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第百二十五話 シャーティフを跳躍する災害

 大きくあげられた咆哮に、身体がビリビリと震えた。

 そのギョロギョロ動き続けている不気味な瞳は何を捕えているのか全く分からなかった。

 こちらに対峙するように向き合ったままの巨体、歩く災害に、ルドーは恐怖で動かない足を咄嗟に強く叩いて、動けるようになった途端聖剣(レギア)を構えて逃げる様に走り出す。


『来るぞ避けろ!』


 ルドーが走り始めると同時にバチンと聖剣(レギア)が警告する。

 大きく飛び上がって横に身を投げれば、その瞬間先程までルドーがいた場所の背後の壁がドカンと爆発するかのように歩く災害が突っ込んだ。

 勢いに急に止まれないのか、後ろの数軒もろとも激しく瓦礫を巻き上げながら歩く災害が奥に奥にと突き進んで建物が次々破壊されていく。

 なんとか避けたものの、その恐ろしい速度に発生した風圧に、ルドーは吹き飛ばされてまた路地の壁に叩き付けられる。


 目に見えぬ速度で突っ込んできた黒い塊、歩く災害の動くスピードはクロノと同様あまりにも速過ぎた。


「家が! 中の住民は!?」


「この辺りは大昔に魔物暴走(スタンピード)で一度廃棄されたんだ! 街の復興こそしたものの、この区画に住民はいない!」


 壁に叩き付けられつつも痛みになんとか身を起こし、ガラガラと破壊される建物に立ち上がりながらルドーが叫べば、先程歩く災害が飛び出してきた穴の背後にいたバベナが叫んだ。


 中央魔森林に近く、グルアテリアと違って森との接触範囲の広いランタルテリアでは、定期的に発生する魔物暴走(スタンピード)で街が滅びてしまうことが幾度となく発生する。

 その度に中央魔森林を広げる事を防ぐためになんとか魔物を退治して街の復興を行うのだが、逃げた住民の所在が分からなくなるため、安易に居住区を解体することが出来ない。

 その為住民のいない居住区からまた別区画に新たに建物を建てて街を復興するため、中央魔森林に近いランタルテリアの街では度々このようなゴースト区画が発生する。


 シャーティフも中央魔森林に比較的近い場所、同様にかつて魔物暴走(スタンピード)に一度襲われ、なんとか復興した経緯があった。

 攻撃型魔道具の製造に発展したのもこの歴史が由来している。

 歩く災害が突っ込んだ建物含めてこの辺り一帯が、そんな経緯の人がいなくなった地域、ゴースト区画だった。


 バベナの叫びにルドーがその方向を向いたことで、見たくないものも一緒に見えてしまう。

 先程ルドーが黒焦げにした、しかし気絶させただけのまだ生きていたはずのおおよそラグンセンの男達が、歩く災害の移動経路に入っていた。


 轢き殺されてぐちゃぐちゃになった真っ赤な肉片と、鉄臭い引き摺られた赤い液体が、辺り一帯に散らばっている。


 そのあまりにも地獄すぎる悲惨な光景。


 路地裏に充満する鉄の臭いと、引き摺られた原形をとどめない大量のすり潰された肉片。

 恐怖心が湧き立つように、ルドーの胃のあたりからものが込み上げてきて、思わずうっとその場にボタボタ吐き捨ててしまった。


『あんま凝視すんな! 今はあっちに集中しろ!』


「君の責任じゃない。見ない様にして、動けるか」


 腹を押さえて壁に手をつきながら、胃からせり上がってくる吐瀉物を吐き出して動けなくなったルドーにバベナが走り寄る。


 ガラガラと音を立てて、大きな瓦礫片を落としながらも、三棟先で止まっていた歩く災害がムクリとその巨体を起こしてまた動き出そうとしていた。

 すかさずバベナが動けないルドーを庇うように、空中に様々な色の魔法球体を発生させて牽制するように歩く災害に向かって放った。

 歩く災害はその攻撃に避ける様子もなく、バベナの魔法攻撃が全て命中して爆発する。


 しかし爆発の煙の下からは、まるで意に介さない様に反応も負傷もない姿が、不気味にゆらりと現れる。



「攻撃がまるで通じない、なんだこいつは!」


『中央魔森林にいる化け物だ。話によると森から外に出て来ないらしかったが……』


「……遭遇した魔人族の村の住民見境なく皆殺しにされるって聞きました。もしこの街が攻撃対象になってるなら……」


 庇うように手をあげて警戒しているバベナに背中をさすられる中、ルドーは吐いた吐瀉物の垂れる口周りを袖でグイっと拭いた

 崩れた建物の瓦礫からも覗く巨体を、ゆっくりとこちらに身体を向け始めた歩く災害に、ルドーは恐怖に身体が震えながらもその視線を向ける。


 歩く災害がどうしてここにいるか、今それを考えてもどうしようもない。


 魔人族からエレイーネーに伝えられた歩く災害の噂。

 遭遇するだけで原形もとどめない死体の山が形成されるそれがここに居るなら、倒せないにしてもなんとかしてこいつをシャーティフから引き剥がさないといけない。


 今いる場所が幸いシャーティフのゴースト区画であった為に被害に遭ったのはラグンセンの連中だけだが、少し歩けば普通にシャーティフで生活している魔道具職人や街の住民がごまんといる区画に入ってしまう。


 直接攻撃されなくても、恐ろしい勢いで通り過ぎるだけで轢き殺される。


 あの速度では住民は逃げることは出来ない、シャーティフの人口密集地に行くことだけは何としても防がなければ。


「バベナさん! あれ転移魔法でシャーティフの外に出せますか!?」


「転移はあまり得意ではない上、それでも先程から試してみているが……」


 ズシンズシンと、まるで怪獣が闊歩するかのように歩き始めた歩く災害からルドーがバベナに視線を変えて声を上げる。

 しかしバベナが左手に魔法円を発生させた瞬間歩く災害にも魔法円が現れるが、両方即座にバチンと弾けるように割れ砕けてしまった。


「向こうの魔力が圧倒的に多すぎて、こちらの転移がまるで通じない」


「そんなことってあるのか!?」


『あの化け物の魔力がでか過ぎるんだ。同等魔力での転移魔法じゃねぇとまともに機能しねぇ』


 そんな奴がいればだがと続ける聖剣(レギア)にルドーが抗議の声を上げようとした瞬間、また歩く災害が恐ろしい勢いでルドーとバベナに向かって突っ込んできた。

 咄嗟に横に避けようとしたルドーの腹部辺りがガシっと腕を回して掴まれ、そのまま上空に引き上げられて、身体が急に重力を受けてブワッと嫌な感じに震える。


 気が付けばルドーは飛行魔法で空中に留まるバベナに米俵の様に抱えられていた。


「魔力が多いが、魔法攻撃はしてこないようだな。魔力を纏ってそのまま力任せに動いている。人の形状に近いが、動きはまるで動物のようだ」


『なるほど、上空に逃げれば向こうはこっちに来られねぇと』


「君、さっきから聞こえるこの声は一体なんだ?」


「あー、えーっと、この古代魔道具が喋れるようになってるんです……」


 歩く災害を上空から観察していたバベナが今更ながら聖剣(レギア)の声に疑問を抱いて、その腕に抱えられたままルドーが困惑しながらも一応説明した。

 古代魔道具と聞いて合点がいったのか、バベナはじっとルドーがその手に握っている聖剣(レギア)を注視したが、すぐに視線を下に戻した。


 眼下の歩く災害はまたルドー達の傍にあったゴースト区画の建物を数棟破壊する勢いで突進しており、煙をあげてガラガラと崩れる瓦礫の中、また立ち上がった歩く災害がその不気味な瞳をギョロギョロと動かしている。


 少し周囲を見渡せば、爆発した瓦礫と煙に何事だというように、ゴースト区画の周辺を囲むように人だかりができ始めている。

 歩く災害にあそこに行かれては不味い。


「攻撃が届かない様に上空避難したものの、倒す手立ても見当たらない。どこか人のいない場所に誘導するしかないが、シャーティフの中心街近くにいるせいでそれも出来ないな、どうしたものか……」


 ルドーを抱えたまま、バベナが思案するように歩く災害を見下ろしながら呟く。

 話の通りならかなりの脅威で見過ごせないが、転移魔法も通じないせいで下手に動かせず、今はゴースト区画にいるラグンセンの被害こそ出したものの、周囲をぐるりと魔道具製造施設や居住区に囲まれているせいで誘導すらままならないようだった。


 倒せれば一番いいのだろうが、先程のバベナの魔法攻撃がまるで通じなかった様子から、歩く災害はかなりの強度があると見て取れた。

 以前遭遇したときは気付かれなかったものの、相変わらずのそのおぞましい魔力量。

 聖剣(レギア)単体でもその攻撃が通るかどうか、ルドーから今見てもかなり厳しかった。


 眼下の歩く災害は、ルドーとバベナが上空に逃げたことに気付いたのか、首を上に向けたが、ギョロギョロ動くその瞳はこちらを向いているのか分からなかった。


 不気味にしか見えないそれが、突如として大きく吠えるように咆哮する。


 上空にいるルドーとバベナにすらも届くその強烈な魔力により発せられる威圧のような衝撃、しかし思わず顔を顰めつつ何とか歩く災害を見ていたルドーの目に、とんでもないものが飛び込んでくる。


 歩く災害が虹色に光り輝き始める。


 エリンジがいつも使っていた魔力。


 女神深教と思われる相手に奪われたそれが、歩く災害から放出されていた。


「はぁ!? ちょっと待てよ! どういうことだ、おい聖剣(レギア)!」


『あぁ間違いねぇ! 何がどうなってやがる!? なんであいつの魔力があの化け物から出てくるんだ!』


 バベナが驚愕に叫ぶルドーと聖剣(レギア)に困惑する中、歩く災害がそのまま虹色の魔力を纏ったまま、恐ろしい勢いでその場で跳び上がった。

 先程まで歩く災害が立っていた周囲の地面が巨大に抉れ、轟音と共に姿が見えなくなったと思ったら、ルドーの身体に突然重い衝撃が走った。


 あまりの速度に上空で避けきれず、咄嗟に張ったバベナの防御魔法は粉々に砕かれ、ルドーを庇ったのか直撃を受けて、大きく負傷して血を飛散させながらそのまま落下していくのが見える。

 しかしルドーはそんなバベナに声をあげる事も出来なかった。


 恐ろしい握力でルドーは歩く災害に上半身を掴まれている。


 その威力にミシミシと上半身の骨が軋み、衝撃に内臓がやられたのか口からゴホリと血が溢れた。

 歩く災害に捕まれたことにルドーがまた恐怖を覚えるも、同時に疑問も浮かんだ。


 なんだ、こいつの威力ならあっという間にルドーを握り潰すのも容易いはずなのに、なぜそうしない。


 自由の効くルドーの腕に握ったままの聖剣(レギア)から、なんとかこの化け物を引き離そうと、ラグンセンを一掃したときの様に、目が開けられない程の威力で大量に雷魔法がバリバリと浴びせられる。

 だがルドーを右手で握ったまま、跳躍から落下していく歩く災害には全く効いている気配がない。


 口に溜まった血を吐き捨てながら、落下していったバベナの方へ叫ぶ。


「バベナさん! バベナさん! 放せ! 放せって! なんなんだよもう!」


『俺だけじゃダメだ! おい攻撃しろ!』


 落下するバベナすら視認できなくなり、恐ろしい勢いで歩く災害はゴースト区画の端の方に両足で着地した。

 その衝撃に周辺の地面がまた大きく抉れる。


 このままでは魔道具製造施設の区画や居住区に到達してしまうと、ルドーは手に持つ聖剣(レギア)をその腕に突き立てようとしたが、ガキンと恐ろしく固く刃が通らない。

 先程の雷の柱の威力、雷閃を何本も束ねたような雷魔法を何度も何度も浴びせるがまるで効かない。


 握られる右手に身体が軋みつつ痛みに呻きながら、ルドーはそのまま歩く災害に運ばれ始めた。


「見境なく皆殺しにするんじゃなかったのか!? 聞いてた動きと違うぞ!」


『なんにせよ攻撃し続けろ! 気が変わった瞬間終わりだぞ!』


 叫ぶ聖剣(レギア)にルドーも何度も刃を突き立てながら雷魔法を放ち続ける。

 防御魔法が使えず、ついこの間作った雷魔法の盾も、捕まれた状態だとその握力を防ぐことが出来ない。


 歩く災害はルドーに飛び掛かった時と同じように、大きく咆哮してまたエリンジの虹色の魔力を放出させ、恐ろしい勢いで跳躍する。

 あまりの速度にルドーは一瞬意識が飛びかけ、バチンと身体に衝撃が走って何とか気を失う寸前に意識を取り戻した。


『今気を失ったらどうなるかわからねぇぞ!』


「助かってねぇけど助かった! ……って、おい!!! 危ない避けろぉ!!!」


 跳躍からの着地、とうとう歩く災害が魔道具製造施設の区画に入ったため、ルドーは被害を出さない様にとあらんかぎりの大声で叫んだ。

 ルドーの叫びに上を向いた住人たちが大慌てでその落下地点から逃げ惑い、なんとか間一髪で直撃を躱すも、その恐ろしい衝撃に周囲の人々がそれぞれ吹き飛ばされ、抉られる地面に飛び散った瓦礫が襲い掛かる。

 その場にいた攻撃型魔道具を持った、ガタイの良い戦い慣れていそうな依頼者達が、その瓦礫からなんとか住民を守ろうとそれぞれが攻撃魔法を放つ。

 逃げ惑う住民も気にしていない様子の着地した歩く災害の背後から、バシッっと大量の赤褐色の髪が巻きつけられた。


「おい! なんで歩く災害がこんなとこにいんだよ!?」


「お兄ちゃん! お兄ちゃんを放して!」


 ラグンセンを一掃した雷魔法にこちらに急行していたのか、その場に合流したカイムが髪を歩く災害に大量に巻きつけ、なんとかその動きを封じようとする。

 一人で走るには遅いと思われたのか、カイムの背中に背負われたリリアが、歩く災害に捕まれたルドーに大声をあげて、そこから助け出そうと大量の浄化魔法を放った。


 しかし浄化魔法が有効なのは人に害しかない瘴気や魔物に対してのみ。

 そのどちらにも該当しないのか、浄化魔法は歩く災害をすり抜ける様に素通りしてしまった。


「そんな、効かない……!」


「歩く災害に浄化は効かねぇよ! 瘴気でも魔物でもねぇんだ! クソが、ここじゃ場所がわりぃ! 抑え込めねぇ!」


『跳ぶぞ! 巻き込まれる髪切り落せ!』


 聖剣(レギア)が叫んだと同時に、カイムの髪で縛られている事にも全く意に介していなかった歩く災害がまたエリンジの魔力を放出し、恐ろしい勢いで跳躍する。

 叫ばれた警告に間一髪で髪を切り落したカイムと背負われたままのリリアが、歩く災害から発せられた虹色の魔力に驚愕に目を見張る。

 驚愕しつつも歩く災害の右手に握られたままのルドーを追いかける様に、リリアを背負ったままカイムが歩く災害の後を髪でターザンの様に追いかけ始めたが、歩く災害の余りの速さに一気に引き離されていく。


 恐ろしい速度の威力にルドーがまた意識が一瞬持っていかれそうになるが、遠のくリリアの叫び声に、なんとか気合いでギリギリ意識を保ち続けた。

 歩く災害の跳び上がる度に若干強まる身体の拘束に、軋む身体の痛みにルドーは呻く。

 再度落下して着地する衝撃に両手を防ぐようにしつつ周囲を見れば、もうシャーティフの街の外れの方まで来てしまっていた。


「シャーティフの人たちにも目もくれない……どこに連れて行こうってんだ」


『この方向、中央魔森林に向かってるか。それはそれで被害も出ないからありだが、こうも脱出出来ねぇんじゃ何する気かわからねぇ』


「厄介事ばかり発生するのは君の周囲かね!」


 再度の咆哮からの跳躍にルドーが必死に意識を保つ中、空中で思ったよりもすぐ傍から叫び声が聞こえてルドーが首を向けた瞬間、ルドーを掴む歩く災害の右手に向かって、ギラン先生の銀色に光る義手魔道具が当たって弾かれてガキンと硬い音を立てた。


「魔力の層が厚すぎるな、こちらは効くかな!?」


 ギラン先生の攻撃にも全く意に介さない歩く災害に対して、ギラン先生の腰当たりが怪しく光る。

 以前魔法訓練の際に見た、左腰の中心にある緑の丸い部分が怪しく光って、悲鳴のような不快な大きな音と共に巨大なレーザービームが歩く災害に直撃して大きく爆発する。

 捕まれたままのルドーの直ぐ傍での爆発につい悲鳴をあげる中、ルドーを掴んだ右手を狙った攻撃にも、爆発の煙の中歩く災害の腕は相変わらず何ともなかった。


「これすら効かないというのか!? 相当な魔力層だな、うおっと!」


 攻撃が通っている様子はなかったが、流石に同じ場所を連続で攻撃されたためか、まるで虫でも払うかのような動きで歩く災害がギラン先生の方に左手を振った。

 空中で間一髪それを避けたギラン先生だったが、その手の振りすら恐ろしく早くて、恐ろしい威力の風圧が発生してものすごい勢いで吹っ飛ばされていく。

 魔道具の右手義手で咄嗟に防いでいるのが見えたが、ガシャンと物が壊れるような嫌な音も同時に響く。

 片足も義足だったのか、右足から放出される魔力の炎がロケットブースターの様になって空中を飛行していた事に、ギラン先生が風圧に飛ばされて遠のいていく中、破壊された右手の義手の部品と共に見る事が出来た。


「先生! くっそ! いい加減にしろよ!」


 両手に意識を向けてガキンと雷魔法の盾を外し、そのまま盾を展開するよりも先に小さい形態のまま、ルドーはそのギョロギョロ動き続ける両目にドスッと金属部分を叩きつけた。

 視覚で周囲を認識していないのか、金属部品を目に当てても歩く災害は何の反応もなかったが、そのまま扇子が開くように盾を展開する。


「手加減なんて必要ねぇしそもそも効果がある威力が分からねぇ! ()()()()!!!」


 聖剣(レギア)を握ったまま両手を歩く災害の目に展開されたままの雷魔法の盾に向け、ルドーが大きな声でそう叫んだ。



 上空が一気に暗くなって真っ黒な雷雲が形成される。



 鼓膜がいくつあっても足りないような、周辺の空気ごと全身を震わせるような轟く爆音。

 今まで見たことも無い様な、竜のような姿をした、超規模魔物と同等サイズの落雷が二つ、ルドーが指示した雷魔法の盾部分、歩く災害の両目に直撃した。


 想像以上の、むしろ想定外すぎる威力の雷魔法が発生して、激しい雷光に周辺が真白になる中、ルドーがその威力と発生した魔法に驚愕に大きく目を見開いて息をのむ。


 ようやく攻撃が通ったかのように、歩く災害が悲鳴をあげる様に周囲に振動する大きな咆哮をあげて、ギョロギョロ動いていたその両目が焼ける様に煙をあげた。


 身体を掴んでいた歩く災害の右手の拘束が緩んで勢いに落下し始める。


 痛みに呻くように叫んで、両手をその煙をあげる大きな目に当てる歩く災害と一緒に、ルドーはいつの間にか近付いていた中央魔森林の木々の中に遥か上空から落下した。


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