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41話  屍に群がる者達

アバルがアルヒの町を離れて数日が経った。


「もしポルトに寄ることがあれば、俺に声をかけてくれ、上手い海鮮料理を奢ってやる」


スキルを伝授した後、アバルは六樹達にそう別れを告げ、いつの間にか帰っていた。


そして、この日はキョウやダクトも予定があり修行が休みの為、六樹とアンリは依頼を受けて森にいた。


その場所は白の山脈の麓、ハルゴスと戦った所だ。

ギルドの依頼によりハルゴスが目覚めさせたアンデット達、その残りを掃討する依頼が出ていたからだ。


当然六樹はアイテムボックスに詰め込むつもりである。


「よし、結構捕まえたな」


六樹は緋影を手で投擲、または魔法で射出して、アンデットに突き刺し、アイテムボックスに閉じ込める。

その光景を見てアンリが呆れる。


「神官の身としてはあまりいい気はしないですね……何というか故人に対する配慮が無いというか……」


死者を弔う立場の彼女からすれば当然の感想だ、むしろ心の底から軽蔑されてもおかしくないだけに寛容だとも言える。


「気持ちはわかるけど、何かしらの理由でアンデット(こいつら)の魂が現世に留まってるなら、問答無用で送り返すのも考えものだと思う、それに扱い方次第で救えるものもある訳だし」


「……まぁ一理位はありますね。私はやりませんけど」


そしてアンリが素朴な質問を投げかけた。


「ところでリョウ、ポンポン詰め込んでますけど、アイテムボックスの容量というのはどこまで入るものなんですか?もしかして無限に収納出来るとか?」


アンリの疑問は当然のものだ、六樹は何かとアイテムボックスに詰め込んでいるが特にキャパオーバーしたような事はない。


「上限はあるな、個数で言うのなら1万が上限だ」


「一万ですか、スキル所持者にはわかるものなんですか?」


「いや、普通に数えた、転移初日に砂粒を一粒一粒入れていって……」


「え?、あっ、大変でしたね」


アンリが軽くひいている。


正直言って個人としては持て余す容量だ。


現状集めたアンデットはおおよそ30体程だがまだネクロマンサーとして未熟な六樹は扱えてはいない。


見渡す範囲にのアンデットは捕獲し終えた。あたりを掃討し、一仕事終えたところで六樹は提案をした。


「アンリ、ちょっと行ってみたいとこがある」


「どうしました?まだ昼前ですからいいですけど……」


「ハルゴスが元々住んでいた洞窟に行ってみようと思って」


六樹はハルゴスの呪いによる悪夢を受け奴の記憶を垣間見た。その中で見た竜の巣穴が今どうなっているのかを確認しに行くのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


六樹は記憶を頼り山を登り続ける。記憶で見た景色により、大方の位置の予想は付いていた。それにアンリがこの場所の地理に詳しかったため、特に道に迷う事もない。


「ファンタジーだと、竜の巣にお宝が眠ってはなんてのは定番だけど、どうだろな?」


「そうですね、竜が財宝を溜め込むと言うのはよく聞く話です。ちょっとワクワクしますね!」


すると、近くの茂みがガサガサと音を立てて揺れ始めた。

サッと戦闘体制に入る二人、しかしそんな警戒はすぐに解かれる事となる。




「あー!すみません!…別に怪しい者じゃないです!」


そう言って、黒いフードを被った色白の美少年が姿を現したからだ、見たところ敵意はない。


「冒険者の方々…って事で……よろしいですよね?」


「はい、そうです。アルヒの町の冒険者です。」


アンリがそう答えた。まだ、少し警戒している様子だ


「そうですか、ならよかった……実は山越えをしたいのですが…道に迷ってしまって……よろしければ道案内をお願い出来ないでしょうか?……報酬なら支払います」


確かに少年はこれから山越えをするような大荷物だ、嘘をついているとは思えない。

その申し出にアンリは少し警戒を解いた。


「分かりました。私達も山の中腹まで行く予定なので構いませんよ。」


こうして一人の同行者が加わる事となる。

少年にアンリが質問する。


「山越えですか、かなり危険な道のりですけど大丈夫なんですか?あっ、ここの岩を左です」


「心配いりませんよ…慣れっこです………まぁ白の山脈は油断できませんが」


アンリのナビに従い、初見で来たら少し迷いそうな場所をするすると進んでいく。今は谷間の森を通り抜けて尾根に出ようとしている。


今度は六樹が少年に質問した。


「一人だと危険じゃないのか?」


「僕は一人ですけど……一人じゃないですよ」


「??……どういう意味だ?」


意味のわからないことを言う少年に六樹は首を傾げ、すぐに詳しく聞こうとするが、事態が動いた。


「オォーー!!」


どこからともなく鳴き声が響いたからだ。六樹には覚えがあった


「熊がいる。しかも怒ってる時の声だ、」


何か熊を怒らせた覚えはないのだが……と、そんな事を考えていると姿を現した。その熊はどうにもゾンビ化しているようだった


「あーなるほど、それで交戦的なのか、危ないからちょっと下がってろよ!」


「いえ、必要ありません……僕が対処します」


六樹が前に出ようとすると、少年が逆に前に出た。そして、ゾンビ熊が少年にめがけて一目散に突っ込んで来た。すると少年は手をかざして一言告げる。


()()()()()() 」


すると、ゾンビ化した熊はピタッと動きを止めた。


動きを止めた熊の頭に少年は手を置く、そして優しく撫でながらささやく


「………なるほど、それで起きてしまったんですね……あなたの懸念はよく分かります。……もう大丈夫ですから……()()()()()


少年が囁くと、熊はバタッと倒れ込み、元の骸に戻る。それをみて六樹が驚きの声をあげた。


「まさか、死霊遣い(ネクロマンサー)なのか?」


「はい……先ほど一人ではないと言っていましたが……それは霊や死者は僕に力をかしてくれますから」


少年はそう優しそうに話すのだった。





再び移動を始める三人、話題は当然少年の事になる。


「先ほどの熊ですけど、お祈りはしましたがあのまま放置しても良かったんですか?」


「はい…もう暴れたらしませんよ……自然と土に還るはずです。」


隣に本物の死霊使い(ネクロマンサー)を見て、六樹は質問する。


「実は俺もネクロマンサーなんだ!新人だけど、どうやって言うことを聞かせてるんだ?よければ教えて欲しい!」


「あなたもそうなんですか?……珍しいですね……この職業(ジョブ)は穢れたものと忌み嫌われるのに……」


少し驚いた様子の少年だったが六樹に話し始めた。


「死者を相手にする時には……そうですね、本当の心を曝け出すんです。」


「本当の心?」


「はい、あなたの抱える本心……取り繕ってはいけません…そういう取り繕ったものは……死者達が一番嫌うものなんです」


「善も悪も包み隠さずぶつけろと」


「はい…そうすれば、相手もあなたに歩み寄ります……そして、こちらは相手に強い意思を示せば…自ずと言うことを聞いてくれるんです」


「さっきの熊もそうしたのか?」


「先ほどは……彼女の記憶を読み取ったところ…洪水で命を失い、何もわからないまま……突然目が覚め混乱していたようです。……もう大丈夫だと寄り添う事によりすぐに成仏してくれました」


「俺にも出来るかな…」


「大丈夫ですよ……命への敬意と、魂を弄ぶ覚悟さえあれば」


そうレクチャーを受けていると、谷間を抜け尾根に出た。少しだが、雪が地面を覆っている。


今度は少年が話を振ってきた。


「最近……この近くで…アンデット化したドラゴンがいませんでしたか?」


「あぁ、いたよ」


すると少年は少し声のトーンが下がり、食い気味に質問をする。


「今……どこにいますか?」


その質問聞いた時、なんとも言えない恐怖心が六樹を襲う。


「あいつは討伐された、総力戦だったよ」


「………そうですか…一介の死霊使いとしては会ってみたかったんですが……」


不穏な空気が流れたが、六樹は強引に話題を変えた。


「そう言えば、山越えするんだよな?山の向こうにはモルガル共和国があるんだよな?」


「そうです……モルガル共和国に用があります。……しかしここ以外の国境線は…一年前ほどではないですが以前として泥沼の戦場ですから……」


しんみりとした表情をする少年、魔王の率いるモルガル共和国と、覇権国家であったガドル王国の戦争はそれほどまでに熾烈なのだろう。そして、その戦争の渦中にクラスメイト達が今もいるはずだ。



「一年前はそんなにひどかったのか…」


「えっと?……知らなかったですか?」


「あぁ、だから教えてくれないか?」


六樹の真剣な表情に少年は話し始めた。


「一年前に蟲人族の族長であり………幹部のひとり…[女郎蜘蛛]の()()()と、[絶対防御]のスキルを持つ勇者()()()()が相打ちとなったんです……」


(ミネヤマ…峰山だと!?みねちゃんが…死んだ…………)


六樹の顔が引きつる。しかし今は情報を聞き出すのが先だ、取り乱すな。すぐに表情を戻して話を聞く。


「相打ち?どういう状況でそうなるんだ?」


「その二人は双方高い防御力を持っていて…両陣営の前線の要だったんです……蜘蛛人(アラクネ)であるラネアは周到に用意した罠に勇者ミネヤマを誘い込み……遂には致死量の毒を打ち込みました。」


「……しかし勇者は強かった…最期の力を振り絞り……彼女に致命傷を与えました。………双方共に前線の要を失い……戦いは膠着状態となりました。」


「そんな事があったのか…」


その壮絶な最期を聞き、六樹の中に形容し難い感情が流れる。


そんな事を話していると、木々が消え失せ視界が開けた。すると本格的な雪景色が広がり始めた。


すると少年は六樹とアンリに向き直る。


「道案内ありがとうございます……もうここまで来れば大丈夫です。……報酬はどれくらいがお望みですか?」


すると、アンリと六樹がアイコンタクトを取り返答した。


「大丈夫ですよ、最初からただの人助けとして考えていましたし」


「それにネクロマンサーとしての事や情報も教えてもらったからな」


「そうですか……それではお言葉に甘えて…こんな山奥で……優しい人に出会えて良かった」


そして、少年は手を振りながら山頂の方向へと歩き始めた。六樹が最後に質問する。


「そう言えば、名前を聞いてなかったな?」


「名前ですか……う〜ん…………もしまた会えば……教えますよ」


「そっか、じゃあまたな!」


こうして同行者は姿が雪山に溶けていく、するとアンリが心配そうに話しかけてきた。


「リョウ……さっきの話、もしかしてその戦死した勇者様は…」


「あぁ、勇者峰山いや、みねちゃんは……俺の友達だ………死んだのか……」


六樹は寂しそうな顔をしてそう話す。正直言って、実感が湧かない。だが漠然とした消失感のようなものが胸を襲う。


しかし、そんな哀愁はすぐに上書きされる事になる。


少年の姿が完全に見えなくなった瞬間、エスタが語りかけてきた。


エスタ(行ったな、相棒!向こうに敵意がなかったから言わなかったが……アイツはヤバい、正直言ってヒヤヒヤしたぜ)


六樹(………うすうすは感じてた、ヤバいってのはどうヤバいんだ?)


エスタ(これは勘でしかないが、街一つ位なら平気で滅ぼせる位の脅威を感じた、2度と会いたくねぇな)


エスタはそう警告するのだった。


峰山とラネアが刺し違えた事は両陣営にとって戦力的にもそうですが精神的にも痛手となっています。クラスメイト達は精神的支柱であり、チートスキルでおよそ死ぬ事が無いと思っていた峰山ですら討ち死にした事、魔王軍は数十人いる勇者の1人を罠に嵌めた上で相打ちとなった事、それぞれが攻め気を失い戦場は膠着しているのが現状です。

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