表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/89

57話  第一試験

リベルは普段は白髪を魔法で水色に染めて名前もナノハで通しています。


「うめ〜!!なんだこの料理!初めて食った!!」


「いや〜、確かにこれは上手くいったな」


ウィザリアに到着して一週間程経過した。六樹、アンリ、リベルの3人は宿で遅めの朝食を摂っていた。


この日のメニューはなんとオムライス(仮)だ、米がなかったので麦を炊いて代用し、卵を日本のレストランよろしくフワトロに仕上げた逸品だ。


「………アンリが浄化魔法使えてよかった」


六樹が小さくそう呟く、卵の生食は衛生面からどこでも出来るという訳ではない。しかしアンリが浄化魔法で殺菌してくれたのでその心配はなく心置きなく半熟に出来た訳だ、魔法様々である。


アンリが幸せそうに頬張りながら質問する。


「それにしても、あんなボロいフライパンでよくこんなフワトロに出来ましたね?」


「ふっふっふっ!それは理由がある!スレトリア鉄道の皆さんに教えてもらったスキルを使ったからだ!」


六樹が手に持ったフライパンを見せつける。オムレツをナイフで切って綺麗に開く方法が成功した為か、彼にしては珍しくハイテンションだ


そのフライパンは部屋に備え付けられていた品だお世辞にも状態が良いとは言えない。


「何言ってんだリョウ兄ィ?」


「私もよくわか分かりません。」


疑問を顔に浮かべる二人に六樹は意気揚々と説明した。


能力(スキル)摩擦:減(スリップ)、このスキルは最高だ!触れたものの摩擦係数を減らしたり増やしたり出来るみたいだ!そしてそれを使えばこのボロボロのフライパンでもツルツルで焦げ付かずに作れるって訳だ!」


六樹がそう嬉しそうに語るが二人はそこまで食い付かなかった。


「まぁ、よかったじゃん!リョウ兄ィ!」


「………言いたい事は分かりますけど、結局リョウの腕じゃないんですか?」


「……確かに…究極的には、そうだな…名案だと思ったのに」


六樹は自身が褒められているものの、なんだか釈然としない気分だった。


だがリベルは料理の味は大変気に入った様でこんな提案をした。


「リョウ兄ィ!私が成人したら私専属の護衛になれよ!」


「っな!!」


リベルの勧誘にアンリが豆鉄砲を喰らったような顔になる。


「な!?強くて飯も美味いなら文句なしだ!」


「王女殿下直々にスカウトとは光栄だな、まぁ考えておくよ」


「あぁ!考えておいてくれ!」


リベルの勧誘を保留とした。


(もうなってるんだよなぁ)


と六樹は口には出さず心の中だけで呟いた。



そして話題は今日の事に切り替わる。


「いよいよ魔法試験だな」


「まぁ一次試験はザルだぜリョウ兄ィ!中級魔法をまともに使えれば落ちる事は無いから安心しろ!」


リベルがそう笑う。受付の男性も同じ様な事を言っていたためどうやら共通認識だそうだ。


そして六樹とリベルは第一試験に向かった。


◇◇


「うげ〜!結構いるな〜!」


第一試験は一週間のどこでも自由なタイミングで受験出来るそうだが、それでもかなりの人数の魔法使い達がいた。受付でカードを見せ呼ばれるまで待機する事になる。


「暇だな…リョウ兄ィ…」


「ナノハさん…君の威厳とかでなんとかならないのか?」


人混みの中なので偽名の方に切り替えてゲスな提案をしてみる六樹、それに対してリベルは毅然と断る。


「そういうのは違うじゃん?私は才能も環境も恵まれてる。でも生まれを振り翳すのは嫌いなんだよ。もちろん必要な時もある。でもなるべく勝負事とかは公平でありたい。」


「驚いた。意外…でも無いけど、結構芯があるんだな…」


その回答に六樹の心が少し痛んだ。だが六樹のやる事は変わらない。リベルが若干自虐気味にこう続けた。


「恵まれた者の勝手なエゴだよリョウ兄ィ、立場が違えば舐めてるとか思われるかもな……でも私はそうありたい。」


リベルは小さい声で、しかし力強くそう宣言した。


「いいんじゃないか?エゴでもプライドでも、貫き通すのなら俺は立派だと思う。……まぁ、それはそれとして、俺は使える物はなんでも使うタイプだけどな」


「………へへっ!リョウ兄ィらしい割り切った考え方だな!私もそれ、嫌いじゃないぜ!」


しばらく雑談しながら時間を潰す。そして1時間程待機した後、遂に呼ばれた。


「176番ですね、こちらへどうぞ」


「んじゃリョウ兄ィ、私は向こうだから、また後でな!」


「終わったら先に帰ってていいぞ、いつ終わるか分からないし」


「了解!んじゃサササっと終わらせてとっとと帰るわ!」


六樹が呼ばれたのは更に20分は後だった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


この日の魔法協会本部の試験官は忙しかった。大量の受験者が忙しなく押し寄せてくるからだ。


三年間も開催出来ていなかったため、待ちぼうけを食らっていた魔法使い達が全国各地から集まって来ている。


流れ作業で合否を判断していく、基本的に中級以上の魔法をそつなく使用できるのであれば合格だ、その為体感で6〜7割程度は受からせている。


時折り下級魔法しか使えない者なども紛れてくるが、それらも一応ボーダーに達しているかで判断する。まぁそういう類の者達は大抵合格基準を満たしていないのだが


試験は二項目あり、その一つ目が的当てだ。30m程離れた的に魔法を放ち、その命中制度と的へ与えたダメージで威力を見る。


30mというのは、普通に魔法を撃てばそれなりに威力減衰が起こる距離だ、そして今も一人の魔法使いが挑戦していた。それぞれを10点満点で評価する。


「これがラストチャンス!えい!打ち水!!」バシュン!


「……命中、軽く破損……4点」


「うっ4点…いやでも、もう一つでリカバリーすればまだまだ!」


(仕方ない事だけど、皆んな似たり寄ったりの魔法でつまらんな。この娘のレベルだと、この試験に受かったとしても次で落ちるだろうし。もっとド派手な奴とかいないのか?)


第一試験の難易度は低い、それは第二試験でバッサリ落とすからだ。第二試験は参加者同士が戦闘するので上のレベルを実感させる目的があるらしい。


そしてまた次の挑戦者が現れた。


「よろしくお願いします!俺、リヒトって言います!」


ブランドの髪の活発な少年だ、あまり期待せず的を出す。

流れ作業で説明を済ませ早速試験を行う。


「では初めてください」


「本気で行くぜ!光の槍(ライト・オブ・スピア)!!!」


そう唱えると閃光で出来た槍がリヒトの手に現れ、そしてそのまま的に投擲した。


ヒューーン、ズバン!


槍は高速で的に直撃し、的を破壊するが止まらない。

そのまま後ろの壁にぶつかって大爆発を起こした。


ドゴォーーン!!!という爆音と共に壁が壊れた。


「………かべが…」


先ほどのド派手な奴が来て欲しいとか願っていた自分を呪う。どうしようこれ?と考えているとリヒトと名乗った少年が焦りだした。


「すみません!まさか貫通するとは思わなくて!……失格ですか?」


ハッと我に帰る。確かにハプニングではあるが、彼に罪はない、試験官は彼にこう言った。


「10点満点だ!!」


手でグッドマークを作った試験官の目は、これから待っている後始末の事を考えて涙をためていた。


◇◇


結局、壊れた壁の応急処置をするのに20分近くかかった。


「じゃあ次、249番だね?」


「はい、そうです。」


次に現れた少年は褐色の肌に白い髪の不思議な容姿をしていた。異国の者だろうか?しかしやる事に変わりはない


「始めてください」


試験官が合図すると床から的が現れる。


「あの的に魔法を使って攻撃してください。攻撃回数は最大3回、命中制度と威力を測定します。」


「スキルは使ってもいいですか?」


「構いません。しかし的への攻撃自体は魔法で行って下さい。スキルで破壊してしまうと測定になりませんので」


「分かりました……」


魔法の補助をするスキルでも持っているのだろうか?などと考えている試験官。


それを横目に、褐色の少年は腕を的に向かって真っ直ぐ構える。そして突然手に赤い短剣が現れた。


「え?」


予想外の事態に思わず声が出た。


「ショット!」  


パンッ!!という音を立てて打ち出された赤い短剣が的に突き刺さる。


そして次の瞬間、短剣の突き刺さった的そのものがシュッと、消える様に消滅した。


「ファ!?」


試験官が驚いて少年の方を見ると先ほど消滅した筈の的が彼の足元にあった。そして足元の的に向かって少年が魔法を放つ。


「火炎弾」


ゼロ距離から魔法を受け、的は粉々に砕け散る。

一部始終を見た試験官は一連の流れが理解出来ずポカンとした様子で質問した。


「………イマナニシタノ?」


「射出魔法でアンカーを打ち込み、スキルで近くに引き寄せた上で魔法で破壊しました。」


(なるほどわからん)


褐色の少年の説明を詳しく聞き、試験官は改めて考える。


(つまりコイツは魔法→スキル→魔法のコンボで的を粉々に破壊した訳か…どう採点するかこれ!?確かにルール上は問題ない…よな?、でもスキルの比重が大きい気もする。それって魔法使いとしてどうなんだ?だが的を粉々に破壊したのもまた事実、そして何よりスマートでカッコいい!……つまり採点は)


「8点!」


目標達成自体は出来ているが、魔法の比重が低い気もするので少し減点、総じては高評価だ。


「じゃあ次は戦闘試験だ!魔法を駆使しつつ敵を破壊してみろ!カモン!!」


変なスイッチが入った試験官が合図すると近くの扉が開き、5mはあろう巨体のゴーレムが現れた。


「もう初めても?」


「っしゃ!行け!やれ!今度はなるべく魔法メインでな!」


「了解」


試験官が指示を出すと褐色の少年はすぐに飛び出した。


ゴゴゴゴッとゴーレムが少年に向かって腕を振り翳した。


ドゴンっという騒音を響かせ床に石や土で出来た腕を叩き付けるが褐色の少年はそれをそつなくかわす。


「水撃砲」  ドバーン!!


褐色の少年が魔法をゴーレムの頭部に放つ。ゴーレムの頭が抉られる。そんな中、試験官はある違和感を感じていた。


(!?……なんか威力と弾速が高くないか?)


しかしそんな疑問を他所に状況は動く。


頭を水の塊で抉られたゴーレムだったが、すぐに再生し始めた。ゴーレムは核を壊さない限り動き続ける為だ、どうやら少年もその仕組みに気付いたらしい。


「……なるほど、核か…それじゃあ」


少年はそう呟きゴーレムの背中に飛び乗った。


そしてすぐさま腰の剣でゴーレムの背中を軽く斬りつけ、そして直ぐに再生し始める傷口に手を触れこう唱えた。


「暗障」


漆黒の粘土の様な物体がゴーレムの内部に入り込む。それは内側をまさぐるようだった。


「………………見つけた、暗刃!」


ジャキン!と音が鳴り、黒い刃がゴーレムを内側から貫く、そして外に出た刃の先にはゴーレムの核があった。核を失ったゴーレムは元の土塊に戻る。


「早い!それに鮮やかだ!」


試験官は満面の笑みを浮かべた。よほど機嫌が良いらしい。そして六樹にこう告げた。


「タイムは上位層に一歩劣るが魔法の応用が上手い!9点!!」


(試験初日から純粋な火力バカに小賢しい応用タイプ、今年の試験は面白くなりそうだ!)


「合わせて17点、一次試験は合格だ!第二試験、楽しみにしてるよ」


試験官は心からそう思った。


六樹が現状使える魔法一覧

本格的に試験が始まる前に現状の手札を整理しておきます。(読まなくても特に問題ありません)


下級魔法(基礎魔法)

射出 物体を飛ばす魔法、六樹が最も使う魔法

前進 物体を押し出す魔法、重量のある物体などに使用

噴出 物体に推進力を与える。魔導列車で使用される

水生成 真水を生成する魔法、シンプルだがとても便利

火球 火の玉を生み出す魔法、よく火おこしに使われる

放光 光を出す魔法、ライトとして使えて便利

加熱 流し込まれた魔力を熱エネルギーに変換する魔法

質量付与 触れた物体に質量を出す魔法、地味に凄い


中級魔法

水撃砲 水の塊を高速で撃ち出す。基本的な攻撃魔法

火炎弾 起爆性の火の玉を放つ。基本的な攻撃魔法

風刃 空気で出来た刃を放つ。基本的な攻撃魔法

雷撃 直線的に電撃を放つ。基本的な攻撃魔法

石飛礫 岩石を生成し撃ち出す。基本的な攻撃魔法

暗障 漆黒の粘土のような物体を生成し、操作する魔法

暗刃 暗障の派生魔法、不定形の刃であり自由度が高い

黒拳 暗障の派生魔法、暗障を拳に纏わせ固める。

影武者 存在感のある人影を生み出す、他と併用推奨

闇雲 黒いモヤの様な物を生み出す。煙幕として使える


治癒系魔法

回復:下 物理的な負傷を治す。小さな傷程度なら即完治

解毒:下 体内の有害物質・生物を除去、抗生物質程度の効果

解毒:特 触れた相手の体内の特定の物質を除去、悪用厳禁


死霊遣い専用魔法

屍人化 魂が残留した腐敗が酷い死体をゾンビとする

喰人鬼化 魂が残留した死後間もない死体をグールとする

幽霊化 魂を死体から切り離し、ゴーストとする

追憶 死者の記憶や残留思念を読み取る。

帰天 現世に残留する魂を成仏させる。自身が調伏した者か無抵抗の者しか成仏させられない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ