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第百十七話 新たな防ぐ力

 食事を一通り終えた後、ルドー達は揃って魔法訓練に向かう。

 様子を見たいと訴えたライアと、なんだなんだと付いて来るレイルとロイズ。

 エリンジとリリアとカイムも、一体何が始まるのかとルドーの後に付いてきている。


 魔法訓練が始まる前、まだまばらに集まっている中、ルドーは周囲と距離を取って聖剣(レギア)を握った。


「えーっとどうしたっけな……イメージだっけ? 集中集中……」


 魔法とは想像。

 かつてゲリックに言われた言葉を思い出しながら、ルドーは聖剣(レギア)を握った両手を掲げつつ目を瞑る。


 身を守るための力。

 聖剣が手から離れても身を守れるように。

 周囲の人間を守れるように。


 目を瞑ったルドーの周辺からバチバチと雷が放たれ始める。

 まるで竜巻のように渦巻く雷、ルドーは更に集中した。


 守るための盾。

 いつでも使える身を守る盾。

 周囲の人をなるべく多く助けるための盾。


 身に付けていた腕輪からバチンと大きく音がする。

 一度見たことのあるライアの感嘆の声が大きく響いた。

 レイルとロイズの大きな歓声も続く。

 ゆっくりとルドーはその目を開ける。


 両手に嵌まった大きな腕輪に、新しく丸く稲妻模様の黒い金属部品のようなものが付いていた。

 念じるようにルドーがそれに意識を向ければ、ガチャンと両手の腕輪からそれぞれ外れて空中に浮遊し、扇子が開くようにグルンと雷が開いて大きな丸い盾になる。


 手を放した聖剣(レギア)が空中を浮遊するように、大きな丸い二つの雷の盾がバチバチと空中に浮遊して両手の腕輪に追従していた。

 ルドーはその雷を確認するように、聖剣(レギア)本体から手を放して空中に浮遊させつつあちこち眺める。


『前もやったが、やっぱどうにも変な感じだ』


「一定距離以上は離れなくなってるな、これなら聖剣(レギア)みたいに遠くまで投げて自衛できないって事も無いか」


「……一体何してるんだいルド―」


 呼び掛けられた声に振り向けば、ネルテ先生がボンブと一緒に目を点にさせていた。


 ここから先は危ないからと、それぞれが抗議の大声をあげて物凄く渋る三つ子を、迎えに来たクランベリー先生に任せて保護科の教室に向かうまで、ルドーは雷の盾をバチバチ試すように回しながら見送る。


 突然製作された雷魔法の盾に、魔法科の面々一同興味津々で近付いている。

 わらわらと集まってきた面々にルドーはついでとばかりに声を掛けた。


「作ったばっかでどういう動きするか今一わかんねぇから、みんなちょっと協力してくれ」


「うえっ!? なんかバチバチしてるけど協力って何!?」


「あのあのえっと、僕たちに出来ることでしょうか?」


「そもそもルドーさん、一体何をされていたんですの?」


『(魔法薬ぶっかけたらいいの?)』


「訳が分かりませんわ、これだから説明不足の考えなしは嫌ですの」


「ハイハイハイなんだかわからないけど協力させてもらいますよ!」


 エリンジ、リリア、カイムも驚愕に突っ立ったままの中、ヘルシュが声を上げ、トラストが何をすればいいか聞き出し、キシアが疑問を呈し、ノースターが瓶を大量に取り出して、ビタが非難の声を上げ、ウォポンがとりあえずと剣を構えた。


「身を守るための盾? みたいなの造ってみたんだけど、どう防ぐかはやってみないと分かんねぇから、とりあえず攻撃してみてくれ。組手ってまででもねぇし、まぁ一番得意な魔法とか色々」


『俺でもやってみるまでどう動くかわからん、回復も待機させとけ』


 ルドーと聖剣(レギア)の言葉にその場にいた全員が慄く。

 明らかにバチバチと雷が迸っている魔法の盾、それに攻撃して自身は安全かどうか、皆が顔を見合わせて好奇心から不安そうな表情に変わった。

 今までルドーが自爆してどうなるか身近でよく見ていたのだ、その可能性があるならあまり試したくないかもしれない。


「はーい! それじゃあいっきまーす!」


 面々がどうしようかと悩み始めた所で、背後から元気な大声が聞こえる。

 全員がそちらの方向に振り向けば、メロンが魔力伝達で魔力を全身に纏って今にも走り出そうとスタンディングスタートの構えでルドーにニッコリ笑いかけ、背後でイエディが狙いを定めるように右手の指を二本でルドーを指示していたところだった。


「とりあえず全力でいってみまーす!」


「見えた、メロン!」


「オッケー!」


 全員が何をしているのかと困惑する中、ドカンと大きな音と共にメロンが物凄い勢いで魔力を纏って突っ込んできた。

 全員が飛び上がり大慌てで散り散りに逃げる中、メロンはかなり器用に人の隙間を速度も落とさず走り縫って、そのままルドーに突撃する。

 咄嗟にルドーが腕を防ぐように構えれば、雷の盾は回転する動きで更に大きく展開し、突っ込んできたメロンをその魔力伝達の纏った魔力ごと全体をバチンと防ぎきる。


 雷の盾に当たってメロンがドカンと大きく魔力で爆発した瞬間、雷魔法が発動してメロンにバリバリ攻撃を与え始めた。


「アバッバアバババババババ!!!」


 魔力伝達のお陰かメロンには防御魔法が効いているようだが、それでも古代魔道具の貫通威力で軽くこんがりと焼けはじめ、ルドーが慌てて盾で押し出せば、バチンと弾けてメロンが後ろに吹っ飛ばされた。


「だっ大丈夫か!?」


「だいじょーぶ! かなり痛いけどだいじょーぶ!」


「それ、大丈夫じゃ、ない」


 ブスブス煙をあげながらもブイブイグッジョブするメロン。

 リリアが大慌てで近寄って回復を掛け、イエディが心配するように駆け寄る。

 その様子をみた魔法科の面々は戦々恐々とルドーの方を見ていたが、突然様子を見ていたネルテ先生からケラケラ笑い声が響き始めて、全員嫌な予感に冷汗をかきながらそちらの方を向いた。


「なーるほど! 腕輪は貰ったんじゃなくて作り方教えてもらったって訳だね全く」


「えっと、嘘つくとか騙すとか悪気はなかったんすけど、実際見ないと説明難しくって……」


『魔力の攻撃もこの感じだと防御して通してねぇな、色々面白れぇ』


 聖剣(レギア)が動きを理解してきたのか浮遊したままゲラゲラ笑い出す中、呆然としているボンブの前でネルテ先生は更にパンパンと手を叩く。


「そんじゃあ今日の魔法訓練は、ルドーにいかに攻撃を通すかってことで全員戦闘訓練と行こうか!」


「えぇっ!?」


「いやいやいやあれ攻撃した瞬間こっちが攻撃くらいません!?」


「ハイハイハイ物理だと対策思いつきません!」


「魔法の遠距離攻撃をすればいいだけでしょう、これだから脳筋は」


「あのあの、魔力伝達で攻撃してもいいって事でしょうか?」


「最初に魔力伝達の攻撃してるし今更ではないですかや?」


「ふははははは! ならば燃やし尽くしてやろうではないか!」


 大声と共にフランゲルがゴテゴテした両手剣を構えて大きく振りかぶった。

 火炎魔法に巻き込まれまいと周囲がまた一斉に飛びのいて行く中、真っすぐルドーの方に向かってきた炎をルドーはまた正面に腕を構えて盾を展開する。

 正面からの火炎攻撃は雷の盾に当たった瞬間バチンとかき消されたが、その背後からルドーの周囲に渦巻くように炎が巻き上がり、そのまま包囲されるように周囲をぐるりと囲まれる。

 灼熱の炎に巨大なオーブンにでも入れられたかのように、一気にルドーの周囲が熱せられていく。


『最初に比べてかなり出来るようになったもんだな』 


「いや盾の性能調べたいだけだっつのに!」


「ふははははは! 盾で防ぎきれない弱点も性能の一つだろう!」


 周囲をぐるぐると回る炎に、雷の盾を構えたままどうするべきか思案する。

 他の面々からそれぞれ歓声が叫ばれる中、ルドーがとりあえずと意識を集中して両手の盾を更に大きく広げて炎の熱から身を守ろうとした瞬間、妙なことに気付く。


 広げた盾の大きな雷に反応するように、周囲の炎がチラチラ動いている様な。


 まさか炎は電流に弱かったりするのかと、ルドーが試しに浮遊する雷の盾で周囲を囲むようにしていた炎に向けたまま走り、炎の輪を遮断するように防げば、炎が雷に追従するような動きを見せた後バシュンと盾に当たってバチンとまたかき消された。


「なんだと!? 炎が消された!?」


「炎は雷通すんだよフランゲル、古代魔道具の強力な雷相手じゃその規模だと難しいね」


 熱で責めるのはいい線行ってたんだけどねぇと、ネルテ先生にニカニカ笑われて、フランゲルは一瞬呆けた後またダンダンと地団駄を踏む。


「なるほど、物理が効かん遠距離攻撃のみの予行演習か」


「魔力奪った奴の対策考えるには持って来いってか、あぁーくそ、まだ考え纏まってねぇってのに」


 フランゲルの突撃を見たエリンジとカイムも、要領が分かったのか構え始めた。

 エリンジはまだ中距離攻撃だけだが、カイムは髪の攻撃だとこちらから雷が通る、考えと言っていたが何をする気だ。


「ハイハイハイ雷は効かない! 雷は効かない!」


「えぇ!? 解除できないからってそっちに舵切るの!?」


 ウォポンが胸に手を当てて高らかに宣言したと同時に、ウォポンの身体が鳶色にビカビカ光る。

 自己洗脳魔法で雷は効かないと自分を錯覚させる方向らしい、どういう使い方だ。

 突っ込むようなヘルシュの大声もそのままに、ウォポンは剣を振り上げてこちらに走り寄ってきたので、ルドーも腕をあげて雷の盾を構える。


 バチンとウォポンの剣が雷の盾に直撃した。


 そのままバチバチと激しい雷光が周囲を照らしてまき散らされる中、強力な自己洗脳魔法のお陰か、ダメージが入って焦げていく見た目なのに、ウォポンはハイハイ叫びながら痛みを感じている様子がない。

 ある種の痛覚遮断のような状態だろうか、これはこれで危うい気がする。


 自己洗脳魔法で腕力などもかなり強化しているのか、それなりに重めの攻撃ではあるもののクロノの比では全然ない。

 何度かクロノとも戦闘しているルドーは、焦げ付くウォポンも気になってそのままバチンと盾を弾けさせて遠くに吹き飛ばした。

 地面に転がるいい感じに焦げているウォポンに、呆れた様子のアリアが駆け寄って回復魔法を施し始める。


『(うーん、それじゃあこっちならどうだろう?)』


 悩むような口調で瓶を三つ、大きくルドーの方に投げてきたノースター。

 咄嗟に盾を構えたものの瓶は盾に当たることなく地面に当たって砕け散ったが、三つの魔法薬が混ざった瞬間渦巻く煙が強烈に発生し始める。


『おぉっとぉ、空気から攻めてくる感じかぁ?』


「いやだから正面からの攻撃に対してを知りてぇのになんで絡め手ばっかなんだよ!」


『(だって正面からだと勝ち筋見えないんだもの)』


 立ち上る煙に何の効果があるかわからない為思わず後退する中、ノースターは更にポイポイと色とりどりの魔法薬が入った瓶を次々投げてくる。

 周辺でバリンバリン割れて混ざった瞬間それぞれが違う色の煙がモクモクと周囲を包んでいく。


「あぁもうめんどくせぇな!」


 ルドーがそう叫んだ瞬間両手の雷の盾が腕の傍で激しく回転する。

 盾から拡散された雷が、周辺に散らばった魔法薬と煙を焼き尽くすように辺り一帯に拡散された。

 もくもくと上がっていた煙が、雷が当たった瞬間小さな雷が煙に拡散して蒸発していった。


『(うーん、やぱり威力が違い過ぎる)』


「あれがなくてもこう開けてちゃ煙を使うのは拡散消滅するよノースター、室内ならまだしも屋外じゃね」


 がっくりと肩を落としたノースターにネルテ先生がニカニカ告げる。

 何故攻撃側にばかりアドバイスを送っているのだろうか。

 不公平を感じてルドーはネルテ先生をジトリと眺める。


「うーん流石古代魔道具、観測者の解析魔法もまるで通じません」


「それでは意味がないでしょう! 全くいつも肝心な時に役に立ちませんわね!」


 トラストとビタの声と共にドスンと大きな音がして、ルドーが咄嗟に構えれば正面から地面が盛り上がってそのまま突出するように攻撃される。

 巨大な迫りくる岩の地面に、バチバチと盾で受け止めながらその威力にルドーは少し後ろに押された。


「そうそうこれ! こういうの試したかったんだって!」


『物理も貫通しねぇな。攻撃は最大の防御って感じでデメリットの抜け穴みたいになってやがる』 


「なるほど! あくまで雷魔法の攻撃の延長って事か!」


 ルドーの攻撃魔法以外が使えないデメリットがなぜ発動せず攻撃が防げていたのかと疑問に思っていたが、どうやら雷魔法の攻撃で相殺している扱いらしい。

 確かにそれならあくまで攻撃魔法として使っているのでデメリットは発動しない。

 物理攻撃も魔法攻撃も雷魔法の攻撃による相殺だ、通りで先程雷魔法が急に拡散したわけだ。


「うーん、盾は二つですが大きさは自在みたいですね。攻撃による相殺、つまり雷魔法が常に高威力であの盾から放たれていると」


「あの威力の雷魔法は私達では相殺できませんわ。ならこちらはどうですの!」


 トラストとビタが魔力循環してまた地面にビタが手を当てる、途端にルドーの立っていた地面がボコッと大きく上に押し上げられて上空に吹き飛ばされた。


『おーおーいい眺めだ事』


「だから盾の性能確かめさせてくれって言ってんだろおおおおおお!」


「あやや! これぞ新技! 隙ありですや!」


 カゲツの大声が聞こえたかと思ったら、落下し始めて頭が下に向いたルドーの目に、巨大な食虫植物がこちらにバクリと口を大きく開けているのが目に飛び込んできた。

 咄嗟にルドーが両手を前に出して盾を二つ構えれば、二つの盾が回転して一つにまとまり、一気にかなりの大きさの盾に変わる。

 そのまま盾の雷魔法が逆に食虫植物を飲み込むように落下するままにぶち当てれば、大きな雷鳴が轟いて落雷するように食虫植物が焼け焦げていった。


「上空に打ち上げるまでは良かったね、後一歩、追撃が足りないかな。カゲツも新技いい感じだけど、今回はルドーの方が上手だったねぇ」


「追撃方法が思い付きませんでした、猛省です」


「空中に叩き上げ続けることも出来ませんものね、本当どうしたものかしら」


「新技ちゃん、かなり開発苦戦しましたのにや……」


 ボロボロに焼け焦げた食虫植物に落下して何とか衝撃を緩和したルドーが立ち上がると、急激に周囲の温度が下がる。

 その動きに覚えがあったルドーが今度は地面に向かって盾を向ければ、地面にバシッと当たった雷の盾で、間一髪で氷魔法の拡散を相殺してルドーの周辺だけ氷魔法で氷結するのを防ぎきることに成功する。


「うーん、流石に手の内見られてると厳しいか。キシア?」


「私まだ怒っておりますのよ、まぁ授業ですから協力しますけれども」


「パートナーなのにシマスに行く相談しなくて置いてきぼりくらったからってそんな拗ねないでよ、まぁ拗ねてる顔も可愛いけど」


「なっなっ! いつもいつも揶揄わないでくださいまし!」


 真っ赤になったキシアがアルスと魔力伝達して、さらなる攻撃をこちらに放ってきた。

 地面伝いに走ってくるその氷結攻撃に、ルドーは雷の盾を地面に突き立てて念じれば、回転のこぎりが激しく回るように、ルドーを囲って円形に回転し始める。

 アルスとキシアが狙っていた場所に辿り着く前に、氷結魔法は回転する雷の盾に当たって朽ちるように消えた。


 突如としてエリンジの虹魔法が飛んできてルドーが手を動かしてバチンと盾で塞ぐ。

 煙を上げながらバチバチとルドーがそちらを向けば、考え込むようにしながらリリアと魔力伝達して魔力を補充しながらこちらを思案顔の無表情で眺めるエリンジがいた。


「やはりこの威力では効かんか」


「魔法は大体相殺されらぁな、後は遠距離物理だけか? くそが、どうすりゃいいんだよ」


 ブツブツ考えるようにカイムがこちらを睨みながらも、髪が次々様々な色に光ったっと思ったら、炎、水、風、光と髪の周囲に色んな属性の球体が発生した。

 カイムが以前言っていた遠距離攻撃魔法だ。

 そのまま髪でぶん投げるような動きをすれば、その複数の魔法攻撃はルドー目掛けて発射されたが、ルドーが真正面から腕を構えて盾を大きく展開すれば、バチンバチンと当たる度に攻撃は蒸発して難なく防ぐことが出来る。

 やはり魔力効率が悪いとカイムがぼやきながらこちらを睨み付けた。


「今んとこ大体防げてるけど、これでもクロノの攻撃は防げる気がしないんだよなぁ」


『なんでか知らんがあいつには雷効かねぇからなぁ。雷の攻撃相殺で防いでいる以上、多分貫通してくるか』


 戦闘基準はクロノが手加減しないでそれに善戦する事。

 そもそもクロノの物理攻撃事態が冷静に考えればカラクリがよくわかっていない。

 身体強化を使っていない、生身の攻撃なのに、古代魔道具の雷魔法が効かない。

 純粋な筋肉だけでは説明がつかない部分。

 そこも魔法が使えないことと関連でもあるのだろうか。


 剣の男も雷魔法での攻撃こそ通るものの、謎の再生能力であまり効果は発揮しない。

 エリンジを襲った相手は魔力を奪ってくるし、リリを襲った相手はサクマを破壊した爆発からどうにも瘴気に関連した攻撃をする可能性がある。

 規格外過ぎる相手と戦うには、通常の戦闘で満足していては全然足りない。


「ふーむ、圧倒的だが、それで考え事するとはずいぶん余裕こいてるじゃないか」


 不意にネルテ先生の声が聞こえたと思ったら、ガシっと両手を掴まれる感覚。

 気が付けばネルテ先生は、ボンブとの魔力伝達による赤黒い手を知らぬ間に作り出して、それがルドーの両手を抑えていた。

 ルドーの意識の外、背後に魔力の赤黒い手を、いつものような大きさではなく敢えて人と同じほどの大きさで出現させて、盾の隙間を縫ってルドーの腕を押さえつけていたのだ。

 ルドーが声を上げる頃にはそのまま地面に叩き付けられ、盾に使っていた金属部分がルドーの下敷きになったことで雷の盾がブツンと切れた。


「どんな時も油断しない。どういった性能や弱点があるか分からない内は警戒怠らない事。ほら、本体が弱点だってみんなにバレちまったよ?」


『あーらら。やられちまったぜ』


聖剣(レギア)お前絶対分かってて言わなかったな!?」


『防ぎきったからって油断してたお前が悪いわな、ルドー』


 ニカニカ笑って手を叩くネルテ先生に釣られるように、聖剣(レギア)がゲラゲラ笑い出す。


 本日の魔法訓練はこれにて終了と、高らかな宣言と共に、魔法科一同はネルテ先生から今回の戦闘から改善案を考えるようにと全員が宿題を出された。


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