42話 納得のいく後悔
今回は飛び飛びになってしまいました。
少年と別れてから程なくして、六樹達は竜の巣穴にたどり着いた。
洞窟の中の景色は六樹が見たものとさほど変化してなかった。
巣穴の奥に進んでいくと、そこには金や銀、宝石が埋め込まれた装飾品や食器などの宝が一箱程貯められていた。
「リョウ!すごいです!ロマンって感じがしますね!?」
「よし!しばらく金の心配はしなくてよさそうだな」
とりあえず財宝を回収し、更に奥に進むとより珍しいものがあった。アンリが目を輝かせて話し始めた。
「初めて見ました。最上級の素材ですよ」
「これは……竜の鱗か?」
そこには透明でありかつうっすらと光を反射し虹色に輝く鱗が散らばっていた。
ハルゴスの巣穴から幾らかの財宝と竜の鱗を持ち帰り、すぐさま素材を鍛冶屋に持ちこみ、加工を依頼した。鍛冶師は竜の鱗というレア素材を前に興奮を隠さないでいた。
なにやら竜の鱗は鋼鉄よりも丈夫で魔力を散らす事で魔法も防ぐらしい。もちろん限界はあるがその性能は破格だそうだ。話終わるとすぐさま鍛冶場に行ってしまった。
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そして六樹は今夜もまた、アンデットを使役する訓練をしていた。
死者達を前にすると、昼間に聞いた友の死もいう事実が楽しかった記憶と共に頭をよぎった。
「なぁ!亮ちゃん!」
「ん?どうした?みねちゃん?」
「釣り行こうぜ!」
午前授業の日、教室で突然声をかけてきたのは峰山だ、峰山はマイペースな奴で思い立ったが吉日を地で行くような奴だった。
「また突然だな……まぁ今日暇だし行くか!海か川かどっちだ?」
「穴釣りってのに挑戦したいし海で!桑ッチはもうも誘ってるよ!」
「あとは、海釣りなら村上も誘うか」
「そうだな、俺が声掛けとくよ!亮ちゃんはとりあえずレンちゃんに声かけといて!」
「分かった」
「釣った魚みんなで食べよう!亮ちゃん!調理は頼んだぞ!」
あの時はカサゴが釣れて唐揚げにしたんだったな
などと思い出に浸る六樹、しかし友人の死という事実が重くのしかかっていた。
クラスメイトの四分の一近くはは戦死したとは聞いてはいたが、いざ友人の死を聞いて内心動揺していた。
「また釣り行きたかったな……みねちゃん…….もういないのか、死に目にも会えない無かったのか」
峰山の死は既にこの世界では過去の事で、次第に歴史になるのだろう。だが、六樹にとってはそうではない。
友人達と過ごした思い出がつい昨日の事のように思い出されるからだ。しかし既に手遅れだ、もはや過去は変えられない。
そして、そうはならなかった別の世界を想像してしまう。
「もし、俺がみんなと転移してチートを授かってたら……死なせずに済んだのかな……」
実際には起こらなかった事を考える。
だか六樹はすぐに切り替えた。
「過ぎたことはどうしようもない、テメェに過失が無いなら尚更だ、それに頭に乗り過ぎだ!」
そう自分に喝を入れる。
「もうダチを失いたくないなら守れるだけ強くなれ!力が無いなら知恵を絞れ!六樹亮!」
ビシッと自分の頬を叩くと、改めて前を向く。
死後の世界に友達がいると考えると死というものが少し身近に感じられた。
そして、目を凝らして夜闇を見つめる。そして、魂そのものを知覚する。
すると、闇に潜むゴーストを見つけた。拘束したゾンビやスケルトンではなく野良のゴースト、当然ながら危険な存在だ
「これでいい、死者の恐怖を避けて何が死霊遣いだ」
昼間に少年が言っていた言葉を思い出す。
「命に敬意を払い、魂を弄ぶ覚悟をする。そして本心から相手に向き合う。」
すると、六樹の存在に気付いたのか、一体のゴーストが六樹の生気を吸い取ろうと近寄って来た。
「見たなぁ〜〜〜〜」
襲い来る悪霊に六樹は手をかざし告げた。
「俺に従え」
ピタッとゴーストの動きが止まる。そして、おもむろに地面に降り、まるで平伏したような姿勢となってこう言った。
「…………仰せのままに」
六樹の死霊遣いとしての始めの一歩を踏み出した。
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数日後、この日は鍛冶屋に来ていた。頼んでいたものが完成したからだ
「待たせたな、楽しい仕事だったぜ」
鍛冶師はそう言いながら六樹に日本刀を手渡した。
「すごいな、あんなに粉々だったのにちゃんと直ってる」
六樹がマジマジと覗くと、そこにはうっすらと金属とは思えない独特の光沢があった。
「気づいたか?実はその刀に竜の鱗を使ってんだ!おかげで魔法や魔力を切断するにはもってこいの性能に仕上がってるぜ!」
エスタが興奮気味で語りかけてくる。
エスタ(俺の依代が直ったぜ!)
喜ぶエスタに六樹が質問する。
六樹(エスタ、刀の中に戻れるか?)
エスタ(そうだな!試すから刀を握れ!)
六樹が刀の柄を握り込むと、手のひらから何かが移動したような感覚と共にエスタが六樹の中から消えた。
そして、数秒すると六樹の中に再び戻ってきた。
エスタ(相棒!どうやら俺はこの刀とお前の中を自由に動けるらしい、だが前みたいに刀を動かすのは無理そうだ)
エスタを体内に入れた時は刃を突き立ててしたのだがどうやら今は自由移れるそうだスキルである[剣心刀身]の効果だろうか?それともエスタと魂が繋がってるのか色々と検証の余地がありそうだ
すると、鍛冶師がこんな質問をした。
「その刀の名前は?」
この刀に名前は彫られていない、エスタに聞いたが鬼道清兵衛は刀自体をエスタと読んでいたため知らないそうだ。そもそも名前があったのかどうかも怪しい。
だからこそ六樹は名前を決めていた。
「鬼道……この刀は霊刀・鬼道だ」
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その日の夕方、アンリの家に突然の訪問者がいた。
「「アンリ!誕生日おめでとう!!」」
扉を開けると来たのはルーナとグレースだった。しかし玄関に出迎えていたのは六樹ひとりだった。
「あ、……なんかごめん」
「いや、私達が先走り過ぎただけだ」
気まずい雰囲気が流れる中アンリが様子を見に来た。
「え?グレース!?ルーナ!?」
「あ!アンリ!誕生日おめでとう!!プレゼントあるよ!それにゲロンがケーキ買ってくれたから後で食べよう」
そう言ってルーナが甘い香りの漂う紙袋を手渡す。
当のアンリは少しキョトンとしていた。
「そっか、今日私の誕生日でしたね……最近波乱続きで忘れてました」
「いくつになるんだっけ?」
「今日で16になります。………あっ!!」
六樹に対して年齢を隠していたアンリ、しかし口を滑らせのを六樹は聴き逃さなかった
「………アンリって、歳下だったのか……」
「忘れてください!!」
事情を知らないルーナとグレースは不思議そうな顔をした。
「アンリ、彼に歳を隠していたのかい?」
「なんでそんな事してんの?」
「……その……お姉さんに見られたくて……」
「アンリも子供っぽい事すんだね?」
二人は呆れた表情をするのだった。
その後、誕生日パーティーとして四人分の料理を六樹が作り、食事が終わると二人がプレゼントを渡し始めた。
「アンリ、私からはこれを」
「洋服ですか?」
グレースが手渡したのは白いワンピースだ
「君はもう少し着飾ってもいい気がするからね」
「ありがとうございます。大事にしますね」
「はい!私のはこの魔石だよ!魔力の塊だからお守り代わりになるよ」
「ありがとう、あなたらしい贈り物ですね」
ルーナから赤い宝石のような石を受け取るアンリ、そこに六樹が声をかけた。
「実は、俺も渡したい物があるんだ」
「え!?リョウも!?」
「誕生日ってのはさっき知ったんだけど、元々これを渡すつもりだったから」
そう言って六樹は鍛冶屋で依頼していた、鎧と籠手を渡した。
「それは!竜の鱗か!?」
グレースが驚きの声を上げる。その鎧と籠手はスケイルアーマーの様な見た目だが透明であり軽かった。
「え、これを……私に?」
「ほら、前に呪いのブレスを受けた時に鎖帷子が壊れてたからさ、代わりが必要だと思って」
「あ!あ!ありがとうございます!!!」
「フュー!よかったじゃん!アンリ!」
ルーナが声をかけるがアンリは何故かワタワタしている。そしてみるみる顔が赤くなり始めた。
「えっとこれはそういう意味?いやでもリョウはそんな事知らないはずだしでももし知ってたら……」
なんだか小声でブツブツと呟いている。
「アンリ?」
「わ、私向こうで試着してきます!!」
「え?アンリ!面白いところなのにどこ行くの!?ちょっと待ってよ!」
そう言ってアンリは自室に入っていルーナもそれに付いていく
仕方ないので六樹とグレースは食器などを片付け始めた。作業中にグレースが優しく話しかけてきた。
「ムツキ、知っているかい?この国では意中の相手に求婚する時に鎧を贈る風習があるんだよ。君を守るって意味でね」
「え!?じゅあ……」
「そういう事だ、それでアンリはしどろもどろになったんだよ。もっとも、アンリは君がその風習を知らない事も分かっているようだが」
六樹はいつのまにかプロポーズまがいなことをしていたという事に驚く
「ふふふ、君は彼女の見たこともない表情を引き出すから面白いよ」
「褒めてるのか?」
「そう受け取って構わない」
そしてグレースは六樹に対して本題をぶつける。
「ところでムツキ、君はもうすぐこの町を発つのだろう?」
洗い物をしながらグレースがそんな話題を口にした。
「あぁ、あと一週間位でウィザリアに出発しなくちゃいけない」
「アンリはどうするんだ?」
グレースは手を止めて真剣そうに六樹を見つめる。友人を本気で心配していると言った表情だ
「アンリは付いて来るつもりだ、その気持ちは嬉しいしこれ以上ない位有難い。だけど……正直迷ってる」
「というと?」
「俺がこれから行くべき所は危険な道かもしれない、アンリを巻き込んでいいのかどうか……」
六樹がこれから歩むべき道は言わばこの世界の台風の目に進む様な物だ魔法試験はまだしも危険は絶えないだろう。
「行きますよ」
「「アンリ!?」」
そこには鎧を着たアンリがいた、その顔は真剣そうだった
「アンリ、前みたいに君に何かあったら……」
「それはこっちののセリフです。あなたを一人で行かせてもしもの事があれば私は自分を許せなくなる」
アンリは強くそう訴えかける。だが、六樹はまだ続ける。
「でも、ここにいた方が安全だ」
「私にも目的があります。それに今この世界に安全な場所なんてありません。だから決める必要があるんです。」
「……何を?」
「もし何かあった時、その場に居合わせたのに助けられないのか、もしくはその場に居合わせる事すら叶わないのか」
「リョウ、あなたはどちらで後悔したいですか?」
アンリがそう問いかける。普段人々の命を救う事に全力を尽くしている彼女とは思えない考え方だ、いや彼女だからこそなのかもしれない。
六樹は少し考えた後、結論を出した。
「…そうだな、全て終わった後に後から手遅れだと知るよりも、その場で全力を尽くした方がまだ納得できる」
その脳裏にはかつてのなつめ、そして既に故人となった峰山が浮かんでいた。
そして六樹はアンリに問いかける
「アンリ、君の力が必要だ。一緒に来てくれないか?」
「はい!地獄の果てまで離しません!」
アンリはそう宣言したのだった。
そう言えば六樹は鍛冶師のおっさんにはタメ口で話してるんですよね。六樹のスタンスは相手が砕けた態度ならこちらも砕ける。畏まったならこちらも畏まるって感じなので不自然ではないのかな?
でもよく考えたらこのおっさん代金も無いのに病気の治療を依頼してたんで、まぁタメ口きかれても仕方ないんじゃないかという結論になりました。
次回、遂にアルヒの町を出発です。面白ければブックマークや評価などを是非お願いいたします。




