86話 また会おう
沢山の誤字報告とリアクションありがとうございます。
大変励みになります。誤字に関しては所々馬鹿みたいなミスをしていたのですが自分だと気づかないものですね。
『おい聞こえるか?エルフの小僧』
「誰が小僧だ!僕はアンタより年上だ!!」
『その青い所がまだまだ小僧よ、いいかよく聞け』
カノイが闘技場に閉じ込められる少し前、ヴェルフとシギルの間にこの様な会話が行われていた。
『ここの闘技場は激しい戦闘にも耐えられる様に、非常に強固な守りの魔法が施されとる。』
「やけに詳しいんだな爺さん」
『当たり前じゃ、儂が造ったからな、そして儂はそれをとびきりの結界に改造した』
そしてヴェルフは本題に入る。
『剣聖を誘導したら結界術師のお前が結界術の魔法陣を起動させろ、細かい調整はそちらに任せる。とにかく奴を閉じ込めろ』
その頼みにシギルは二つ返事で答える。
「分かった、ベストを尽くす。確かにそれは結界術師の役目だ。……だがアイツのあの技はやばい。あんなのを打たれたら全力で結界を維持しても保つかどうか…」
そしてシギルが逆に質問した。
「で、アンタはどうするんだ?」
『儂とムツキは結界を中から支える』
ヴェルフの答えはシンプルだった。
シギルが驚いた表情を浮かべて問いただした。
「正気か!?猛獣の檻に丸腰で入る様なものだぞ!?それも檻を直し続ける為に」
『あぁ、それにアイツに張り付いてなるべく嫌がらせする必要もある』
シギルはあっけらかんとした答えに呆然とするが
「……分かった。覚悟の上か」
それ以上追及しなかった。
するとヴェルフはこう付け加えた。
『それとムツキから伝言だ、もし俺が中で死んだら何も外に出すなと、それが無理なら全員でで逃げろ。との事だ』
「??……分かった。」
シギルは頭に疑問が浮かんだもののこの場では飲み込むことにした。そして最後にこう言った。
「武運を」
そしてシギルは手筈通り結界を閉じる。中の2人の無事を祈りながら
◇◇
隔世の中、六樹とヴェルフはカノイと対峙する。
「「「…………………………」」」
ヴェルフが念話で六樹に告げる。
『5分でいい、それだけは確実に持たせるぞ』
(まぁ、何とかするよ)
すると六樹が真っ先に動いた。
六樹は体勢を低くしスキルを発動した。
[摩擦:減]
そして左手でアングリッチを握り、右手を後ろに向けて唱えた。
「噴出!」
推進力を得た状態で地面を滑り六樹は恐るべき速度でカノイに近づきそのまま剣を叩き込む。
ガギンッ!! カノイは六樹の剣を余裕の表情で受け止めた。しかし六樹の攻撃は止まらない。
「暗刃!」
漆黒の刃が六樹の脚から現れ、そのまま膝蹴りの様な形でカノイの腹部を狙う。
「ふん!」
だがカノイは肘打ちで六樹の膝を叩き落とし攻撃を逸らした。
「動きのキレが増したな、死に瀕して何か掴んだか?それとも胸の支えが取れたか?」
カノイの質問に六樹は肯定した。
「まぁな、吹っ切れたよ。それに目の前にお手本がいるしな!」
すると次の瞬間、六樹とカノイの立つ地面がくり抜かれた。もちろんそれは偶然ではなく六樹の仕掛けだ
五メートル、マンション2階程度の高さから落下する二人、そこに六樹はカノイの上を取り、剣を振り下ろす。
「斬釘截鉄!!」
狙うはカノイの剣葦刈、剣聖の武器を叩き折るつもりだ。するとカノイは呟く
「鎬返し…」
ピタッ…と葦刈の剣先をアングリッチに合わせると、剣の側面に沿わせるように振り下ろした力を全て受け流した。
ドサッ 二人が穴の底に着地する。すると今度はカノイから仕掛けた。着地の衝撃を受け流す為に身を屈めた状態から剣を振るった。
「疾駆一閃」 「ッ!!」
地面を伝い真っ直ぐ駆けてくる斬撃を六樹は咄嗟に躱す。しかし
「!?」
だがその斬撃は今度は落とし穴の壁を伝いグルグルと旋回し始めた。
(クソッ!無駄にイカした技使いやがって!!)
そんな事を考えてる六樹に壁伝いに一閃が迫った。
「刺突!」
迫り来る一閃をこちらも剣を合わせる事で相殺した。
すると、落とし穴の真上に影がさす
「氷河」
ヴェルフが穴に蓋をする様に真上から巨大な氷塊を叩き落とした。カノイはすかさずそれに対応
「乱閃」
「あっ、やべ…」
縦横無尽に辺りを切り裂いた。氷塊は切り刻まれまるで雪の様に舞い散りついでに攻撃された六樹は剣で必死にそれらを捌く
六樹は念話でヴェルフに語りかける。
(なんかコイツ強くなってないか!?)
六樹のシンプルな疑問にヴェルフは答える。
『そりゃそうだろ小僧、何せ狙撃も伏兵の心配も無い。儂らに集中出来る訳だ』
(まぁそれもそうか……ところで俺ごと攻撃してないか?)
『どうせ対して効かんだろ?』
「クソジジイ…」
そうこぼしながら猛攻に堪え続ける六樹はヴェルフに合図を出す。
(閉所でもダメだ、次!)
『あい分かった』
するとヴェルフの声が魔法を紡ぐ
「断崖!!」
すると今度は落とし穴の地面がとてつもない速度で隆起、カタパルトの様に打ち出された。
「!」
カノイは地下から打って変わって空中に飛び出る。
しかし、事前に知っていた六樹はカノイの真下を取った。六樹は剣の柄を強く握る。
「蒼天斬!!」 「紫電一閃…」
ガギン!!互いの技がぶつかり衝撃が巻き起こる。
その威力にアングリッチがまた少し欠けた。
「くっ!」 「………」
だが六樹の一撃はカノイを仕留める事こそ出来なかったが、彼が逃げ場の無い空中に留まらせる事に成功した。
「よくやったムツキ!!」
ヴェルフがそう言うと杖を地面に魔法陣を起動した。
「魔彩七式」
属性の違う七つの上級魔法が蛇の様にカノイ目掛けて伸びた。
「飛迅…」
カノイは斬撃を飛ばし迎撃しようとする。バシュッと、カノイの斬撃がヴェルフの魔法にぶつかる。
だがヴェルフの魔法は斬撃を飲み込んで尚も進み続ける。
「……仕方ない、一つ切るか」
するとカノイは剣を鞘にしまい、こう呟いた。
「刻剣解放……疾駆_____」
「「!?」」
「_____七閃!」
直後、カノイが7つの奔る斬撃を同時に展開した。
シュシュシュシュ……!!! とその斬撃は魔彩七式の上を切り裂きながら迸る。七つの柱が14に分かれる。そして
ジュバーン!!
展開した七つの魔法陣を破壊した。魔法の大元が絶たれ魔彩七式が霧散する。
カノイは地面に降りた瞬間、今度はヴェルフの方向に踵を返した。後衛を守る為、六樹は咄嗟に間に入ろうとするが
「覇迅…」 「うおっ!!_________がはっ!…」
カノイの一撃により吹き飛ばされ闘技場の壁に叩き付けられた。
「樫突き!!」
カノイにマークされたヴェルフは今度は自分から距離を詰めた。
杖による一撃をカノイは首を動かして躱す。
するとそのまま鍔迫り合いの体勢に移行した。
「貴様まだあんな技隠してたのか?」
「刻剣解放…一日三度まで技を強化できる」
カノイは特に隠すことも無くそう説明した。
「ほう?やっと底が見え始めたか?剣聖!?」
「……あぁ、その認識で構わない」
挑発とも取れる言葉をカノイは平然と受け流す。
ヴェルフは軽く舌打ちするが、すぐに切り替える。
「泥沼」 「?……!」
カノイとヴェルフの足元が液状化し、カノイの足が泥に囚われる。足元の悪さはヴェルフも同じ、だが彼は魔法でその問題を解決する。
「空歩」
ヴェルフは空を蹴ると少しだけ空中に舞い上がり、自身の泥沼を回避、更に杖を振り上げた。
カノイはすぐさま魔法の効果範囲外まで移動しようとするが、そこに六樹が駆けつけ地面に緋影を突き刺しスキルを発動する。
[硬化]
「!?」
カノイの足が埋まる泥が今度はガチガチに固められた。カノイの動きが止まる。
「重力魔法!死に晒せ!!」
六樹が作った隙にヴェルフが重力を乗せた杖を叩き込む。
「正穿!」
ガン___ドゴーン!!!
剣を突き合わせ力を地面に流す。その時、ガラ空きになった胴体部分に六樹が剣筋を叩き込む。
「紫電一閃!!」
「…上手い」
カノイは二人の連携に対し、剣で杖を滑らせてる事でヴェルフの一撃を足元に誘導し硬化された地面を叩き割った。
そして拘束を脱すると、すぐさま後ろに退がり六樹の剣筋を回避した。
神がかり的な回避だが…
パス… 六樹の剣筋がカノイを掠める。
((いける!!))
するとヴェルフが念話で告げる。
『あと3分じゃ!このまま攻め立てるぞ!』
(了解!)
直後、二人は近接での連携を強化、より攻勢を強めた。六樹は地面にアングリッチを突き刺し叫ぶ
「摩擦:減!」
周囲の地面がまるでアイスリンクの様に摩擦が減る。カノイが一緒グラついた隙にヴェルフが魔法を唱える。
「掌握」
「?」
ガクっと、魔法で脚を引っ張られカノイは体勢を崩した。
「晴天斬!!」 バサッ
六樹は地面に突き刺した剣を振り上げ砂埃をカノイ撒き散らした。体勢が崩れ地面に顔が近くなった状態からのシンプルな嫌がらせにカノイが顔を顰めた次の瞬間、杖によるフルスイングが炸裂した。
ゴン!!! 「っ!!…」
カノイは咄嗟に腕で受け致命傷を回避、しかし、まともにダメージを負った。
「畳みかけろ!!」
六樹とヴェルフの攻勢は続く。
「豪炎!!」 「刺突!」
燃え盛る炎を六樹が耐えながら突っ切り、意表を付いた。
「断崖」「集積衝撃!!」
土壁を衝撃で噴き飛ばし散弾の様に様に打ち出す。
「紫電一閃!」 「魔彩七式!!」
剣と魔法で同時攻撃もした。だがカノイは落ちない、落ちてくれない。
のらりくらりとあらゆる攻撃を受け流し、倒れる想像がつかない。
「はぁ…はぁ…」
(化け物がコイツ!?)
攻めあぐねた六樹の息が上がる。
一瞬の隙、しかしそれを見逃す剣聖では無かった。
カノイは熟達した足捌きで、その一瞬の間に間合いを詰めた。
「!?」
「一刀」
その刀は六樹に迫る。六樹は咄嗟にアングリッチで防御した。
だがそれは間違いだった。
バギィーーーーーン!!!!
「なっ!?」
これまであらゆる攻撃を受け止めて来たアングリッチ、その刀身が砕けた
カノイの剣が間近に迫る。六樹は再び死を覚悟した。
その時
ドン!!! 六樹は横に突き飛ばされた。その力は強くそのままアリーナの壁まで叩きつけられた。
「はっ!!」
我に帰って一秒前までいた場所を見ると、ヴェルフ翁が立っていた。
杖を振るいカノイと対峙する彼は六樹を庇った遅れを取り戻すべく攻勢に出た。
「打突!!」
「……………魔断!」
ズバン!!………
その瞬間、カノイの振り上げた剣によりヴェルフの杖が斬られた。
「………っ!!」
ヴェルフの顔には焦りと悔しさが滲み出ていた。彼が生涯を費やしてかけ続けた強化魔法が断ち切られたからだ。
「爺さん!!」
六樹が急いで援護に入ろうとするも到底間に合わない。
低く、だが不思議とよく通る声でカノイはあの問いを発する。
「何か……言い残した事はあるか?」
それは死の宣告だった。駆け寄ろうとする六樹、すると自然とヴェルフの目が合う。
彼の目は言っていた。お前に託すと
そしてカノイに再び向き合ったヴェルフは一瞬だけ目を閉じると、無理矢理頬を引き攣らせ不適な笑みを浮かべ叫んだ。
「先に行っとる!!地獄でな?」
カノイは剣を振り下ろした。
ザシュッ……カノイの剣はヴェルフの肩から腰にかけて袈裟斬りにした。
ヴェルフの体が二つに割れる。しかし崩れ落ちるヴェルフの顔は虚勢か、あるいは勝利を確信してか、笑っていた。
カノイは一言だけ呟いた。
「あぁ、また会おう」
ヴェルフ死す。剣聖カノイ戦、次回決着!!




