54話 第二王女
確かにダリアの言っていた通りだった。
第二王女はその辺の人攫いに捕まる事などないと、そして王宮直属の護衛達すら撒く技術を持っていると、そして負けん気が強い様な事もその通りだった。
だが、だがしかしだ
(まさか自ら賊を潰しに行ってるとは思わねーよ!!)
六樹は心の中でそう叫んだ。
しかし六樹としては大変困った状況になった。何故ならこれから行われる魔法試験において彼女の補助と護衛を秘密裏に行わなければばいけないからだ
六樹はその場をなんとか流した。アンリも口をアングリと開けて放心していた。
とりあえずスレッタ達と合流し、安全を確保した後、近くの村に少女達を保護してもらう事になった。
「ムツキ様。この度の一件、心より感謝申し上げます。このお礼は必ず」
スレッタにそう深々と礼を言われ別れる事となった。
◇◇
そして、三人はナポスに戻り始めた。ナノハは魔法で髪を水色に染め直している。
「まさかナノハが王女様だったとは……」
道中の会話は当然ナノハの身の上となる。アンリはまだ脳が処理しきれないのか、以前として放心状態でついてきていた。
「驚いたかよ!?私の変装スキルはピカイチだかんな!王宮直属の護衛達すら私を追跡できないんだぜ!」
「護衛の人たちかわいそう……」
六樹は心底そう思う。護衛対象が逃げ回るのだ、彼女に自衛能力があるとはいえ、その心労は計り知れない。てか護衛を撒くなよ
「で、ナノハってのは?」
「私の好きな花、菜の花から取った!なんか花言葉ってのがあるらしくて自由って意味らしいぜ!それにどこにでも咲くから色んな人に寄り添うみたいで気に入ってんだ」
(この世界に花言葉の概念があるのか?いやもし無くても王族なら江川歩と面識がある可能性が高い。知っていてもおかしくはないか…)
「まぁ似合ってはいるか……快活で親しみやすい所とか特に」
「………おう……だろ!?」
褒められるとは思っていなかったのか、なんだか照れているらしい。そして六樹にこう告げた。
「あぁ、あと私の事はリベルって呼んでくれ!!リョウ兄ィ!」
どうやら気に入られたらしい。まぁ知り合った以上は突き放す理由もない。六樹は流れに身を任せることにした。
「じゃあよろしくな、リベル」
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「かぁ〜〜!!そんな事になったんスか!?そんな火中の栗を鷲掴みにする様な真似を!まさか姫様がそこまで血の気が多いとは!?」
ナポスの町に着くと、ナノハ改めリベルとアンリを宿に先に行かせた。
表向きは二人の体調を労わる為とし六樹はギルドに報告に行く訳だが、ギルドへの報告を終えると直ぐにダリアの下に駆け込んだしだいだ
ダリアが説明を聞き頭を抱える。そして、少し頭を冷やしてから話し始めた。
「とりあえず賊の討伐お疲れ様っス!まさか奴が首謀者だったとは…とにかく君はその場での最善を尽くしてくれたっス!」
「それならよかったです。」
そう前置きした上でダリアは今後の方針を話した。
「それで、これからなんスけど、姫様に合わせてください」
「と、言いますと?」
「今の状況は護衛をする分には都合がいいんスよ、君が近くにいる事でリスクを下げつつ姫様の居場所もわかる。」
「それは分かります。」
「逆に強引に何かすれば怪しまれるで姫様の好きな様に合わせて下さい。試験の方は、まぁなるよになれっス!」
◇◇
「おっ、おかえりリョウ兄ィ!今ちょうどアン姉ェと一緒にひとっ風呂浴びてきた所なんだよ。ギルドへの報告は済んだのか?」
「あぁ、賊を討伐した事と被害者のケアを依頼してきた。すぐに動くって」
「そっか!それならよかった!…私のせいで巻き込まれたからな…」
そう言うリベルの顔は苦々しい表情をしていた。
すると六樹はこう言った。
「リベル、どこまでいっても結局悪いのは安永だ」
「分かってる。でも……」
「もし君の髪が金でも黒でも対象が変わるだけで同じ事が起こる。第二王女が君でなくてもそうだ、だから君が気に病む必要はない」
そして六樹はこう念押しした。
「リベル、君は自分の行動を後悔してないだろ?」
「………そうだな、確かにその通りだ!私は自分のした事に満足してる!あいつらが全部悪い!」
すぐにいつもの快活な調子に戻った。
「ところでリョウ兄ィ、二人はこの町の人間じゃないんだろ?どこ向かってたんだ?」
「あーそれね、俺はウィザリアって街で行われる魔法試験を受けに行く所だ」
「あっ、私はリョウの同伴です。」
それを聞いてリベルの表情がパッと明るくなる。
「マジかよ!!私もそうなんだ!!」
(うん知ってた、というかその為に招集された)
「スゲー偶然だな!!」
(半分位は偶然じゃないんだよなぁ〜)
そして、リベルはある提案をした。
「じゃあウィザリアまで一緒に行こうぜ!!」
六樹はダリアに命じられた事を思い出す。
「俺は構わない、アンリはどうだ?」
「一緒に行きましょう!リベルちゃん!」
どうやらアンリも異論は無いらしい。そして六樹は取り止めのない疑問を口にした。
「けど少し意外だな、一人旅が好きなのかと思ってた」
「私は気のままに旅してるだけだ、特にルールはねーな」
「そっか、いいな…それ」
そういう訳で、六樹とアンリの二人にリベルが加わり三人旅となった。
◇◇
ナポスの町にはもう2日程滞在し、体力が回復した後出発した。
「よし、この町ともお別れだな」
「待って!!」
すると突然引き止められた。後ろを振り向くと白髪を三つ編みにした少女がいた。サリーだ
「アンリさん!ナノハさん!私達を助けてくれて本当にありがとう!」
どうやらお礼を言いたかったらしい。するとサリーは六樹に向き直る。
「お兄ちゃん、パパと最後にお話しさせてくれてありがとう。」
サリーに純粋な感謝の言葉をかけられるが、六樹には後ろめたさがあった。
「……君のお父さんの思いが強かったから話せたんだよ、俺は動かしただけだ……君の大事な人の亡骸を…」
死霊遣いはどこまでいっても死者をこき使い、魂を弄ぶ存在である。しかしサリーはそう思っていなかった。
「それでも!私はお父さんと最後にお話し出来たのは嬉しかった!」
その嘘偽りない目でに少し気押された。
「………そっか、それなら…よかった。」
サリーが去った後、アンリがポツリと呟いた。
「案外、神官も死霊遣いも根っこの部分は近いのかもしれませんね」
こうして三人はナポスの町を後にした。
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六樹達は緑の山脈を歩く、多少のアップダウンはあるものの少しずつ峠道を下って行った。
移動中六樹はずっと考え事をしていた。
(魔法試験とか受けなくても、最悪第二王女に頼み込めば問題ないんじゃないか?)
何せ彼女は王様の娘だ、仲介せてくれるかもしれない。六樹は特に話してもいい情報だけ話す事にした。
「なぁ、王女のコネで王様に謁見出来たりしない?」
「無理だな!」
一言で切り捨てられた。リベルは理由を聞く。
「親父になんか用か?」
「あぁそうだ、そもそも俺は国王に謁見する為に試験を受ける。」
「はぁ?!なんでまたそんな?」
リベルは疑問を顔に浮かべる。当然の話だ、六樹は少し考えてこう言った。
「実は俺が日本人だって言ったら信じるか?」
「冗談キツイぜリョウ兄ィ!!日本人がそんな髪と肌な訳ねーじゃん!!日本は単一民族の国家なんだろ?」
信じてもらえなかった。しかしリベルは少し冷静に考えてこむ。
「いや、でも安永の名前を当ててたし、なんか面識がありそうな様子だったよな?………」
考えたのち、リベルは結論を出した。
「よく分からん!結論は保留だ!リョウ兄ィの話が本当だとしても私を頼っても期待は薄いぜ!」
「なんで?」
「ホラ、私流浪の身だし!どこで拾って来たか分からない奴を紹介しても取り合ってくれない。それにしばらく王宮に帰るつもりもないしな!」
「この不良娘が!!」
「それは褒め言葉だな」
とにかくリベルを直接経由する方法は当の本人の信用が無いせいで不可能では無いがあまり有効では無さそうだ、今は依頼の遂行に尽力した方が確実だろう。
そんな事を話していると木々が開けた場所に出た。するとアンリが声を上げた。
「あっ!あれはもしや!?」
その言葉にリベルが答えを出した。
「遂に見えて来たな、あれがエレミア砂漠だ」
リベルが指を刺した先には荒野が広がっていた。どうやら相当広いらしく高所から見ても乾燥地帯が果てしなく広がっている。
「これはまた、だだっ広いな……」
六樹がそう漏らすとアンリが解説した。
「リョウ、エレミア砂漠はこの大陸の真ん中に広大に広がっています。」
そして、アンリは一呼吸置いて話し始めた。
「そして、その砂漠地帯の大部分は戦闘地帯となっているんです。」
「じゃあ今から向かうのは…」
「はい、流石に戦闘の最前線ではないですが安全地帯とも言えない場所です。何が起こっても不思議ではありません。」
「気を引き締めろって事だな?」
「はい、くれぐれも……」
アンリの言葉をうけ六樹はマジマジと砂漠を見つめる。すると砂漠の中にあるものを見つけた。
「……ん?あの遠くに見えるのって…」
すると、リベルが勢いよく答えた。
「あぁ!!あれが魔導都市ウィザリアだ!」
キャラ紹介
名前 リベルテ・エト・バシレウス
年齢 14歳
身長 157cm
容姿 白髪、紫の瞳、美少女、綺麗系
ステータス 筋力E 魔力A 機動A 技術B 射程B
備考 不良系第二王女ヒロイン。王族内の教育方針により10歳頃から外の世界を学ぶ為庶民の中で生活し始めるもすぐに冒険者となり流浪の旅を始めたロックな娘。王族としての教育はしっかりと受けていて教養や品性はあるものの、その美貌や腰を落ち着けない生活から苦労する事も多く、他人に舐められないように振る舞った結果、不良娘のようになりそれが染み付いて自然体となったが本人的には満足している模様。ちなみに初対面から六樹とアンリを兄ちゃんや姉ちゃんと呼んでいたのは名前を覚えていなかった為。
今回で第二王女編が終了です。書き溜めが少なくなった事と今後の展開をもう少し考えたいので少し更新が止まりますがそこまで長くはならないと思うのでよろしくお願いします。




