第九十六話 クバヘクソの脅威
転移門の起動権限はエレイーネー所属教師にしかない。
一年担当の先生たちが不在且つ、エリンジとカイムを連れ戻す名目でルドー達がイシュトワール先輩に同行するための転移門起動は、三年の担任達が決して許さない。
なにより依頼掲示板からシマスの公募依頼が剥がされている今、真正面から三年の担任に依頼でシマスに行きたいと頼んでも依頼状を取り上げられるのがオチなので、ルドーとアルスはイシュトワール先輩に先導されて正門から外に出ていた。
外出禁止令が出されている訳ではないので、週末も生徒は帰ろうと思えばそれぞれの実家に帰ることは可能なのだ。
エリンジとカイムもそれを利用してメロンについて行ったのだろう。
イシュトワール先輩は、依頼もあるのとアルスの帰郷に誘われたルドーたちに安全のために同行するという名目で正門から外に出た後転移魔法を使う。
そうやって移動した先、クバヘクソから少し離れた小さな町の郊外で、ルドー達は周囲を伺っていた。
「なんで直接クバヘクソに転移しなかったんすか先輩」
「魔力奪取連続犯がいる場所にノコノコエレイーネーの制服で転移して行く気か? 腹ペコの熊の前で新鮮な生肉持ってんのと同じだろそれ」
「あぁそっか……」
『着替え持って来いっていうから何かと思ったらそういう事か』
「あの二人最近焦ってたからそこらへんも考えてないかなぁ、ひどい目にあってないといいけど」
人気のない裏路地でごそごそとエレイーネーの制服からそれぞれの私服に着替える。
着替えながら呟いたアルスの言葉にルドーはずっと抱いていた疑問を口にした。
「ずっとひどい目に遭うって言ってるけど、学習本に載らないっていうシマスの情勢ってそもそもなんだ?」
久しぶりに着慣れた農村民の服を着た後、聖剣を背中にかけ直しながらルドーが聞けば、アルスとイシュトワール先輩は話しにくそうに二人小さく溜息を吐いたが、やがて意を決したようにアルスが顔を向けて口を開いた。
「シマスはさ、魔力差別が酷いんだよ」
「魔力差別?」
「魔力を持ってる奴が偉いやつ、魔力が多ければ多いほど偉いやつ、さらに役職持ちなら最高。その逆で魔力が無いやつは偉くないから何しても構わない、そんな感じ」
「えぇ? でもメロンはそんなこと一言も言ってなかったぞ?」
「そりゃ分かりやすく表向きではしてないし、そもそもメロンはクバヘクソ出身で、メロン自身も魔力があるだろ? クバヘクソに住んでる時点でシマスでは勝ち組、そこで魔力持って育ってエレイーネーに入るようじゃ気付かないで育っちゃうよ、本人もあの調子だしさ。だからエリンジとカイムに警告も出来てないと思う」
『昔はたまにあった風潮だな、それがひでぇのかこの国は』
聖剣の言葉にルドーは混乱しながらも二人が何を心配していたのかようやく理解した。
エリンジはきっとエレイーネーの制服を着たままだろうが、魔力を奪われた今この国の住人にそれがバレれば何をされるかわからないという事だろう。
確かにこんな情報、学習本に載せることなんてできない、イシュトワール先輩やアルスが言いにくそうにぼかしていたのも納得する。
現地を知る人間でなければその実態を知ることが出来ない話だ。
魔力が無く体力こそあってもクロノのように身体能力で戦えないエリンジでは、リリアの魔力が切れてしまったら自衛できない、迂闊に聞き込みでもしてもしその事がばれていたら。
「それに上層の住民たちはそのせいで魔力を誇示しようとする風潮がある、つまり魔道具がよく使われてるってこった。魔道具がよく使われてるってことは当然――――」
「――――魔道具製造施設もあると」
イシュトワール先輩が続けた話に、ルドーは気分が悪くなった。
エレイーネーの発表で魔人族が違法搾取されていたこと、つまり奴隷として働かされていたことを魔力差別の酷い国の上層が理解したら、見ただけで魔人族と分かるカイムが彼らにどういう扱いをされるか、ルドーは考えたくもなかった。
魔道具製造施設を破壊されて恨みのある上層や、差別意識の強い被害にあった従業員。
この国には魔人族であるカイムが危害にさらされる理由が十分にあったのだ。
アルスとイシュトワール先輩の話を聞いてようやく理解し、吐き気がするような嫌な気分をルドーは何とかのみ込もうとする。
エリンジとカイムがこの国に来るのが危険だと周囲が語った言葉の意味を、みんなでもっとよく考えるべきだった。
「安易に聞き込みは出来ねぇ、同類と思われたらこっちもなにされるかわからねぇからな。場所もはっきり分からねぇから遠視も出来ねぇし、探知で地道に探していくしかないぞ」
「足取りを追うんだね、まずは最初にいたはずのメロンの家か。となるとメロン達と合流したほうがいいかな」
「リリが心配して外出て探してたりしなきゃいいんだけど……」
「リリアちゃんとメロンなら大丈夫だよ、住民に襲われるような要素ないから」
急に不安になって呟いたルドーは、アルスに宥めるように肩を叩かれた。
貴族がお忍びで着る様な小洒落た服に着替えたイシュトワール先輩と、庶民が良く着る普通の町服に着替えたアルスと、ルドーの三人でクバヘクソを目指す。
不安から重い沈黙に場を支配されながら、街に続く中途半端に舗装された道を歩き続ける。
『しかしそんな差別意識が強い場所で魔力奪取事件が連続発生か、となると被害者は上層の連中か』
「聖剣、犯人捜しはしない約束だぞ」
『話してるだけだ、探しゃしねぇよ。向こうから襲ってきたら別だがな』
「まぁ上層が襲われてるのは確かだろうね、だからエレイーネーの要請断ってるんだろうし」
『魔力に対するプライドから情報正確に話したくねぇと。実に厄介なもんだ』
「そのせいで情報が出回らずに余計被害増やしてちゃ世話ないけどな」
呆れたような聖剣とイシュトワール先輩の会話を耳にしながら、はてとルドーは疑問を持つ。
エリンジとネルテ先生は、歌姫を狙った襲撃犯に間違えられて襲われた。
同じ犯人なら襲撃犯の狙いは歌姫ではないのだろうか。
つまり連続発生しているならば、クバヘクソにいる上層に歌姫がいる可能性が高いと思われる何かがあるのだろうか。
そこまで考えてルドーは我に返って頭を振った。
今考えるべきはエリンジとカイムを連れ戻すことであって、なにも分からない歌姫や襲撃犯についてではない。
不安を払拭しようと歩きながら三人で会話していれば、目的地であるクバヘクソに辿り着く。
街というにはあまりに大きい、街ではない、まるで大きな山のようだ。
見上げる様なはるか上に至るまで、不規則に白い四角い同じようなサイズの石造りの家々が立ち並んでおり、見ているだけで圧倒される。
人々が歩いている路地は路地というより、家々を無理矢理設置した隙間を縫うようになっており、規則性がないせいでまるで迷路で、どこがどう繋がっているのか街の外から見ていても目を細めるだけで分からなかった。
メロンが言っていた通り、慣れている住民でも行かない場所なら迷うだろうし、初めて訪れる人間では確実に迷子になりそうな構造をしている。
メロンの発言を思い出したところでルドーは根本的な事も思い出した。
「あ、メロンの家がどこか聞いてねぇやそういや」
「おいおい同級生だろなにしてんだよ」
「えーっとリリアちゃんに通信魔法……あ、ダメだ道わかんない感じだ」
肝心のリリアがいるメロンの実家がどこか、ルドーは焦りもあって聞くことをすっかり忘れていた。
まさかの目的地不明にイシュトワール先輩が呆れる中、アルスがリリアに通信魔法で居場所を聞こうとしたが、リリアも初めて訪れたクバヘクソ、道が全く分からず案内しようがない様子らしい。
「場所分からないんじゃどうしようもねぇ、時間も惜しいし先に突っ走った二人を探すぞ」
「エレイーネーの制服着てたなら目立つだろうし、聞き込みしなくても噂話くらいなら耳に入るかもね」
そう語ったアルスとイシュトワール先輩が探知魔法を展開するのをルドーは眺める。
そのまま街に入っていこうとするので、連続襲撃犯もいるのに目立つのではないかと疑問を投げかけたら、逆にこの方がいいと返された。
「探知魔法は魔法それなりに使えるやつに取っちゃ生活魔法で基本の内だ、別に魔導士じゃなくても使えるやつは使える。探知使うだけならどれくらいの規模の魔法を使ってるかまで判別つかねぇ」
『襲撃犯に狙われる要素の判断にならなねぇってこったな』
「逆に魔法使ってれば魔力持ちだって周囲に示せるから、差別してる連中はこっちに興味持たなくなる」
「……ひょっとして魔力を誇示する風習って差別受けないようにするためもあるのか?」
「うん、めんどくさいでしょ。気を付けてね」
魔力差別が酷いなら、確かに魔法を使っていればそもそも差別は受けない。
上層ですら魔力を誇示する傾向が強い、つまり皆差別されるのを恐れているという事だろうか。
それなら差別をしなければいいだけなのだろうが、そう簡単な話ではないのだろう。
話した二人に続きながら、エリンジとカイムを探しつつ、何か手掛かりはないかとルドーは周囲をそっと見渡した。
探知魔法を使いながら歩いている三人に、街の住民は目もくれない。どうやら上手く差別対象からは外れているらしい。
魔力奪取事件が影響しているのか、住民たちの顔は心なしか暗く、井戸端会議でもするかのようにご近所で数人集まっては小さくヒソヒソ話している。
どこで襲撃があったか、誰が襲われたか、自分達は大丈夫なのだろうか、住民なりに身の安全を求めて情報収集をしているといった様子だった。
ヒソヒソ話される会話にエリンジとカイムの情報が少しでもないかとルドーは耳を傍立てる。
「また上の方で襲われたらしいわよ、一人でいた所を後ろから」
「いやだわ魔力が無くなるなんて、生活出来ないじゃない」
「やっぱりムーワの一味の仕業なんじゃないの?」
「襲われてるのが街の資産家ばっかりだものねぇ」
ヒソヒソと話される内容はやはり魔力奪取事件に関してだ。
エリンジとカイムの会話は今のところ無いが、この街特有の情報が出回っているのか、初めて聞くような内容が話されている。
気にはなるが、今はエリンジとカイムを見付けることが優先だ。
「先輩、アルス、探知はどうなんだ?」
「探知は反応ありだ。ただ動いてねぇな」
『動いてない?』
「うーん、この位置、ちょっと厄介な奴かも」
反応位置に心当たりがあるのか、アルスが難しい顔になっている。
二人探知魔法を使ったまま立ち止まったので、相談するようにルドーも近寄った。
「厄介ってどういうことだ?」
「どうにも下の方、これ地下っぽいんだよね、流石に行ったことないから行き方が分からない」
「地下にいるって?」
山にそびえ立つようにクバヘクソの街は上に上にと続いている。
そんな場所に地下空間なんてものがあるのか。
話を聞いたルドーは思わず足元を凝視する。
「俺も依頼で何回かクバヘクソにゃ来た事あるが、地下なんて一度も行ったことがねぇな」
「そもそも上に行くほど上層扱いだからなぁ、その地下っていうと何があるか得体が知れないよ」
『つまりかなり怪しい場所ってこったな』
聖剣の発言にルドーも険しい顔をする。
怪しい場所に二人がいて、そこから動いていない。
しかもシマス出身のアルスや、クバヘクソに何度か訪れたことのあるイシュトワール先輩が行き方を知らない。
なにか良くないことが起きている気がする、不安に駆られる様にルドーの両手につい力が入った。
『落ち着けルドー。初めて来てる二人が地下にいるんなら、何かしら行く方法はあるはずだ』
「だな、まずは地下に行けそうな場所目星つけて探すか」
「地下っていうと下水とかその辺りかなぁ、どっか降りれそうな場所ないか通気口から辿ってみる?」
どうにもならない焦燥を落ち着かせるように大きく息を吸って吐いたルドーに、イシュトワール先輩とアルスがそれぞれポンと肩を叩いた後、三人で地下に続きそうな場所はないかと路地の通気口を探る。
しかし白い建物が並ぶ街並みに合わせた、黒い石畳に白い目地で埋められた街道は隙間がなく、通気口になりそうなものが中々見当たらない。
家々を無理矢理設置したような狭い通路をあちこち曲がりながら、二人の展開し続ける探知魔法の光る円を時折確認しつつ探るが、街の仕組みがよくわからないせいもあってそれらしい場所に辿り着けない。
下ばかり見ながらしばらく路地をうろついていたら、気が付いたら街の中腹当たりの高さまで昇ってきていたことに気付いたイシュトワール先輩が一旦足を止める。
「地下に行かなきゃいけねぇのに登ってもな。上から降りるんじゃ距離的に効率悪いだろうし道は設置されてねぇだろ、一旦下の方に戻るぞ」
『あぁ? なんだこりゃ……おいあぶねぇぞ伏せろ!』
バチリと聖剣が反応したかと思ったら、上層の方にあった建物が大きな音を立てて激しく爆発した。
周囲から悲鳴が上がり、パラパラと飛んでくる瓦礫に三人がそれぞれ手を上げて防いでいる中、煙を上げる爆発した建物から何かが勢いよく飛び出してきた。
「ハハハハッハハァーン! レディースアンド、ジェントルメェーン! 笑って笑って笑い続けよう! このイカレタ街はもっとイカレル! イカシテル! それでは参りましょう! もっと楽しく生き続けるために!」
特徴的な笑い方をしながら飛び出してきたなにかは一人の男だった。
恐ろしく長い鋭い鼻、目の様子が見えない小さな丸眼鏡、ワックスで撫でつけ固めたような後ろに流れる青と紫の目立つ髪、尖った顎に口を大きく開いてひたすら笑い続けている。
化粧でもしているのか、真白な顔に黒い十字の様な模様を両頬に描いて、爆発にすすけた目立つ黄緑の燕尾服をたなびかせながら、何やら丸い演説台のような飛行型の魔道具に乗って上空を飛翔していた。
「ハハハハッハハァーン! 魔力があるから世界はいけない! 魔力が無くなればみんな平等! 笑って過ごせる楽しい世界! イカレテイカシテイキシテル! おやそこの三人、魔力はあってもいいことないですよ!」
「避けろ!」
男の放つ異様な空気に呆気に取られていた三人は、その丸眼鏡がぐるりとこちらを向いて恐ろしい勢いで突っ込んできたことに気付いて、イシュトワール先輩の号令で一斉に散開した。
咄嗟にそれぞれが別々の路地に飛びのいた瞬間、笑い続ける異様な男はそのまま地面に爆発するように激突する。
爆発の煙に三人が警戒するようにそれぞれ向き直ったが、特徴的な高笑いは続き、爆発で魔道具が多少傷付いたのか、少しガクガクした状態で路地を浮遊しながら煙の中から現れた。
「ハハハハッハハァーン! 怖がらないで! 魔力なんて悪い病原菌をちょっと取ってあげるだけだから! この街のみーんな、病気にやられて頭がおかしくなってるだけだから! 病気が無くなったらみんなハッピー! だからちょっとじっとしててくれればいいから!」
『まさかこいつか、この街の魔力奪取連続犯!』
「嘘だろ犯人捜しに来たわけじゃねぇのに!」
聖剣の声にルドーは慌てて鞘から引き抜いて警戒するように構えた。
ネルテ先生やエリンジから聞いていたリンソウでの襲撃犯とは特徴が全然合致しない。
襲撃犯が狙っていたという歌姫が目的という話も、この目の前の男が高らかに話す様子からも違うような気がする。
まさか同じような事をしている別人なのか、それとも裏で繋がっている組織的なものなのか。
いや今考えるべきはそこじゃない。
エリンジとカイムを探さないといけないのに、魔力奪取事件の犯人と戦闘している場合ではない。
何より今ルドー達は二人の捜索のためにこっそりこの街に来ているのだ、派手に戦闘して被害を拡大させたらただではすまない、協力してくれたイシュトワール先輩にも迷惑をかける形になりかねる。
「先輩! どうするべきすか!?」
「逃げるっきゃねぇだろそんなん! この街から要請が来てない以上下手に動いたら内政干渉だ!」
「オッケー! とりあえず全力で逃げるぞルドー!」
「くっそこんなことしてる場合じゃねぇのに!」
「ハハハハッハハァーン! 待って待って逃げないで逃げないで! ちょっとだけだから! すぐ終わるから!」
高笑いと共に男が乗っている台座がビカッと怪しく光ったと思ったら、砲台のようなものが出現して、何やらレーザーのようなものが発射されて三人なんとか飛びのいて避ける。
轟音と共に路地と建物が破壊されて瓦礫と煙が上がり、周辺住民の悲鳴が聞こえた。
更に背後からビカンと魔力が集まる音が聞こえて、追撃から逃れようと三人慌てて走り出す。
特徴的な笑い声が背後からずっと追い続けてくるのか、爆発と魔力の集まる音の中特徴的な笑い声がけたたましく路地に響いていく。
『追ってきてんぞあいつ!』
「んな事言ったってどうしろってんだよ!」
「攻撃は内政干渉になるし、こういう時は……助けてぇ! 街の魔導士さあん!!!」
走りながらアルスが両手を口に当てて大声で救助を要請する。
既に住民によって多数通報があったのか、同じ白いヒラヒラしたローブの様な制服を着た国所属らしい魔導士が数名近くにいたのが、アルスの叫び声に反応して走り寄ってくる。
「ハハハハッハハァーン! あなた達も魔力があってもいいことないですよ!」
やってきた魔導士数名に鼻の尖ったメガネ男が反応するように魔道具をぐるりと向きを変える。
魔導士たちが即座に手を構えて次々と様々な色の魔法攻撃を男に向かって放つが、その瞬間男は右手を上げて、その手にあった、まるでルービックキューブの様な見た目の別の魔道具が瞬時に十字に開くように展開した。
魔導士たちが放った魔法攻撃が、まるで吸い込まれていくように次々その四角い魔道具に吸収されていく。魔導士たちが驚愕したように次々声を上げているのが聞こえた。
『吸収タイプの魔道具か、この反応、かなりの容量吸えそうだぞ』
「ひょっとして魔力奪取してんのあれか!?」
「魔道具で吸収できるならリンソウの犯人も同じの使ってる可能性もあるかな」
「今は考えんな! 逃げることだけに集中しろ!」
「「すんません!」」
見たこともない魔道具にルドーとアルスがつい考察するように眺めていたが、イシュトワール先輩の一声に謝りながら再び逃走を開始する。
『攻撃来るぞ伏せろ!』
聖剣の一声に三人の背後から大量に魔法攻撃が降り注ぐ。
ビカンと魔力が集まる反応に続くレーザーが三人の走る正面床に直撃した。
ガクンと落下する感覚、破壊された地面の下には大きな空洞が広がっていた。
「ハハハハッハハァーン! あっ待って待って落ちないで! せめて魔力無くなってから落ちて!」
「勝手ばっか言ってんじゃねええええええええええええ!」
特徴的な高笑いに大きく叫んだルドーの声が空いた穴に木霊する。
悲鳴を上げる三人全員なす術もなく真暗な穴に吸い込まれる様に落下して、鼻の長いメガネの男も、白い家が立ち並ぶクバヘクソの街並みも、何も見えなくなった。




