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私はいつでも隣にいます

 僕は定期的にランニングに出ている。適度な運動は健康の促進はもちろん、程よい刺激により成長ホルモンの分泌も促進されるという噂を聞いたのである。


「おかえりなさいませ、ご飯と一緒に私を召し上がりますか?私と一緒にお風呂に入ってお身体を流し合いますか?それともわ♡た♡し♡」


 とどのつまり全部『わ♡た♡し♡』だな。


 パタン


 僕は玄関を閉めた。不意に走りなおしたいからであり、他意は一切ない。ないのである。


「さて、走るか」


「いやぁ、一緒に走るだなんて楽しみですね。見慣れた風景も愛する人と一緒なら美しく色づくというもの、それに加えてランニングとなれば健全的な汗と疲れがさらに視界を「なんでいるんだよお前」えへっ♡」


 僕ちゃんと閉めたよな……あの一瞬で僕の隣に来たって言うのか?忍者かよこいつは。


「忍者からも知れませんよ。うふふ♡一緒に走ったらご近所の皆さんからラブラブカップルだと思われちゃうかもしれませんね」


「…って言うかよく見たらお前、僕の服着てるじゃねーか」


「お言葉ですが詠史さん、詠史さんの服は私にとっては小さいのでこんな風にお洒落に着こなせません」


 グイっと顔を近づけてくる。


「何故なら胸が小さいんです!!胸が!!!走ってる最中もきっと暴れてしまうであろうこの胸が!!!!!動かないように詠史さんの手で押さえつけていただきたいこの胸が!!!」


 圧が凄い。意識をしろと言う圧が。目線を底に釘付けにしろと言う圧が。揉み押せと言う圧が。


「なのでこの服は詠史さんとペアルックをしてご近所の皆々様にカップルだと暗に知らしめるのと、単純に詠史さんとペアルックをしてみたいという欲求の為に自作しました」


「その熱意はスゲーんだが普通にちょっとでかいサイズ買えばよかったじゃん」


「いやぁ……それは無理なんですよ。何せ原材料が詠史さんの服ですから。私の身体に合わせて大きくしたので正確に言えば自作したわけではないですし」


「さらっと人のものを盗るな」


「盗ってませんよ。詩絵さんから購入したんです」


 あの姉野郎、僕の服代も元はと言えば姉ちゃんの財布から出ているとはいえ…そんなこと………くそっ、バイトするか。


「ああ、もちろん詠史さんのご迷惑にならないように元のサイズの新品を置いておきましたよ。今詠史さんが着ていらっしゃるものですね」


 真絹がストレッチを始めた。女の子らしい柔らかそうな肉体が気持ちよさそうに伸びている。


「おいちにーさんしー、えいしさんーだいすきーー、あいしてるー」


 僕への愛を口にしないと死ぬ病気にでも罹ってんのか。


「はいっ、愛の病に罹患しております♡」


「頭の病にはかかっているみたいだな」


 ったくもう……よくこいつは僕なんかをここまで好きになれるもんだ。


「さて、そろそろ行きましょう」


「何故僕の方に手を伸ばす」


「無論、手を繋ぎたいからです!!!」


「ランニングするんじゃねーの?」


「手を繋いでもランニングは出来ます!!」


「走れないだろ」


「二人三脚と同じですよ。走りにくいだけです」


「ヤダよ」


「むむぅ…本当ならば手と手を繋いで共に青春の汗を流したかったのですが…他ならぬ詠史さんのお言葉、私が折れましょう」


「思ったより聞き分け良くて助かったよ。んじゃ「お姫様抱っこしてください♡」………」


「お姫様抱っこをしてください♡そして私を抱えたまま街をぐるっと走りましょう。負荷が増える分良いトレーニングになりますよ」


「それ鍛えられるのって圧倒的にメンタルだろ」


「一石二鳥ですね♡いえ、私と詠史さんの愛情も育まれるので鳥さんは3羽でしょうか」


「お前のメンタルはもう極限よりも鍛え上げられているのがよく分かるわ。頭が下がる」


「恐らく褒められていないとは思いますが、それでも照れますね」


 二へ二へと微笑みついでに身体をくねくねさせる真絹を横目にこっそりと走り出すのであった。


 まぁ一秒後に追いつかれたのだが。


「私はいつでも詠史さんの後ろにいますよ♡」


 本人的には愛のセリフなんだろうけど、ホラーな響きに聞こえるのは僕だけかな。


「うふふ、元ストーカー舐めちゃいけませんよ」


「それ間違っても誇れる経歴じゃねーからな」


「はいっ……承知して………」


 ん?なんだ?


「そうですよね。私はもうストーカーじゃないんです。

 すいません、詠史さん言って早々ですが訂正させていただきます」


 不意に真絹が僕の隣に走り込んできた。ふわりと甘い匂いが鼻孔をくすぐる。


「私はいつでも詠史さんの隣にいます」


 僕の足の速さに合わせて変わっていく景色の中、そう言った時の笑顔はなんだかとっても綺麗に整っていて……なんとなく僕はスピードを上げたのであった。


 ああもう、心拍数上がるじゃねーか……ったく。

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