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74話  一刀両断

話のストックが少なくなってきたので投稿頻度が下がるかもしれません。申し訳ない。


「………ん?」


本部の方に向かおうとしていたリベルが振り返る。

先ほどまでいた方向が何なら騒がしかった。


ちょうど裏門や魔核のある方向に耳を澄ませるリベルすると断末魔の様な声が聞こえてきた。


「!!」


リベルは考えるよりも先に足が動いていた。


警備兵達の叫び声が近づいてくる。そして、さっきまで見学していた魔核の近くまでたどり着いた。


「大丈夫か!?」


開口一番リベルはそう大声で問う。そこには、完全武装した兵達が詰めていた。全員が鬼気迫る表情だ。


するとリベルに先ほど彼女を本部に向かう様に促した中年の兵士が駆け付け、そしてすぐさま怒鳴りつけた。


「ガキが何しに来た!?早く逃げろ!!!」


「っ!叫び声が聞こえたから…」


大の大人に怒鳴りつけられ少し萎縮するリベル


「お前には関係ない!!いいから行け!!早くしないと…」


何か言いかけたとき、石畳みの道を歩く足音が響いた。


『…………………』


その場の兵達全員が一斉に息を呑み汗を垂らす。その空気にリベルも尋常ではない何かを感じた。


コツ、コツ、と足音はどんどん近づきそしてその音の主の姿が見えた。


足音の主、カノイは剣に付着した血を振り払う。ただ剣を血糊で滑らない様にする為の実用的な行為、だが、その所作は明らかに普段から人を斬っている者のそれだった。


カノイは警備兵達に告げる。


「一応聞いておこう、そこを退く気はあるか?」


カノイは魔核への道を開けろと兵達に脅す。しかし彼らもそれに屈する者達ではなかった。


「………断る!」


一瞬の間の後、兵達はそう答えた。その一瞬は彼らが死を覚悟するのにかかった時間であるとリベルは悟った。


「愚問だったな、失礼した」


カノイは彼らの覚悟を疑った事を謝罪すると、そしてこう言った。


「覚悟はあるな、ならば我が至高の一撃、受けてみろ」


カノイは大きく真上に剣を構える。

兵達は血相を変えた。


「魔核を守れー!!!大楯前に!!防御魔法展開!!」


守護(プロテクション)!」「聖壁!!」「断崖!」


兵達は恐ろしいほど洗練された動きで展開する。タンクと思われる大楯持ちが三人前方に重なり防御魔法が重ねられた。


氷の盾(アイス・シールド)!!」


リベルも咄嗟に防御魔法を展開する。物理と魔法の両方から魔核を守る一同


するとカノイは小さな声で、しかし不思議とよく通る声で、その技の名を呟いた。



「……………世断(よだち)




カノイが剣を振り下ろした瞬間、文字通り世界が絶たれた。


ジュバーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!



その場に見える景色に切れ込みが入る。まるで風景画をカッターナイフで切り裂いた様だった。


その至高の剣撃は魔法の守りを容易く突破し大楯持ちを切り裂く。


「!?」 「…っ!!」 「ぐあっ!」


全ての守りを破った剣撃は魔核を縦に真っ二つに切断した。


莫大な魔力が霧散した事を肌で感じる。


だが、その剣撃はそれだけでは止まらなかった。


「あっ………ウソだろ……」


リベルが言葉を失い呆気に取られる。彼女が見たものは斬られた魔核、ではなくその更に奥だった。剣筋から外れていたため生き残った兵士が叫ぶ



「まっ!魔法協会が!?……真っ二つに!!」 



生き残ったもの達が目にしたもの、それはカノイの剣撃により一刀両断された魔法協会本部だった。


途中にある闘技場をまるでホールケーキの様に切れ込みを入れただけでは飽き足らず、魔法協会本部の巨大なビルが見事なまでに一刀両断されていた。


そして……


ガラガラガラ……ガシャーーン……


と切られたことに後から気付いた様に建物が崩壊を始めた。

信じられない光景だった。


「そ、そんな……ありえない!!」


兵の一人がその惨状から目を背ける。するとカノイが淡々と告げた。


「仕方のない事だ、この世は理不尽だ」


圧倒的な強者を目にしたか、生き残った兵達が半ば自暴自棄になりながらカノイに迫った。


「うっ、ゔわああぁーーーーー!!!!」


リベルは一瞬で塗り変わった状況を処理しきれず突っ立っていた。兵士は叫ぶ


「今すぐ、コイツを殺さないと!!」


「対処法は合っているが、いささか冷静さに欠ける」


迫り来る兵達にカノイは剣を握りながら呟いた。

そして剣を握る。今度は横薙ぎの構えだ。


そして瞬間、カノイの剣筋が先程までいた場所を掠めた。残った兵達も一掃された。


「ギャァー!!」 「ぐあっ…」


リベルの隣にいた中年の兵士がリベルの頭を掴み、強引に下に下ろした。


「っ!!危ない!!伏せろ!!嬢ちゃn!!」


「ゔっ!!……ん?」


命を救われたリベルは中年の兵士の方に顔を向けた。


だがそこには、()()()()()()()()()しかなかった。


ブシャーー……と命の恩人だった物からまるで噴水の様に赤い液体が噴き出す。リベルは崩れ落ちる体を通して人間の断面図を初めて見てしまった。


「ゔっ!!…」


リベルは強烈な吐き気を催した。堪えようとしたものの出てしまう。


「ぐぇぇ……はひぃ……はぁ…」


胃の内容物をぶちまけてしまう。胃酸で喉がヒリヒリと痛む。


するとカツカツ、と足跡が聞こえた。音の方に振り返ると兵達を一掃したカノイがリベルの前に立っていた。


「いっ、イヤ!!…風刃!!」


リベルはまるで発作を起こしたかの様に魔法を放つ。


だが……


スパン、とカノイは剣の一振りでそれを掻き消した。まるで手で振り払ったかの様な余裕だ。


「あ……あぁ……………」


リベルが呻き声を上げる。周囲の人々を一瞬にして消した相手への恐怖、鍛えた魔法が全く相手にされない悔しさ等様々な感情が噴き出す。


リベルはその時理解した。自分自身と真の強者にある天と地ほど離れた差というものを


冒険者として放浪していて、これまでも危険な目にあった事は何度かある。しかしそれらはあくまでミスや不注意や不幸などの、言わば改善出来る程度のものだった。しかし今回は違う。今目の前にいる魔人族の剣士、彼に対してどうこう出来るイメージが全く湧かなかった。



「すまない。試験の参加者は殺せと命じられている」


カノイは心の底から申し訳なさそうにそう言う。だがこれから行おうとする事を止める様子はなかった。


「い……いや……」


リベルは逃げようとするが腰が抜けていた。情け無い自分に涙が出そうになるのを必死で堪え、カノイから少しでも距離を取ろうと後退りする。そんなものが無駄であると頭では分かっていても。


「仕方ない、せめて苦しまない様に……」


カノイは剣を掲げる。リベルの首を落とす角度に剣を調節する。そして剣を張り下ろそうとした。



「何か、言い残した事はあるか?」



リベルの頭の中に走馬灯が駆け巡る。命の危機にリベルは咄嗟に助けを求めた。


「助けて……リョウ兄ィ…」


その時だった。


「ショット!!!」 「!」


ガギィーーン!!と、カノイはリベルへの攻撃を中断し突然飛んで来た赤い短剣を弾いた。


「リョウ兄ィ!!」


「……新手か」


カノイは短剣が飛んで来た方向に向き直る。だか、そこにはただ魔法で出来た黒い影があるだけだった。


「?………!」


すると、背後から殺気を感じた、そこには抜刀の構えをとった六樹がいた。


[紫電一閃]


六樹はカノイの背後から無言で斬りかかる。その剣筋はカノイの首を容赦なく落とそうと煌めいた。


だが


ガギギギギギ………

カノイは六樹の攻撃を受け止めていた。


「悪くはない。だが奇襲するならもっと殺気を隠せ」


「くっ!」


よほど余裕があるのかカノイは六樹にそう助言した。


「リベル!!生きてるな!?」


リベルの下に駆けつけた六樹は安否確認をした。


「うぅッ…リョウ兄ィ!」


極度の緊張からかリベルが泣き出してしまう。しかし六樹は目の前の敵に集中する。


「「…………!」」


無言で睨み合う二人、そして



ガンッ!!ガギィーン!ギギギギギ……ギン!!!



刹那、二人の剣士の応酬が行われた。一瞬の攻防、しかし六樹とエスタの両方が確信した


六樹・エスタ(コイツ、()()()()()()()()!!!)


カノイが意外そうな表情を浮かべた。


「驚いた、魔法試験にこれほどの剣士が紛れていたとは…お前は何者だ?」


「六樹、亮…アンタは?」


六樹の刺々しい言葉で質問する。それに対してカノイは素直に応じた。


「私の名はカノイ・ウォレスト。魔王軍幹部、剣術師範だ」



(幹部だと!?なんでこんな所に!?なんでリベルを殺そうとしてたんだ?)


「カ、ノイ!?」


その名を聞いたリベルの顔が真っ青になる。


(まさかリベルが王女だとバレて?いやそれなら殺そうとするか?……いや、とにかく今は対話を優先だ)


そう方針を固めると、六樹はカノイに話しかけた。


「俺達は二人とも冒険者だ、よって中立、あんたと敵対する理由がない。剣を納めてもらっても?」 



敵対を避けようとする六樹、だがカノイは首を横に振った。


「申し訳ないが、そうもいかない」


「なぜ?」


「魔法試験の参加者達を殲滅せよとの命を受けている」


その言葉に六樹は声を荒げて反論した。


「ここには軍と関係の無い奴らも参加してる!!見境なしか!?」


「………どのみち今後招集される。若い芽は摘んでおく必要がある。例えそれが非道であってもだ」



六樹は苦虫を噛み潰したような表情になる。カノイは自身の行いを理解した上で決行していた。


「交渉の余地なしか…」


「仕方のない事だ」


六樹の目から光が消える。二人の剣士の間に再び殺気が流れ始めた。


しばしの沈黙の後、再び場が動く。


「闇雲!!」


ブオオオーーー!と周囲に黒い煙幕が立ち込める。

しかしその中から斬撃が飛んで来た。


シュパッ……ズバン!!六樹のすぐ隣を通り抜けた斬撃は近くの木を切り倒す。


「っ!?…危ね!!」


「………空断(からたち)


シュキン!!という音と共に煙幕がパッカリと切り裂かれた。視界を確保したカノイは周囲を確認する。


そして、そこには()()()()()()()()()()()()


「まったく、いい性格してるな」


そう笑みを浮かべるカノイ、その目線の先、彼の頭上にはおびただしい量の土塊が迫って来ていた。


◇◇


ドシャーンッ!!という重低音が辺りに響いた。


「あれで、死ぬ訳ないよな……」


六樹がそう呟く、彼は腕にリベルを抱えていた。


「はぁ〜〜〜〜、なんとか乗り切ったぁ〜……死ぬかと思った」


六樹が一気に脱力する。何が起きているのかは分からないがとにかくリベルの命は助かった。今はそれだけで合格点だ。


「なんだアイツ!?化け物か!?」


六樹はカノイをそう評する。これまでも何度か強者と会ったことがある。試合形式ではキョウやヴェルフ、殺し合いではチグレ等だ。


しかし、カノイはこれまで会って来た誰よりも強い。そういう確信があった。


「聞いたことがある……魔王軍幹部の魔人族の剣士」


リベルが弱々しい声で六樹に告げた。


「元白金級冒険者にして剣聖、カノイ・ウォレスト……名だたる名将を集めた魔王軍幹部、アイツはその中でも……」



()()()()だ」


いよいよカノイさんが本格始動です。彼の戦闘は常に一撃必殺で緊張感がすごいので好きです。魔王軍幹部最強の名に恥じない戦いを書きたいと思ってます。

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