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90話  追悼と継承と宴

元宮廷魔導師ヴェルフ・ウィザード含め、先の戦役で戦死した者達の大規模な共同葬儀が執り行われた。


意外だったのはその中に敵であり今回の騒動の中心人物であるカノイすらも含まれていた事だ


本来なら見せしめにされてもおかしくは無い筈だが、リベルが手を回してくれたらしい。

また、かつては白金級冒険者として多くの者を救ってきた功績も大きいのだろう。


そして、葬儀が終わると一同が一斉に会した


◇◇


「勝利に!!」


『かんぱーーい!!!!』


リベルの号令に続き、大勢の声が響く

魔導都市攻防戦から2日、戦闘に参加した魔法使い達が祝杯を上げていた。


「シギル!!お前も飲め!!」


「飲みかけを渡してくるな!…葡萄酒は無いのか?」


「店主、一番強い酒を頼む」


「うっ、これはちょっとキツイかも、人多すぎ」


リヒトやシギル、アルマにヒエンなど戦闘に参加し生き残った者達がそこにはいた。彼らの欠損した部位は傷跡こそはっきりと残っているものの治っていた。町中の癒術師が力を貸したおかげだ、アンリも活躍したと聞く


そしてその中に六樹の姿もあった。というか、好奇心からアルコールに手を出そうとするリベルを六樹が必死で制止していた。


「止めるなリョウ兄ィ!!私はもうすぐ15だから大丈夫だ!!」


「今現在アウトだし15でも普通にダメだろ!!酒なんてやめとけリベル!!」


どうやらこの国では15から飲んでいいらしいのだが、科学的には20〜21歳位まで待たないと健康に害する可能性が高い、その為六樹はリベルを説得していた。


だがリベルは食い下がる。


「じゃあ問題が出たらリョウ兄ィが解毒魔法で治してくれればいいだろ?得意だろそういうの」


「ホントそういうの良くないと思う」


自ら不利益になる行動をしてそれらを魔法で帳消しにしようとするのは現代社会を生きる六樹としては非常に受け入れ難かった。


しかしリベルが納得しなさそうなので、少しだけワインを舐めさせる事にした。


「ゔぇ〜!!苦っ!渋っ!要らねー!!」


六樹の目論見は成功しリベルは酒に興味を失った。唐揚げやハンバーガーの様なジャンクフードを好むリベルなので、ある意味必然である。ともかくこれにて一件落着である。


未成年なので飲酒が出来ないという元の世界の法を律儀に守っていた彼は果物のジュースで参加する。

果実を使っている為かジュースの方が酒よりも値段が高いというのが日本の物価に慣れた六樹にとっては意外だった。二杯目以降は水にしようなどと考えていると一人の人物が目に留まり、六樹は近寄った。


「お互いしぶといですね?フルスさん」


「全くですな」


そこにいたのはフルスだった。


「よくあの傷で生きてましたね」


六樹がそう感心する。彼はカノイに腕を落とされ首の動脈を切られたが生き残っていた。


「血の流れを水の流れと捉え、零れ落ちない様に必死で堪えた。運が良かっただけです」


六樹がそれは使えそう、などと考えているとフルスは六樹に感謝の言葉を述べた。


「貴方のおかげですよ。ムツキ殿」


「??、俺ですか?」


「はい、貴方が剣聖の一撃を知恵を絞って持ち堪えた事を知っていたからこそ、拙僧もあの折持ち堪えられたのです。」


フルスは六樹を見つめそう言った。


「そうですね。俺も助けてくれた人が生きてて良かったです」


六樹も素直にそう返した。すると今度は酒に酔ったリヒトが絡んできた。


「おうおう!主役がこんな隅っこで何してんだよ!こっち来い!」


微妙に面倒くさい絡みに身を任せ六樹はリヒトに連れられる。そのまま宴会の中心部へと引きずられる。フルスは静かに見送った。


「百足様の登場だぜ!!」「「おおー!!」」


大学生の悪ノリの様な空気を六樹は一身に浴びる。


「大活躍だったな!百足!」「ほんとあんな作戦よく思いついたよな、百足」「かっこよかったぜ百足!!」


多くの者から沢山の賞賛の声を浴びるが


「なんか褒められてる気がしないんだけど…」


カノイに貰った二つ名によりイマイチ六樹は乗り切れなかった。すると大人数での宴に縮こまっているヒエンと目があった。


「「あっ!…………」」


お互い顔こそ知っていたもののそれ以上は特に知らなかった為何とも言えない空気が流れた。


「……………ありがとね」


ヒエンが一言だけそう言った。


気を取り直して六樹が適当な席に座ると、そこは葡萄酒が思ってたよりも渋かったのか悪戦苦闘しているシギルの隣だった。シギルは六樹が隣にいる事が分かった瞬間大声を上げた。


「うわっ!!ビックリした!!」


「!」


シギルの驚き様に六樹もビクッと仰反る。


「君怖いんだよ〜、何故か魔力も感じないし…」


「俺なんかしたかなぁ…」


随分とシギルに怖がれている事を知り六樹は自分の胸に聞いてみる。すると


「あっ、してたな。そういやコイツ、リベルに相性有利だから執拗に狙ってたんだった」


「それでやたら粘着されてたのか!!ひどい話だな!」


シギルが六樹の独り言に突っ込む。そして語り始めた。


「まぁそれもあるんだけど…君の見た目がちょっと僕達(エルフ)にとって不吉なんだよ」


「というと?」


興味深い話に六樹は詳しく聞く事にする。シギルは丁寧に説明し始めた。


「いや〜迷信みたいな話なんだけど鬼武者伝説ってのがあってね?…昔君みたいな褐色肌に白髪の人間がエルフを撫で斬りにしたって話があるんだよ。それがどうやら祖父の友人も死にはしてないけど斬られたらしいんだ。その鬼武者には魔法も効かず、矢も弾かれ、僕達エルフが長年研鑽した筈の剣術もまるで相手にならなかったそうなんだ」


「そんな話が………」


「だから僕達が子供の頃は悪さをするとよく鬼武者が来るぞって怒られてたんだよ」


「そうだったのか……」


話を合わせつつ六樹は心の中で問いかけた。


六樹(おい、何か心当たりはあるか?)


エスタ(いやー!主人様の伝説がまだ語り継がれてんだな!!)


六樹(何やってんだよ!?怪異の類じゃねーか!!)


するとエスタが抗議した。


エスタ(あれはエルフ共が悪い!!アイツら自分達の仲間のダークエルフを穢れだなんだって言って迫害してやがったんだ!!特に酷いのを見た主人様が先頭に立ってエルフ共を懲らしめたんだぜ?安心しな!!撫で斬りにはしたが殺しはしてねーからな!!)


意気揚々と語るエスタに六樹は少し呆れたが、まぁ事情があったのなら部外者がとやかく言うのは違うだろう。と割り切る事にした。


「だからまぁ、君も森人(エルフ)と会う時は気をつけた方がいいよ。凄く警戒されると思うから」


シギルから善意でそう忠告された。


「肝に銘じておくよ」


宴も佳境に入り、酔い潰れる者も現れた。現にリヒトはビールジョッキとスペアリブをそれぞれの手に持った状態で器用に爆睡していた。


落ち着いて来たタイミングで六樹は少し席を変えた。

ある人物の近くへ移動する。すると、向こうから声を掛けてきた。


「どうしたムツキ?寂しくなったか?」


そこにいたのはアルマだった。重厚な鎧を脱ぎ捨て今は真っ赤なドレスに身を包んで度数の高そうな蒸留酒を平気な顔をして嗜んでいる。そこには大人の女性の魅力があった。

その証拠に、恐らくアルマに寄せられた男達が強烈な酒に当てられ撃沈していた。何とも哀れである。


「話がしたい。少し付き合ってくれないか?」


六樹がそう切り出した。するとアルマは余裕のある笑みを浮かべる。


「ほう?酒の席で女を連れ出すとは、貴殿もなかなか強引だな」


アルマは冗談混じりにそう言った。すると六樹は首を横に振りこう返した。


「錬金術師としての意見が聞きたい」


◇◇


宴会の会場からアルマの案内で六樹はとある建物に移動した。


「ここは?」


「試験の間、間借りしている我の工房だ、錬金術師として話を聞くならここが一番だからな」


そこには使い道のわからない道具が並んでいた。恐らくこれらはほんの一部なのだろう。


そしてアルマは本題を尋ねる。


「貴殿の誘いなら乗っても良かったんだがな……して、我に何をして欲しいと?」


「まず、これを見てくれないか?」


そう言うと、六樹はアイテムボックスから剣を取り出した。アングリッチだ、しかしそれは剣というにはあまりにも酷い有様だった。刀身が完全に砕け散っていた。


「これは剣聖との戦いで砕けた俺の剣だ、鍛冶屋を何軒も回ったが直せないと突き返された。ここまで壊れてると錬金術師の領分だと、これを直せるか?」


六樹はアルマにそう聞いた、錬金術師と言われ、六樹は身をもって実力を知るアルマに頼る以外の選択肢が思い浮かばなかった。


「拝見しよう」


一言そう言うとアルマは静かにアングリッチを品定めしはじめた。


「良い剣だ…………なるほど、魔力回路か」


「魔力回路??」


不思議そうな顔をする六樹にアルマは解説する。


「魔法陣のもっと原始的な物だと考えるといい、複雑な事象は起こさないがその分丈夫で堅実だ、この剣に刻まれているのは……強化か硬化の類だな?」


「凄いなそんな事まで分かるのか」


アルマの見立てに驚く、どうやら頼む相手は正解らしい。


「腕の良い物好きもいたものだな………さて、結論から話そう」


アルマはアングリッチを置き、六樹の目を見て結果を話す。


「この剣を()()()に直すことは不可能だ」


その事実を突きつけられ六樹は苦い表情をする。


「やっぱり、無理なのか…」


「あぁ、形だけなら似たものは出来るかもしれない。だがこの剣に込められた実力は発揮されないだろうな」


「……分かった。プロがそう言ってんだ、諦める事にするよ」


「待て、最後まで聞け」


するとアルマは六樹を静止した。


「この剣は直せない。しかしこの剣の能力と培ってきた力を()()()()()事は出来る」


「本当か!!」


六樹がばっと席を立ちアルマに聞き返す。アルマは頷いた。


「錬金術でこの剣の刀身を対価に力を継承させる。力を移す為の剣はあるか?何も宿っていない真っさらな剣だ。造りの良い物が望ましいが、最悪どんな物でも構わない」


「鬼道は……無理か」


そう言いながら腰に帯びた鬼道に目をやる。これには龍の鱗が使われており魔力や魔法を弾くという性質がある。今求められている要件は満たさないだろう。


六樹は少し考えた後、結論を出した。


「…………………これしかないか」


アイテムボックスから一つの剣が取り出される。それを見たアルマが驚きの声を上げた。


「それは、剣聖の剣か!?」


「あぁ、カノイの剣、葦刈だ」


ファルシオンやもしくはグロスメッサーに近い西洋風の片刃の直刀、その刀身は120センチ程だろうか、全体的に軽やかであり、どことなく上品な印象を受ける剣だった。


アルマが改めてマジマジと刀身を見つめる。


「名も無きエルフの職人の傑作、と言った所か………造りこそ良いが、何の仕掛けもないただの剣だな。つまるところ剣聖は個人の技量だけであれだけの御業を………」


アルマがそう呟いた。六樹は改めて聞き直す。


「これで頼めるか?」


「あぁ、理想的な逸品だ」


アルマはハッキリとそう告げ、そして作業に取り掛かった。


ガタッとアルマは不思議な材質の板を取り出した。


「それは?」


「蝋の板だ、ここに練成陣を描く」


「蝋に何か意味が?」


「これなら溶かして繰り返し使えるからな」


そう言うと、アルマは慣れた手つきで蝋を太い針で刻み込みはじめた。


カリカリ…シーー、と耳心地良い音が静かに工房に響く。


六樹が予算について話そうとしたその時、逆にアルマが口を開いた。


「前もって言っておくが、謝礼の類は不要だ」


「え、いいのか?」


六樹が聞き返すとアルマは大きく頷く


「我からの感謝の印とでも思っててくれ、むしろ足りない位だ、何せあの時貴殿が失敗していたら、我々は全滅していただろうからな」


「!…………ありがとう」


六樹はその言葉に何も返せなかったが、アルマの好意を受け取る事にした。


暫くすると繋がった二つの練成陣が完成した。そこにアングリッチの残骸と葦刈をそれぞれ配置する。


そしてアルマが唱えた。


「剣は果てどもその力朽ちる事なく、形は失われ、名は潰え、されど宿りし力は未だ沈まず」


「我はただ、その行き先を定める。旧き器を離れ、

新たなる剣へと移れ、ただ核のみを携えよ」


「——今ここに、継承は成る」


練成陣が妖しく光る。するとアングリッチの様子が変わった。


「溶けた!?」


アングリッチは熱されてもいないのに液状となり、蝋で作られた練成陣の溝を通って葦刈に向かう。


そして二つの剣が混ざった。


「…………完成だ、確かめてみろ」


六樹はアルマに言われた通り葦刈を手に取ってみる。すると不思議な感覚に苛まれた。


「異様に手に馴染む……」


「当然だ、もうそれは貴殿の剣だからだ、剣の記憶も引き継がれている」


つい最近手に入れたはずの葦刈がずっと使い続けていた、それこそアングリッチの様にすんなりと手の中に収まった。


「剣の記憶か……今の俺ならいけるか?」


六樹は静かに剣に向き合う。すると六樹は徐に唱えた。


「追憶……」


葦刈に染みついた記憶を探る。すると__


()()姿()()()()()


「!!」


しばしの沈黙の後、アルマに礼を言った。


「ありがとう。アルマ」


「構わない、気に入った様だな?」


すると六樹は少し不敵に笑った。


「あぁ、これは使えそうだ」


するとアルマは満足げに頷きこう返した。


「なら、最後の()()()といこうか」


今回は労いの宴と六樹強化イベントです。そして地味に生きていたフルス!つくづく六樹はネクロマンサーの力をサブとして使いますね。鬼道さんの小話に関してはそのうち詳しく回収すると思います。

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