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75話  魔導都市防衛戦

今回の話で30万文字達成しました。

ウィザリアの城壁を境に二つの軍が睨み合う。


「魔人族とは、また厄介な客だな」


布陣を終えようとする魔王軍をみてディンが苦々しげにつぶやいた。


「厄介じゃない奴らなんていないっスよ、ディンさん」


「ハッ!それもそうだな!」


軽快に笑うディンに釣られて他の兵士達も笑顔が見える。突然攻め込まれた状況下にしては駐屯兵達は高い士気を保っていた。


すると、一人の兵士がディンに報告した。


「申し上げます!敵兵推定5200!!本陣は攻勢の構えを取り、二つの別動隊には都市包囲の兆候あり!!」


ご苦労、と伝令を下がらせるディン、すると隣にいたダリアが質問した。


「コッチの兵はどれくらいっスか?」


「そうだな、対する我らは歩兵1200、弓兵800、魔法砲撃隊250の魔法支援隊150、あとは騎獣隊100の計2500って所だな、歩兵にはスリングを持たせて投石をさせる。」


「緊急にしてはかき集めたっスね」


「だろ?城攻めは攻撃側が最低三倍必要なんて言葉を信じると俺たちの兵数は決して悲観するような数じゃない。そのうち援軍も来るしな?」


ディンはそう言って現状を肯定した後、懸念材料を語る。


「……が敵はあの魔王軍、厳しい戦いになるぞ」


両軍が配置につく。

ガドル王国軍は城壁に近付いた敵兵を矢や投石で排除、遠距離を魔法でカバーする態勢だ。


対する魔人族の軍団は羽を持つ者は空中に展開し、持たない者達は槍衾を揃えていた、突撃の構えだ。

それを見たダリアは首を捻る。


「……?、お相手は石壁に突撃するつもりっスかね?」


「よく分からんが、不気味だな」


すると、槍衾の中から一人の女性が出て来た。雰囲気からして指揮官か何かだろう。


大きな羽と尻尾を持つ、その女性は軽装だが腰に剣を帯びていた。見た目は10代後半から20代前半に見えるが魔人族は人間とは生きる時間が違う為あまり参考にならない。


そんな彼女は1人城壁のそばまで歩いて来た後、宣戦布告を行なった。



「我が名はミツナ・ウォレスト!!これより魔導都市ウィザリアを攻め落とす!無駄な血を流したくなければ降伏しろ!!」


到底受け入れられる事のない降伏勧告、当然ディンは突っぱねる。


「丁重にお断りさせて頂く!お前の親父殿が宣告すれば真面目に考えるがな!?」


ディンはこの場にいないカノイの情報を遠回しに探りを入れた。


「父上はここにはいない」


「そうか!なら恐るるに及ばず!」


ディンはそう言い切る。隣で聞いていたダリアからは本心か虚勢か判断に困るラインだった。


「二言はないな?」


ミツナは最後の確認を取る。ディンは答える。


「そちらこそ、ここで退けばまだ遠足で済むぞ?」


「長旅で疲れたからな、街の中で休ませてもらうとしよう。それでは……」


互いに皮肉を交える。そして、結論を同時に告げた。




「「戦だ」」





言い終えると、ミツナは陣に戻っていく。それを見届けたディンが一言


「結構いい女だったな?クールビューティーな堅物かと思ったが冗談が通じるタイプだし」


「ブン殴るっスよ!?このエロオヤジ!!」


ダリアが緊急感のないディンに呆れかえる。するとディンが真面目な様子で話した。


「あの剣聖がいないのが気になるな、出し惜しみする様な弾でもないだろうに…とは言え出来る事も無い、俺たちが出来るのは目の前の敵の対処だけだ」


「歯痒いっスね」


ダリアもその点が気になっていたが、こればかりは後手に回らざる得ない為、ディンの意見に同感だった。


「では、私は魔法攻撃隊の方に向おう」


キシヤがそう言って配置につく。そしてディンが兵達に演説した。


「聞け!!ウィザリアを守る兵達よ!!先に言っておく!!おそらく結界や城壁は破られるだろう!!!」


その言葉を聞いた兵達に動揺が走る。しかしディンは続ける。


「しかし!!この街の護りとは一体なんだ!?結界魔法か!?はたまたこの石壁か!?否!断じて否!!、この街の護りとは君達だ!!」


ディンは兵達を鼓舞する。


「敵軍は結果や城壁を破った敵軍は思い知るだろう!!獅子の檻を開けてしまったと!真に守られていたのは自分たちであったと!!そして見せてやれ!!ガドル王国軍の強さを!!」


「皆の衆!!戦だーー!!!」




『うおおおおおおーーーーーーーーー!!!』



男達の雄叫びが広い砂漠に響き渡った、開戦の合図だ


両軍から法螺や大太鼓の音が響く、兵達はそれに合わせて鎧や槍を打ち付け音を出す。


ガシン、ガシン、ガシン、ガシン!

と物々しい音がリズミカルに響く


原始的だが効果的な威嚇だ。すると、魔王軍に動きが見られた。魔法使い達が上級魔法を放って来たのだ。


放たれた数々の魔法は、全て指揮官であるディン一点に向けて飛んでくる。だが


バチバチバチッ!!!


と、激しい音を立ててそれらの魔法は弾かれた。


「これがこの街の結界っスか、便利っスね」


「魔法に対する防御は一級品だ」


そしてディンは反撃の合図を送る。


「放てーー!!!」


その声と同時に大量の矢が雨の様に降り注ぐ、そして魔法使い達による攻撃も開始された。


本格的な攻城戦が始まる。


ドドドドッ!!と魔王軍による魔法攻撃は依然として続く、しかし結界による恩恵は大きい現状ワンサイドゲームの様な状況だ。しかし魔王軍に動きが見られる。


「??…あれなんスか?」


「分からん……」


二人が目にしたのは魔王軍が取り出した兵器だった。この世界の住人には分からないが、それは近代的な大砲の様な形状だった。


「あの武器を狙うのだ!!何もさせるな!!」


キシヤが魔法攻撃隊にそう指示を飛ばす。異質さに気付いたからだ。


ガドル王国軍の魔法攻撃は周囲の兵達が文字通り体を張って防ぐ。


ビィーーーン……ビィーーーン…ビィーーーン


すると大砲に大量の魔法陣が浮かび上がる。そしてエネルギーを溜め、攻撃準備に移る。


ディンは不安な反面少しだけ安堵した。物理的な攻撃ならともかく、魔法系の攻撃であれば結界が防げる可能性が高いと考えられるからだ。


この街の結界は物理ならともかく魔法による力押しで突破するのは難しい。その事実はこの都市を守るディンが一番理解しているからだ。


しかし、その安堵は一緒で打ち砕かれた。


その瞬間、後方にある都市で()()()()()()からだ。


振り返った瞬間、全員が衝撃的な光景を目にした。





「切られた!?……我が魔法協会が!!」




カノイの斬撃を受け縦に真っ二つになった魔法協会が倒壊する。瓦礫の音が遅れて響いた。


「姫様…」


ダリアがそう呟く、全員の思考が停止したその数刻の後


「ぐあっ!!」


一人の兵が魔法を受けて倒れた。ハッとしたディンは気づく。


「結界が破られた!!?ハッ!!」


気付いた時にはもう遅い、魔王軍が用意した魔導砲、その目的は結界を破るためでは無い、城壁を壊す為のものだった。ミツナの号令が響く。


「魔導砲!!発射!!」


キュイーン、ドーーーーーーンッ!!!!


次の瞬間、城壁の一部が吹き飛んだ。


爆音が耳をつんざき、擬似的な静寂を感じる。そこにミツナの号令が響いた。


「突撃ーーー!!!!」


魔王軍の歩兵達が破壊した箇所に押し寄せた。突撃陣形をしていた理由が今になって分かる。


魔王軍は破竹の勢いで進撃し、すぐさま壊された壁まで辿り着いた。このまま都市に流れ込むつもりだ。


早速一人が混乱に乗じて都市に入ろうする。



「一番槍は俺の物だ!!!、グァッ!!」


しかし、都市に入る直前で魔王軍の動きが止まった。先頭を走る一人が突然現れた敵に叩き切られたからだ。


「かっ、かかれーー!!!ぎゃあーー!!」


突然現れた脅威を排除しようとした5人の兵士も一緒で叩き切られた。


目の前に敵が立ち塞がる。それは緑の髪の女だった。



「はぁ〜〜〜〜〜〜〜…………やってくれたっスね。はぁ〜、本当にやってくれる」



その女は大きな戦斧を持っていた。敵を討ち取った事により血に濡れているがそんな事を構う様子はない。


そんな戦斧の女性、ダリアは考えていた。


本来の彼女の仕事内容的にはまずはリベルを助けに行かなければいけない。しかしこの状況だ、もし彼女がここを離れ、敵兵達がここを通せば事態は数倍悪くなる。そして、ここから魔法協会まではそれなりに遠い。今から向かっても混乱の中リベルを見つける事が出来るかも定かでは無い。


彼女はこの場での最善を考える。そして熟考の後、答えを出した。


「はぁ〜〜、これは職務放棄っスね。陛下に顔負けできないや………頼むっスよ、ムツキ君」


ダリアの選んだ結論はリベルの護衛はその場にいる六樹に任せ、自身は都市自体を防衛するというものだった。


「私はダリア・シーグ!!この先へは何人たりとも通さない!!!」


そう言うとダリアは大きな戦斧を突きつける。


「敵は一人だ!!押し潰せ!!」


その言葉を合図にその場の兵達が一斉に押し寄せた。しかし


鬼斧神攻(きふしんこう)!!!」


ダリアが振るった斧の一撃は、その場にいた兵達をまるで落ち葉の様に吹き飛ばした。


敵の前衛が崩れた瞬間、後ろからディンの声が響いた


「騎獣部隊!!突撃ー!!!」 『うおおおーー!!!』


振り返るとそこには騎獣兵達が押し寄せる所だった。


「そんな、馬鹿な!?」「来るな!ぐわっ!!」


様々な獣に乗った兵達が押し寄せた魔王軍の歩兵を蹴散らす。まさかここまで迅速に反転攻勢を仕掛けられるとは思っていなかったのか、魔王軍は出鼻を挫かれた。


それは防御が崩れたガドル王国軍は攻撃を選んだ事を意味していた。


ダリアも大きな山羊に騎獣し、攻勢に加わる。


「ちょいと憂さ晴らしさせて貰うっスよ」


ダリアはそう呟いた。

魔導都市防衛戦は熾烈な白兵戦へともつれ込むのだった。


ファンタジー世界の文明レベルが高いのか低いのかよく分からない戦いが好きです。ダリアさんは怒らせると怖そう


よく考えたら今回主人公もヒロイン出てない。

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