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65話  向かう先には


「決着!!アルマ選手を下し勝ち残ったのはムツキ選手!!いい戦いでしたね!特にムツキ選手が見せた身代わり作戦は見事でした!」


闘技場の戦いの決着を見届けた観客達は熱狂を上げた


「ヒュー!」「いい戦いだった!!」「二人ともカッコよかった!!」


「通常だと単体では脅威になり得ない影武者を最も嫌なタイミングで使いましたね。そして激突した際に生じたヒビに暗障をねじ込むとは、力づくに見せかけた巧妙な絡め手でした」


「アルマ選手の渾身の一撃も見事でした!まぁ殆どスキルでしたので、裏で観ている試験の審査員達は頭を抱えている事でしょう!」


「一撃で全てを決めようとしたアルマ選手に対して、一連の流れで読み勝ったムツキ選手が勝利したという訳ですね」


解説はそう締めくくった。そして、話題は六樹の動向に切り替わる。


「さて!勝ち残ったムツキ選手は現在47点!高得点ですが思ったよりも渋いですね!」


「ナノハ選手を場外に押し出せなかったのが響きましたね。それ以前にも何かと横取りされてましたし」


「ムツキ選手はこれからナノハ選手を追うのでしょうか?」


「それはないでしょう。あれだけ逃げ回っていた所をみると、かち合いたくない相手ではあると思われます。それに十分に距離がありますからどちらかというと逃げに徹するでしょう。問題は、どの方向に向かうかですね」



◇◇


「さて、これからどこに向かうか…」


六樹はそう言うと、地図を取り出した。リベルはこちらに向かおうとしているようだが、一発逆転を賭けた低得点の者達が集まって邪魔されているようだった。

すると不思議な情報が目に入る。


「!!………これ?どうなってるんだ?」


六樹は地図上の荒野エリアに目をやる。

しかしそこには何故か、()()()()()()()


他のエリアは先ほどの乱戦ほど激しくはないが、未だに魔法使い達が凌ぎを削っている。


しかし、荒野エリアだけは違う。何故か人が消えたように誰1人として存在しなかった。すると、3点の者が一人荒野エリアに足を踏み入れた。


「…消えた!?」


すると……プツンッ、と地図から表示が抹消される。


「!?…やっぱり誰か、いるのか…」

 

そして六樹は自身の残存魔力を確認する。


(残り6割って所か…まぁここまでの連戦でそれだけ残ってるなら十分褒められるな)


基本的に魔力を温存しつつ戦ったのが効いてきた訳だ。


「よし、行くか」


六樹は腰に着けたアングリッチを確認し、颯爽と駆け出した。闘技場を出て北西方向に走る。するとすぐに荒野エリアが現れた。


「ここからだな…」


荒野エリア、大きな建物などは無いがサバンナの様な乾燥地帯に大小様々なサイズの岩石が転がっており、遠くは見渡せる反面、死角が多く近くの見通しは意外と良く無い。



六樹は荒野エリアに一歩踏み出した。



ビィーン! その瞬間、地面が妖しい光を放つ


「!?」


ドカーン!!息つく暇もなく周囲が爆風に包まれた。





「……ゴホッ…地雷、いや魔法陣か…それも自動発動」


爆発の瞬間、六樹はスキルで全身を硬化させた事、そして六樹自身の体質も相まってなんとか軽微な被害で済んだ。


エスタ(すまない!俺が見つけていれば…)


六樹(いや、発動まで巧妙に隠されてた。気にするな)


六樹は魔法陣を鑑定にかけ、その構造を把握する。


エスタ(少し待ってろ、すぐ見分けられる様にする)


「あんまり時間かけたくないけど、流石にこのまま突っ込むわけにもいかないな」



六樹とエスタが分担して解析していた時だった。


バシュッ…と微かに音が聞こえ、遠くの方から魔法が空に向けて真っ直ぐ真上に打ち出された。


「……?」


その魔法は白、黒、緑、茶、赤、青、黄と7種の異なった色をしていた。

それは柱のように上空まで伸びると、蛇のようにうねり、一転して六樹の方に向かい始めた。



「エスタ!受けられるか?」


エスタ(やめとけ!あれ全部上級魔法だ、一つずつならまだしも一気に来られるとすり潰される!)


エスタは六樹の問いかけを蹴ると同時に報告した。


エスタ(相棒!罠型魔法陣の見分け方が分かった!もう動けるぞ!)


「よし!じゃあ…走るか!」


そう言うと、六樹は魔法を避ける為走り始めた。目指すのは魔法が打ち出された根本だ。


ギュン、ギュイン……


7つの柱は明らかに六樹に向かうべく進路を調節していた。


(ホーミングか…厄介だな)


辺りには所々トラップが仕掛けられていた。だが


エスタ(右の岩の下…その次その先の砂地…)


エスタが見分けられる様になったおかげで回避する。


六樹はひたすら走り、そして剣で魔法を一つずついなして回避していく。白、赤、茶


ズドンッ!!バシュ!!ゴン!!


(光、炎、岩……やっぱりそうか、一つ一つ属性が違うのか、となると他のは風、雷、闇、水辺りが妥当か?)


だが、次の瞬間



ビィーーーン!!!

と、近くの岩から魔法陣が浮かび上がる。


「まさか!自動迎撃!?」


魔法陣から六樹に向かって電撃が放たれた。


バチン!  「…くっ……はっ!」


なんとかアングリッチで受け止めたのも束の間、空から青い魔法が着弾した。


「かはっ…」


とてつもない圧力の水を受け六樹は口から息が漏れた。


「…くあぁ!蒼天斬!」


そしてなんとか魔法を断ち切る事に成功する。


「はぁ…はぁ…モロに食らったな、今ので魔力の1割持ってかれたぞ…」


ダメージを魔力に変換すること魔法の効果により肉体的なダメージは入っていないが、痛みはある。


通常ならば致命打になりかねない一撃だったが、六樹はその体質の効果により幸いにも敗退を免れた。


「!…休ませるわけないか…」


そして、残りの3つも六樹に追い打ちをかけた。


「とにかく今は術師を叩く」


この凶悪な魔法の根源を断つため、六樹はひたすら荒野を翔る。


◇◇


「これは!!七種の魔法がムツキ選手を追い立てる!!」


魔彩七式(まさいななしき)、一つ一つ属性が違う魔法を同時多発的に打ち出して敵に飽和攻撃を行う上級魔法です。ほんの一握りの実力者しか使えない高度技術です」


解説がそう言った瞬間、画面の中の六樹が攻撃食らった。


「おおっと!!ムツキ選手トラップに気を取られモロに食らった!!これは脱落か!?……いや!魔法を切り裂いた!!これはどう言う事だ!?」


「?………素の肉体強度で耐えたようですね。見た限りではそうとしか思えない」


「なにがともあれムツキ選手は未だ健在!魔彩七式の発動した場所を目指す!!」


「妥当な判断ですね。術師を叩くのが最も効率的です。近接が得意なら尚更です」


「しかしあの攻撃をモロに食らった上で倒しきれないとなると、近接に持ち込んだムツキ選手を止められる者はいないんじゃないですか?」


確かに実況の言う事はその通りだった。魔法試験という特性上、参加者はどこまでいっても魔法使いやその派生となる。そしてその魔法が決定打に成りづらい六樹という存在はある種の天敵といえるだろう。


だがその考えを解説は否定した。


「いや、そうでもないですよ。ムツキ選手が向かう先には、()()()がいます」


解説は少し苦笑いしながらそう言った?


◇◇


「この辺りの筈だ…」


六樹は先ほど魔法が放たれた場所に近づいた。そして、岩陰を超え少し開けた場所に出た瞬間、六樹の顔面に衝撃が走った。




バギンッ!!!    「ぐはっ!…!?」




この時感じた衝撃は、顔面を棒の様なもので強打されたようなものだった。六樹は顔面を何者かにフルスイングされて吹き飛ぶ。


「かはっ!?…危なかった…」


だが六樹は咄嗟に硬化スキルを使用した事で軽傷で済んだ。


「地図で探知されない様にした上で不意打ちか、あの魔法は釣り餌か…」


「ほう?分かっておるのう?」


それは老年の男性の声だった。枯れた様な印象を受けるがどこか自信と活力を感じる、そんな声だった。


不意打ちが大きなダメージにならなかったためか、六樹を殴り付けた相手は不満な声を漏らした。


「まったく…老体をこれだけ動かしたというのに耐えおるとは、これだから最近の若造は、年配者に華を持たせるという事を知らんのか?」


目の前にいたのは七十代位の老人だった、灰色のローブを羽織りとんがり帽を被る。白髪に長い顎髭を蓄え、そして手には長い木製らしき魔法の杖を握りしめていた。


典型的な魔法使いといった出立ちだった。


「……やっと見つけた」


ダリアに特にマークしろと言われた人物を六樹はアングリッチを掴んで睨みつけた。



◇◇


「現在104点。元宮廷魔導師であり、魔法協会の立ち上げにも貢献したガドル王国の英傑ヴェルフ・ウィザード。この大会においておそらく最強の魔法使いです」


「遂にお出ましっスね…」


「リョウ…」


六樹と対峙した老人を見てダリアはそう呟いた。この試験において最も警戒すべき人物であり、場違いな人物それがヴェルフ翁だ


「でも残り時間が少ないタイミングで勝ちあってくれたのならもう()()()は大丈夫っスね」


「リョウが勝っても負けても時間終了になるって事ですか?」


「そう言う事っス」


最大の懸念が解消されたと安堵した束の間、ダリアの服のポケットから赤い光が漏れ出る。


「?……その光はなんですか?」


ダリアがポケットから赤い宝石を取り出した。

するとダリアは少し怪訝な表情をする。


「……………ちょっと行かないといけない所があるっス」


「?、リベルちゃんの試合を見て行かないんですか?」


「既に合格確実なんで大丈夫っスよ。こっちが優先っス」


どことなく落ち着かない様子のダリアにアンリは単刀直入に質問した。


「何か、あったんですか?」


アンリの質問にダリアは少し言い淀んだが、答えた。


「……この赤い光は軍隊の連絡手段でっス、光るのは緊急時だけで、光は脅威の種類を表してるんスけど……」


「その、赤い光はなにを?」


ダリアは少し息を整えてからアンリの耳元で話した


「この赤い光は、()()()が確認された時の合図です」


その言葉を聞いたアンリは静かに息を呑んだ


ヴェルフ爺さんはずっと出したかったキャラだったんですが、いざ書いてみるとプレッシャーで筆がなかなか進まないというジレンマに陥りました。執筆って難しいですね。

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