、ネルテ先生話がよくわかんないんすけど」
「この間被害に遭ったエリンジとカイムには、聞いてて気分のいい話じゃないから、そこだけは念を押しておくけどいいかい?」
ルドーの質問に、ネルテ先生は改めて面倒事を押し付けられたというような、それでいて心配そうな表情をエリンジとカイムに向けた。
シマスで起こった出来事を考えれば担任として心配する気持ちも当然。
ルドーがエリンジとカイムの方を見れば、二人共複雑そうな表情をしながらも、話を聞く態度をして無言で頷いていた。
「要は表向き、我々の国は安全ですよって、同盟国連盟にアピールしたいのさ。だから魔力差別も表向きは対策しててそんな問題ありませんよって、そう下層の町フィレイアで周知活動するつもりなんだ。笑えない話だよ、その為に魔人族の生徒がいるなら絶対に参加させてくれって、カイムをわざわざ指名してきたんだ」
そう言ってネルテ先生は、珍しくかなり重苦しい大きく深い溜息を吐いた。
クバヘクソで何があったか話を聞いていたボンブも、その後ろで大きく唸り始めた。
カイムとエリンジはついこの間、クバヘクソで住民たちから差別による激しい暴力被害に遭っている。
そんなことがあった後なのに、そんな事実はありませんのでシマスは安全ですと、その証明のためにわざわざ被害に遭いそうな魔人族のカイムを指名してきた。
国の体面だけを保つような虫のいい話に、あの時二人がどれだけ酷い怪我を負っていたか、その目で見ていたルドーはついカッとなる。
「そんなの! クバヘクソで二人がどんな目に遭ったと思ってるんですか!」
「わかってる。でもあれは正式依頼で行ったわけじゃないから、シマスではもみ消されてしまってるんだ。町で起こったただの小競り合いだって、取り合ってもらえなかった」
「小競り合い!? そんな程度の被害じゃなかったのに!」
「ルドー、落ち着け」
「こっちが勝手してやったんだ、その分隙が生まれらぁ。どうしようもねぇよ」
思わずネルテ先生に糾弾するルドーに、エリンジとカイムが複雑そうな表情をしながら後ろからそれぞれ引っ張って引き留める。
二人共あの時焦りのせいもあって、忠告も聞かずに勝手にシマスに向かったことを後悔している。
だからこそ仕方のなかった事だと、住民の暴力も受け入れてしまっていた。
「焦って勝手に行ったのは確かに悪いけどよ! だからって暴行受けたのは別問題だろ! 悪い事なんて何もしてなかったのに、そこまで自分のせいにしてんじゃねぇよ!」
『危険な場所に飛び込んで自業自得くらった事だと落とし込むばかりじゃ何も解決しねぇぞ』
「二人共理不尽な暴力に遭った事には違いないんだよ、不用意な動き方をしたのも事実だけど、その理不尽まで受け入れる必要はないんだよ」
エリンジとカイムに引き留められたことで、ルドーはその受け入れてしまっている理不尽に怒りを向けた。
聖剣も受けた暴行に二人の責任はないとパチパチと火花を散らし、リリアも心配そうな表情で二人に訴える。
「だけどよ、わざわざこの部屋に呼び付けたってことはよ、断り切れねぇ話だって事だろ」
「……申し訳ないけどその通りだよ。力不足で申し訳ない」
平和維持機関のエレイーネーとして、その安全性を主張したいと訴えられては、断ることは難しい。
それでも危険だと要求を突っぱねれば、この国は安全ではないと断言するのかと逆に訴えられてしまうからだ。
生徒の安全を最優先したいネルテ先生としては、出来れば実害のあったカイムに参加させたくはないのだろう。
だがその立場から断り切れない話。
だからこそずっと暗い表情で重い溜息を吐き続けているのだ。
「今回ルドーとリリアも呼んだのは、断り切れない話だから、カイムとエリンジからなるべく離れないでいてくれるように頼みたかったんだ。エレイーネーの制服を着て、チュニでこの間勇者と聖女として国の仕事をきちんとこなした二人の傍にいれば、少なくとも住民には表立って差別されない。下層のフィレイア開催なのも功を奏した。降臨祭だからと言ってわざわざ赴いて来る上層民は限られてくるから、クバヘクソ程の脅威でもなくなるから」
ルドーとリリアがチュニ王国にて、亡命していたジュエリの元王族を捕まえて搬送した話は、チュニの住民伝いにひっそりと流れて、隣国シマスにも多少は流れているという。
逃げ込んだ場所でただ捕まえただけの話だが、それでも魔力を所持していて且つ勇者と聖女という役職持ちのルドーとリリアは、魔力差別のあるシマスでは、差別されない力を持った最上位という位置づけになる。
そんなルドーとリリアの傍にいれば、降臨祭の間だけなら比較的差別もなく安全だろうと、ネルテ先生なりに二人の安全を考えた苦肉の策という事だ。
降臨祭の国は順番に巡っているが、町を指定をしているのは女神教の為、シマスはそこに関与できない。
上層民の多かったクバヘクソと違って、下層民の多いフィレイアでは、国内で降臨祭が行われることもあって、上層民はそれぞれの町で祝う形を取ろうとしているため、わざわざフィレイアに集まろうとしていない。
各国の重鎮がまたソラウのアシュの様に集まりはするだろうが、それはそれで他国の目が入るため、余計に差別を露呈させるわけにもいかないので、被害に遭う確率は減るだろうとのことだった。
「まだ魔力の無いままの私と、魔人族のボンブだと、シマスに引率に行けないんだ。だから今代理の引率を頼んでるところなんだけど、断れない話なら自衛できるならそれが一番良い。だからルドー、リリア、エリンジとカイムの傍に、降臨祭に出席している間は離れないでいて欲しいんだ」
確定指名があったのはあくまで生徒であるカイムのみ。
エリンジはまだ魔力が三割戻ってきているので、この間のクバヘクソの時よりも状況はマシにはなっている。
だが魔力が全て無くなったままのネルテ先生とボンブの二人では、エリンジやカイムがクバヘクソであったような差別の危険に晒される可能性があり、悪目立ちして生徒にも余計な危険を及ぼす可能性があるため同行出来なかった。
その為ヘーヴ先生が変わりの引率として勤める予定でいるのだが、実被害に遭ったあとのカイムとエリンジの身を心配して、わざわざこうやって個別にルドーとリリアに安全性を頼みに来たという事だった。
『参加が拒否できねぇなら、それ以外にねぇな』
「……わかりました。エリンジ、カイム、いいよな?」
「問題ない」
「はぁ、世話かけらぁ」
エリンジもカイムもクバヘクソでの経験から、申し訳なさそうな表情でルドーにそれぞれ返してくる。
厄介なことになってしまったと、ルドーは心配そうな表情でいるリリアと目配せした後、不安を吐き出すように小さく溜息を吐いた。
「あと降臨祭の警備もあるんだが、そもそもなんで女神教の女神像が破壊されているかだ。情報統制形態だから敢えて聞く。フェザー、この件は女神深教が仕組んだものだと思うかい?」
『“それは情報を統合しての意見としてでしょうか”』
ネルテ先生達の話し合いに、我介せずといった態度でずっと書類をサラサラと書き上げていたフェザー副校長が、書類業務を止めて空中に文字を書く。
フェザー副校長は女神深教の情報に関してはあまり関与する姿勢を示さないと宣言している。
その為個別の意見を求めてきても答えないと、そういう態度でいるという事だろうか。
ちなみにネイバー校長はまた脱走していた。
校長室に入室した際、床に散らばった解けたローブを見たネルテ先生が、やれやれと首を振っていたのだ。
「リンソウで魔力を奪ってきた襲撃犯と、今回の女神像破壊の犯人の特徴が合致してるんだ。でも今のところ女神深教とか言う奴が動いていたのは大体一瞬で、ここま多肢に渡って動いていなかった気もする。動きが変わったというならそれまでだが、どうにも動き方に類似点が無い気がしてね」
『“現状では情報から肯定も否定もしません。ただ、女神深教そのものではない可能性はあるかと”』
「そのものではない可能性?」
空中にサラサラと、ネルテ先生の話に返答したフェザー副校長だが、ネルテ先生の更なる質問には答えないというように、また書類業務に戻って、紙に文字をサラサラと書き連ね始める。
「……とにかく、女神像の破壊犯が女神深教にしろそうでないにしろ、危険な事には変わりないか。みんな、十分に注意してくれ。この間のクバヘクソでの差別意識は大分マシにはなってきたが、差別が無くなったわけじゃない。シマスに行く以上そこ留意しておいてくれ。わかったね?」
フェザー副校長の文字に訳が分からないような様子で居たものの、ネルテ先生はそのままルドー達に気を付けるようにと警告を話す。
ルドー達もそれぞれ顔を見合わせて、同じ轍は踏まないと、強い声でそれに答えた。
「はぁ、シマスで降臨祭かぁ、気が重いなぁ」
「まさかわざわざシマス国からエレイーネーの生徒に参加指名が来るなんてね」
ネルテ先生からの警告の後、ルドー達は校長室から魔法訓練のために運動場に向かっていた。
複雑そうな表情をしたままのエリンジとカイムをちらりと見やり、ルドーも先が思いやられると大きく項垂れ始める。
『そういやあれからあれはどうなったんだよ、あの頭のイカレタ名前なげーやつ』
「あーなんつったっけ、パピなんちゃらってやつか」
そもそも二人がシマスを訪れた元凶、リンソウでの魔力奪取犯とは別人だった、シマス上層を襲い続けている魔力奪取犯。
そういえば捕まったという話はルドーは聞いていなかった。
犯人が別人だったとのことでその後については気にしていなかったが、そもそもの話、魔力を奪取しているのは間違いないのだ。
リンソウでの犯人の魔力奪取方法が未だわからないままなのだから、そのクバヘクソの例の犯人と、魔力奪取の同じ方法かもしれないことに、ルドーは今更ながら思い至った。
「シマスの魔力奪取犯か、相変わらず暴れたまま捕まりもしていないらしい」
「……聞けば聞くほど問題だらけじゃねーかシマス。大丈夫なのか今度の女神教の開催」
ルドー達の当然の疑問に答えるようにエリンジが答えた。
どうやらエリンジは魔力奪取された当事者として、別人だと分かった今でも一応シマスの魔力奪取犯の動向は注意していたらしい。
未だに犯人が捕まっておらず襲撃を許したままエレイーネーに何の要請も示していないシマス。
問題だらけの国での女神降臨祭の開催に、ルドーは大きく肩を落とした。
「別の国に今からでも変えねーのかよ」
「それも難しいんじゃないかなぁ、女神教が毎年主催してる場所が、あまり発展していない途上都市を指名してるし。なるべく似たような場所で開催しない様にって、毎年主催最後に次回の開催場所も発表してるし」
「女神教内で準備とかもあるだろうしなぁ。もうあと数日だし、今更変えられねぇだろ」
女神降臨祭を主催しているのはあくまで国ではなく女神教の方。
そもそも降臨祭とは体のいい建前で、支援が必要な寂れた町で開催して、町そのものに注目を浴びせて、その町の抱える問題を支援しやすい状況を作り出すのが、降臨祭での女神教の都市指定の主な目的だった。
そのため女神教での降臨祭の指定条件は、安全かつ支援が必要な都市。
実際女神降臨祭では観光客や女神教の熱心な信者などで、人は集まりやすい。
女神教がシマス国内での問題についても、おおよそ指定されたシマス国が体裁を気にして、女神教の方に問題ないとして、魔力奪取の襲撃についても過小報告している可能性もあるのだろう。
どちらにせよ開催が間近に迫った今では、カイムが提案するように別の国の別の都市に変える事も難しい。
「一応アルスに事前に注意点聞いてみるか。下層の事なら多分詳しいはずだから」
「話しにくい内容かもしれないけど、仕方ないよね」
『情報知ってるのとそうじゃないのとでは対処も大分違うだろうしな』
シマス国に訪れることが確定事項になった今、以前のように差別以外に何か問題点を事前に把握しておけないかと、ルドーは下層に詳しいアルスに話を聞こうと提案した。
シマスの話題になってしまったために、気まずそうな表情をして口数が少なくなったエリンジとカイムの方をちらりと見やりながら、ルドーの提案に肯定するリリアと聖剣の声を聞く。
エリンジとカイムも注意事項があるなら聞いておいた方がいいだろうと、ルドーはそのまま運動場に辿り着き次第、キシアと一緒に準備をしていたアルスに声を掛ける。
「うぇー、降臨祭に全員参加? 今年確かフィレイアだよね、厄介な事起きなきゃいいけど……」
「あらアルスさん、フィレイアに何か問題ごとでもありまして?」
一通りアルスに事情を説明して、注意点はないかとルドーが聞いたのに対して、アルスは嫌そうな表情を浮かべたので、横で話を聞いていたキシアも不思議そうにしている。
「はぁー、ほんとシマス上層と来たら、体面ばっか気にして現地の事なーんにも考慮しないんだ……フィレイアはさ、十年前に合併した旧ヨナマミヤの町なんだよね」
「ヨナマミヤっていうと、十年前の魔物暴走騒動で合併したっていうあれか?」
学習本の内容を思い出しながらルドーが問い質せば、アルスは項垂れながらうんうんと頷く。
学習本が余り進んでいないカイムが怪訝そうな表情をしていたので、ルドーはその辺りの説明も、現地に詳しいアルスに説明を求めた。
「旧ヨナマミヤはね、三十年前にユランシエルが魔物暴走で魔の森に没してから、魔物の脅威に対して物凄く敏感になったんだ。外出するのもビクついて、一人で外になんて出られたもんじゃない。シマスに合併してからはマシにはなったんだけど、そしたら今度は差別されるようになって、差別で攻撃されるからまた一人でおめおめ外も歩けない。魔物に怯えていたのが差別にも怯えるようになって、ヨナマミヤはただでさえ治安が不安定な地域なんだよ」
「……魔物って不安に寄ってきやすいんだよね、森が近いのに大丈夫なのそれ」
「ぜーんぜん大丈夫じゃない。だからルドー君とリリアちゃんも注意したほうがいいよ。勇者と聖女だって知ったら、安全を求めて群がってきちゃう可能性あるから」
リリアの質問に対するアルスの回答は不安しかないものだった。
なんでそんなタイミングでエレイーネーの生徒を指定して呼ぶかなぁと、アルスはいつもの遠目から見るような調子ではなく、当事者のような口ぶりで大きく溜息を吐いた。
アルスの話にルドーはリリアと一緒に顔を見合わせる。
差別被害に遭う可能性があるため、ルドーはエリンジとカイムとも行動を共にするつもりではいる。
だがアルスの話を聞く限り、勇者と聖女であるために、ルドーとリリアもフィレイアの町ではあまり安全とは言えないかもしれない。
余り聖女と勇者であると、フィレイアで周囲にひけらかさない方がいいだろうと、ルドーはリリアとゆっくり頷いた。
話を聞いたエリンジとカイムも、心配そうな表情に変わっている。
「その話が本当なら、フランゲルさんとヘルシュさんとアリアさんにも注意するように言ったほうがよろしいのではなくて?」
「うん、その方がいいと思う。後で伝えとくよキシア」
不安顔になったキシアに、項垂れながらもアルスは手を振って答えている。
シマスの上層と下層の分断、そして魔物暴走の脅威によって合併した旧ヨナマミヤの問題。
ルドー達は向かう事が決定してしまっている女神教の女神降臨祭に、シマス国の問題に盛大に巻き込まれそうで、全員が今から不安に苛まれていた。




