48話 討ち入り
初期の投稿を手直ししていると、誤字脱字が多くて驚きました。
月明かりすら無い砦、その正門の見張り番の二人に近づいていく人影があった。
門番は槍を構え警戒するが、かがり火に照らされた顔を見てすぐにそれを解いた。
なぜならその人物は昼間から見回りに出ていた仲間だったからだ、そしてその仲間は剣を杖代わりに使いボロボロの状態でこちらに歩いてきていた。
「ガントか!?何があった!?」
「……………うっ……」
だがその男は何も言わない。もしかしたら何かしらの要因で喋る事も出来ないのかもしれないと考え、二人の見張りはとりあえず仲間の救護を優先する。
「よし中に来い」「歩けるな?」
暗い場所だったためか二人は気づいていなかった。
運び込もうとしている同僚の顔色が不自然である事に
そして一人はよほど親しかったのか装備品について指摘した。
「ところでお前、そんな剣持ってたか?」
「………」
そう言って杖代わりに慣れない手つきで握りしめている左右非対称の両刃剣を指差した。
「敵から奪ったんだろ!それより早くコイツを運び込むぞ!誰にやられたか聞き出す必要があるからな」
二人は男の負傷した同僚を心配してか肩を貸して砦の正門の中まで共に移動した。そんな時、一人がある異変に気づく
「…!?お前!なんでこんなに冷たいんだ!?まるで死人みたいだ!」
しかし気付いた時にはもう遅かった。
遠くから様子を伺っていた六樹はスキルを発動した。
[集積衝撃]
ドゴーンッいう音が周囲に拡がり周囲が吹き飛ぶ
衝撃波がガントの握りしめていたアングリッチから放たれた。仲間の心配をした事により、自ら爆心地に近づくという皮肉な結果となる。
(やっぱり直前に溜めたエネルギーだけだと威力が少ないな)
六樹は内心そう考える。しかし衝撃波は目的を果たし砦の正門を破壊した。
「……っ!!て、敵襲!!敵襲だあーーー!!!うがっ!?」
まだ生きていた見張りの一人が仲間に敵襲を知らせるが、すぐに赤い短剣が頭に突き刺さり動かなくなる。
そして無人となった正門に六樹が悠々と現れこう呟いた。
「出ろ」
次の瞬間、アイテムボックスに閉じ込めていたアンデット達が現れた。その数はスケルトンが10、ゾンビが7、グールが4、いや今二体程増やしたから6体、そしてゴーストが5体の計28体だ
「ゴーストは砦の上から見張りを潰していけ、残りは砦に入って敵を殲滅しろ、白髪の少女と武器を持たない奴は殺すな、行け」
六樹の呼び掛けに応じ死者達は一才に動き出す。
「さて、外道の顔を拝みに行くか」
六樹もそう呟きながら砦に入って行った。
◇◇
アンリは地下牢のある塔の扉の近くで身を潜めていた。見張りは一人、倒そうと思えば倒せるが今はまだその時では無い。すると、ナノハが近くにやって来た
「姉ちゃん、脱走経路の確認は済んだぜ、後は助け出せば兄ちゃんのアンデットが護衛して一番近い集落まで運んでくれるはずだ」
「ありがとうございます。となると今は待つだけですね」
ナノハは待機時間に疑問に思っていたことを口に出す。
「そういやさっき、兄ちゃんの剣をボコボコ殴ってたけど、あれ一体何やってたんだ?」
「あれは大技を出す為に力を溜めてたんです。すぐに分かりますよ」
そうして少し待機していると正門の方から何かが爆発したような音が響いた。そして叫び声があがる。
「敵襲!!敵襲だあーーー!!!うがっ!?」
次の瞬間、砦の中がざわついたように感じた。窓などから断片的な情報しか得られないものの、砦の賊達が正門の方に向かって行くのが分かる。
そして、目の前の見張りも明らかに動揺していた。
「敵襲だと!?俺はここで見張っとけばいいはずだよな!?いやここもマズいんじゃ無いのか?」
オロオロする見張りにアンリは静かに近づきそして後ろから組み付き腕で絞め落とした。
「う!!…………うぅ………」
声にならない音を発して見張りの男は気を失う。
「よし、早く終わらせましょう。」
「だな、兄ちゃん一人に戦わせるのは気が引けるしな」
そう言ってナノハとアンリは塔の扉を開けて中に入った
「これは…なかなか複雑な構造をしていますね」
開口一番アンリがそう漏らす。事実、砦の内部は道がジグザグに造られており分かれ道も多かった。
「敵に攻め込まれ辛くしたんだろ!付いてこい!コッチの筈だ!」
そう言ってナノハは駆け出した。
◇◇
「かかれー!!」 「「「おおーー!!!」」」
「「うぁあぁ〜〜〜」」
「お前!?リバルか!?よ、よせ!があっ」
砦の正門付近では迎撃部隊と六樹のアンデット達が死闘を繰り広げていた。六樹はまだアンデット達に大雑把な指示しか与えられない為、とにかく突撃させているような状態だ
「……アンデットは知性が無い分一兵卒にも劣るな……それに元が仲間だった奴らは特に動きが悪い、嫌々従ってるのか……まぁ心理的な揺さぶりには使えるが」
血が飛び散る戦場を見ながら六樹は冷静に観察する。
そして、敵の尖兵を突破するため号令を掛けた。
「猪共!整列!…………突撃!」
「グヒーー!!」 「マズい逃げろ!うあぁー!!」
角猪のゾンビやスケルトンを突撃させる六樹、狭い通路内では長い角は不可避の槍として敵を貫いた。そして、一帯の制圧を完了する。
「く、くそ!このやろウガッ!」
生き残りもとどめを指す。魔力を温存しておきたいので今殺した者達をアンデットにするのは見送る事にした。
「さて、俺はどう動くのが正解か」
アンリ達が少女達を解放する手筈なので地下牢のある塔に向かう必要は無い、むしろヘイト管理という観点では向かわない方が理に適っている。
となると六樹が今行うべきは雑兵の殲滅か、もしくは大将の首を取る事となる。すなわちクラスメイトとの対決だ
正直顔を突き合わせて話し合った所で解決するとは思えない。その場合殺し合いに発展するのであまり気乗りはしない。
しかし、相手がどんなチートを持ってるかも未知数だ、一度対峙しておくのも有りだろう
「仕方ない、頭を狙うか」
六樹はアンデット達を引き連れて再び進軍し始めた。敵の第一派を突破し、しばらく通路を快適に進んでいたがエスタが警告を発した。
エスタ(魔力を見て確認したが、この先にかなり集まってるぞ、それに妙な気配も感じる)
「俺の知人か?」
エスタ(かもな、向こうは白の構造的に王広間で迎え撃つ布陣だろう。このまま正面から突っ込むのはどうかと思うぜ)
六樹はしばらく考えた後、アンデット達に命令する。
「半分は壁を登って上の階に攻め込め、もう半分はここに残れ」
10体余りのアンデット達は窓から壁を登り上階に行かせ撹乱するように命令する。そして、残りの半分は再びアイテムボックスにしまいこんだ。
「んじゃ、俺は謁見といきますか」
そう言って六樹は一人で敵が待ち構える大広間に足を向ける。
カツカツと六樹の足跡だけが響く大広間には数十人のいかにも悪人顔の賊達がひしめいていた。堂々とゆっくりと歩いていたためか、攻撃してくる者はいなかった。
ただそれは1人で現れた者への敬意などではなく単に六樹1人なので甘く見ている可能性が高い。その証拠に賊達はいつ襲いかかってやろうかとニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。
「お前らの頭目はどこだ?」
大きな声という訳ではなかったが、六樹の声が大広間ではよく響いた
すると、大広間の2階の吹き抜けになった部分から、1人の人物が現れる。
その人物は話に聞いていた通り仮面を被っていた。そして、2階から自身の部下に囲ませた状態の六樹を見下ろしてこう言った。
「1人で討ち入りとは無茶しやがる!見ての通り俺がここの頭目だ」「ショット」
言い終わる前に賊達の頭を名乗る男の顔面に衝撃が走る。
バキッ!!という音が鎮まり返った室内に響き渡った。六樹が小石を魔法で射出し仮面を叩き割ったからだ。
突然の先制攻撃に仮面の男は顔を隠すのも忘れて激昂する。
「!!…くっ!、何しやがんだ!!」
そしてその怒りに満ちた素顔を六樹は観察する。それは紛れもなく見慣れたクラスメイトのものだった。
「……よぉ、久しぶりだな、安永」
安永龍翔、それがコイツの名前だ。
しかし安永の顔には一点だけ見慣れない箇所があった。
「随分と大怪我したみたいじゃねーか?その目元まで伸びてる切り傷はどうしたんだ?」
「!!??何者だ?」
突然名前を言い当てられ、困惑する安永。そして改めて侵入者の顔をよく観察する。明らかに様変わりしていたもののようやくその正体に気づいた。
「お前六樹か!?ちくしょう!!生きてやがったのか!!」
「割と最近転移してな、まだ何が何やら」
「クソが、大人しく死んどけよ!」
その物言いに六樹は思い出す。
「……そういやお前、俺の事嫌ってたな、まぁお前に嫌われるのは別に構わんけど」
六樹は挑発的な態度をとりつつも内心冷静に頭を巡らせていた。
(外道が安永で本当に良かった。これで心置きなく殺せる。あとはアンリ達が動く時間を稼がないとな)
クラスメイトとの再会は殺伐としたものだった。
そして、六樹はある違和感に気づいた
(ところでコイツ、なんで無傷なんだ?)
◇◇
「皆さん!助けに来ました!逃げてください!!」
アンリがそう言って地下牢を開放する。近くには人攫い達が数人倒れていた。
地下牢に囚われていた十数人の白髪の少女達は歓喜するものや、緊張が解けて泣き出す者もいた。だが、ナノハは一喝した。
「悪いが泣いてる時間は無い!!仲間が命張って時間稼いでんだ!!私に付いてこい!」
「「「はい!」」」
少女達の気を引き締め、出口を目指そうとする。すると綺麗な白髪を三つ編みにした少女がアンリに不安そうに話しかけてきた。
「あ、あの、まだ、もう一人いるんです!」
その言葉にアンリの顔が引き攣る。
「それは大変ですね、どこにいるか分かりますか?」
「分かんない、あのお姉さん皆んなで逃げ出そうとしたのがバレて連れて行かれちゃったんです。一番怪しいからって」
「……怪しい?」
引っかかる言い方をする三つ編み少女にアンリが自然と聞き返した。少女は答える。
「うん、この国の王女様なんじゃないかって言って連れて行ったの」
三つ編みの少女はそう真剣に話すのだった。
六樹のとりあえず先制攻撃しようとする姿勢は結構好きです。次回は少し違う視点となります。




