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83話  上に立つ者

現在気分転換にアンリの過去回想を執筆中です。なお番外編として出すか本編に入れるかは不明です。

カノイ・ウォレストとヴェルフ・ウィザードによる打ち合いは続く


「一刀」 「おっと」


ヴェルフはカノイの攻撃を何とか躱す。

返す刀ですぐさまヴェルフを狙う彼の剣の上にヴェルフは杖を置き、押さえ込みにかかる。


ギリギリギリギリ……一見地味だが高度な駆け引きが展開されていた。

だがヴェルフには魔法がある。


「土蛇」


ヴェルフがそう唱えた瞬間、カノイの足に土で出来た蛇がロープの様に絡まった。


「?」


それだけでない、


ズルズルズルズル……


同時に土の蛇達は大量に展開し円状の図形の様な物を描き始めた。真上から見ればそれは魔法陣だと分かる。


「…流石の技術だな」


カノイが何かを言いかけたがヴェルフが代わりに答えた。


「何もぶっ放すだけが魔法じゃない」


そう言うと同時にヴェルフが魔法陣を起動。


「まぁ…()()()()がな!!」


カノイの足元から対戦車地雷の様な爆発が舞い上がった。


「ヴェルフさん!」


リベルがヴェルフに駆け寄る


「奴は…?」


「姫様…残念ながらあの程度ので小火(ボヤ)で剣聖が死ぬとは思えませんな」


ヴェルフの言葉通り、カノイが爆炎を刈り払いながら現れた。


「なんであの爆発を剣一本で防げんだよ!」


リベルがそう文句を言う。だがカノイは否定した。


「いや、流石に防ぎ切れてはいない」


そう言うカノイの腕には小さな火傷が見えた。

だがたったそれだけ、カノイは六樹の決死の一撃とヴェルフの見せた初見殺しの二つしか手傷を負っていない。


ある意味無傷の方が何かカラクリが有るのではと考えられたかもしれない。だが僅かでもダメージがある事が決定的な実力差を叩きつける。


リベルが軽く絶望感を覚えていると隣から笑い声が聞こえた。



「ふっ……あと100発程叩き込めば死ぬか?」



ヴェルフはそう笑いながらカノイに質問した。するとカノイはこう答えた。



「試してみるたらどうだ?先にそちらが全滅しているだろうが」



そう言うとカノイの攻撃は激しさが増した。


「リヒトは右から!タナーと他4人は左!シギル!アルマはヴェルフ翁のサポートに!他は視界に入る範囲で取り囲め!!」


リベルは前線に立ちながら指揮を取る。近接もこなせる者達でカノイと打ち合い広範囲即死攻撃を打たせない様に立ち回る。


またしてもカノイが技を出す構えを見せる。


「ヴェルフさん!」


「分かっております姫様!!」


ガギンッ!!と耳をつんざく様な音が響き渡る。


「全く……本職の魔法使いに杖で撃ち合われるとは、本当に嫌になる。私も腕が鈍ったか?」



カノイの皮肉は最もな話だ、杖を振り回して剣聖と撃ち合えているヴェルフがおかしい。


「儂はこれでも剣士を対策してる(メタってる)つまりなんだがな?今日一日で2回も白兵戦をするとは、少しは老人を労ってほしいものだな」



やはり作戦の軸となるのがこちら側の最大戦力であるヴェルフ翁だ。


カノイとヴェルフが剣と杖による熾烈な攻防が繰り広げる。


更にヴェルフは今現在も治療中の六樹と念話で交信しながら対策を練っている。

恐るべきマルチタスク能力だが、これこそがリベルが圧倒的な経験値を持つヴェルフを差し置いて指揮を担っている理由だった。


ヴェルフは


「指揮は姫様に任せます。儂のようなしわ枯れたジジイよりも姫様のような絶世の美女の方が皆言う事を聞きましょう」


などと冗談混じりに言っていたが


その目的はエースと指揮官を分割する事で負担を減らす為であるとリベルは理解していた。



だからこそリベルは指揮官としての役目を果たすべく現在の戦局を分析する。


(数の有利を活かして交代しながら持久戦に持ち込めばいけるか?)


リベルは内心そう考える。例え剣聖だろうと体力の限界というものがある。一人で戦っているのなら尚更だ。


(このまま防御重視で戦線を維持しつつ、今治療を受けてるリョウ兄ィが復帰すればヴェルフ翁とリョウ兄ィのふたりを軸にアイツを追い詰められるかもしれない。それなら一番被害が出ないで済む筈)


(それにリョウ兄ィなら!必ずどうにかしてくれる!)


リベルにはそういう確信があった。

リベルは時間をかける事が正解だと判断した次の瞬間


「………」    


カノイと目が合った。


「…………なるほどな」


「っ!?」


リベルの目を見て一瞬で何か見透かした様な発言をしたカノイに、リベルは声にならない声を上げる。


「先程から持久戦の構えを見せていたが、目的はあの()()か。あの深手と出血なら5日は動けないと思ったが……」

「確かに奴の百足の如き生命力なら戦場(ここ)に戻って来るやもしれんな、万全の状態で挑まれると少々厄介だ」


そう前置きした上でカノイは告げる。


「仕方ない、あまり遊んでもいられないらしい」


するとカノイは今度は彼の剣、()()()を大きく振りかぶった。


「お主ら!!下がれ!!」


咄嗟にヴェルフが前に躍り出た。警戒を促しつつカノイの剣技を受け止めるべく杖に強化魔法を張り巡らせている。周囲の魔法使い達はハッと我に返り回避行動を取る。


だが、


「そう来ると思っていた」


カノイの不気味な一言にヴェルフは背筋に悪寒を覚えた。だが最早、回避の段階は過ぎている。


覇迅(はじん)!!!」


次の瞬間、カノイの剣が衝撃波を撒き散らしながらヴェルフに叩き付けられた。


「ぐぅぅぅ!!!!」


ヴェルフの口から苦悶の声が漏れ出る。

これまでカノイが放って来た剃刀のような切れ味の技とは真逆、まるで棍棒で叩きつけているかのような鈍らな一撃、しかし対人戦において予想外とは致命的なロスを産む。


「ぐっ、!!」


ヴェルフが物理的に吹き飛んだ。老骨の魔法使いは衝撃波に流され木々を薙ぎ払いながら森に突っ込んだ


カノイが放った一手、それは必殺の一撃ではなく、敵の飛車を盤面から弾き出すための一手だった。


「ヴェルフさん!!」


一時的ではある。だが前衛が弾き出された。

そしてそれは剣聖が自由に剣を振れる事を意味していた。


(不味い!アイツがフリーになる!誰かが穴を埋めないと!……でも誰が!?誰ならアイツを止められる!?誰なら死なずに済む?)


刹那の迷いをカノイは逃さない。体勢を低くした後剣を構えた。


「ぼっ、防御を!」


乱閃(らんせん)……」



…………パァン 血飛沫が舞い上がる。



リベルが警戒を叫ぶとほぼ同時

ただ敵の頭数を減らす為だけの斬撃が周囲に撒き散らされた。


守護(プロテクション)!!」「鉄壁(てっぺき)!」「断!崖!!」


真っ先に防御魔法を展開したのはシギルだった。そしてほぼ同時にアルマとタナーがそれぞれの得意な属性の防御魔法を展開した。


防御魔法を張り巡らせた者は近くの者を避難させる。


「ゔっ!」 「ギャァ!!」 「にげっ……」


撒き散らされた斬撃は対応が遅れた者を無慈悲に引き裂いた。そしてそれだけでなく


「聖壁!!……くっ!クソがー!!」


防御魔法が破られ無惨な最期を遂げる者もいた。

ビキッビキビキッ……と防御魔法が削れる音が響いた。そう長くは持たない。


すると、スッと斬撃が止む


  「「「!!!??」」」


全員がカノイの方を見た瞬間


「葦刈」


周囲一帯を一太刀で薙ぎ払う一閃が炸裂した。


「伏せろ!!」


リベルが叫ぶ、その場の全員が一斉に身を屈める。直後防御魔法を全て切り裂いたカノイの一撃が頭の上を掠めた。


(狙うなら、頭だな)


全員が身を屈め避けたその一瞬、カノイが飛び出した。


狙いは指揮を取るリベルだ


「っ!!」


本来のリベルなら身軽に避ける事が出来た筈だ、だが無理な体勢で避けた隙を狙われたため、回避がワンテンポ遅れた。シンプルな経験の差をカノイは的確に突いた。


「………!」


カノイが無言で剣を横に振りかぶりそして放った。


なんて事のない致命打がリベルに迫る。


(これ…死ぬ…)

リベルが心の中で己の最期を悟った


ガギィン!!!


「!?」


しかし剣聖の一撃が王女に届く事はなかった。

割り込んだ者がいたからだ。



ギリギリ…ギギギギギ…金属が軋む音が響く



「近接は苦手なんだが…どうやら贅沢も言ってられないらしい」



二本のナイフでリベルを守りつつガイトがそうこぼした。そしてカノイの方を向いたままリベルにこう告げた。


「王女殿下、我々は貴方に命を捧げます。だから貴方は、()()()だけを考えてください」


リベルはガイトの言葉に我に帰った。自分の命を賭ける覚悟はしていた。だが他者の命を捨てる覚悟が足りていなかったのだ。


爆光(ルクス・バースト)!!」 「地滑り!」


すかさずリヒトとタナーが割って入る。

しかし今は完全に剣士(カノイ)の間合いだ。


光の槍(ライト・オブ・スピア)!!」 「……一刀」


リヒトの投擲した槍は真っ二つに分かれ、後ろにいたタナーと他の魔法使いに被弾した。


「ぐあ!!」「ぐっ…」   


「なに!」 


タナーは受け切ったものの、もう一人は大怪我を負い吹き飛ぶ、自身の流れ弾により人を傷付けてしまったリヒトに一瞬の迷いが生まれた。その一瞬にカノイの剣が差し込まれる。



スッ、と軽い音と共に首元に剣が迫った。


守護魔法(プロテクション)!!!」


バリーーーン!!  危機一髪、首と剣の間に挟まれた魔法によりリヒトは何とか窮地を脱する。更に声は響いた。


「独専結界!!暗闇の牢屋(ダーク・プリズン)!!」


リヒトを救い、すぐさまカノイを特製の結界に閉じ込めたシギルが叫ぶ


「迷うな!!これは殺し合いだぞ!!」


「シギル…」


リヒトがそう溢した。カノイを閉じ込める為だけにチューニングした筈の結界は早くも綻びが生じ始めている。


一部始終を見ていたリベルは考えていた。


彼女はなるべく被害を出さない様に方針を立てていた。

それ自体は間違いではない、素晴らしい考えでもあるはずだ、だがそれだけでは足りない。


父であり王である人物の言葉を思い出していた。


「いいかリベルテ?リスクを回避するだけなら誰でも出来る。だからこそ王族(われら)の様な上に立つ存在が必要なんだ」


どういうこと?


「何を切り捨てるかを決める存在だ」


それって可哀想じゃないの?


「その通りだ、だからこそ結果を出さないといけない。切り捨てた彼らを裏切らない為に…」




(何かを代償に…そんなこと…)


すると、リベルに声をかける者が現れた。


「王女殿下」


それはガイトだった、彼は跪きリベルにこう言った。


「我々は既に覚悟が出来ております。この意味がお分かりですね?」


「!」


彼の目は真っ直ぐリベルを見つめていた。リベルはその眼差しに気圧された。


それとほぼ同時、リベルの頭に声が響いた。


『姫様、()()()()()()()()。今から貴方に送ります』


次の瞬間、リベルの頭にヴェルフと六樹が出した結論が流れ込んできた。リベルはそれを知り一言呟く。


「……正気かよ、リョウ兄ィ」


1秒余りの思考の後、リベルが号令を発した。


「総員!!剣聖カノイを()()()()()()()せよ!!」


そういい終わる瞬間


カノイがシギルの結界を破壊した。リベルは自分を含めた全員に告げる。


「死ぬ気で死んで下さい。その代わり、必ず殺します」


王族の権威を利用するという事はその責任も発生する訳で、リベルは今回自分だけでなく他者に命を賭けさせる覚悟とその責任を知りました。この点は自分の命しか賭けられなかった六樹よりも優れていると言えるかもしれません。

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