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7話  冒険者ギルドの仕事

今回は割とほのぼのしてるかもしれないです。

「今日は冒険者ギルドに登録にいきましょう」


朝食を食べ終え、一息ついた時にアンリがそんな話を持ち出した。


「と、言いますと?」


何か考えがありそうだ、六樹は話の先を促す。


「だって、あなたは戸籍が無いでしょう?」


考えてみればごく当たり前のことを指摘される。


確かに今の六樹は無職で女の子の家に転がり込んでる不法入国者のヒモだ、こう羅列するとやばい。


「冒険者ギルドはそういうグレーな人の受け皿としての側面があるんです。ギルドに登録しておけば冒険者プレートが、そのまま身分証として使えます。」


「なるほど、そんな役割があるのか」


世の中上手く出来ているもんだと感心する。


「でも、俺この世界の事なんにも知らないけど大丈夫?」


「大丈夫です。冒険者は完全な歩合制なので、仕事さえ完遂してくれれば出自は問いません。」


六樹の不安をキッパリと跳ね除けた。


という訳で六樹たちは町にある冒険者ギルドに足を運んだ。


1時間ほど山を降ると町に出た。


「ようこそ!ここが私たちの町アルヒです。」


よく見る中世位の西洋風の町だ、だが少し違うのは道に街灯のようなものが立っている事だ。


また、よく見ると地面はコンクリートのような物で出来ている。もしかしたらこれが江川歩が行ったインフラ整備なのかもしれない。歴史ある石造りの町並みにオーパーツが入り込んでいるのを見ると、なんというか明治維新の挿絵をイメージしてしまう。


六樹は歩きながらキョロキョロと町を見回す。

町の中心部に他のものよりしっかりした造りの大きな建造物が見える。


「あの大きめの建物はなに?」


「あれは教会です。神に祈りを捧げたり、神官の治療を受けたりするところですよ。戦災孤児を引き取ったりもします。」


「この世界だと、宗教と病院が一緒くたなのか」


治療魔法の存在により、科学的な医学と精神的な宗教が共存しているというのは面白い文化だ。


「あっ、着きました。ここが冒険者ギルドです。」


話していると、いかにもな場所に着いた。


中に入ってみると、受付と依頼が張り出されたボード、そして奥には飲食店らしきスペースがあり、2階には休憩所らしき場所と職員が使うであろうドアが並んでいた。六樹自身そう言った類のサブカルにはよく触れていたのでワクワクしてきた。


「おっ!アンリが男をひっかけて来たぞ!」


ガラの悪そうなオッサンがそう言ってアンリをからかう。かなりフランクな印象を受ける


「うるさいですね、殴りますよ?」


アンリも軽くそう返す、すると周囲も笑っている。どうも人間関係はこんな感じらしい。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!初めての方ですよね?依頼ですか?それとも冒険者登録ですか?」


受付の綺麗なお姉さんがそう聞いてくる。


「登録でお願いします」


「分かりました。それではお名前を教えてください」


ものすごくスムーズにいった。その後も事務的な手続きが続いたが特に問題はなかった。


「では、これからよろしくお願いします。これをどうぞ、冒険者の証です」


なんか楕円形の鉄の板が着いた首飾りみたいなのを渡された。


(何これ?米兵が持ってるやつ?)


「あっ、よく見ると俺の名前やらが掘られている。これが身分証になるって事か」


不思議そうに眺めていると。すると受付嬢は説明してくれた。


「そのプレートの金属は等級を表しています。」


「最も高いのは白金、片手で数えられる程度しか存在せず世界の危機に立ち向かうレベルの英傑です。そのレベルだと国などに召し抱えられるので、基本的にギルドに顔を出しません。」


「その次は金等級です。これはギルド各支部に一人か二人位しかいないエースレベルの人材で、町の切り札と言えます。」


「次は銀です。これは特に優秀な冒険者や何かに特化した人材にに与えられます。精鋭ですね。」


「そして、その下が銅、こらは一人前の冒険者です。いわば主力です。そして最後にあなたが持っている鉄は見習いの半人前といったところです。」


受付嬢の説明が終わる。それを踏まえた上で質問する。


「等級はどうすれば上がるんですか?」


「等級は依頼をこなし実績を詰んだり、昇格試験を受ければ上がりますよ、頑張ってください!」


綺麗なお姉さんに笑顔で言われるとやる気が起きてくる。ところで気になった事を質問する。


「アンリの等級は?」


「私は銀です!すごいでしょ!?精鋭ですよ!」


と胸を張って自慢する。可愛い。


「まぁ、地道に頑張るか」


そう意気込んでいるとアンリが割って入る。


「あっ、彼は私の手伝いをしてもらいます」


「そうですか、じゃあペアで登録しておきますね」


受付嬢はあっさりと了承した。そう言えばそういう約束だった。冒険者ギルドに浮かれて見失っていた。


そんなわけでアンリの依頼に同行する運びとなる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


アンリはたくさんの依頼をこなしていた。そしてその多くが治療に関するものだった


「アンリちゃん、ちょっと風邪ぎみでねー」


「体調には気をつけてくださいね、[解毒:低]」




「足の骨が折れたんだ、治してくれないか?」


「しばらく無茶しちゃダメですよ?[回復:中]」




……と、午前中はもっぱらこんな具合である。六樹はというと、雑用兼見学をしていた。


そして、午後からは周辺にすむ危険な生物の群れの討伐依頼を引き受けた。アンリは戦闘用なのか、革製の鎧のようなものを纏っている。


山道を歩くその道中、アンリが六樹に対してこんな質問をする。


「リョウ、あなたってどれくらい強いんですか?」


そんな事聞かれても困る。幼稚園で無双できる位…なんて冗談はさておき、こう答える。


「一般人の範疇だと思う。」


「でも、棘獅子は倒してましたよね?」


「あれは、偶然だ!運が良かっただけだ、しかも実質相打ちだったし」


そう自己評価を下す。実際のところ運の要素が大きかった。少しでもタイミングが合わなかったら六樹はズタズタにされていただろう。


「うーん、どの位強いのかって言われてもなぁ〜……あっそうだ、ステータスウィンドだ!」


こういう時にピッタリのスキルを思い出した。するとアンリが食いつく


「あっ、そのスキルなら私も持ってますよ!意外と使ってる人少ないんですよこれ」


アンリも同じスキルを持っているらしい。するとアンリは六樹に指示を出した。


「じゃあ、私にステータスを見せてください」


「あっ、これ他人に見せられるんだ……」


「はい、私に見せるように念じれば現れます。」


やってみる。アンリに見せると思い浮かべてながら頭の中で念じる。


[ステータスオープン]

アンリの目の前にステータスウィンドが現れた


「あっ、出ました出ました。どれどれ……まぁギリギリ及第点といったところですね。何か武道の経験はありますか?」


「剣道なら中学時代に部活でやってたけど」


「なら剣を主体で考えていきますか。あっお返しに、これが私のステータスです!」


そう言うと六樹の前にも現れる。そこにはこう書いてあった。


アンリ・レカルカ

職業: 武闘家、神官

ステータス

筋力A 魔力C 機動B 技術B 射程E


「うわー、俺より全然高い、てか武闘家で神官?、変な組み合わせだ、あと、なんで俺のとは違ってスキルと年齢が載って無いの?」


しかし、次の瞬間、アンリが質問に答えるよりも先に、近くの茂みがガサガサと揺れ始めた。


そして、茂みの中から討伐対象の危険生物、角猪(つのいのしし)の群れが現れた。


見た目は基本的に日本の猪と変わらないが一つ大きな違いがある。

それは名前の通り角だ、まるでユニコーンみたいな角がイノシシの頭部に生えている。殺意の塊みたいな見た目をしている。


アンリが六樹の前に出て、腕で後ろに下がるようにジェスチャーを出す


「武闘家としての私の戦いを見せてあげます。」


そしてこちらをチラリと振り返った


「あと、年齢に関しては教えません。秘密です♪」


そう言うと、人差し指を口に当ててウィンクした。

どうやら相手に見せる情報は選べるらしい。


そしてアンリの戦闘が始まった。


角猪の数は5頭、先に動いたのはアンリだった


「はぁぁぁ!」


そう掛け声を発しながら、一番手前の一番強そうな個体に急接近していった。


「ギュュー!!」


アンリの行動に虚を突かれた手前の角猪は、慌てて長い角をアンリに向ける。だか、アンリはすでに角で攻撃するには近すぎる間合いに入っている。アンリは角猪に拳を構えてこう叫んだ。


能力(スキル)[瓦拳](がけん)!」


次の瞬間、アンリに顔面を殴られた角猪が吹っ飛んだ。


(すごい、これが人が起こせる力なのか)


「まず一頭」   そうアンリが呟くいた


次の瞬間、別の角猪が角の先をアンリに向けて突進してきた。


だが、アンリは右腕を角の側面に当て、進路を逸らすことで回避する。


更に右腕を長い角の下に回し、ラリアットの要領で角猪をひっくり返す。そしてすかさず胸部を左拳で殴りつけた。


ボギッとアバラ骨の砕ける音が聞こえ、角猪が動かなくなった。あっという間に2頭仕留めた。


しかし、残った3頭のうち、2頭はアンリの方に、そして最後の1頭はあろう事か六樹の方に向かって、別々に突っ込んで来た。


「うげっ、こっちくんのかよ!」


「リョウ!逃げてください!」


とアンリの心配そうな声が聞こえる。逃げても追いつかれる。仕方がない、前回使った落とし穴戦法を行う。


こちらにめがけて一心不乱に突進してくる角猪

六樹は地面に触れて待ち構える。


角猪の長い角が俺に当たるまで、あと5m…4…3…今だ!スキル発動!


「ギャューー、!!」「あぶねっ!」


急に現れた落とし穴に角猪は対応できずに落ちた。最後、角が六樹をかすめたが、なんとか対処できた。


「やっぱり、偶然なんかじゃ、なさそうですね」


そう言ってアンリがやってきた、どうやら他の2頭も仕留めたらしい。


「リョウ!依頼達成です!アイテムボックスに収納してください、持って帰りましょう!ギルドに報告して、家でこの角猪達もベーコンにしましょう!」


とアンリは元気にいっぱいに話した。


(ん?この角猪達も?今日食べたベーコンってもしかしてこいつらなんじゃないか?)


などと考えるが真相は闇の中である。まぁ食べられるならなんでもいいか、と六樹は楽観的に適応する事にした。


六樹の異世界生活が幕を開けた。


生物紹介

角猪(つのいのしし)

体長 約250cm (100cm位が角)

体重 推定200kg

外見 角が生えた猪、一角クジラのような長い角

食性 雑食

備考 シンプルながらとてつもない殺意を感じる角と微妙に攻撃的な性格で多くの人を亡き者にしたクソ迷惑な害獣、狭い山道などに現れると回避の難易度が跳ね上がる。肉は臭みがなく豚肉となんら変わらない位美味、アンリが喜んでいたのはこのため。


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