47話 赤鴉の物見砦
今回はちょっとキツイ描写が出るかもしれませんが、どうかご勘弁を、六樹の人格を表現するのに必要だと判断しました。
捕獲した四人が目を覚ました。
「ん!?クソ!」
賊の一人がそう吐き捨てる。体が木に縛り付けられているからだ。
そして、四人の目の前には六樹とナノハがいた。
六樹が縛り付けられた四人にこう言う。
「お前らに聞きたい事がある。拒否権は無い、まず一つ目、お前らの根城はどこだ?」
周囲が沈黙で包まれる中、六樹の一番近くにいた一人の男がこう吐き捨てる。
「知るかよ!!自分で探せ!」
「知らない訳ないだろ?あと一つ確認だが……お前らは最近話題になってる人攫いだよな?」
六樹の声が少しずつ冷たくなるように感じる。まるで生気が抜けているようだ、だがその男は挑発的な態度を続ける。
「だったらなんだよ!?ギルドか国に突き出すかぁ?」
「質問に答えろ。アジトの場所はどこだ?」
「教えねーて言ってんだろ!!分かんねーのか?この脳なs
言い終わる前にザシュッという音と共に男の首から上が落ちる。
「……は?」
生首が発したその言葉を最後に男は動かなくなる。胴体からは鮮血が忘れていたかのように遅れて吹き出した。
「よかった、まだ三人もいる」
六樹はそう軽く呟く、罪人と言えど一人の人間を殺めたとは思えない位に軽い。
「「うあああああー!!!」」
それを見ていた、他の3人が恐怖に慄き、半狂乱の様になる。
だが
「……黙れ」
六樹の短くも冷たい一声に三人は静まり返る。
そして質問が続いた。
「もう少し具体的に言うか、お前らの根城は赤鴉の物見砦か?」
「!、なんでそれを!?」
「あってたか」
賊の1人が口を滑らせ、ナノハの推測が確信に変わる。
「で?お前らの組織の規模は?」
「い、言えない。言ったら殺される」
「その口は何のためについてんだ?喋らないなら塞ぐか」
そう言うと六樹はその男の口をこじ開けこう呟く
「ぐっくあ!?」 「暗障」
次の瞬間、口に黒い粘土のな様な物が突っ込まれた。
「!!んんうううううぅぅ……」
「硬化」
「がっ、がっ………………」
粘土が固まり気道を塞ぐ、まるで口の中にコンクリートを流し固めたような形となる。
「何やってんだ!?クソッ!この人でなしが!!」
罵倒が響くが六樹は意にも介さない。二、三十秒ほど窒息させてからやっと解放された。
「くはっ、ハァハァ……頼む!もうやめてくれぇ…組織の人数は五十人位だ!」
「言えるじゃねーか、それにしても結構多いな」
すると今度はナノハが質問を始めた。
「おい!お前らは何の為に人攫いなんかしてやがんだ?」
「ガハッ、はぁ…はぁ…そりゃ売り捌いて金にする為に決まってんだろ!」
「だったらなんで最近白髪の女子ばっかり狙ってやがんだ!?」
六樹はナノハが被害者に偏りがあった事実を把握していたことに内心驚く。
「知らねーよそんな事!ボスからの命令だ!」
「そのボスってのは何者だ?」
「………知らない」
次の瞬間、ナノハは持っていたナイフをその男の脚に突き刺す。
「ぐっああぁ!!」
「さっさと教えろよ!」
「本当に知らないんだぁ〜、俺は下っ端だがらぁ、アイツ!アイツならきっと知ってる!」
「キナンてめェ!俺を売んのか!?」
そう言って眼帯を付けた男を指差す。六樹は眼帯の男に質問する。
「ボスってのは?何故白髪の少女ばかり狙う?」
すると、横から最後の1人が眼帯の男に口を出す。
「ガント!余計な事言うんじゃねーぞ!俺たちも殺されちまう!」
六樹はそう叫ぶ男の首を掴んでこう唱えた。
「解毒:特」
次の瞬間、その男は一気に真っ青な顔となり動かなくなる。文字通り血の気が引いたのだ
「?!?……お前今何しやがった!?」
「言う訳ないだろ」
六樹は人間の言語を介さずに詠唱したため、他の者には謎の即死攻撃という情報しかわからない。
動揺する眼帯の男に六樹が催促する。
「早く話せ」
「断る。前にチクった奴は地獄の果てまで追い回された挙句、ボスに捕まって生きたまま海に沈められたって話だ、殺された方がマシだな」
「そうか、ならこうする」
アッサリそう言うと、六樹は先程解毒魔法で殺害した遺体に手をかざしこう唱える。
「起きろ、食人鬼化」
黒いモヤの様な物が遺体に入り、ビクッと屍が動き出した。食人鬼化魔法、ネクロマンサーの専用魔法の一つであり死んで間もない遺体をグール化させる代物だ
「グウウウウアア〜」
「肉を喰い千切れ、脚の方から順番にだ」
「おい嘘だろ!ザルバ!しっかりしろ!やめろ、こっちに来るな!!ぐああぁ!!」
かつて仲間だった者に脚の肉を食いちぎられ、眼帯の男は絶叫を上げる。
「嗚呼ァぁあぁー!!クソ!やめうああ!!」
脚の血肉が辺りに散乱する。六樹は特に表情を変える事もなくそれを無機質に眺めていた。
「……………………止まれ」
しばらく苦痛を与えた所で、六樹はグールの動きを止め、再び質問した。
「これで言う気になっただろ?それとも自分の骨を観察してみるか?」
「はっ、はっ!ううぅ……うっ、わっ、分かった。言う!俺が知ってる事は全部話すから!もうやめてくれ……」
眼帯の男は苦痛に耐えかねて遂に洗いざらい情報を吐き出す。
「ボスは元異世界の勇者だったって話だ」
異世界の勇者、その単語に六樹とナノハは顔を見合わせる。本当であれば強敵となる可能性が高い。
「名前は?」
「分からない、ボスは名前どころか顔すら余程の側近でもねえと拝めないんだ」
「おいオッサン!適当な嘘ついてんじゃねーよな!?」
「頼む!信じてくれ!本当なんだ!ボスは誰一人信用してなんかねえんだ!」
ナノハが凄むが答えは変わらない、どうやら本当の事を言っているようだ。
「で?白髪の少女を狙ってる理由は?」
「詳しくは知らないがこの時期位に王女の一人がここの峠道を通る可能性が高いらしい。だから待ち伏せして誘拐しろって指示が来たんだ」
やはり黒か、ダリアが懸念していた通りという訳だ。
ナノハが真剣な表情で質問する。
「指示が来たってのは、どこから来たんだ?」
「知らない!なんか色白のガキが使者としてふらっと現れた位でどこからの指示かはボスしか知らない!」
この位が下っぱの限界か、と考えた六樹は質問を変える。
「最近金等級の冒険者が向かった筈だが、何か知ってるか?」
「もう死んだよ!ボスには敵わなかったんだ!」
やはりか、どうやら悪い予想が当たっていたようだ
「そこまで強いのか……逃げることすら出来なかったのか?」
「逃げる事くらいなら出来たと思うが、ガキ共を逃がそうとして殺されたよ。バカな奴だぜ」
するとナノハが六樹の前に出た。どうやら彼女が尋問していくようだ
「おい、砦の内部の構造と人員の配置、あと攫った奴らはどこにいるのか詳しく教えろ」
◇◇
ナノハは残った二人から情報を聞きつつ簡易的な地図を作成した。
「兄ちゃん、もういいぜ……聞きたい事はもう聞けた」
「質問に答えたぞ!俺たちを解放してくれ!!」
六樹は二人に近づき、肩に触れた状態でこう言った。
「ありがとな、お前らのおかげで色々と楽になりそうだ」
柔らかい雰囲気の六樹に二人の賊たちは少し安堵の表情を浮かべる
「そうだろ?だから早く俺たちを…
「だからお前たちは苦しまずに殺してやる。安心しろ、ちゃんと後で成仏させてやるから」
「え?」 「は!?ふざけんじゃne
言い終わる前に六樹は呪文を唱え、二人は即死する。
六樹達は賊達をどのみち生かして返すつもりは無かった。
拘束しても逃げられる恐れがあり、町まで連行するだけの時間もない、もしあってもどちらにせよ人身売買は絞首刑か斬首刑だ、この場で解放するなどもっての外だ、必然的に殺害するのが理にかなっていると判断したわけだ。
六樹が止めを刺した二人をアンデットにしている途中、ナノハが六樹に質問した。
「さっきのそれ、どうやって殺したんだ?魔法だよな?」
「秘密だ、知らない方がいい…」
治療系魔法を応用して即死させると言うのは広まらない方がいい。そして、六樹はナノハに一つ謝罪する。
「隠しててすまない、俺の本当のジョブはネクロマンサーだ」
「別にどうでもいいぜ!隠してた理由も大体想像つくし、でも隠し通す事も出来たんじゃないのか?」
「まぁな、しかしどうやら出し惜しみ出来る状況でも無さそうだったからな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「着いたぜ、あそこが例の砦だ」
三人は目的地に到着した。
ナノハにならって草陰から様子を見ると、そこには石造りの廃墟があった。
平野部を見下ろせる高台にあり、背後に岩壁がそびえ立ち他の三方を石壁で固めている。
西洋の城のようではあるがところどころ崩落している箇所もあり、常に生き埋めにされるリスクがあるためあそこで暮らしたいとは思えない。
「攫われたのは地下牢に閉じ込められているんだよな?」
「あぁ、話によるとあの塔の下だ。明日奴隷商が1度目の買い取りに来るらしい。あんま時間ねーぞ」
「攻め手のアドバンテージを活かすなら奇襲だな」
「待てよ兄ちゃん。動くのは夜だ、今日は新月だから都合がいい」
砦の建物の配置を確認したのち一度森に戻り作戦会議をする。まず話を持ち出したのは六樹だった
「被害者の救出と賊の殲滅、優先事項を決めないといけない」
すかさずナノハが反応する。
「私は攫われた奴らの救出を優先するべきだと思うぜ、まだ警戒されていない内に連れ出せればベストだ」
だが六樹の考えは違うようだ
「その意見は分かる。でも俺は賊の殲滅を優先した方がいいと考えてる。」
「その心は?」
「完全にバレずに連れ出せるなら最善だけど、失敗した場合は非戦闘要員を庇いながら戦う事になる」
「それに監禁されてる被害者がどうなってるのかもよく分からない、負傷してたら難易度がかなり上がる。先に行った金等級と同じ末路になりそうだ」
だが、ナノハも納得しかねている様子だ
「話は分かるが先に殲滅するにしても人質を取られて手を出せなく可能性もあるだろ?」
「そうだよなぁ……どのみち問題が出てくるか……」
六樹が少し考えているとアンリが意見を出した。
「二手に別れませんか?私は攫われた子達の救出に向かいます。もし怪我をしていても私なら治せますし、リョウは陽動をかねて討ち入りを行なっては?」
「……危険すぎる」
そう口から漏れ出る六樹、アンリの提案は妥当に感じる。だが心情的には賛同しづらかった。
「なら姉ちゃんの援護を私がやるよ、それならリスクは減るだろ?」
ナノハがそう言ってアンリに賛同する。
「……二人がかりなら……だがナノハ、君は魔法使いだろ?狭い屋内で大丈夫か?」
「近接にも多少の心得があるからな!兄ちゃん、そっちこそ1人で討ち入りなんて出来んのかよ?」
「こっちから仕掛ける分には問題無い。俺は一人だけど1人じゃないからな」
「じゃあ決まりだな!兄ちゃんが討ち入りを行うのと同時進行で私たちが攫われた奴らの救出、ある程度逃したら私もそっちを手伝うぜ!」
「分かった。それで頼む」
こうして方針を決めた三人は携行食を食べながら夜を待つ。しばらくするとナノハの言っていた通りこの日は新月だった。月明かりすら消え失せた夜闇が周囲を包み込む。
六樹はその夜闇に紛れ、夜襲の配置に着くのだった。
最近急にブックマークと評価が上がってとても嬉しい限りです。
一応補足しますと、六樹は拷問する事に特に快も不快も感じていません。ただ必要だから行っているだけです。基本的に良識もあり分別もあるが容赦は無い、それが彼です。




