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55話  魔導都市

少しお待たせしましたが連載再開いたします。

ナポスを出て6日、六樹達は緑の山脈を越えて今は大陸中央に広大に広がるエレミア砂漠という乾燥地帯に入りつつあった。


幸い河川敷を歩いていたため水には困らなかった。


今はウィザリアをまであと丸一日といった場所で朝食をとっている。


「飯食い終わったらこっからは急行で行くぞ!昼には着くはずだ!」


「ん?最低でもあと丸一日はかかるだろ?」


「まぁ見てなって!リョウ兄ィ!」


そう言うと、河川沿いの砂地に移動して手をかざした。


氷生成(クリエイト・アイス)


すると、大きな氷の塊が現れた。


「この氷を加工して使い捨てのボートにする!丁度河川が合流して十分な水深が確保出来たからな!あとは流れに乗って下ればあっという間に到着だ!」


◇◇


リベル一押しの氷の船は三人が乗り込むには十分な強度だった。特に操縦せずとも流れに乗り、徒歩とは比べものにならない速度で移動する。唯一の欠点が冷たい事位なものだった。


「便利なもんだな、リベル、普段からこんな方法で旅してるのか?」


「まぁな、魔法を応用すれば色々便利に出来る。魔法の応用は魔法試験でも評価対象になるらしいぞ」


「そうなのか……俺も見習わないとな」


六樹としてはリベルの魔法使いとしての力量が高いほどありがたい話だ。


「リョウ兄ィはそこに関しては大丈夫だろ!ていうか逆にバカ正直に使ってる方が珍しい位だ、リョウ兄ィが落ちるとすればシンプルに火力とか出力とかだと思うぞ」


確かに言われてみればその通りだ、六樹は単純な火力といった分野ではそこまで優秀という訳ではない。


大火力が要求されない対人戦に関して言えば必要十分なのだが魔物など人外相手だと決め手不足という問題がある。


「高火力か……考えておかないとな……」


六樹はそう小さく呟いた。


「あっ!二人とも!見えてきましたよ!!」


アンリの元気な声があたりに響く。

前方を見ると遂にウィザリアが見えてきた。


「あれがウィザリア……」


そこにはこの世界とは思えない幾何学的な建造物が立ち並んでいた。


文化の根本にあるのは他の町同様に西洋風ではあるのだが、そこにまるで日本の大都市にあるビルのような無機質な建物やアートのような不思議な形状の構造物が所狭しと並んでいる。


総じてSF映画の未来都市のような雰囲気を感じる。元いた世界のどこかの観光都市と言われた方がしっくり来るような気さえする。



呆気に取られる六樹にリベルが街の成り立ちを説明した。


「この街は大賢者江川歩が何も無い場所に一から設計して創ったんだ、この国でも三本の指に入る大都市だぜ!」


「なるほど、通りで現代的な訳だ…」


そしてアンリがさらに補足する。


「魔導都市と言われる通り、この街は緑の山脈から流れ込む龍脈から魔力を都市に供給し続けてインフラを動かしています。街の中は魔法陣や魔道具だらけですよ」


アンリは魔導師の為、魔力の流れなどには詳しいらしい。そして初耳の単語が出て来たので確認しておく事にする。


「龍脈っていうのは何?」


「環境中に魔力が集まって川のように流れてる場所です。自身の魔力で完結する魔術師の方々にはあまり馴染みが無いかもしれないですが、魔導師(わたしたち)にとっては動き回らなくても魔力が枯渇しないボーナスステージという訳です」


「…川の側だと水が使いたい放題、みたいな話?」


「はい!まさしくその認識であってます!」


刻々と近づく魔導都市、すると川に橋がかかっていた。そして


シャーーーーー!!!と軽快な音を立てながらその橋をあるものが走り抜けた。


「!!?………あれって……」



六樹は呆気に取られるそれは日本では馴染み深いものだった。


六樹が見たそれは列車だった。


たが日本でよく見る車輪で走る電車とは違い、ソリ板のようなもので高速で滑って進むという不思議な方式を採用していた。まるでリニア新幹線のような形だ


「驚いたかよリョウ兄ィ!あれがウィザリアと王都を結ぶ魔導列車だ!」


リベルが何故かそう得意げに言うのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁ〜〜、やっと着いたぜ!」


三人は遂に魔法試験が行われるウィザリアに到着した。道中色々あったが結果的には当初の予定通りそれなりに余裕を持って到着した。


「とりあえずしばらく滞在するための場所を確保しないとな」


六樹がそう方針を示す。そしてリベルに質問する。


「リベル、お前はどうするんだ?」


「え?どうって?」


「試験が始まるまでどう過ごすんだ?」


リベルはハッとした様子で考え込み始めた。


「いつも適当にブラついてたからな〜どうするか…」


リベルが考え込む、その顔は少しだけ寂しそうに見えた。

するとアンリが六樹にアイコンタクトをした後、こう提案した。


「行く当てがないなら一緒に宿を取りますか?」


「え?いいのかアン姉ェ?」


リベルが驚いた顔をする。


「割り勘にすれば宿も安くなりますし、ね?リョウ?」


「そうだな、俺は別に構わない」


するとリベルはパッと笑顔を見せる。


「じゃあ引き続きよろしく頼む!リョウ兄ィ!アン姉ェ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


三人はこの日はとりあえず魔法試験の受付だけ済ませる事にした。


「リベル、どこに行けばいいか知ってるか?」


「あぁ、それならあの無駄にデカい建物だ」


そう言ってリベルは街の中央部にある巨大な建造物を指差した。


それは西洋の城の様なシルエットであるのだがどことなく大型商業施設のような近代的な雰囲気もある。伝統的と近代的が同居したような不思議な雰囲気の建物だった。


「あの変な建物か?」


「あぁ!あれが魔法協会の本部だ」


そして目印となる建造物を目指して街を練り歩く。すると管理された森の様な場所たどり着いた。


「公園か?いやでも立ち入り禁止か…」


「これは魔法協会の実験フィールドだぜ?」


「えっ?これが?、広すぎないか?」


両端が確認できない程の規模だこの規模の都市にここまでの敷地を持つという事は魔法協会という組織は相当な影響力を有しているのだろう。


感心したと同時に素朴な疑問が浮かぶ


「……これって、この広大な敷地を迂回しないといけないのか?」


「そうだな、入り口は反対側だし」


「マジか」


そこから更に体感1時間近く余計に歩かされた。


◇◇


魔法協会の本部に到着すると、そこには既に何人かの魔法使い達が順次受付を行なっていた。リベル曰くそれなりに早く着いたため、混雑は避けられたそうだ。


六樹とリベルはそれぞれ空いている受付に並んだ。アンリは近くのベンチで休んでいる。


手続きは完全にマニュアル化されているらしくスムーズに進んだ。


「ムツキ・リョウさんですね?……確認出来ました。事前に登録されていますね……ではこちらを」


受付の男性にカードの様な物を渡された。そこには数字が振っていた。


「249番……これは?」


「受験番号です。あと一週間程で一次試験が受験可能になります。この試験はそのカードを持ってここに再度お越しくだされば、自由な時間に試験を受ける事ができますので無くさない様にお願いします。」


「そうなんですね、もっとキッチリ時間管理されてるものだとばかり思ってました。」


一次試験が想像していたよりも軽そうな雰囲気だったので六樹は少し肩の力を抜く。すると受付の男性もその意見を肯定する。


「一次試験はそこまで肩肘を張らなくても大丈夫ですよ。せいぜい冷やかしの方や記念で受けた方を選別する程度です。二次試験が本番ですから」


そして六樹は少し気になった事を質問する


「もしかしてこの番号って参加人数ですか?」


もしそうなら軽く250人は試験に参加するという事になる。受付の男性はそれを肯定する。


「はい、それはあなたが249番目に登録したという事です。」


「そこまで多くの魔法使いが集まるものなんですね…」


六樹がその規模に感心すると、受付の男性はすこしポカンとした表情をした。


「いえ、これはまだ一部ですよ?」


「え?…総勢でどれだけの人数が?」


250人が氷山の一角であるという事に驚く六樹、そしてその問いに対する答えが告げられる。


「そうですね……ギリギリで駆け込む方も沢山いらしますので一概には言えませんが……」


「今年の魔法試験は、推定1000人程が受けると思われます。」


「なっ!……」


その数と規模感に驚かされる六樹、それを見た受付の男性は少し苦笑いする。


「……確かに、今年は例年よりも格段に多いんですよ」


「それってもしかして……」


その理由を六樹はダリアから教えられていた。


「はい、戦争の影響で三年間、試験を開催出来ませんでしたから」


そう、そこが六樹に試験をアシストする依頼が来た理由だ、本来リベルは実力だけでも合格出来るラインにいる。


だが、今年はそうもいかない。いや厳密には運次第では平気で落ちかねない魔境と化しているという話だ


「今回は三年分、いや今年も含めると四年分の受験者がいます。量も質も4倍です。過去最大規模の試験となります。第二試験の()()()()()()()()はかなり荒れるでしょう。あなたもお気をつけて…」


受付の男性は六樹に善意でそう忠告するのだった。


魔法試験編開幕です。ウィザリアは魔法協会の広大な敷地を中央に、その周囲を市街地が囲う様な都市設計となっています。

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