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49話  光を目指して

今回は攫われた一人の少女の視点です。

長い白髪に紫の瞳をした少女は人攫い達の頭目の部屋にいた。


(どう逃げ出そうとかしら……)


彼女の名前はスレッタ、父親からはそう名乗るように言いつけられている。


彼女がここにいる経緯を説明しよう。



スレッタは魔導都市ウィザリアを目指しナポスの町を通過し少数の供回りを連れて峠道を下っていた。


すると山賊のような身なりの者達に突然襲撃されたのだ。


多勢に無勢だった。スレッタ自身も応戦したものの、仮面の男には何故か手も足も出なかった。


供回り達がどうなったのか定かではない、逃げ延びて助けを呼んでくれているのか、はたまた全滅したのか、確実なのは彼女は誘拐されたという事だけだ




「さっさと入れ!変な気起こすなよ?」



目隠しが取られるとそこは古びた地下牢だった。


「……あなた達も誘拐されたの?」


そして同じ牢の中には自身と同じ白髪の少女ばかりが監禁されていることに気づく、何らかの思惑を感じずにはいられなかった。


「こんにちは、あなたも旅の人?」


三つ編みの少女がこちらに話しかけて来た。どうやらスレッタを心配している様子だ


「そうよ、私はナポスを通り過ぎたところで急に襲撃させて捕まったの、あなたは違うの?」


「うん、私はナポスに住んでるの。大丈夫だよ、きっと私のパパが助けに来てくれるよ」


「あなたのお父さんはそんなに強いの?えっと…?」


「私サリー!パパはね!金等級の冒険者なんだ!」


「それは頼もしいわ、私はスレッタよよろしくねサリー」


不幸中の幸いか人攫い達が何かしてくる事はなかったが、しかし何もしないと確実に悪い事が起こる。


何か行動を起こさないといけないと考えていた所、一筋の光が入った。


「サリー!!」 「パパ!!」



「よかった…本当によかった……」


なんと冒険者が助けに来てくれたのだ。どうやらサリーの父親であったらしい。親子は再会を喜ぶ。


「俺はナポスの冒険者ガルムだ」


その冒険者が見せたプレートは金色だ、その場の全員が一瞬で希望に照らされる。


「お前達!逃げるぞ!」


そう言ってガルムは手に持っていた大剣で鍵を破壊し、その場の全員を牢屋から出した。


ガルムはなんと土属性の魔法で砦のいくつかの箇所に穴を掘って最短でここまで辿り着いていた。


石造りの建造物から抜け出したその瞬間、真上から男の声が響いた。


「なに逃げようとしてやがる」


仮面の男が現れた。いや上から飛び降りて来たと言った方が正しい。何故か着地の衝撃をもろともせず、平然とこちらに歩いて来ている。


「あの男は!?」


スレッタが顔を歪ませる。この仮面の男のせいで捕らえられたため当然だ。


「うおおおお!!」


問答無用、ガルムは大剣を振り翳した。本来であればその大剣は人間一人など真っ二つにする事も可能だろう。そう本来なら


振り翳した大剣がその男に当たるとピタッと静止した。


「なに!?」


「何呆けてやがる。今度は俺の番だな!」


「ぐっ!」


予想外の事態に虚を突かれ、ガルムは仮面の男が持っていた剣の攻撃を受けた。しかしそこは金等級、最小限のダメージに抑えた。


「何者だ!貴様!」


「言うとでも思ってんのか?」


仮面の男は相手にしない。ガルムはこちらに向き直りこう言った。


「逃げろ!!ここは俺が食い止める!!」


「このまま逃がすと思ってんやがんのか?無駄だ」


その言葉と同時に騒ぎを嗅ぎつけた賊達がゾロゾロと集まり始める。


「追わせはしない!!断崖!!」


ガルムの大剣に掘られた魔法陣が強い光を放つ。そして次の瞬間、崖のような石や土の壁がガルムの後ろに展開した。それは仮面の男や賊達から少女達を庇う形だった。


「サリー!逃げるんだ!早く!」


「イヤ!パパも一緒に!!」


サリーは父親が残る事を拒絶する。しかしスレッタは半ば強引に手を引いた。


「なんで!?離してよスレッタ!」


「逃げるわよサリー!……お父さんの覚悟を無駄にしないで」


「すまない……娘を頼む…」


そしてスレッタ達はガルムの雄叫びを聞きながら走った。


「追え!!こっちだ!」


「お呼びじゃないわ!!石飛礫!!」


スレッタは魔法で追ってを迎撃する。


足に血が滲むほど全力で走った、だが


「どこ行こうってんだ?嬢ちゃん?」


先回りされていた。森の中を無我夢中で走っていたら、いつのまにか眼帯の男に剣を突きつけられていた。


「流石だぜ、ガント!経路を予測するとは」


「まぁな俺はこの付近なら目を瞑ってでも歩けるぜ」


地の利は向こうにあったのだ、


「聞いてやがらなかったか?無駄だってな」


後ろを振り向くと仮面の男が追いついていた。


「パパは!?パパはどうしたの!?」


サリーが震えた声でそう問いかける。


「殺した」


「う、嘘……」


三つ編みの少女サリーは膝から崩れ落ちる。


「お前らも理解しやがれ!!逃げるだけ無駄だとな!!地下牢に連れてけ!」


こうして振り出しに戻った。連行される途中、ガルムの亡骸を見せつけられた。それは傷だらけで一人で食い止め続けた形跡があった。


「パパ……ごめんなさい…」


「ボス、この死体どうします?」


「ほっとけ、どうせ獣が食いやがる」


その扱いを見て、スレッタが仮面の男に噛み付いた。


「この人でなし!!彼は敬意を払うべき立派な人よ!!」


「ならコイツみたいになりたいか?早く牢に入れ」


こうして再び収容されたのだった。


それからどれだけの時間が経ったのだろうか、地下牢は日の光も月明かりも入らないので分からない。希望が奪われ少女達は生気を失う。誰もが口を開かなかった。スレッタを除いて


「まだ、何か出来る事があるはずよ」


「もうやめてよ、あんな風になりたいの?」


そんな反論も出た。たがスレッタは引き下がらない。


「ならこのまま待っててどうなるの?このままどこかに売られる?冗談じゃないわ!」


「でもパパも殺された。もうダメだよ」


「あなたのお父さんはあなたの為に立派に戦った、だからそれを無駄にしてはいけない。特にあなたこそは幸せにならないといけないの、そうでしょ?サリー?」


「…………………うん」


絶望に打ちひしがれていたサリーの顔に少しだけ希望がよぎる。あるいは復讐心なのかもしれない。


だが


「なに話してやがんだ?無駄だって言っただろ?少しは学びやがれ」


地下牢に仮面の男が現れた。その場の全員が睨みつけるが動じる様子はない。


「いや、完全に無駄って訳じゃないかもな、おいそこのお前!」


仮面の男はそう言ってスレッタを指差した。


「来やがれ、お前が一番怪しい」


「私の何が怪しいと?」


「お前、この国の第二王女だろ?」


その言葉にその場の全員が驚愕する。


「!!?、何を言ってるのよ!?」


「早く来い!」


「待って!スレッタを連れて行かないで!」


サリーの抵抗虚しくスレッタは無理やり連れて行かれた。誘導されたのは明らかに設備の良い部屋だった。


そして、椅子に座らされ手を縄で拘束される。そして目の前に仮面の男が座る。


「正直に言いやがれ、お前の名前は?」


「スレッタよ」


そう毅然と告げる。彼女に全く怖がる様子はなかった。


「嘘だな、偽名だろそれ?」


「…………第二王女を探してるの?」


「あぁそうだ、特徴に合致する女を集めたが、お前が一番怪しい。」


「私が王女だなんて光栄ね」


「そういう度胸がありやがる所だ、それはそう簡単に身につくもんでもねぇ」


「人違いを認めたくないだけじゃないかしら?」


「……まぁゆっくり口を割らせてやる。何か隠してやがんのは確定だろ」


そして、仮面の男がスレッタに近づこうとした時だった。




ドゴーンッ!という漠音が周囲に響いた。そして次に見張りの叫び声が聞こえた。


「敵襲!!敵襲だあーーー!!!うがっ!?」


(敵襲!?ガルムさん以外にも助けが!?)

スレッタは内心そう期待を膨らませた。一方の仮面の男は不機嫌だ。


「クソが!おいそこのお前ら!この女を見張っておけ!絶対に逃すな!」


そして、仮面の男は外敵の対処に向かうべく部屋を後にした。


そして現在に至る。外が何やら騒がしい。明らかに戦闘が起こっているという事が分かる。


部屋の中の敵は二人、どう逃げ出そうかと考えていた所、それどころではない事が起こり始めた。いや入って来た。


「うあぁぁあぁ〜〜」



「なんだコイツら!?」「ゾンビだと!?どっから湧いて来やがった!」


部屋にゾンビやスケルトンなどのアンデットが侵入して来たのだ、突発的戦闘になる見張りの二人


スレッタはここが好奇とばかりに縄を炎の魔法で焼き切り、部屋から飛び出した。


「待て!クソ!」 「邪魔だ!死に損ない共が!」


見張りはアンデットの相手で動けない、それに対してスレッタには攻撃をしてくる様子はない。つまりは


(死霊遣い(ネクロマンサー)が助けに来てくれた?)


そう結論付けた。そしてスレッタは複雑な構造の砦を出口を探して走り回る。


壁を壊して無理やり出る事も考えたが、ここが何階なのかも不明なのとこの古そうな建物自体が倒壊する恐れがある為諦めた。


小窓から見える外の景色で今が夜だと初めて知る。新月なのか月明かりすら見えない。


外の光を浴びるのはもう少し先になりそうだ、とスレッタは心の中でそう思った。


チート持ち召喚者は現地民からすればすごく理不尽に感じるのでしょう。次回からは通常通り六樹視点に戻ります。よく考えたら次回で50話の大台に乗のか……

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