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63話  出し惜しみ無し

リベルとアルマの戦いの最中


リベルが落とした巨大な氷塊に襲われていたのはアルマだけではなかった。


「コッチも巻き添えかよ!やばいやばい!守護(プロテクション)!!」


ガッシャーーン!!!


シギルは防壁を展開し半ば雪崩と化した氷塊を防ぐ。

ホッと一息ついた瞬間


その隙を見て六樹がシギルに駆け寄った。


(コイツは特にリベルに相性がいい、ここで潰す)


「くっ!?来たか!!」


シギルも六樹の接近に気付き、すぐに防御魔法を展開した。


「双璧!!」


ギィーーン!! 金属が硬い物体に衝突した音が響いた。シギルが展開した二つのシールドの片割れが六樹の剣を受け止めた。しかし


ギリギリ……バキバキッ!と今にも突破されそうな状況だ。六樹は無言で剣に力を入れる。


「…………!」


「怖いんだよ君!!前進(フォワード)!!」


もう片方のシールドを六樹に叩きつけ、シギルはなんとか距離を稼ぐ。


「紫電一閃!」


しかし六樹が抜刀したと同時に双璧が真っ二つにされた。


「そんなスパスパ切らないでくれよ!」


「切れるんだからしょうがないだろ?」


六樹は再びシギルに迫った。そしてすぐさま緋影を打ち出した。


「ショット!」「守護(プロテクション)!」


打ち出した緋影は再び魔法で防がれた。開戦の最初と同じ流れにシギルは嫌な予感を覚えた。すると、六樹が下を指差した。


(…もう一本!?魔法を使わず普通に投げたのか!?でもなんの意味があるんだ?)


シギルの足元にはシールドに弾かれた物とは別の短剣が刺さっていた。そして六樹は告げる。


「落ちろ」


「!!?うわぁ〜〜〜」


地面に刺さった緋影を起点に突然落とし穴が現れシギルは真っ逆さまに落とされた。六樹はこの機を逃すまいと追い討ちをかけようと距離を詰める。


「……ぐふっ!!」


(不味い!なんだこの落とし穴!?魔力の流れも無かった!いやそんな事は後だ!!このままだと袋の鼠だ!逃げ場は無い!だとすると……あれしかないな)


危機的状況でシギルは奥の手を使う。


(よし、このまま詰めていけば…)


「独専結界・星幽円蓋(アストラル・ドーム)


「!?」


次の瞬間、六樹はまるでプラネタリウムの様な星空が広がる牢獄に閉じ込められた。


混乱する頭を冷やし、すぐに壁を攻撃する。


「蒼天斬!………!?」


だが、六樹の攻撃は壁を壊せなかった。すると、どこからかシギルの声が聞こえる。


「独専結界、これはたった一人の為に調節した結界だ、その為君以外には効果の無いが、君だけはより強固に閉じ込める。僕の奥の手、君は結界破りが得意みたいだからね、チューニングしておいてよかったよ。」


そして、星空から六樹目掛けて流星が降り注いできた。


「………やるな」



そして、六樹もアイテムボックスから奥の手を取り出す。


「流石に出し惜しみ出来るような状況じゃないな…まぁ、結界を壊す分には問題ないだろ」


そう自分に言い聞かせて縛りを一つ解く


[霊剣鬼道、抜刀]


その刀はあらゆる魔法を断ち切る。


「エスタ入れ、まずはこの星空をぶった斬る」


◇◇


一方でそとからその様子を見たリベルが驚く。


「マジか!?リョウ兄ィ閉じ込められてんじゃん!?」


「人の心配とはまだまだ本気じゃないな!?光刃(ライト・ブレード)!!」


隙有りと判断したリヒトが光の刃を振り翳す。


「お前の対処は見てたんだよ!氷剣!!」


「な!?くっ!……手強いな!!」


氷の剣はリヒトの光を捻じ曲げ、そして肩に一太刀浴びせた。


「しかし一時的とは言え、リョウ兄ィが盤面から消えたって事は…」


◇◇


「動きますね」


解説がそう呟いた。


「どう言う事ですか!?確かに六樹選手は活気盛んに攻めていましたが、四つ巴になっただけでは?」


「その攻め方が問題です。彼は相手に何もさせない様な戦い方をしていましたからね。そしてそのせいでそれぞれが大技を制限されていました。つまり彼がいないということは……」


◇◇


渾身の一撃にて敵を殲滅する


それがその場にいた者達の共通認識であった。そしてリベルは息を整え、唱える。


「神は我らに恵の風を吹かせ、試練の冬をもたらす……」


「「!!」」「やっぱそうなるかぁ〜、嫌だな〜」


リベルが長文詠唱した事を皮切りに他の三人も必殺技の準備する。


「日の光は心をを照らし、天道を示す……」


リヒトは周囲の光を束ね、手元に光の塊を生成する。


「鉱脈は山々を繋ぎ、大地は唸る……」


アルマは呪文を唱えながら禍々しい力を纏った金属の球体を生成する。


「我が右手には一つの世、無限に広がる小さな世界…」


シギルは大きな結界を創り、そしてそれを手のひらサイズまで圧縮する。


「大いなる光は影を退け闇を弾き!」「大地は鉄を育む」

「結界はこの世を隔て」「その風は氷を纏い敵を討つ!」


四人の準備が整い、そして構えた。


新星の輝き(ルミナス・ノヴァ)!!」「鉄壊殲(てっかいせん)!」

無限界破(むげんかいは)」「雪迅氷嵐(せつじんひがらし)!!」


四人の切り札が一斉に放たれ闘技場の中央に爆風が巻き起こる。


ギギギギギ……と軋む様な音を立てながら四人の魔法が拮抗する。


「本気でいくぜ!!」「まだだ!」

「…くっ!」「楽しくなってきた!!」


だが、純粋な火力勝負においてシギルとアルマはやや遅れをとる。そしてさらに持久力の差がシギルに襲いかかった。


「不味い!…」


四人の魔法が、出力を失いつつあるシギルの方向に力が進み始めた。このままでは魔法の集合体が叩き込まれる。


その時だった


ジャキン!!………ガシャーーン! ガラスが壊れた様な音を立て、六樹を閉じ込めていた結界が崩壊する。


「リョウ兄ィ!」


「…………」


再び現世に現れた六樹の手には日本刀が握られていた。


(早すぎる!!独専結界がもう破られた!?それになんだあの剣!?明らかに周囲の魔力弾いている!?)


魔導師であるシギルは六樹の持つ刀の異常性に気づいた。そして、ある考えが頭をよぎる。


(いや待て!!これはチャンスだ!!)


シギルは意識を集中させる


「うおおおおおお!!くらえ!!」


そしてそう叫びながら自身に押し寄せていた全員分の魔法を六樹の方に誘導した。

その力の大きさに全身の神経が強張る。繊細かつ全力で魔力の流れを誘導し、四人の切り札がたった一人に放たれた。


「そうきたか…」


六樹は静かに呟き、手に持つ鬼道を大きく構えた。正面打ちの構えだ。


(回避…は無理か、当たり判定が広すぎる。仕方ない……活路は正面、全力で迎え撃つ)


ゴゴゴゴゴゴゴッ………!!!


目の前に様々魔法が混ざり合った禍々しい攻撃が迫る。六樹は冷静にただ時を待つ


「……………………!! 魔断(まだち)!!!」


ギギギギギギギギギギギギギギギ……!!…シャキン!


一瞬、その場には閃光が迸り、そして音が遅れてやってきた。


ゴォーーーーーーーーン!!!


なにがどう作用したか判然としないが、ただでたらめな威力の大爆発が闘技場を包み込む。


「はっ!」 「凄まじいな」 「リョウ兄ィ…」「……」



「蒼天斬」


そう聞こえた瞬間、あたりに立ち込めていた煙が切り裂かれ日の光が差し込めた。


「ダメか!」


シギルが悔しそうにそう漏らした。差し込めた日の光は四人の攻撃を六樹が凌ぎきった事を意味していたからだ。


それを見て六樹を危険と判断したアルマが魔法を吹かせて六樹に急接近した。


「貴殿との決闘を所望する!」


「暗障、硬化!……くっ……!」


六樹は魔法でガードするが、アルマの拳は守りを貫いた。六樹は咄嗟に鬼道をアングリッチに戻し刀で拳を受けた。


リヒトは二人の闘いを見てシギルに狙いを定めた。


「……シギル!決着をつけよう!!」


駆け寄るリヒト、シギルは勘弁したように呟いた。


「………はぁ、一発だけ付き合ってやる。それで最後だ、盾の牢獄(シールド・プリズン)圧縮(コンプレッション)!」


リヒトとシギルをシールドが包み込み、それはどんどん範囲を狭めて行く。


「やっとやる気になったな!!最高だ!」


だがリヒトのやる事は変わらない。今は全身全霊でシギルに一撃を叩き込むのみ、二人は詠唱を行う。リヒトは攻撃の為に、シギルは防御の為に。


結界が小さな部屋位まで狭くなった時、矛盾の闘いが始まった。


新星の輝き(ルミナス・ノヴァ)!!!」

「独専結界!!聖域守護サンクチュアリ・プロテクション!!」


ドォーーーン!!


その瞬間、狭められた結果の中が爆発で埋め尽くされ、結界が砕けた。


「「……………」」


そして、爆煙が晴れた瞬間現れたのはボロボロになった二人だった。


「…かはっ」


だが、致命打となったのはリヒトの方だった。シギルは狭い結界内でリヒトの攻撃を受けることにより、自滅させる事に成功したのだ。だが最後には自身を守る魔法も壊され、決して少なくないダメージを負った。


「……………俺の負けだな……またやろうぜ!シギル!」


そう言ってリヒトは転送された。


「二度とごめんだ……リヒト…」


シギルはそう呟いて見送った。そして…




「……もういいよ。意外と優しいんだね?てっきり不意打ちしてくるかと思った」


「流石にあの決闘を邪魔するほど堕ちぶれちゃねーよ」


シギルは後ろにいたリベルに弱々しい声で話しかけた。


「……介錯、頼めるかい?」


「いいんだな?」


「あぁ、だけど最後の抵抗はするよ!」


そう言うと、シギルはリベル向き直り、残る力を振り絞って魔法を放つ。


暗闇の監獄(ダーク・プリズン)!」「疾風翔舞!」


リベルは足元から現れた禍々しい結界を風を纏い飛び上がる事で回避する。


「双璧!射出!」 「空歩!あぶねー!だが、これで決まりだ!」


更に打ち出された魔法の盾を二つ空中でかわしシギルに肉薄した。そして…


「風刃!!………強かったぜ、アンタ達」


風の刃がシギルに叩き込まれた。


「まったく、なんで満足してるんだろうな?僕は……」


シギルはそう自傷気味に微笑んで転送された。




五人のうち二人が消え、リベルは六樹とアルマの方に行こうとしたその時だった。


「!!?…リョウ兄ィ!?」


「……」


音もなく現れた六樹がリベルの腕を掴んだ。咄嗟に振り解こうとするリベルに六樹は囁いた。


「リベル、また後でな…」


「!?何を?離せ!!」


能力(スキル)発動[摩擦:減(スリップ)]


「吹っ飛べ!!噴出(ジェット)|!!!」


「…!?うわぁぁーーー!!?」


六樹はリベルを片手で投げ飛ばした上で噴出魔法をかける。摩擦を減らされたため空気抵抗による減速が殆どなく、リベルは高速で南東方向に吹き飛ばされた。


リベルに点数を取らせた上で場外への押し出しを偽装する事で既にめぼしい魔法使いのいない森林エリアに吹き飛ばす。


これが六樹が考えたリベルへの対策だった。


リョウりーへ(リョウ兄ィめ)わらひほはははいたく(私と戦いたく)はいはらふっほはひ(無いからぶっ飛ばし)やはった(やがった)!!!」


このままだと場外だ、リベルは大きく息を整えて魔法を唱えた。


「風乗り!!……はぁ…はぁ…あぶねー」


ギリギリの所でリベルは場外を免れ、なんとか着地した。危うく失格になる所だったが、六樹はそこはリベルを信頼していた。彼女なら確実に対処するだろうと


リベルは息を整えると、段々と感情が込み上げた。


「……………クッソ〜〜〜!!!リョウ兄ィめぇ〜!!!」


リベルの一人の叫びは森に響くのだった。


一方、リベルを盤面から取り除いた六樹は最後に残った敵、アルマにこう告げるのだった。


「待たせたな、決闘の続きといこうか」


五人の大乱戦は終わりを告げ、新たに一騎打ちが始まるのだった。


シギルの独専結界・星幽円蓋という技名は厨二臭くて結構気に入ってます。そのうち掌印とか結びそう。

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