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72話  背負う者達

試験が終わったばかりですが戦闘パートはまだまだ続きます。

ヴェルフの最後の攻撃を受け、相打ちという形でダウンした六樹だったが…


「あれ?……転送されない」


魔力が空の状態であるが、依然フィールドに取り残されていた。


「試験が終わったからのう、転送魔法を切ったのだろう」


そう言ったのはヴェルフだった。

彼は戦闘が終わり、疲れたのか近くの岩に腰掛けて休憩を取っていた。


六樹も少し休憩を取ろうと近くの岩に腰を下ろす。

すると、六樹の中のエスタが必死に訴えかけてきた。


エスタ(相棒やばい!!魔力が無い!!苦しい!!)


六樹(分かった!!すぐどうにかする!!)


六樹はアイテムボックスから魔力漬けにされた猪の肉を取り出して齧る。体に魔力が染み渡ると同時にエスタが深呼吸するように魔力を吸い込んだ。


エスタ(ひゅぅ〜〜!!はぁ〜、死ぬかと思ったぜ)


六樹(魔力が無いのってどういう状態なんだ?)


エスタ(息を止めてる状態に近いな。厳密には少しずつ生成されるから10秒に一回しか呼吸出来ない様なもんだ)


それは確かに苦しいな、と六樹はそう思った。これまで魔力を使い切るという事がなかったため気にしてなかったが、エスタの事を考えると魔力の管理には注意を払う必要があるだろう。


六樹は参加者が表示されていた地図を見てみた。


すると先程まで参加者が写し出されていた地図は今は合格発表の用紙に切り替わっていた。


そして、自身の順位に驚く、いや厳密には目の前のヴェルフの点数に対してだが


「99点で4位……そのうち半分が爺さんと相打ちになった点数か…」


(地図の表示が消えてたから知らなかったけどこの爺さんどんだけ点とってんだよ。別に俺と戦う必要なかったんじゃ?まぁ結果オーライか)


何がともあれヴェルフのおかげで六樹は高得点が取れたのでよしとする。そして、ある意味六樹の結果よりも大事な部分を確認した。


「よし、ちゃんと合格、それどころか2位の大金星だ、とりあえずこれで目標達成だな」


リベルが合格した事を確認し六樹は安堵の表情を浮かべた、この時点で密約は成立し王との謁見という目的は達成された。


すると、一息ついたヴェルフが六樹に問いかけた。


「ムツキと言ったな?陛下と会ったとして、それからはどうするつもりだ?」


その問いに六樹は即答した。


「王様に信じてもらう事を前提にすると、まず俺の友人達と会う。それから日本への帰り方、江川さんの研究について教えてもらう。そして…江川さんの弟子についても……」


最後の部分は少し言い淀んだ。

なつめが何故魔王として君臨しているのか知りたいが、六樹との関係について言いふらすのは慎重になった方がいいと考えたからだ。


ヴェルフは真剣な顔でその答えを聞いていた。すると


「そうか……それではこれをやろう」


そう言うと、ヴェルフは帽子を逆さにするとそこに手を入れ、しばらくまさぐると手帳位の大きさの本を六樹に手渡した。


「……これは?」


「儂が魔法を覚える際に使っていた手帳じゃ、最後の方には勇者達を召喚する際に色々試した事が書いてある。」


「!!そんな重要な物を俺に!?いいんですか!?」


思いがけず手にした参考資料に六樹は驚く。開いてみると先ほどの戦いで使われたいくつかの魔法が書き殴られており、最後の方には召喚する際の失敗の記録など雑多な情報が記されていた。


「そんな塵紙程度別に構わんよ、正式な資料は別にあるが失敗の蓄積というものは未知を知る上で重要だからな、何かの役にたつ事を願う。」


「ありがとうございます。ヴェルフさん」


六樹は深々と頭を下げた。

そしてついでと言わんばかりにヴェルフに質問した。


「いくつか聞きたい事があります。まず峰山を謀った容疑者ってのは誰ですか?」


◇◇


カノイと呼ばれた男は肉塊を経由してエルトと話していた。


「そう言えば、第二王女の件はどうなった?」


「あれですか……残念ながら失敗したようです…ヤスナガさんはやはりと言うかなんと言うか……あまり使い物になりませんでしたね…期待していたんですが…」


「その場その場で日和見をするような奴はそういうものだ、だが失敗したという事は分かってるな?」


カノイはそう前置きした上でエルトに告げた。


「もし仮に見つけても他の者同様に接する。流石に攫ってくる余裕は無い……殺す事になるぞ?」


「王族ともなれば色々と利用価値があるのですが……仕方ありません…殺して下さい。だから試験が始まる前に確保しておきたかったんですが……」


エルトは残念そうな声色でそう言った。

すると、遠くから試験の終わりを告げる花火の音が聞こえる。


「試験が終わったようだ」


「それでは……お願いします。…ミツナさんには僕から連絡しておきます」


「あぁ、それじゃあ行ってくる」


「………ご武運を」


そう言うと、肉塊から耳も口も消え失せ元の状態に戻った。


カノイは裏路地から出て魔法協会の方に歩いて行く。大仕事を果たす為に



◇◇


ダリアの後ろについていたアンリがたどり着いたのはウィザリアの町の北西部にある兵の詰所だった。その詰所は塔のような構造となっており、街の防壁とくっついた様な構造となっていた。物見櫓や砦としての役割も兼用しているようだ。ダリアは先程まで赤く光っていた宝石を見せながらすぐに中に入った。


「近衛騎士団所属!ダリア・シーグっス!」


中では慌ただしくしていた兵達が一斉に二人を見た。


「近衛騎士団の方ですか、分かりました。こちらへどうぞ」


ダリアの身分を確認すると一人の兵士に二人は誘導された。


案内された場所は防壁の上だった。そこには明らかに他よりも身分が高そうな壮年の男性が砂漠の方向を睨んでいた。すると、ダリアが親しげに声をかけた。


「ディンさん来ましたよ!」


「ダリアか?よく来てくれた」


ディンと呼ばれた男はダリアの方に体を向けた。すると隣にいたアンリが目に入った。


「……この娘さんは?」


「アンリ・レカルカです」


ダリアが答えるよりも先にアンリが名乗った。

その名前を聞いてディンは訝しげな表情を浮かべた。


「レカルカ……ってのは、あの?」


「はい、ケリル・レカルカとレサナ・レカルカの娘です。」


「アンリさんは有事の際に怪我人の治療をする為にここに来たっス、あっ、冒険者なんで直接戦闘はナシっスよ」


「あのレカルカ夫妻の娘さんとは心強い。協力に感謝する」


ディンはそう言ってアンリを歓迎した。そして、ダリアが本題を切りだす。


「それで、どうっスか?」


「……あぁ、確実に来るな」


アンリは一気に場の空気が凍りつく様に感じた。


「物見の報告によれば敵兵はおよそ五千、どの軍団かはまだ分からない。王都には報告済み、明日には王都から援軍が来る。」


「結構な人数っスね。結界はちゃんと機能してるっスか?」


「あぁ、だが期待しない方がいいだろうな」


「どうしてですか?」


ディンの悲観的な言葉にアンリが不思議そうな顔をした。


「敵も間抜けじゃない、何かしらの方法で突破してくるだろう」


するとダリアは彼女にとっての最優先事項について質問した。


「姫様が今街にいるんスけど、避難させた方がいい感じっスか?」


「いや、敵軍の全容が分からない。今は街の中の方が安全だ、今は人手が欲しい。正直言ってこちらにいて欲しい所だ」


「そうっスよね……」


口では同意するものの、ダリアは不安げな表情だった。


すると、別の人物の声が聞こえて来た。


「私も王女殿下を移動させるのは控えた方がいいと考える」


声の主を確認したダリアが驚きの声を上げた。


「スレトリア会長さんっスか!?」


そこにはマントを羽織った魔法協会の会長が空から現れたからだ。ディンが謝辞的な挨拶を述べる。


「この度のご助力感謝します。キシヤ・スレトリア殿」


「いえ、この都市の有事に我が一族が不在である様な事はあってはならない。連絡に感謝する」


どうやらディンが都市の防衛の為、街の有力者であり優れた魔法使いであるキシヤを呼び出したようだった。


誰彼構わず呼び出しているディンを見て、ダリアは呆れと感心が半々といった渋い顔をした。


すると、アンリがキシヤに素朴な疑問を投げかけた。


「あの〜、カフナさんとはどういうご関係でしょうか?」


「カフナは私の兄の娘、姪にあたるが……そうか!兄から聞いているよ!君がカフナを救ってくれた冒険者だね!?」


「いえいえ、私は大した事はしてないです。リョウやナノハちゃんが頑張ったおかげですよ」


そうアンリが謙遜する。それを聞いてキシヤが納得したような顔をした。


「やはりそうか、それで第二王女があの男と……」


そしてキシヤは本題に戻り、ダリアに告げた。


「我が魔法協会の敷地には警備兵が詰めている。私が直々に選別した者達だ、確実とは言えないがある程度の安全は保証しよう」


「確かに下手な場所よりも安全っスね」


ダリアがキシヤの言葉を受けて考えを改める。ダメ押しにディンが確認を取る。


「護衛は付けてるだろ?」


「そうっスすね。何人かを遠巻きに守らせてるっス。その内一人は私の見立てだと金等級相当っス」


「なら大丈夫だろう。もしもの時は助けに行け」


「分かったっス、コッチに専念するっスよ」


ダリアはその言葉に納得した様だった。切り替えたダリアはディンに気だるそうに質問した。


「そもそも何が目的なんスかね?相手からしたらウィザリア(ここ)は敵地のど真ん中っスよ?もし攻め落せたとしても改めて袋叩きにされて終わりっスよ」


ダリアが言うように魔王軍がウィザリアに攻め込むというのはそれなりに無理がある話だった。確かに兵を送る事こそ出来るが兵站が難しい。立地的に補給線を遮断されかねないからだ。


そしてもし都市を陥落させたとしても、孤立無援の魔王軍に対して近隣の拠点から援軍がいくらでも送られる事になる。だからこそダリアはこの侵攻の目的を測りかねていた。


すると、ディンがダリアにこう言った。


「さぁな、……………アイツらに直接聞いてみるか?」


ディンが顔を向けた先、そこには地平線から魔王軍が陣形を組んで進んでくるのが見えた。


「来たっスね」


「街に警報を鳴らせ!全部隊布陣につけ!戦争だ!!」


ディンが部下達に号令を出し、その場にいた全員が身構える。


「アンリさんは救護班の方に行ってください。決して前線に出ない様に、さてここからは……軍人(私たち)の仕事っス」


余談ですがスレトリア一族は鉄道の用語からレール→リエル、カーブ→カフナ、汽車→キシヤ、みたいな感じで適当に名前を考えてます。

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