58話 試験対策
初めて魔法試験の事を言及してから20話位経っていると知り驚きました。
「はぁ〜、とりあえず合格出来て良かった」
試験会場から出て来た六樹がそうため息を漏らす。
まず大丈夫だと言われていたとしても怖いものは怖い。
言っていた通り、リベルは先に帰ったようだ。
六樹はついでに買い出しも済ませようと夕方の街を散策しようと歩き始めた。
しばらく歩くと、聞き慣れた声に呼び止められた。
「お疲れ様っス!その様子だと無事に一次を終えたようですね?」
服装で多少隠していだが、それはダリアだった。
「ちょっと近くの店で内緒話をしたいっス」
ダリアの指示に従い路地裏の店に入る。どうやら密会したい時などに使う場所らしい。
「いや〜、最近街に到着したんスけど、姫様が君と離れるタイミングがなかなか見つからなくて参ったっス」
「確かに、かなり一緒に行動してましたからね」
リベルはウィザリアが初めての六樹をよく観光に連れ回してくれていた。魔法使いとしての知識のある彼女のガイドは中々面白いものだった。
「それじゃあ本題に入るっス!第二試験で君にして貰う事を覚えてますか?」
「第二試験のバトルロワイヤルで他の強豪魔法使い達を潰していき、リベルテ王女の間接的な支援を行う。でいいですよね?」
「それで大丈夫っス!姫様に勝てそうな輩を君が片っ端から潰していって下さい!」
六樹に言い渡されたのは場を荒らす事だ、リベルが暴れられるように強そうな競合やリベルが相性が悪そうな相手をピックアップして可能な限り脱落させる。そうする事で支援となる。
「これって王女の近くに張り付いてなくていいんですか?」
「姫様は普通に強いんでその辺は大丈夫っス!それに一応別で見守り担当も紛れ込ませたんで、君は強者狩りに専念してもらっていいっスよ!」
「分かりました。それなら俺は自分の役目に専念します」
仕事内容を確認した後、ダリアは真剣な表情で話し始めた。
「じゃあ、今回の試験で君にマークして貰いたい奴らを教えます。色んな魔法使いがいるんスけど、特に1人、結構なビッグネームがいるんスよ」
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「ただいま」
「あっ!お帰りリョウ兄ィ!遅いと思ったら買い出ししてたのか」
「まぁな、アンリは?」
「この街の教会の手伝いに行ったぜ、所で今日の晩飯何?」
「プリン食いながら言うなよ…」
宿に戻るとリベルに出迎えられた。彼女は前日六樹が作ったプリンを食べならそう聞いてきた。
六樹は帰り道に買って来た。食材をキッチンに置きながら答えた。
「市場で新鮮な白身魚が売ってたからな、今日はポワレだ」
「え〜魚か〜、骨が刺さるから鬱陶しいんだよな〜鶏の唐揚げがいい〜あれめちゃくちゃ美味かったもん!」
「好き嫌いしない!魚もちゃんと食べなさい!」
親子のような会話を繰り広げる二人、六樹は冷蔵庫のような魔導具を開けて、しっかりと骨抜きした魚を保管する。
するとある違和感に気付いた。
「あれ?俺が残してたプリンは?」
「うげっ…」
リベルがハッと不味そうな様子を見せる。六樹は全てを察した。
「リベルてめぇ!俺の食いやがったな!?」
「やべ!逃げろ!」
六樹はリベルに駆け寄る。対してリベルは逃げながら残りを食べ進める。
「返せこのやろう!昨日三つも食っただろ!!」
「やめろ!これはリョウ兄ィが作ってくれたプリンなんだ!!」
「それは俺が俺の為に作ったやつだ!」
「悔しかったら取り返してみろ!雑ァ魚!雑ァ魚!」
「このクソガキ!!分からせてやる!!」
六樹はリベルを取り押さえようとする。しかしリベルは身軽な動きでそれをかわし続けた。
「こんな美味いもの残してる奴が悪い!!」
そう言うとリベルは残りをかきこんだ。
取り返すことに失敗した六樹は切り札を使う事にした。
「リベル、罰として今日はデザート無しだ」
その言葉にリベルは青ざめる。
「!!そりゃ無いぜリョウ兄ィ、ごめん!この通りだ!」
「俺を怒らせた事を後悔させてやる。あ〜あ、せっかく今日はクレープを作ってやろうと思ったのになぁ〜」
「謝るから〜!」
結局5分近くゴネられ、最終的に風呂掃除をさせる事で手打ちとした。
デザートを確保したリベルは元気を取り戻し、六樹に試験の事を質問した。
「リョウ兄ィ、試験何点だった?」
「俺は8点と9点の合計17点だった。とりあえず合格出来てよかったよ」
六樹がそう胸を撫で下ろす。
リベルも少しだけ安心したような表情をした。
「私は両方とも10点の合計20だ!!勝った!」
そう得意げに2本指を出した。
そして第二試験について話し始める。
「無事二人とも合格したわけだ!第二試験のバトルロワイヤルだとライバルだな!もし試験中に出くわしたら正々堂々真剣勝負だ!!」
「え、嫌なんだけど」
リベルの決闘宣言を六樹は真っ向から否定する。六樹の立場からすれば当然だ。リベルは支援対象なのだ、勝ったとしても負けたとしても失敗であり戦っても良い事など一つもなくデメリットばかりだ。
「嫌だ!リョウ兄ィと勝負したい!」
「駄々こねるんじゃありません」
「じゃあ逆になんで私と戦いたくないんだよ!?」
痛いところを突かれた。当然本当の事を言うわけにはいかない。その為六樹はそれっぽい詭弁で誤魔化す事にした。
「一緒に合格したいし…」
「嘘だね!リョウ兄ィがそんなキャラかよ!?」
(クソッ、妙に勘がいいなコイツ!?)
六樹は少し考えた後、真剣そうな顔で答えた。
「リベル、君を傷つけたくないんだよ……」
正確な答えとは言えないが嘘ではない、そんな本心からの返答だった。
「……………そっか…」
リベルがポカンとしつつカァァと赤面し始めた。
「……はっ!?」
そしてそれに気付いたのかリベルが勢いよくこう告げた。
「とにかく!!私はリョウ兄ィを探し出してバチバチ攻撃するからな!!」
「頼むから勘弁してください」
六樹の心からの叫びは聞き入れられないのであった。
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「いってらっしゃい!リョウ!リベルちゃん!私は中継で見てますね!」
「あぁ、行ってくる!」
「よっしゃ!!ぶちかましてやるぜ!!」
第二試験の日が訪れた。六樹とリベルはアンリに送り出され魔法教会の本部に向かう。第二試験に参加する他の魔法使い達もゾロゾロと同じ方向に向かっていた。
そして一般の人たちは町中にあるモニターの前で待機している。
魔法試験はウィザリア中で生放送されるのだ、魔法使い達の熾烈な戦いを娯楽として提供しつつ、試験の透明性も担保するらしい。
当然ながら大人気であり老若男女問わず殆どの人が今か今かと試験が始まるのを待ち侘びていた。
「そう言えば聞いてなかったけど、リベルはなんで試験を受けようと思ったんだ?」
六樹がふとそんな疑問を口にした。するとリベルが答える。
「魔法が好きだから!認められたいんだ!」
リベルは更に続ける。
「私は生まれてからずっと血筋位しか誇れるものがなかった。みんな私の事は私じゃなくて立場を見てた。真剣勝負しようとしても忖度されて、失敗しても褒められた。でも魔法を使うのに立場なんて関係ない。私の技量が足りなければ使えないし、条件を満たしてれば発動する。何より魔法は綺麗だ!だから自分の力で一級魔法使いの称号を勝ち取りたい!!」
「……………………そうなのか」
六樹はそれ以上何も言えなかった。言える立場でなかった。するとリベルはいつもの調子で六樹に宣戦布告する。
「だから!私はリョウ兄ィを探し出して戦いを挑むからな!」
「だからそれやめろ!!」
言い争いっていると、すぐに魔法協会の職員の誘導の声が聞こえた。
「二次試験参加者はこちらでーす!列に並んでくださーい!」
二人は促されるまま先に進んだ。
◇◇
参加者の列を魔法協会本部の上層階から見る者達がいた。この試験の運営する者達だ。
「……そうですか、ご苦労様です。………スレトリア会長、例の魔法、最終安全確認が完了しました。問題ありません」
それなりの立場であろう女性幹部が会長と呼ばれる壮年の男性に報告をした。
「それはよかった。やっと開催に漕ぎ着けたが、流石に今年は多いものだな…」
「はい、何せ例年の四倍近くいますからね」
「ふむ、そして何より、第二王女が紛れていたとは…」
そう言いながら列に並んだリベルを観察する。
「自由人で有名な第二王女ですが、本当に驚きました。」
「そうだな、だが我々の審査は変わらない。王だろうが神だろうが基準を満たしていなければ不合格だ」
会長はそう断言した。そしてその視線はリベルの横にいる褐色の少年に映った。
「王女の隣にいるあの男は?まさか護衛なんかじゃないだろうな?」
「その可能性はないわけではありませんが、低いと思われます。彼の経歴を調べた所、3ヶ月ほど前に冒険者登録した以前は不明です。王宮がそのような不審者を遣わすとは思えませんし、そして流石に護衛や王女を合格させるための回し者なら隣にいるのは危険すぎます。」
「風貌からして何も知らない異国の者か?王女と親しげにしているが、理由は分かるか?」
「はい、あの男は三週間ほど前にリベルテ様とナポスの町で共にギルドの依頼を受け、人攫いの一団を討伐した実績があります。おそらくそれが理由かと」
「まさか!兄上が言っていたカフナを助けた者達か!?」
経歴を二人が姪っ子を救った者達であったという事実に目を見開いて驚く。そして
「そうか、確かにそれなら不自然でない…か……しかし監査は怠るな。この試験で不正は許さない。」
六樹はなんとか疑いを免れた。
◇◇
アンリは二人を見送った後、ウィザリアの中で最も大きな広場にいた。そこでは特大のスクリーンと共にベンチが用意され人々が観戦する設備が整えられているからだ。
さらにサービスはそれだけでなく、実況や解説の担当が拡声器を握って待機していた。周囲には出店が立ち並び食べ物や飲み物を売り歩く者達も多くいた。まさしくお祭り騒ぎだ。
(二人の勇姿はちゃんと見届けないと)
アンリは後ろの人が少ない席に座り試験が始まるのを待っていると
「隣、いいっスか?」
と、声をかけられた。声の方を見ると緑の髪の女性がいた。
「ええ、どうぞ?お構いなく」
緑の髪の女性はアンリの隣に座ると自己紹介をした。
「初めまして、私ダリアって言います。アンリさんですよね?」
「え!?なんで名前を!?」
突然名前を言い当てられてアンリは驚く、対してダリアは落ち着かせようと説明した。
「あぁ聞いてないか、ムツキ君に依頼を伝えてたのが私っス!」
「……じゃああなたがリョウと隠れて会ってた王宮の人ですか?」
「そうっス!アンリさんには姫様と仲良くしてもらってるみたいなんで、いつかお礼を言っておきたかったんスけど、たまたま見つけてラッキーでした」
悪い人ではなさそうなので、アンリは警戒を解く。
「おっ!ソロソロ始まるみたいっスね!」
ダリアの言葉通り、実況が始まる。
「皆さんお待たせしました!!三年の空白を乗り越えて再び我らの娯楽が帰って来た!!今回の総エントリー数はなんと1051人!!そして二次試験の参加者はなんと脅威の627人!!過去最大の規模だ!!」
「「「ウオオオオ〜〜〜〜〜!!!」」」
「600人の魔法使い達の潰し合い!!合格するのは上位5%の狭き門!賭けるならお早めに!!」
観客のボルテージが上がる。
「たった今!選手達が配置についたようです!!広大な魔法協会のバトルフィールドで初期位置はランダム!!運次第でいくらでも予想は覆る!!それではカウントダウン!!10!9!8!7!6!…」
「「「5!!、4!!、3!!、2!!、1!!!」」」
そして、魔法協会本部の方から青い花火が打ち上がった。
「それではバトルロワイヤル!!スタート!!!」
絶叫にも似た歓声の中、魔法使い達のバトルロワイヤルが始まった。
リベルと六樹の掛け合いが一緒に悪ノリする兄妹みたいで結構気に入ってます。地味に魚の骨を抜いているあたり、六樹はなんだかんだ身内には甘いですね。
次回、魔法試験開幕です。六樹に楽はさせない!(使命感)




