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69話  傍迷惑な老人

ここからは再び六樹視点に戻ります。


「その後はどうなったんですか?」


峰山の最期を聞いた六樹がヴェルフに質問した。


「当然ながら儂は牢にぶち込まれた。だが陛下の計らいにより死罪は免れ放逐されたというわけだ」


そしてヴェルフはバキバキと首を鳴らしながら六樹にこう言った。


「その後、儂はあの事件の事を調べ回り確信を得た。この国の上には…いや貴族共の中に()()()()()()()()()()。儂が殴りつけたあのバカも()()()病死しておったわ…」


「そんな事があるんですか?国が負ければどうなるか分かりそうなものなのに…」


「当人はそう思っておらんのだろう、何か算段があるのかもしくは単なる間抜けかは分からんがな」


個人の利益を追求する事によりコミュニティの利益を損なうというのは珍しくもない話だ。もし本当にそのせいで友人が死んだとしたらと考えると六樹は言葉を詰まらせた。


そしてヴェルフは杖を持ち直し、クルクルと杖を回しつつ神妙な足捌きで間合いを測る。


「貴様は儂にこう言ったな?何故この試験に参加するのかと、その答えはこうだ!儂は陛下との謁見の機会において、この国に巣喰った膿みを炙り出す!」


「何する気だよ爺さん…」


なんだか過激な事を言い始めたヴェルフが六樹の質問をはぐらかす。


「なに、少し血は流れるかもしれんが全て国のためよ。大方の目星はついておる…」


「なんかテロリストみたいな事言い始めたな」


「少し長話に付き合わせたな、それでは再開とするか」


そう言うとヴェルフは改めて六樹に宣戦布告した。


「儂は目的の為、若者を踏み台にすると決めた。分かったら大人しく点をよこす事だ」


「お断りします。まったく…傍迷惑な爺さんだ」


「それが気に食わないなら儂を力尽くで止めてみろ、貴様にそれが出来ればな?」


すると両者が身構え攻撃の構えを取った。


「「………………!!」」



「紫電一閃!」 「水刃!」


その瞬間、鋼の刃と水の刃がぶつかり合った。砕け散った水は小さな虹を作って地面に落ちる。しかしそれを見届ける事なく二人は攻撃を交わした。


「石飛礫!」 「断崖」 



六樹が放った岩石は隆起した地面の壁に阻まれた。ヴェルフが視界から消えた瞬間、壁の向こうのヴェルフが魔法を唱えた。


「空抜き」  「…!!」


ズボンッ!!と音を立てて地面の壁が見えない何かにくり抜かれた。



咄嗟に回避した六樹は冷や汗をかく。


(なんだ今の!?土が虚空に消えたみたいな…それに明らかに魔法の質が高い。この爺さんさっきまで手加減してたな)


六樹は体勢を立て直し、緋影を投擲した。


氷の盾(アイス・シールド)、どうした?ワンパターンだぞ?」


攻撃を防がれた六樹はすぐさま使い捨ての大剣を取り出した。そして加熱魔法を掛けた。


加熱(ヒート)、刺突、噴出(ジェット)!!」


熱された鉄の剣はミサイルのようにヴェルフに飛んでいき、その熱と推進力により氷の盾を貫いた。


「双璧」  ガリッ!!


ヴェルフは二つのシールドを展開したのちクロスさせる事で攻撃を防いだ。剣は双璧の一つを貫通したもののそこで止まる。


「発想は悪くない、だが技術不足、儂ならこうする。岩槍(がんそう)…」


ヴェルフはそう褒めたと同時にヴェルフは岩の槍を生み出した。


回転(スピン)回転(スピン)回転(スピン)、……」


生み出された槍はさながらドリルのように回転した


「射出!!」


バシュッ!!と、槍が六樹の方に高速で飛んでくる。六樹は咄嗟に魔法で防御した。


「暗障!……!」


だが、岩の槍は漆黒の泥を掻き分けるように止まる事なく突き進む。そして槍が暗障を突き抜けた瞬間、六樹はその槍の細工に気づいた。


(槍の穂先が光ってる?これは………魔法陣!?)


ドォン!!  


そう気づいた瞬間、槍が炸裂した。

ザラザラザラ……周囲に砂粒が撒き散らされた。


「危なかった…」  「ほう、防いだか?」


六樹は槍が迫り来る直前、アイテムボックスからくり抜いた地面を取り出し即席の土壁を生成した事によりなんとか凌いだ。


「最後の爆発は遠隔か時間差か……さっき何したか教えてもらっても?」


六樹の質問にヴェルフは口角を吊り上げ少し機嫌が良さそうに答える。自慢げな様子が見て取れる。


「地属性魔法である岩槍、これを生成する際に魔力吸収と炸裂の魔法陣を仕込んでおいた。さらにこれに回転を加えて撃ち出す事により敵の守りを貫通した後、周囲の魔力を吸収し終え炸裂させた訳じゃ」


「そんな事出来んのかよ…」


想像以上に複雑な方法である事が判明し、六樹はそう苦笑いした。そんな六樹にヴェルフは告げる。


「儂はこれでも元宮廷魔導師だぞ?若造、何も自身の中に魔力を通すだけが魔導師ではない。周囲の環境を利用するのが一流というものだ」


「……二つの魔法陣で自動発動か……これなら俺でも…」


◇◇


「試合時間残り6分!!他の選手たちが守りに入る中、以前戦い続けるのは生きる伝説ヴェルフ翁!対するは数々の魔法使い達と戦い続けたダークホース!ムツキ選手!!いよいよラストスパートです!」


「いよいよヴェルフさんが遂に本気を出し始めましたね。本格的に決めにきているのが伝わってきます。対するムツキ選手が勝つにはあの人の()()()()に気づく必要がありますね」


一方、ダリアは緊急時の連絡を受け、都市の外縁部にある兵の駐屯地に急ぎ足で向かっていた。


「ダリアさん!待ってください!」


すると、後ろからアンリが追いかけて来た。よほど走ったのか少し息を乱している。


「アンリさん?なんで着いてきたんすか?」


「私も行きます!」


「!?」


アンリの突然の宣言にダリアは困惑した。彼女は冒険者だ、軍や国家とは完全に分離した別組織のはずだからだ。


「何を言ってるんスか!?場合によっては戦闘になるかもっス!怪我で済むならまだツイてるっス」


「……だから、私も行くんです」


アンリはダリアの目を真剣な眼差しで見つめてそう言った。


「私は冒険者であると同時に一人の神官です!可能な限り多くの人を救う事が私の信念なんです!もしこれから戦いが起こるなら私は最前線で人を癒します!だから私も連れて行ってください!」


アンリはそう言うと頭を下げた。


ダリアは内心驚いた。


(レカルカ夫妻に関しては、噂位しか知らなかったっスけど、これがその御令嬢っスか……両親の事があるのにそれでもこんな提案するなんて)


ダリアはアンリの両親の話を断片的ではあるものの知っていた。


辺境のアルヒの町に名のある神官の夫妻がいる事、そして魔王軍の侵攻の際に野戦病院で亡くなった事。しかしそんな知識は目の前の少女を見て実感に変わる。


確かに噂に聞いていた功名な神官夫妻の子供が目の前にいると。ダリアは少し考えた後、返した。


「分かりました。有事の際は医療班と共に行動をしてください」


「はい!ありがとうございます!」


「お礼を言うのはこっちっスよ。正直治癒できる人材はいくらでも欲しいっス」


そして、ダリアはアンリにこう付け加えた。


「あっ、あと君が勝手に居なくなったらあの二人が驚くんで、どうにかして伝えてから北西にある兵の詰所に来てください」


「それなら大丈夫です!宿屋に置き書きを残しておきました。」


それで息を切らしていたのかとダリアは納得する。そしてよく見ると服の中に鎧か何かを着込んでいるようだった。


「了解っス!じゃあ急ぎましょう!」


そう言うと、ダリアは遅れを取り戻す為に小走りで先を進んだ。


「あっ!待ってください!……キャ…!」


アンリも追いかけようとしたが足がもつれて転倒しそうになった。その時


「おっと、大丈夫か?お嬢さん?」


近くを歩いていた茶色のローブを羽織った男性が、転んだアンリを咄嗟に受け止めた。


「あっ、すみません!!」


「怪我はないな?足元には気を付けろ」


「あっ、はい!ありがとうございました!」


ローブを深く被っていたため顔は見えなかったが、アンリはその男性に頭を下げて礼を言うとダリアを追った。


そのローブの男はアンリが去るのを見届けると裏路地に入る。そして誰の目にもつかない場所であるのもを取り出した。


それは肉塊だった。大きさは手のひらに乗る程度であり、死体の肌のような色をしている。グタッと締まりのない様子でスライムのようにも感じた。


ローブの男はその肉塊をギュッと握りしめた。


すると、ギョロっと肉塊から目が現れた。突然現れた眼球はローブの男を目視するとすぐに形を変えて口と耳を生み出した。そしてローブの男に対してこう言った。


「……お疲れ様です…()()()さん」


肉塊から生えた口にカノイと呼ばれたローブの男は別に生えた耳に話しかけた。


「エルトの坊ちゃん、都市に入った」


「それでは……準備をお願いします…」


口はそう告げる。カノイは少し考え、質問した。


「今回ばかりはあまり気乗りしない、本当にやるのか?」


「……はい。確かに褒められた行為ではありませんが……我々にとっては必要な事です」


そして肉塊から生えた口はカノイに告げる。


「魔法試験に参加した魔法使い……彼らを殲滅して下さい…」


番外編の日常回を更新したので、もしよければ読んでみてください。これからもちょくちょく挟んでいきたいと考えております。特に本編とは関係ありませんので、箸休め程度に考えて貰えれば

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