52話 リベンジタイム
なんと今回で二十万文字に到達しました。ここまで読んでくれてありがとうございます
「なぁあんた…悔しいか?」
六樹は一人の男に話しかけていた。横にはスレッタもいる。
「だよな、当然だ…ならこう聞こう。まだ戦うか?」
スレッタには六樹の話し相手の声は聞こえてこない。だがそれは当然の事だ、六樹は何と言われたのか少し口角を上げて獰猛な笑みを浮かべた。
「そうこなくっちゃな!!立て!!屍人化!!」
六樹がそう唱えた瞬間、一つの死体が動き出した。
それはガルムだ、娘を助けられなかった後悔を晴らすべく六樹の力を借りて彼は再び立ち上がる。
「…………………」
彼は何も言わない、だがその目は生前と同じく、いやそれ以上に燃えていた。六樹はガルムに大剣を手渡して命ずる。
「彼女と共に行け、最後のチャンスだ、娘を助けろ」
「ムツキ様!こちらは任せて!」
「あぁ、頼んだ」
そう言って二人、いや厳密には一人とゾンビ一体は森の中を駆けて行った。
アンデットとなり弱体化したとはと言えど、金等級なら安心だろう。スレッタ本人も多少魔法の心得があるので戦力にはなるらしい。これで後方の憂いが取れた。
六樹は今度こそアンリ達の元へ走り出す。ゴースト達に情報を集めさせながら
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「[反転]それがアンタのチートスキルだ」
そう宣言して早々に、ナノハは安永に魔法を放つ
「回復:中!」 「ぐっ!」
安永が回復魔法を腕に浴びる。するとその患部が焼けた様にダメージを受けた。
「アンタは受けた事象の結果を反転させる。だからアンタへの攻撃は回復に、そして回復は攻撃になる。そういう事だろ?」
つまり安永は常に敵から回復させてもらっていたというわけだ、そして無傷の場合は体に変化は見られずまるで無敵の様に見えていた。
ナノハは再び回復魔法を放つ
「回復:中!……クソ!そういう事ね」
ナノハが放った魔法は安永に命中したが今度はダメージを受けることはない、逆に安永のダメージを受けた腕が治った。通常の効果だ
「お前ら、俺の種が分かったからって何勘違いしてやがんだ?スキルの発動は俺の自由だぜ?お前らが攻撃しても後出しで切り替えられんだよ!以前主導権はこの俺にある!」
魔法などで攻撃する場合、どうしても相手に当たるまでのラグが発生する。そしてそのラグの間に安永は自分に都合の良い方に切り替えられる。つまり二択を当て続ける限り、理論上は無敵という訳だ。
ナノハは攻略法を検討する。
(回復と通常攻撃を同時に当てるか?……いやそれだと結局プラマイゼロだ…つくづくめんどくさい野郎だな)
すると、アンリが安永の前に出た。
「なんだお前、先に死にたいのか?」
安永の言葉を無視してアンリは拳を構えて叫ぶ
「はぁぁ!!聖拳突き!!」
安永はあきれた顔をする。
(何考えてやがる。この女は馬鹿なのか?んなもん効くわけ…
「ぐはっ!!?」
アンリの拳がみぞおちに突き刺さる。安永は驚愕の表情を浮かべた。
「は!?なんで!?」
(回復魔法か!?いやこの女は一言も詠唱なんてしてやがらねー!どういうことだ!?)
何故か通ったアンリの拳、安永は注意深くアンリを観察するとある事に気づく。
「その籠手!!それに魔法陣を刻んでやがんのか!?」
アンリが装備していた籠手、その手のひら部分には魔法陣が光っていた。
「正解です。私はヒーラーですよ?どんな状況でも回復魔法は使える様にしてるんです!では、もう一発!!」
アンリが再び拳を構える。安永は先程の攻撃で不意を突かれまだ体勢が整っていない。
(不味い、また来る!…いや焦るな俺、ちょっと殴られたからって動揺してんじゃねー!!…スキル解除!)
「瓦拳!!」
その瞬間、アンリの通常攻撃が安永を襲った。バキバキバキッと肋骨が砕ける音が聞こえる。
「ぐはぁぁ!!」
そして、そのまま壁まで吹き飛ばされた。
「くそっ!なんで読めやがんだ!?」
「狡い考えは分かるんです!私の隣にはリョウがいますから!!それにあなたはスキル頼りで基礎がおざなりですからね」
アンリが安永にそう指摘する。安永が調子を崩した隙に、すかさずナノハが追撃をかける。
「氷牙!!」
安永の周囲の床に、尖った氷が現れ、そのままトラバサミの要領で脚に食い付いた。
「グアァ!!こ、この!!」
スキルを発動し攻撃を回復に変換し傷を治す安永、そこにアンリがすかさず回復魔法を纏わせた拳を叩き込む。
「がっ……」
安永はヨロヨロと後ろに下がる。ダメージが蓄積している様だ
すると安永は衝撃の行動を行う。なんと手に持っていた剣で自身に攻撃し始めた。一見すると狂気じみた行動だが回復する為の行動として、それは非常に理にかなっていた。
「させません!!」
アンリが間合いを詰めるが安永体ははみるみるうちに回復するそしてニヤリと不敵に笑った。
「燃える蛮勇!!」
直後、安永が激しい炎に包まれる。まるでその命と身体を焼き尽くしているかの様だ
「くっ!……」
アンリは炎に阻まれ安永に近づかない
「もう消耗は度外視だ!!!とりあえずお前らを殺す!!」
「クソ!次はなんだってんだ!?」
安永はナノハのその困惑した顔が気に入ったのか、意気揚々と説明し始めた。
「この魔法は自身の身体を燃やすという制約の下で莫大な力を出す文字通り命を燃やす魔法だ!だが俺のスキルでそのデメリットを踏み倒し、それどころか常に回復までしやがる!!」
「回復:中!!…!?クソ!ズルすぎんだろ!!」
ナノハは回復魔法を放つがそのダメージは炎の自動回復に相殺されて意味をなさない。
安永は優越感に浸り、共に発火している自身の剣を構えた。
「俺を散々コケにしやがって!!喰らえ!!火炎斬!!」
太刀筋に炎が纏う。それらが拡散する事で石造りの塔を丸ごと熱で切り裂いた。二人は身を屈める事で間一髪炎の斬撃を回避する。
「っく!!危ねー!当たればタダじゃすまなかったな」
「周りを見やがれ間抜け!」
「…!!まさか建物ごと!?」
石造りの塔が丸ごと切断され、アンリとナノハの頭上に瓦礫が押し寄せる。
「不味い!聖壁!!」 「ちくしょう!!氷室!」
「せいぜい耐えやがれ!!もっと俺を楽しませろ!!」
安永がそう高らかに笑う。塔が完全に崩れたのはそれと同時だった。
◇◇
三つ編みの少女サリーを含めた誘拐されていた少女達はアンデット達の誘導に従い、近くの集落を目指していた。
だが、突然アンデット達の様子がおかしくなる。
別に敵意を向けてきた訳ではない、むしろ敵意に反応したという方が正しいのだろう。突然踵を返して道案内の先頭の一体をのこし、反対方向に歩いていく
「えっなに!?」「なにかあったの?」
「…………」
少女達の問いかけに屍達は答えない。そしてそのまま反対方向へ歩き始めた。
その数十秒後、アンデット達が向かった先で戦闘音が響き始め、そして後方から男達の粗暴な叫び声が聞こえた。
「いたぞー!!!捕まえろー!」
「アンデットを始末しろ!早く行けー!」
その声を聞いた少女達はパニックの様な状態になり、バラバラの方向に逃げようとする。
「いや!もう捕まりたくなんかない!!」
「私は一人でも逃げるわ!!」
「ダメ!!みんなこっち!こっちに逃げるよ!!走って!」
たがサリーがそれを抑え込み、正しい道へと誘導する。
サリーはナポスの町の金等級冒険者ガルムの娘だ、その為その他の通りかかっところを連れ去られた少女達と違い、ある程度の土地勘があったのだ
後ろではアンデット達が戦っているが、かなり押されている様だ。
賊達は刻々と追いかけて来ている。
力の限り逃げるが体力も走力も負けていた、遂にその時が来た。すぐ後ろに一人の大男が追いついて来たのだ。
「お前が案内役だな!?捕まえたぁ!!」
サリーが後ろを振り返ると大男が飛びついて来ていた。もう逃げられない、思い出したのは父親の存在だった。
(パパごめん、私また逃げられなかった……)
心の中で今は亡き父親に謝罪した。
その時、二人の間に割って入る人影が現れた。サリーにはそれが誰か一目で分かった。
「パパ!!!」
「………………」
「なんだ!?お前死んだ筈じゃ!グアァ!!」
ガルムはゾンビとなり再び戦う。大剣を振り回して賊達を殲滅し始めた。
「皆んな!!助けに来たわ!!!今度こそ逃げ切るわよ!!」
「スレッタ!無事だったの!?」
サリーは心残りだったスレッタの無事を知り、安堵の表情を浮かべる。スレッタは魔法を放ちガルムと共に賊達と戦う。
「火炎弾!石飛礫!!」
「………………」
「あぁ!!」 「逃げr!!」 「グギッ!」
「パパ!やっつけて!!」
二人の活躍により賊達は殲滅され、少女達の危機が終わる。サリーが父親に話しかけた。
「パパ……ありがとう!」
最愛の娘の言葉をかけられ、ガルムは通常ゾンビではあり得ないはずの言葉を紡ぐ。
「……………サリー、お別れだ……」
「逝かないで…嫌だよ」
だがガルムから力が抜け始める。本来ある筈のなかったボーナスタイムが終わりを迎え始めた。最後の力を振り絞り最愛の娘に言葉を贈る。
「………幸せにな……」
ガルムは最後にそう一言言うと糸が切れた様に倒れた。
生前の未練を果たし成仏したのだ。その死に顔は満足そうに優しく微笑んでいた。
「……………うん!約束する!!」
サリーは再び動かなくなった父の屍に向かい、涙を溜めながらも満面の笑みでそう答えたのだった。
キャラ紹介
名前 安永 龍翔
年齢 19歳
身長 176cm
容姿 チャラ男風、茶髪、顔に傷、目つきが悪い
ステータス 筋力D 魔力B 機動C 技術D 射程C
備考 典型的な小悪党。学校では中途半端な不良であり、常にスクールカーストなどの立場を意識して自分より下だと判断した者には横柄な態度を取っていた。彼の基準では下であるはずが、クラスで異質な立ち位置を築いていた六樹を嫌悪している。自分より弱い物をいたぶって楽しむ悪癖があるため、戦闘においては舐めプのような形でそれが現れ、結果的に危機に陥る事が多々ある。能力自体は他の異能と比べても相当優秀な部類だが、それにたまけ基礎が疎かなったお手本のような男。私としては人間臭くて意外と嫌いじゃないです。




