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64話  鉄を断つ

最近評価ポイントが増えてきて嬉しいです。

リベルを盤面から叩き出した六樹がアルマに向き直る。


「待たせたな、決闘の続きといこうか」


六樹のその言葉にアルマが礼を述べた。


「心遣い感謝する」


そして、アルマは鎧の兜を脱ぎ、六樹に顔を見せた。

六樹はアルマの顔を見て驚きの声を上げる。


「!?」


何故なら彼女の凛々しくも整った顔立ち、その頭部には立派な角が生えていたからだ。


「角?………鬼か!」


六樹の答えにアルマはゆっくりと頷いた。


「鬼人族は初めてか?」


「あぁ、初めて見た」


アルマは六樹の無知を責める事はなく、逆に擁護した。


「それも仕方あるまい。この国では鬼人族(われわれ)のような少数種族は形見が狭いからな」


どことなくやるせなさそうにアルマは語る。そして六樹に質問した。


「貴殿はこの国の者か?」


「いや違う。この国に来たのは少し前だ」


「なら知らないのも無理はないな…」


アルマはゆっくりと噛み締める様に話し始めた。


「この国の先代国王、彼は大多数である人族を結束させるために少数民族を露骨に迫害したのだ。そして、迫害を受けた多くの種族が西の僻地に国を築いた。それが…」


「モルガル共和国…か…」


「あぁ、鬼人族(われわれ)の仲間も多くが移住した。」


六樹の口から答えが漏れる。そして、アルマが続けた。


「現国王の政策により、かなり改善されたが未だに傷は深い。そしてその恨みの捌け口となり噴き出したものが魔王軍なのだろう」


「でも、アンタは残った」


「そうだ、私がこの国で大成し羨望を浴びれば種族間の軋轢が減る。その為に私はここにいる!」


その宣言を聞いた六樹は素直に感心した。


「アルマ、立派だな。種族単位で最善を考えてる。」


賞賛の言葉を浴びせた。しかし六樹は淡白にこう続けた。



「まぁでも俺には関係ないな、どのみち目の前を相手を倒すだけだ。鬼だろうが人だろうがやる事は変わらない」



アルマは少しキョトンとした表情を浮かべたが、次の瞬間笑い声を上げた。


「………はっ!確かにその通りだ!!貴殿の言葉は一理ある!!戦いにおいては出自など関係ない!!」


そして大きな声で名乗りを上げた。


「我が名はアルマ!!鬼人族の錬金術師にして鉄腕の異名を持つ者!!問おう!貴殿の名は!?」


白昼堂々、アルマは武士道精神に乗っ取り敵に身の上を晒す。六樹はそれに応える事にした。


「俺の名前は六樹亮!覚えておけ、今からお前を倒す名だ」


「良い名だ!それではその名をこの胸に刻みつけよう!!」


アルマは兜を被ると戦闘態勢に入った。


「いざ!!」


闘技場での最後の戦いが始まった。


◇◇


「乱戦終結!!リヒト選手にシギル選手が脱落し、ナノハ選手が吹っ飛んだ!!残るは近接二人の一騎打ちだ!!」


「ナノハ選手は危うく場外になる所でしたね。その場合持ち点そのままに失格扱いになります。対して押し出した選手は2分の1にはなりますが点を獲得出来ます。ムツキ選手はそれを狙ったのかもしれませんね」


「しかしそこは風の申し子ナノハ選手!なんとか食いしばらくました!!そしてなんと!現在80点!!これは合格確実どころかトップを狙えます!!」


「十分あり得ますね。しかしエリアの隅に追いやられては大量得点は見込めないでしょう」


解説を聞いたダリアは安堵の声を漏らした。


「よかった…本当によかったっス!」


「リョウったら!必要な事とはいえリベルちゃんをあんなに乱暴に投げ飛ばすなんて!後でちゃんと言い聞かせないと!」


一方のアンリはリベルの扱いに不満がある様だった。


「アルマ選手と六樹選手が何やら話していますね!音声まで払えないのが残念です!!」


「仕方ありませんよ。試運転した際に雑音と不協和音まみれで碌に映像を楽しめませ話でしたから」


「しかしそこは我々実況解説が補っていきます!おおっと!!話していた二人が再び戦いだした!!」


◇◇


六樹とアルマは熾烈な近接戦を繰り広げていた。

そして今もアルマは六樹に拳を振りかざす。


「瓦拳!」 「摩擦:減(スリップ)


六樹はアングリッチを鉄腕に沿わせるように滑らせ懐に入った。そして暗障を拳に纏わせ硬化した。


「黒拳!」 「くっ…」


六樹の魔法を纏わせた拳がアルマの兜にアッパーをかます。その攻撃は少しではあるもののアルマに通ったようだった。


「やはりおかしい…ムツキ、貴殿の技の威力は明らかに不自然だ」


アルマは六樹の隠した手札に気づき始めた。


「……俺の技の威力がおかしいって、弱すぎって意味だよな?」


すっとぼける六樹、だがアルマには確信があった。


「とぼけるな、その身体の増強の仕方にら覚えがある。スキル過負荷(オーバーロード)、違うか?」


「…………バレたか」


アルマは六樹のバフの正体を看破した。そしてこう続けた。


「だがおかしい!あれは5分が限度の筈!!これまでの戦いはそんな時間をとうに過ぎている!!()()()()()()()()!?」


オーバーロードには弱点がある。5分間の魔法や戦闘系スキルの威力や効果が増強される代償に、その倍の10分間は魔法や戦闘系スキルを使えなくなる。


だが、六樹にはそれが見当たらない。すると六樹はそのからくりを仄めかす。


「もし、俺が過負荷(オーバーロード)の発動時間をいじれるとしたら?もし俺が発動を()()()()()だけに限定していたら?」


その言葉にアルマは絶句した。



「まさか!反動を小分けにして消費していたのか!?」




オーバーロードの反動は大きい、ならば分割するまで、それが六樹の至った結論だった。


オーバーロードは通常は自身の意思で発動を解除出来ない。そのため発動する時は細心の注意が必要なのだが、六樹はそのデメリットをある方法で踏み倒した。


[ディスタブスキル]、このスキルは自身の持つスキルを封印する事で発動条件を満たし、相手のスキル発動を阻害する。だがもし相手がそのスキルを持っていなければどうだろうか?もし、持っていたとしても相手の発動を阻害しなければどうだろうか?

その場合はただ自身のスキルを封印しただけというデメリットだけが残る。


六樹はこのデメリットを逆に利用したのだ、発動中のオーバーロードをディスタブスキルで強制解除する事により。必要な時に必要なだけ使えるよう小回りを利かせ、相手に攻撃する際に刹那の時間にオーバーロードを発動、そして攻撃の合間にある残心、構え直しや詠唱中など攻撃不可能な時間に反動を消費する。


魔法を放つ1秒にバフをかければその直後のクールタイムに2秒を割り当て、0.5秒で剣を振ればその残心で1秒消費する。


そしてこれには六樹の練度が上がり、技の速度が上がるほど威力は増し、そして反動の時間は短くなるという成長性があった。


断片的な過負荷(オーバーロード)、いや便宜上断片的過負荷(オーバードライブ)とでも呼んでおこう。これこそが六樹が編み出し密かに実践しつづけていた戦法である。


「息切れはしないと……ならば、こちらは全力で参る」


六樹のカラクリの一部が分かると、アルマは覚悟を決めた。


過負荷(オーバーロード)!…悪いが短期決戦といかせてもらう!」


「やっぱ持ってたか」


アルマの切り札に六樹は身構えた。アルマは噴出魔法で六樹に一気に駆け寄る。


「瓦拳!!」 「刺突!」


拳と剣が正面からぶつかり辺りに衝撃が奔る。


「頑丈な剣だな、なら!鉄鍵萌芽(てっていぼうが)!!」


六樹の目の前に地面から大きな釘とも杭とも言えるような鋭利な鉄棒が無数に現れた。


「紫電一閃!……くっ、うおおお!!」


六樹は腕に力を込めてなんとか鉄釘を裁断する。


「鉄拳!!」 「蒼天斬!」


更に襲いかかるアルマの攻撃もなんとか防ぐ。

だが、大きな質量の物体と撃ち合い続けた六樹は少しずつダメージが蓄積していた。


(5分粘れば俺の勝ち…だが今のまま続けば粘りきれない)


いかにその場を凌ぐかに考えを巡らせる。するとエスタが六樹を叱責した


エスタ(今相手は攻めに入った!動きにも隙がある!!粘る?凌ぐ?馬鹿言うな!ここで決めるぞ!相棒!!)


六樹はしばしの沈黙の後結論を出した。


「………分かった、ここで決める!」


エスタ(そうだ!それでこそ俺の相棒だ!!)


覚悟を決めた六樹は少しだけ微笑んだ。


「!?…何をする気だ?」

 


「勝負を決めよう」



六樹は後ろに大きく下がる。そして拳を構え、暗障を纏わせ巨大な漆黒の拳を作る。アルマと正面から打ち合う体勢だ。


「我が土俵とは恐れ入った!」


「いや、俺の土俵だ」


二人は拳を構え、そして同時に噴出魔法を起動、二つの拳が接近した。


「「ウオォォォォーーー!!」」


鉄拳!!(黒拳!!)


ガギーーーン!!!ギギギギギ……!!


「「!!!!」」


二人の拳が勝ち合う。砂埃が辺り一面を包み込んだ。そして、両者が二つ目の切り札を切る。


「「集積(エキュムレイト)衝撃(インパクト)!!!」」


更に拳に衝撃波が上乗せされ、激突は激しさを増す。


ビキッバキバキ……


その負荷に耐えかねてかアルマの鎧や六樹の硬化した暗障にもヒビが入る。


「……くっ」


だが単純な力比べではアルマに利があった。回避が主の六樹と被弾前提のアルマでは溜め込んでいたエネルギーに天と地ほど差があったからだ。六樹は次第に追い込まれていく。


「我の勝利だ!!」


キュイイイーーーン!!……ズドーーーーン!!!


巨大な黒拳は衝撃波により吹き飛ばされ闘技場の壁に打ち付けられた。


地面に直線の軌跡を残し壁にめり込む。巻き上げられた砂埃が晴れる。


アルマは激闘を繰り広げた相手の方に目を向けた。


「………なに!?」


壁にめり込んだ漆黒の拳の残骸、そしてその横にいたのは……()()()()()()()()


ジジ…ジジジッ……スッ


そこにいたのは人影だった、黒い存在感のある人型の影、アルマはその魔法を知っていた。


「影武者!?」


そう気づいた瞬間、後ろから声が聞こえた。


「暗刃」


グサッという音がアルマの腰付近に響いた。


「…な!?」


アルマの背後には六樹がいた、だが今はそんな事はどうでもいい。問題は六樹の凶刃が()()()()()()()()アルマに通った事だった。


「……かはっ…何をした!?」


アルマは自身の鎧を確認する。そして気づいた。先ほどの大技の応酬において発生した鎧の隙間、そこに六樹の暗障がねじ込まれていた事に


「言っただろ?こういう騙し合いは、俺の土俵だ」


六樹のそれは勝利宣言だった。しかしそれでそうですかと諦めるアルマではなかった。


「…まっまだだ!最後の一撃!受け止めろ!!」


最後の魔力を振り絞り至近距離で六樹に魔法を放つ。


鉄釘萌芽(てっていぼうが)!!!」


六樹はアングリッチを構えた。そしてトドメの一撃を放つ、つい先ほど習得したばかりの新技を…


「終わりだ………斬釘截鉄(ざんていせってつ)!!!」


「!!」


ジャギーーン!!! 六樹の斬撃は、アルマの鉄魔法だけでなく鎧すらも切り裂いた。



「………………かはっ…」



勝敗は決した。アルマは勝者を讃える。


「…………見事」


その言葉を最後にアルマは力尽き、転送された。


闘技場にただ一人残った六樹は静かに答えた。


「天晴れ」


闘技場の戦い、ここに終結。試験残り時間26分


少し投稿ペースが落ちるかもしれません。ごめんね

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